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経営者は自分の言葉で「なぜ会社を経営するのか?」を社員に語ろう

会社を経営するには、会社が目指すもの、ビジョンや経営理念を社員一人ひとりと共有することが前提です。そのために、経営者は自らの言葉で社員に語らなければなりません。今回は、よりよい会社経営をするための社員とのコミュニケーションの重要性について考えていきます。

執筆者:田中 和彦

株式会社プラネットファイブ代表取締役、人材コンサルタント/コンテンツプロデューサー。1958年、大分県生まれ。一橋大学社会学部卒業後、リクルートに入社し、4つの情報誌の編集長を歴任。その後、映画配給会社のプロデューサー、出版社代表取締役を経て、現在は「企業の人材採用・教育研修・組織活性」などをテーマに、“今までに2万人以上の面接を行ってきた”人材コンサルタント兼コンテンツプロデューサーとして活躍中。新入社員研修、キャリアデザイン研修、管理職研修などの講師や講演は年間100回以上。著書に、『課長の時間術』『課長の会話術』(日本実業出版社)、『あたりまえだけどなかなかできない42歳からのルール』(明日香出版社)、『時間に追われない39歳からの仕事術』(PHP文庫)、『仕事で眠れぬ夜に勇気をくれた言葉』(WAVE出版)など多数。

経営者が描く「望ましい未来」に共感してこそ、社員はついてくる

あの人がゆくんじゃ わたしはゆかない
あの人がゆくなら わたしもゆく
あの人 あの人 わたしはどっちのあの人か? (相田みつを「あの人」)

これは相田みつをさんの「あの人」という有名な詩です。前者の「あの人」は人がついていかないリーダーであり、後者の「あの人」は人がついていくリーダーです。当然のことながら、誰もが目指すべきリーダー像は後者です。リーダーが最も避けたいことは、後ろを振り返ったらメンバーが誰一人いなかったという悲しい状態です。

さて、中小企業の経営者である皆さんに、社員たちはついてきてくれていますか? 社員全員が辞めてしまい、社長1人という状態では会社経営などできませんから、きっと社員たちはついてきているものと信じています。

では、もう1つ質問です。社員はリーダー(=経営者)の何についていくのでしょうか? 言い換えれば、リーダーの何が社員の心を動かすのでしょうか?

例えば、山道の途中に大きな岩があったとします(時代的には2000年くらい前を想定)。その岩のおかげで、人が道を通るときには、体を横向きにして崖すれすれに歩かなくてはなりません。山の上に住む村の長はその岩を邪魔に感じています。

しかし「岩をどけたいと思う」と村人たちに声を掛けても、村人たちは「重いし、大変ですよ。まあ、なんとか通れるし、このままでもいいじゃないですか」と乗ってきません(いつの時代も、人間は変革よりも現状維持をよしとするものです)。

そこで村の長は村人たちを動かすためにいくつかの手段を考えます。

① 「岩を運ぶのを手伝ってくれた者には、褒美として肉を与えるぞ」

② 「岩を運ばない者は、百叩きの刑に処すぞ」

③ 「岩がなくなると滑落の危険はなくなるし、水を運ぶのも楽になる。今よりはるかに便利で快適になるぞ」

皆さんが村の長ならどの手段を選びますか? 人を動かすときには、①報酬を使う方法もあれば、②権力を行使する方法もあります。これらを全否定するつもりはなく、時と場合によってはそれぞれ必要な手段かもしれません。しかし、もし肉がなくなれば村人は動かなくなり、百叩きの刑を受けた村人は後々までリーダーを恨むかもしれません。

やはり理想的な村人の動かし方は、③「望ましい未来」を想像させて、そこに共感してもらうことだと思います。この「望ましい未来」は「ビジョン」と言い換えることができます。人は未来に希望を見いだすと、それを獲得するための労力を惜しみません。

キング牧師にケネディ大統領、そして坂本龍馬にも多くの人たちがついていったのは、先導者が明確な「望ましい未来」を自らの肉声で語ったからです。報酬でも権力でもなく、多くの人の心を動かしたのは言葉でした。

相手の中に残ったものだけが、コミュニケーションの成果

釈迦に説法のような話をしてしまいましたが、経営者の皆さんは、社員を動かすために言葉を駆使して会社の望ましい未来、すなわちビジョンを伝えているものと思います。

しかし、伝えているはずのビジョンがまったく伝わっていなかったと感じることはありませんか。「あれほどしつこく言ったのに……」「一体、皆は何を聞いてたんだ!」「私はちゃんと言ったはずだぞ」というように。

実は「伝える伝わる」「伝えた伝わった」なんですね。「伝える」「伝えた」がコミュニケーション上のスタートならば「伝わる」「伝わった」はゴールとなります。相手にきちんと「伝わった」ことを確認して初めて、コミュニケーションは成立します。

経営者が社員にいくら「伝えたはずだ」と言っても、社員たちが「聞いていない」と言うのなら、社員たちを叱るよりも「伝わる努力を怠った」「伝わったかを確認しなかった」と、自分自身を反省してください。

経営者には2種類のタイプがいて、1つは社員にほとんど語らないタイプです。「一を聞いて十を知る」のが当然だと思い込んでいて「そんなことは改めて言わなくても当然わかっているはずだ」と、暗黙の了解や阿吽の呼吸を社員に求めます。しかし社員は「つうと言えば、かあと答える」人ばかりではありません。最低限、伝えたいことは具体的な言葉にしなくては伝わりません。

もう1つのタイプは、多くを語りすぎるタイプです。「今日は、これからの会社の方向性について大事な話があるから、よく覚えておくように」と言った途端に、溢れるほど言葉が出てきます。「1つ目のポイントは」から始まり、「7つ目は」といった具合に。

社員も「一体ポイントはいくつあるんだろう? いつまで話を聞けばいいんだろう?」という不安が生じ、集中力がだんだんと途切れていきます。おそらく4つ目辺りを聞いている途中で「あれ?最初のポイントって何だっけ?」となるのではないでしょうか。たくさん話すほどポイントはぼやけ、相手の中には何も残っていないということが多いのです。

ここで大切なことをお伝えします。「相手の中に残ったものだけが、コミュニケーションの成果」だということです。相手の中に何も残っていなければ、何も話さなかったのと同じです。今回の最重要ポイントとして、このフレーズをぜひ覚えておいてほしいと思います。

プレゼン上手だと言われていたスティーブ・ジョブズは、相手に何を残すかをあらかじめ決めてから話を始めたそうです。例えば「今日はなぜiPhoneが世界中で支持されているかについて、皆さんに2つだけお話ししたいことがあります」と。もうその瞬間に聞き手は頭の中でノートを開き、メモする準備を整えます。だから大切な2つのキーワードがきちんと残るわけです。

大きな仕事を成し遂げるためには社員の共感を得ることから

アフリカのことわざに「早く行きたければ、1人で行け。遠くへ行きたいのなら、みんなで行け」というものがあります。

会社経営では複数の社員を抱えるわけですが(社長だけしかいない一人会社を除き)、なぜ会社で複数の人たちと働くのかと言えば「遠くに行きたい」から。つまり、経営者1人では到底達成することができない大きな仕事をしたいからだと思います。

そこには「将来こんなことをしたい」「こんな風でありたい」「今までにはない便利なものを作って、世の中をあっと言わせたい」「多くの人に喜んで欲しい」など目指すものがあるはずです。

会社経営は、その目指すものを経営者自らが社員に語り、同じ思いを持ってもらうところからスタートしなくてはなりません。ビジョンや経営理念が共通認識になって初めて、会社はうまく回り始めます。その共有は何よりも先にやらなくてはなりません。

ビジョンや経営理念も認識せずに会社で働いている社員は、単に時間の切り売りをしていて、働いた分に見合う給料を求めているにすぎません。経営者の皆さんは、そんな社員とともに夢を追いかけたいでしょうか?

「明日は会社の社運を賭けた企画のプレゼンだ。今日は一緒に良い企画書を仕上げよう」と社員に声を掛けても「17時になりましたので、お先に失礼します」という反応をされたら悲しくなりませんか?

だからこそ、経営者は会社を立ち上げてまでやろうしていること、成し遂げようとしていることを社員に語り、共感してもらうことから始めなくてはならないのです。

武器は、権力でも報酬でもありません。言葉の力です。部下とのコミュニケーションの良し悪しが会社の未来を大きく左右します。このことをぜひ、胸に刻んでおいてほしいと思います。

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田中 和彦(たなか かずひこ)/ 人材コンサルタント
著者:田中 和彦(たなか かずひこ)/ 人材コンサルタント
株式会社プラネットファイブ代表取締役。人材コンサルタント/コンテンツプロデューサー。1958年、大分県生まれ。一橋大学社会学部卒業後、リクルートに入社し、4つの情報誌の編集長を歴任。その後、映画配給会社のプロデューサー、出版社代表取締役を経て、現在は、「企業の人材採用・教育研修・組織活性」などをテーマに、“今までに2万人以上の面接を行ってきた”人材コンサルタント兼コンテンツプロデューサーとして活躍中。新入社員研修、キャリアデザイン研修、管理職研修などの講師や講演は、年間100回以上。著書に、『課長の時間術』『課長の会話術』(日本実業出版社)、『あたりまえだけどなかなかできない42歳からのルール』(明日香出版社)、『時間に追われない39歳からの仕事術』(PHP文庫)、『仕事で眠れぬ夜に勇気をくれた言葉』(WAVE出版)など多数。

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