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ごく普通の商店街が突如人気スポットに変貌!?その秘訣は動画配信にあり

2016.11.21

ごく普通の商店街が突如人気スポットに変貌!?その秘訣は動画配信にあり

「昔ながらの商店街」と聞くと、シャッターを閉じた店が増え、テナント入居希望者が減少しているネガティブイメージがつきまといます。しかしここ、東京都板橋区にある東武東上線大山駅前の商店街「ハッピーロード大山」は、そんなイメージとは無縁のにぎわいを見せています。

平日の昼間も買い物客であふれ、テナントもほぼ埋まっている理由は、「動画を使った情報発信」により、マスコミに目を留めてもらうようになったからだといいます。一方、その他多くの商店街や企業、商店も、情報発信には取り組んでいるものの、なかなか上手くいかないという声も聞こえてきます。ハッピーロード大山との違いはどこにあるのか? 仕掛け人の1人、千種伸彰氏に、動画活用の秘訣を伺いました。

年間で配信する動画はなんと「約100本」

はじめに、千種さんがハッピーロード大山に携わることになったきっかけを教えてください。

千種:商店街の方から「映像を使った情報発信をしたい」と相談を受けたのがきっかけで、プロデュースや演出、放送するための技術的なサポートを引き受けました。ハッピーロード大山は、もともと新しいことを取り入れることに積極的な商店街で、地域ラジオ(狭い範囲でFM放送をする)がはやったときにも放送を行うなど、先進的な試みをする土壌があったんです。

地域ラジオを行うなんてかなり新しいことに積極的だったんですね。

千種:そうなんです。そして2011年10月より、YouTubeでハッピーロード大山商店街の地域チャンネル「ハッピーロード大山TV」を開始しました。今では2~3分の動画を年間で約100本製作・配信し、90分の生放送を月1回配信しています。

蓄積されたコンテンツがマスコミの目に留まり商店街に取材が殺到

商店街がYouTubeのチャンネルを持っていることってなかなかないですよね。ただYouTubeには多くの番組がありますから、その中で視聴者を増やすのは難しいと思うのですが、何かテクニックのようなものがあるのでしょうか?

千種:もちろん、YouTubeに2、3本の動画を上げただけで人は集まりません。継続することでインパクトが出てくるのです。インターネットの良いところは、公開したコンテンツが蓄積されていくことにあります。ハッピーロード大山TVでは、年間約100本を毎年更新していますので、それだけで膨大な情報量になります。

年間100本! それだけのコンテンツをそろえられることで、どのような変化が起こるのでしょう?

千種:ひとつは、地域の人が徐々に番組を知り、関心を持ってくれるようになり、協力者が増えていきます。もうひとつは、実はこれが大きいのですが、マスコミに注目されるようになります。テレビの制作スタッフや新聞、雑誌といったメディアの人たちは、常におもしろいネタがないかをインターネットで検索しているものなんです。

確かに、ネタを探すにはインターネットが一番ラクで確実ですからね。

千種:ハッピーロード大山TVは膨大な量の動画を配信しているので、彼らの検索にヒットしやすくなるのです。映像配信を始める前は、この商店街へのマスコミ取材はほとんどありませんでした。YouTubeを始めて、2~3年たったころからマスコミに注目されるようになり、今は、頻繁にテレビのクルーがきて、街頭インタビューや街歩き・食べ歩き番組、イベントの取材などをしてくださっています。

YouTubeのチャンネル「ハッピーロード大山TV」。1本あたりの視聴者数は少なくても、続けていくことで商店街の膨大な情報がたまることになる
YouTubeのチャンネル「ハッピーロード大山TV」。1本あたりの視聴者数は少なくても、続けていくことで商店街の膨大な情報がたまることになる

地元と外部の人間が協力すれば、企画は無限に生まれてくる

すごいですね。でもコンテンツを蓄積するには、企画をたくさんつくらなければなりませんよね。そこが一番大変そうですが、番組の企画はどのように決めているのですか?

千種:商店街を中心に地域のおトク情報、地域アイドルやプロスポーツとのコラボなど、企画はさまざまです。地域の情報を自身で発信する仕組みをつくりたかったので、番組のネタは地元の方々に出していただいています。

一方で、企画会議には商店街の人以外の人にも参加してもらうのがいいと思っています。というのも、地元の人たちだけでは当たり前と感じていて、その価値に気がつかないことがたくさんあるからです。

灯台下暗し。普段の何気ないことが、周りから見るとおもしろかったりするんですよね。

千種:なので、ハッピーロード大山商店街の場合では、私ももちろん外部の人間として加わっていますし、例えば商店街に近い目白大学の学生さんとコラボしたりしています。学生の目線で街を歩いて、おもしろいネタを拾ってきてくれていますよ。

なるほど! 学生さんまで巻き込むというのも良いアイデアですね。
人気企画のひとつ、大山都市伝説シリーズ。商店街の人たちにとっては当たり前に認識していることでも、外部の人から見たら目新しいこともある

千種:ほかにも、Cutie Paiまゆちゃんという知る人ぞ知るアイドルが、ある日売り込みにきて、今ではハッピーロード大山商店街の公認アイドルとして活動してもらっています。動画や商店街のバナーに登場してもらい、商店街のイメージを売り込むのに一役買ってくれています。

地域アイドルとして活動するCutie Paiまゆちゃん。彼女の売り込みから始まり公認へ。ハッピーロード大山TVを始めたことでいろいろなつながりが生まれている
地域アイドルとして活動するCutie Paiまゆちゃん。彼女の売り込みから始まり公認へ。ハッピーロード大山TVを始めたことでいろいろなつながりが生まれている

スポーツチームやほかの地域を巻き込み、相乗効果で盛り上げる

コラボといえば、いたばしプロレスリングや、プロサッカー、プロバスケットボールチームなどともコラボされていますよね。

千種:はい、いたばしプロレスリングさんには丸2年、準レギュラー的に番組に出演してもらい、地域レスラーのハッピーロードマンたちが登場するドラマも制作しています。サッカーやバスケのプロチームも昔から交流があり、板橋地域で試合をするときは、番組での告知や試合の模様をお伝えしています。

プロレスは地域ごとに活動している団体も多く、各地域と交流して盛り上げている。ハッピーロードマンはコラボによって生まれた
いたばしプロレスリングさんとは、どちらからコラボを持ちかけたのですか?

千種:上板橋北口商店街にグレート・ピカちゃんという地元レスラーがいて、たまたま知り合う機会があったんです。食事をしながら、「ハッピーロードにもレスラーがほしいよね」という話になり、ハッピーロードマンが生まれました。

さらに商店街ごとにレスラーをつくり、地域ファンを発掘しながら、商店街合同のイベントを仕掛けたりしています。「東上線バル」という飲み歩きイベントもそのひとつですね。

でもプロスポーツというと、なかなか交渉が難しそうな気がしますが……。

千種:いえ、意外とそうでもないんです。スポーツ関係者も多くの人に知ってもらい、応援していただきたい、という思いがあるはずなので、連絡を取れば快く引き受けていただける場合が多いですよ。

うちの場合は、ハッピーロード大山TVという番組を持っているので、商店街のイベントに参加することは、彼らにとって宣伝活動のひとつなんです。直接お客さまとの接点ができ、SNSで拡散されるメリットがあります。

いたばしプロレスリングの方々には、企画会議から参加してもらっています。彼らの興行に関しては、商店街のお店が試合のポスターを貼ったり、チケットを販売してくれたりしています。こういったコアなファンをつくれるのが地域密着の良いところですね。

逆に商店街側にとってコラボするメリットはなんでしょう?

千種:私は「掛け算で新しい価値が生まれる」と考えています。実は当初、プロレス×商店街はあまりピンときていませんでした。ところが実際にやってみると意外とおもしろかったんです。例えば商店街のハロウィンイベントでは、商店街でお菓子を配り、レスラーに登場して盛り上げてもらい、番組では仮装の写真コンテストも開催しました。個々の企画は平凡でも、お菓子の配布×プロレスラー×映像配信×写真コンテストの掛け算によっておもしろさが増していくんです。

ハッピーハロウィンの放送では、地域アイドルやプロレスラーなどが参加。ハロウィンというイベントをいろいろなかたちで盛り上げてくれた
貴重なお話をたくさんありがとうございました! 最後にこれから映像配信を始めたい、またはもっと良くしたいと考えている地域商店街へアドバイスをお願いします。

千種:とにかくコツコツ地道に続けることが大事ですね。2、3年などと事前に期間を決めて設計しておくといいでしょう。アクセス数の伸びよりも、まずは「やり続けるためにはどうすればいいか」という発想が必要です。

それから、身内だけでは煮詰まってしまいがちなので、多くの人を巻き込むとネタも広がります。ほかの地域との提携やスポーツなど異業種とコラボすれば、個別にプロモーションするよりも相乗効果で良い結果が生まれるでしょう。

確かに時間とお金の問題はつきまといます。しかし今ではスマートフォンでも画質の良い動画が撮れます。ハッピーロード大山で協力していただいている青年部の方々も、当然本業を持っていますが、複数の方が分担することで時間をつくっています。

自分たちの地域の魅力を発信したいという気持ちがあれば、明日にでもスタートできることです。ぜひ怖がらずに、周りを巻き込んでチャレンジしてほしいですね。

商店街の動画活用のポイント(まとめ)

  • 継続は力なり。まずは続けていくための方法を見つけよう
  • 企画会議は仲間内だけでなく、外部の声を取り入れよう
  • どんどん周りを巻き込んで、全員で「ハッピー」になろう

お話を伺った方:千種 伸彰(ちぐさ のぶあき)さま

メディアプロデューサー/中小企業診断士。1968年生まれ。高知県出身。早稲田大学・社会科学部卒業後、民放各局の報道局に勤務し、テレビ朝日 「ニュースステーション」で阪神淡路大震災などの現場取材に携わる。2010年に株式会社プラウドコンサルティングを設立。インターネット、動画、出版等のメディアをプロデュースしている。著書に『セルフキャスト! ~ビジネスを加速させる動画配信』(サイゾー)がある 。

この記事の著者

弥報編集部

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