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「買ってみたい」を引き出す!新規顧客を増やす秘訣は「お客さま視点」と「信頼感」

2025.04.10

著者:弥報編集部

監修者:辻 伸一

「良い商品やサービスを提供すれば、顧客は自然と増えていく」と、期待を抱く経営者も多いのではないでしょうか。しかし実際は、商品やサービスが優れていても、それだけで新規顧客が増えるとは限りません。市場での認知が足りなかったり、価格やニーズが顧客にマッチしていなかったりと、さまざまな要因が障壁になります。加えて、デジタル化や社会生活の変化により、消費者の購買行動も急速に多様化している今、市場の変化に即応した柔軟なアプローチが求められます。

今回は『中小企業のための全員営業のやり方<新装版>』の著者である辻経営有限会社 代表取締役の辻伸一さんに、新規顧客を増やしたい中小企業が「サービスの質」以外で取り組むべき重要な施策について解説いただきました。


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「良い商品」だけでは足りない!オンラインシフトの波をどう超える?

近年の市場において、消費者の購買行動や法人向けビジネスは、どのような変化が見られるのでしょうか?

業界にもよりますが、ほとんどのビジネスで、オンラインシフトが進んでいます。

オンラインショッピングの利便性が向上したことで、多くの消費者が実店舗を訪れなくなりました。特に個人消費者の場合だと、Amazonや他のネットショップは品揃えが豊富で価格も安いため、ネット購入を選ぶ人が増えています。店舗で商品を確認し、後でオンラインにて安く購入する「ショールーミング」も一般的になってきています。

法人ビジネスにおいても、以前は事前予約なしに訪問できるケースが一般的でしたが、現在では事前にアポを取らないと面会が難しい場合が増えてきました。特に、都市部やセキュリティの厳しい企業では、受付に人がおらず、内線電話しか置いていないケースも多いです。業種によっては、営業活動の最初から最後の契約締結まで、すべてオンラインのみで行われる場合すらありえます。

そのような変化の中で、どのようにすれば新規顧客を増やせるでしょうか?

このような市場の変化は、顧客に選ばれるためのポイントが「商品・サービスそのもの以外」の要素にも拡大していることを示しています。

いくら企業側が、商品やサービスが優れていると確信していても、消費者がそれを実際に手に取るまでは、その良さは伝わりません。特に、購入後に満足感を得るタイプの商品やサービスでは、実際に使ってみるまでその価値を理解することは難しいです。そのためB to B・B to C問わず、ターゲットが自ら「買ってみたい」と思えるような営業スタイルが必要となります。例えば企業自体への愛着や、実店舗事業の場合は、そこでしか得られない付加価値や独自性などにも着目すべきでしょう。

口コミ、ヒアリング……顧客との「信頼感」が、次なる顧客を生む

新規顧客を増やすのに必要なことは何でしょうか?

新規顧客を増やすためには、企業や商品・サービスに対する「信頼感」が重要なキーワードとなります。

信頼感を得るためには、企業自身の視点だけではなく、顧客視点で物事を考える姿勢が欠かせません。多くの企業が「どうすれば売れるか」という視点に注目しがちですが、本当に重要なのは「顧客にとっての価値」を正しく理解することです。この姿勢が欠けていると、いくら優れた商品やサービスを提供しても、顧客の共感や信頼を得るのは難しいでしょう。

営業は「商品・サービスを売り込む」のではなく、「顧客が欲しい情報の提供や課題解決の提案をする」役割を担っているため、顧客が「買いたい」「この企業と取引したい」と感じるポイントを徹底的に突き詰めて考えることが欠かせません。例えば、既存顧客に対して「なぜその商品・サービスを選んだのか」「購入後に満足している点や改善してほしい点は何か」といったヒアリングを行うことで、顧客が自社の商品やサービスを選んだ真の理由や、本当に訴求すべきポイントが明確になります。

加えて「信頼感」を支えるのは、口コミ、レビュー、SNSなどでの評価です。商品・サービスの質以外にも、顧客対応の質を向上させることも信頼を獲得するための基盤となるでしょう。誠実な対応を積み重ねることで、顧客との信頼関係を長期的に構築し、ブランドや企業そのものへの共感を高められます。

信頼感の構築には時間がかかりますが、これは企業にとって最も重要な資産の1つです。企業や商品・サービスを信頼した顧客は、リピート購入するだけでなく、自らがブランドのファンとなり、さらに新規顧客を呼び込む強力な存在となり、そのうちの何割かが次の見込み客を口コミで呼び込んでくれます。このような循環を生み出すことで、さらなる新規顧客の増加に結びつき、企業の持続的な成長につながっていくのです。

身近なリソースで新規顧客を増やす!明日から実践できる3つの施策

中小企業がすぐ実践できる、新規顧客を増やす効果的な施策があれば教えてください。

企業への信頼感を獲得し、新規顧客を増やすためには、膨大な予算や時間が必要と感じる中小企業も少なくありませんが、身近なリソースを活用する施策も効果はあります。以下に3つの施策を紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。

口コミまたは推薦文の活用

既出の通り、口コミは消費者の購買行動に大きな影響を与えます。なぜなら実際の体験談や評価は、文字通り「顧客視点の意見」であり、他の消費者の共感も呼ぶからです。ここで企業側がすべき施策は、積極的に口コミを取り上げることです。

例えば、実店舗や自社サイトなどで良い口コミを引用し、感謝や喜びを伝えるなどの施策はかなり効果的です。法人営業においては「口コミ」という言葉はややライトになりすぎてしまうため、顧客からの「推薦文」や「お客さまの声」などと表現するとよいでしょう。

取引先から信頼されることは、他の企業にも安心感を与え、営業活動において強力なアピール材料となります。第三者の意見を積極的に打ち出すことで、ビジネスの信頼性を向上させ、より多くの取引を獲得できるでしょう。

自社が持つ付加価値の発信

企業の製品やサービスに関する舞台裏を公開することは、消費者の関心を引き、ブランドへの共感を生み出すために非常に有効です。

例えば、商品を作る工程や保管方法など、視覚的に魅力的なコンテンツを自社サイトやSNSで公開することは、企業が消費者に対して情熱や誠実さを伝えるのに良い方法です。このようなコンテンツは、単に有益な情報を提供するだけでなく、消費者とのつながりも強化し、ブランドへの愛着を生み出します。

ただし、特別な製造過程や開発プロセスなどで、企業にとって競争力の源泉となる情報の公開は慎重に扱う必要があります。安易に、「秘伝のレシピ」や「門外不出の技術工程」などを表に出せば、競合企業を利するだけですので、くれぐれも注意してください

試用やデモの提供

商品の特性にもよりますが、試用やデモが効果的なものがあります。特に、化粧品や飲食ドリンクなどは、商品特性として新しい商品やサービスを体験してもらう機会を設けると効果的です。

また製造業やサービス業においても、例えばITツールなどがわかりやすい例ですが、デモ版を提供したり、無料で一定期間を利用してもらったりするのが当たり前のものも存在しています。

こうした体験があれば、本格的な購入の前に、顧客自らが商品の価値を理解して、自分にとって必要なものかどうかを判断することができるようになりますし、その後のリピート購入や口コミによる宣伝効果も期待できるでしょう。

また、仮に不具合があっても、試供品や無料デモであれば、会社としては大きなクレームに発展するリスクを抑えられますし、自然な形で今後の改善に向けての情報を集められるようになります。

「全員営業」で、信頼を築くアプローチを継続させる!

新規顧客を獲得するためには、営業や接客体制なども強化すべきでしょうか?

「強化」といっても、やみくもに人員を増やすということであればおすすめはしません。なぜなら、ただ人数を増やしただけでは人件費は確実に増える一方で、成果が伴わない可能性が高いからです。まずは過去の営業実績や顧客リストを見直して、顧客獲得に活用できる情報がないかを再確認することが重要です。

また、私が提唱する「全員営業」という考え方を取り入れると、新たな人員を増やさずに会社全体の営業力を底上げすることができるようになります。「全員営業」とは、すべての社員が営業活動にかかわる意識を持ち、それを実行する仕組みを会社として整えることを意味します。事務職や店舗スタッフであっても、顧客と接点を持つ機会を意識すれば、自ずと顧客獲得につながる工夫や施策が見えてくるでしょう。

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新規顧客獲得のための施策を実施するうえで、留意点があれば教えてください。

多くの会社が、新規獲得を強化する施策を考える際に、営業担当の即効的で短期的な効果を狙ったものに偏りがちです。

しかし、私が20年以上のコンサル経験を通じて肌で感じてきた教訓ですが、実際に新規獲得を強化できるのは、会社として戦略的・継続的に実行できる施策です。営業強化の施策は、どうしても当たりはずれや、成果が出るのに想定より時間がかかる場合もあります。そのため、一発勝負や即効性ある魔法の杖のようなものばかり期待するのではなく、試行錯誤を重ねながら改善し、継続する姿勢が何よりも重要です。

冒頭で、市場のオンラインシフト化について述べました。ビジネス環境としては間違いなく事実です。しかし、必ずしも御社にとって、Web広告や完全なオンライン施策が最適とは言い切れない場合があることも頭の片隅にはとどめおいてください。顧客の属性次第では、昔ながらの手紙でのアプローチや、オフラインの商談を組み合わせた施策が最善策になる場合もありえるのです。

新規顧客を増やす施策は単なる枝葉の理論ではなく、企業の根幹的な姿勢や理念を顧客に伝える活動です。社員1人1人が自社の強みや魅力をしっかりと理解し、会社として一貫性のあるメッセージを発信できるようにすることが成功へのカギとなるでしょう。


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この記事の著者

弥報編集部

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この記事の監修者

辻 伸一(辻経営有限会社 代表取締役/全員営業コンサルティング®開発者)

1967年生、三井銀行に入行後、旅行大手HISにて法人営業部の立ち上げに参画。営業実績西日本No.1スタッフとして活躍。コンサルティング会社を経て2003年独立。すべての社員を営業戦力化する「全員営業コンサルティング®」を、日本で初めて体系化。限られた経営資源をフル活用し、会社全体で儲ける仕組みにより営業力を最大化。現有戦力のままでも新規開拓や新規事業による中小企業の更なる成長や、人手不足と無駄な人件費削減も考慮した現場の革新への指南役として、いま注目を集める人物。コンサルタント歴延べ25年・400社以上を指導。人件費を上げず1年で年商197%、2年で231%など実績多数。著書『中小企業のための全員営業のやり方<新装版>』

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