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成約率22%アップ!オンライン営業「売れる人」がやっている5つの手法

2024.07.18

著者:弥報編集部

監修者:越川 慎司

オンライン営業は、コロナ禍以降急速に広がった営業手法です。しかし、日本では前例のない営業スタイルであることから、戸惑う企業は少なくありません。また、オンライン営業で成約につなげるためには、従来の営業手法とは異なるアプローチや戦略が必要になります。

今回は『AI分析でわかった トップ5%セールスの習慣』などの著者である越川慎司さんに、オンライン営業で成果を出す方法やコツについてお話を伺いました。ぜひ実践してみてください。


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効率良く成果を出す「オンライン営業」が増えている

昨今、オンライン営業が増えているように感じますが、実際、どれくらいの企業が導入しているのでしょうか?

コロナ禍以降、日本企業のオンライン営業への移行は加速しています。日本商工会議所が2020年6月に実施した「新型コロナウイルス感染症による影響調査」によると、回答企業の約60%が「Web会議システム等を活用したオンライン営業・商談を実施している」と回答しました。また、リクルートキャリアが2021年2月に発表した調査では、営業職の83.5%が「オンライン営業を実施している」と回答しており、コロナ禍前と比較して大幅に増加していることがわかります。

なぜオンライン営業が増えているのでしょうか?

オンライン営業は、コロナ禍を経て定着した営業スタイルです。増えた理由の1つに、コロナ禍以前に比べてITツールが進化したことがあげられます。ZoomやMicrosoft Teamsなど、いわゆるビジネスITツールを所有する企業は、中小企業でも全体の7割を超えています。

もう1つの理由として、オンライン商談を希望するお客さんが増えたことがあります。対面商談の際は、場所の確保など営業を受ける側も調整項目が複数ありました。しかしオンライン商談であればその必要がないので、ハードルの低さからオンライン商談が好まれている背景があります。

中小企業こそ導入すべき!オンライン営業のメリット

オンライン営業のメリットは何でしょうか?

やはり効率の良さが最初にメリットとしてあげられるでしょう。特にIT関連企業、コンサルティング会社、金融機関、教育サービス業など、無形商材を扱っている企業は、営業のコスト削減や時間短縮が可能です。実際に物を見せる機会を必要とする有形商材を扱う企業でも、オンライン営業と従来のアナログ営業を掛け合わせたハイブリッド営業も効果的です。事前調整や情報共有をオンラインで実施すれば、より効率的な営業を行えるでしょう。

その他、場所を制限しないことから商圏の拡大なども見込めます。従来、アプローチを諦めていた遠方のお客さんであっても、十分に取引の可能性があります。

また、オンライン商談は録画ができるので、後から商談分析を行い、営業の最適化を図れる点も魅力といえます。営業の教育材料としても活用でき、商談をテンプレート化すれば、営業ノウハウとして会社に蓄積していくことが可能です。

オンライン営業を行っていない中小企業は、今後導入すべきでしょうか?

はい、今後は中小企業でもオンライン営業を導入することが重要になるでしょう。これからの時代を生き抜くためにも、資源の少ない傾向にある中小企業は、いかに効率良く成約を決めていくかが鍵となります。

一方で、オンライン営業は対面営業と比べると難しいとされています。従来のアナログ営業では相手の反応を見ながら、事前に用意した営業のパターンを都度変えて提案する方法が主流でしたよね。しかし、オンライン営業はそうはいきません。最近では相手側が商談の最初から最後までカメラをオフにしているケースも見受けられます。そのような中で、従来の営業手法をオンラインに移行しただけでは、成約につながる確率も下がってしまいます。オンライン営業の際は、成約につなげるための手法やコツを抑えておくことをおすすめします。

「45秒」「感情共有」……成約率を上げる5つの手法とは?

効果的なオンライン営業のコツはありますか?

私たちは、800社、2万1000人の営業職の行動履歴をAIを使って分析しました。そのうち、3年連続で目標を達成している人かつ、社内の営業成績が上位5%に入っている人を「トップ5%セールス」と定義し、オンライン営業でも確実に結果を出していることを突き止めました。

トップ5%セールスの彼らには、オンライン営業を行う際にも共通する行動がいくつかありました。実際、対象社の営業担当者にこれらの共通行動を再現してもらい、オンライン営業の改善実験を行ってもらった結果、オンライン営業の成約率を22%アップさせることに成功したのです。その行動実験の中で特に再現性が8割を超え、効果的だった5つの手法を紹介します。

最初の45秒に魂を込める

商談冒頭の45秒で、相手の興味を引き、信頼を得る工夫をしましょう。オンライン商談は、一般的に30分程度を想定して行われる場合が多いです。そのうち営業を受ける側は、最初の1分と最後の5分の記憶定着率が高いことがわかりました。特に冒頭で興味が湧かないと、最後まで話に関心を寄せてもらえません。

冒頭のあいさつは、当たり障りのない自己紹介を行うことも多いかもしれませんが、それではせっかくの貴重な時間がもったいないです。会社や自己紹介を簡潔に述べ、顧客のベネフィットを明確に伝えると、相手の記憶にとどまるでしょう。

対話を成立させる

環境整備の話にはなりますが、オンライン営業だとしても、対面に近いコミュニケーションができれば、より効果が高まります。例えばマイクは、キーボードと口の真ん中あたりに位置させ、声の拾い漏れが起こらず、適度なボリュームになるよう心がけます。

また、カメラの位置は目線の高さになるよう調整しましょう。商談中は、7割程度を目安にカメラを見て進行します。どうしてもカメラ目線を忘れてしまうという方は、パソコンのカメラレンズ横に目立つようにスマイルシールを貼り、それを見ながら話すという方法も有効です。表情作りにも意識がいくので、ぜひ試してみてください。

わかりやすい資料の作成

オンライン営業の際は、一瞬でお客さんの頭に入り、記憶に残りやすい資料である方が効果的です。78%の意思決定者は、わかりやすいスライドかどうかを10秒で判断するという調査結果もあります。1スライド当たり105文字以内に抑え、使う色は3色以内で構成しましょう。また人間の視線の動きを考慮し、重要なポイントは資料の左斜め上に配置する、対角線構成を用いるなどの工夫を施すとよいでしょう。

質疑応答の重視

質疑応答の時間は大変重要です。実際に、オンライン営業で質問したお客さんは、9か月以内にその商材を購入する比率が高いことが実験でわかりました。質問が出ると想定し、あえて説明を全体の7割程度に抑えるという手法もあります。事前に想定される質問をあらかじめ洗い出し、回答を用意しておく方がスマートです。

相手の話に耳を傾け、共感を示す

商談中は一方的に話さず、参加者に呼びかけたり共感を示したりすることで相手の心を開き、本音を引き出すと購買検討率も高くなります。実際、成績の良い営業担当者は、話し上手ではなく聞き上手だという印象を周囲に持たれていることがわかっています。深くうなずいたりあいづちを打ったりするなどの他、相手が話しているのをさえぎらないことなどでも聞き上手という印象につながります。

その他、商談中に相手の名前を呼んでみるのも効果的です。当事者意識が芽生えれば、腰を据えて検討する確率も上がるためです。

その他、オンライン営業を行う際の留意点があれば教えてください。

オンライン営業を行う際は、事前準備も欠かせまん。絶対に避けたいのは機器のトラブルや音声の不具合です。ただでさえ商談時間が短縮傾向で時間が限られているのに「あれ?聞こえますか?」というようなやり取りは、相手に段取りの悪さを感じさせてしまいます。極力発生させないように対策しましょう。おすすめなのは、商談前に20秒だけテスト通話を行う方法です。

また、画面共有で資料を継続して見せすぎると、相手は飽きてしまいます。表示画面は適度に話し手の顔に切り替えるなどして、変化を付けた提案を目指しましょう。

オンライン商談後に関しても、すぐに資料共有のメールを送った方が効果的です。以前に増して、レスポンスの良さは求められています。例えば見積もりなども、早く出せば出すほど決定してもらいやすいことがわかっています。商談前にある程度見積もりの準備をしておき、商談後5分以内にメールで送るという流れが適切です。その際は「来週の金曜までにご回答いただけると大変ありがたいです」というように、回答期日を入れた感情共有文を含めると、回答確率が約20%向上するという実験結果もあります。ぜひ実施してみてください。

オンライン営業の際に有効なITツールがあれば教えてください。

オンライン営業の要であるWeb会議システムは、Zoom、Microsoft Teams、Google Meetなど、安定性と使いやすさに優れたシステムを選びましょう。また、Salesforce、Hubspotなどの顧客管理(CRM)ツールは、顧客情報の一元管理と商談進捗の可視化に役立ちます。さらに、DocuSign、Adobe Signなどの電子署名ツールを活用すれば、商談のスピードアップにつながります。特に顧客管理ツールは、大規模なシステムを入れなくても月額を抑えたサービスも増えているので、企業の規模感にかかわらずおすすめです。

アクティブリスニング・PDCAが「売れる人」への近道

これらの5つの手法をどのように身に付ければよいでしょうか。

営業ノウハウというのは、一朝一夕では身に付きません。実際に行った改善実験でも、3か月から1年後に取り組みが結果として現れています。日々継続的にPDCAサイクルを回しながら手法を身に付けていきましょう。

特に有効なのはロールプレイングです。その際は、アクティブリスニングを意識して行いましょう。アクティブリスニングとは、コミュニケーションスキルの一つであり、相手の話を傾聴する技法です。ただ相手の話を聞くだけではなく、理解を深めて反応し、相手からも質問を引き出せるコミュニケーション力が、オンライン営業では特に有効なのです。可能であれば同僚同士や、別部署の上司などが見ることをおすすめします。直属の上司が部下を担当して指導すると、過剰な指導になったり、逆に気を遣いすぎてしまうためです。

自身で担当したオンライン商談の録画データを見返し、修正を図り続けるのも有効です。他者からの客観的なフィードバックをもらうのもよいでしょう。

その他、全体のフォローアップとして半年に1回の頻度で、社内でセールス講座などを開くのも効果的です。最近では外部講師を招いて営業セミナーを実施する企業も増えました。トップセールスの喋りを実際に聞いてみると、新たな気付きがあるはずです。

オンライン営業を振り返る際はどのタイミングで、どのように行えばよいでしょうか?

優秀な営業担当者は、オンライン営業がうまくいかなかったときはもちろん、うまくいったときも振り返りを実施します。ダメ出しのようなネガティブな場になるのを避けるため、フィードバックの際は個別ではなく、チーム全体で行うと効果的です。毎回全員で振り返るわけにはいかないと思いますので、特に重要な商談に絞って時間を設けるとよいでしょう。良い成功例は再現性を探り、失敗例はそのままにせずそこから学んで次に活かす、というサイクルを定着させれば、どんなオンライン営業の経験も糧となりますよね。

新人をオンライン営業に参加させてもよいのでしょうか?

関係性や商談の重要度にもよりますが、相手に断りを入れて可能であれば、積極的に商談に若手を参加させましょう。実際にオンタイムで話を聞くのが、最も効果的なトレーニングです。その際、オブザーバーであれば顔も非表示で構いません。「勉強のため、御社との商談にぜひ新人もオブザーバーとして参加させてください」と相手に伝えれば、意外と許容してもらえることも多いようです。


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この記事の著者

弥報編集部

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越川 慎司(株式会社クロスリバー 代表取締役社長)

国内通信会社などを経て、2005年にマイクロソフトに入社。業務執行役員としてPowerPointやExcelなどの事業責任者を務める。2017年に株式会社クロスリバーを設立。創業当初から全メンバーが週休3日、複業、7時間睡眠を実践。約700社の中小企業に対して年間400件以上のオンライン講座を提供。著書『トップ5%リーダーの習慣』など30冊。フジテレビ「ホンマでっか!?TV」などメディア出演多数。

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