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経営者保証なしで受けられる融資とは【教えて吉田先生!】

2023.11.28

著者:弥報編集部

著者:吉田 学

会社経営では事業の拡大や安定のためにも融資は欠かせません。融資を受けるときに求められるのが経営者保証です。経営者保証を付けると融資が受けやすくなる一方で、万が一の場合は経営者が債務を負うことになるので、リスクも高くなるでしょう。

そんな経営者保証ですが、2024年4月以降に「経営者保証の解除を選択できる信用保証制度」が創設される予定でしたが、2023年11月2日公表された「デフレ完全脱却のための総合経済対策」において、2023年度内に前倒しして創設されることになりました(現時点において詳細は不明)。それでは現時点において、信用保証付き融資に関しては経営者保証を外すことができないのか?といいますと、そんなことはありません。

今回は経営者保証を解除することができる現行制度について、財務・資金調達コンサルタントの吉田 学先生が解説いたします。

※本記事は2023年11月14日時点の情報を基に作成しております。法令などの最新情報については、政府から出ている文書をご確認ください。


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信用保証付き融資は必ず経営者保証が必要なのですか?

経営者保証に依存しない融資慣行の確立をさらに加速させるため、経済産業省、金融庁・財務省との連携の下、2022年12月に「経営者保証改革プログラム」を策定されました。

信用保証付き融資については、2023年度内に「経営者保証の解除を選択できる信用保証制度」が創設される予定となっています。それでは現時点(2023年11月時点)では経営者保証は必須なのか?といいますと、そんなことはありません。現時点においても「経営者保証を不要とする保証制度」があり、政府から金融機関に対しても「経営者保証を解除することができる現行制度」の活用を検討するようにとの要請が発せられています。

「経営者保証を解除することができる現行制度」とはどういう制度ですか?

信用保証協会では「経営者保証に関するガイドライン」(2014年2月1日より適用開始)に基づいて、経営者保証を不要とする取り扱いを実施しています。主に「金融機関連携型」「財務要件型」「担保充足型」の3つの型があり、いずれかに該当すればこの経営者保証を不要とする保証の取り扱いができる可能性があります。

「金融機関連携型」について教えてください。

「金融機関連携型」とは、以下の要件を満たしている事業者が対象となります。

〈金融機関連携型〉

  1. 申込金融機関において既に経営者保証を不要とし、かつ担保による保全のないプロパー融資の残高がある(または申込金融機関において、信用保証付き融資と同時に経営者保証を不要とし、かつ保全のないプロパー融資を実行する)。
  2. 「直近決算期において債務超過でないこと」かつ「直近2期の決算期において減価償却前経常利益が連続して赤字でないこと」。
  3. 法人と経営者との一体性解消が図られている(または図ろうとしている)ことを金融機関が確認している。

1.については申込金融機関から「既に無担保・無保証人のプロパー融資を受けている」または、経営者保証を不要とする保証制度を受ける際に「無担保・無保証人のプロパー融資を受けることができる」ということです。

2.については「直近の決算期において純資産の部合計がマイナス(債務超過)でないこと」「減価償却費を差し引いた経常利益が連続してマイナス(赤字)でないこと」を意味します。

3.については、例えば「法人と経営者個人の間のやりとり(役員報酬・賞与・貸付金など)について社会通念上適切な範囲を超えていない」ということです。これは経営者保証に関するガイドラインにて提示されている要件になります。

(参照)
個人保証は外せる?「経営者保証に関するガイドライン」3つの要件【中小企業経営者必読】|弥報Online

「財務要件型」について教えてください。

「財務要件型」とは一定の財務要件を有する場合に、経営者保証を必要としない保証制度であり、直近決算期において以下の財務要件の基準ア~ウのいずれかに該当する場合、経営者保証は不要になります。

〈財務要件型〉

なお、それぞれの財務指標の計算方法は以下の通りです。

  • 自己資本比率=純資産の額÷(純資産の額+負債の額)×100
  • 純資産倍率=純資産の額÷資本金
  • 使用総資本事業利益率=(営業利益+受取利息・受取配当金)÷資産の額×100
  • インタレスト・カバレッジ・レーシオ=(営業利益+受取利息・受取配当金)÷(支払利息+割引料)

これらの計算方法などに不安がある場合は、顧問税理士に相談してみましょう。

「担保充足型」について教えてください。

申込人または代表者本人などが所有する不動産の担保提供があり、十分な保全が図られる場合、有担保での取り扱いができる保証制度で経営者保証を不要とする取り扱いができる場合があります。

また個別の事案において、経営者保証を不要として取り扱うことが適切かつ合理的であると認められる場合には、経営者保証を必要としない場合があります。例えば株式取得などにより親会社から来たサラリーマン社長が新代表者に就任し、旧代表者が経営から完全に撤退したうえで、親会社の連帯保証が得られる場合などです。

経営者保証を不要とする保証の取扱いについて|東京信用保証協会

既に借りている既存の信用保証付き融資の経営者保証は外すことはできますか?また、事業承継時はどうなりますか?

まずは「期中時の取り扱い」についてですが、経営者保証がされた信用保証付き融資について、上記で説明した要件のいずれかに該当する場合、新規の信用保証付き融資で借り換えることにより経営者保証の解除ができるとされています。なお金融機関連携型に該当する場合、条件変更により経営者保証を解除することも可能となっています。

次に「事業承継の取り扱い」ですが、経営者保証がされた既往の信用保証付き融資について、原則として後継者(新経営者)の保証追加は行わないとなっています。

ただし事業承継により経営権などのない前経営者が保証解除を希望した場合、既往の信用保証付き融資に事故または延滞がなく返済される可能性が高い場合、原則として後継者(新経営者)の保証を追加して、前経営者の保証を解除することになっています。なお事業承継時も「期中時の取り扱い」により、後継者(新経営者)の保証を追加することなく、前経営者の保証解除ができます。

シンプルにまとめると、原則として以下のような取り扱いイメージとなります。

  • 新経営者の保証を追加する場合 → 旧経営者の保証は解除
  • 旧経営者の保証を解除しない場合 → 新経営者の保証は追加しない

信用保証付き融資の経営者保証を外したいときはだれに相談すればよいですか?

基本的には取引先の金融機関または信用保証協会が相談窓口になっていますが、実際のところどこまで事業者が納得できる回答やアドバイスをしてくれるのか、その窓口や担当者にもよって温度差があると思われます。そういう意味において、まずは顧問税理士に相談してみましょう。

しかしながらすべての税理士が、経営者保証の解除に関して精通しているわけではありません。その場合は顧問税理士などに、経営者保証に詳しい専門家などを紹介してもらうようにしてください。たとえすぐに経営者保証が解除できなくても、今後どうすれば解除できるのか?など、金融機関や専門家などからアドバイスを受けて対応策を講じるようにしてください。

※本記事は2023年11月14日時点の情報を基に作成しております。法令などの最新情報については、政府から出ている文書をご確認ください。


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この記事の著者

弥報編集部

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吉田 学(よしだ まなぶ)

財務・資金調達コンサルタント
株式会社MBSコンサルティング 代表取締役。1998年の起業以来、「資金繰り・資金調達支援」に特化して創業者や中小事業者を支援。これまでに1,000 社以上の資金調達相談・支援を行い、その資金調達支援総額は20億円超。主な著書に、「社長のための資金調達100の方法」(ダイヤモンド社)、「究極の資金調達マニュアル」(こう書房)、「税理士・認定支援機関のための資金調達支援ガイド」(中央経済社)などがある。また、全国の経営者・士業などを対象にした会員制の資金調達勉強会「資金調達サポート会(FSS)」を主催している。

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