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仕事をゲーム化して社員のモチベーションUP!「ゲーミフィケーション」を取り入れる方法を聞く

2023.05.24

著者:弥報編集部

監修者:岸本 好弘

最近、従業員のモチベーションが上がらない……そんな悩みを抱えていませんか?従業員のモチベーションを上げるためにいろいろなことをしたけれど、特に効果を感じない。それなら、仕事に「ゲーム」を取り入れてみるのがよいかもしれません。

「ゲーム」と言っても本当にデジタルゲームを取り入れるわけではありません。皆さんも子どものころ、鬼ごっこやかくれんぼ(=ゲーム)の遊び方を工夫した経験があるのではないのでしょうか。それを仕事に取り入れるのです。これを「ゲーミフィケーション」と言います。

今回は、日本ゲーミフィケーション協会の岸本 好弘さんに、ゲーミフィケーションの導入やメリットについて伺いました。


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ゲーミフィケーションとは、仕事に遊び心を取り入れること!導入のメリットは

ゲーミフィケーションとはどのようなものでしょうか。

ゲーミフィケーションとは、ゲームの要素を仕事や勉強・家事育児などに取り入れて、人をワクワクやる気にさせる仕掛けです。ひと言で表現するならば「遊び心」でしょうか。

ゲームというと、ほとんどの人はテレビやスマホのゲームを連想すると思いますが、それだけがゲームではありません。子どものころは、遊びのルールを自分たちで考えて試行錯誤しましたよね。仕事も同様に、やり方を工夫すれば楽しくなるし、それにより能動的かつ継続して働けるようになります。

そこで、30年近くビデオゲームを開発していた経験から、ゲームの要素は現実世界での行動変容にも活用できるのではと考えました。

我々の提唱するゲーミフィケーションの要素は下記の6つです。

〈ゲーミフィケーションの要素〉
  1. 能動的な参加
  2. 達成可能な目標設定
  3. 称賛の演出
  4. 即時フィードバック
  5. 成長の可視化
  6. 独自性の歓迎

遊び心を重視するゲーミフィケーションは、効率化とは対極にあるものです。取り入れたところで、すぐに利益が出せるわけでもありません。しかし、心を躍らせつつ夢中になって働くのと、つまらない仕事をひたすらこなして休日を待つのとでは、どちらが従業員のパフォーマンスを引き出せるでしょうか。そして、どちらの会社が成長するのか。答えは明らかだと思います。

平成以降の30年あまり、リストラやスリム化を推し進めた結果、日本の経済は衰退しました。効率化だけを追求しても幸せにはつながらないと、ぜひ気付いてほしいです。

ゲーミフィケーションを導入するメリットを教えてください。

まず、モチベーションアップにつながります。特にバックオフィス業務などのルーティンワークに導入すると効果的です。ルーティンワークはできて当たり前、対してミスは怒られてしまうので、成長意欲が下がりがちです。

また、社内コミュニケーションも円滑になります。サントリーの「社長のおごり自販機」は、まさにゲーミフィケーションの具現化だと思います。どんな仕組みかというと、2人で自販機に社員証をタッチすると、飲み物が無料になるんですね。だれかを誘って行ってもよし、1人で来た人に声をかけるのもよし。それによって、自然にコミュニケーションが生まれます。

さらに、ゲーミフィケーションを導入することで、緩和の時間が生まれます。緩和の時間は、アイデア出しにプラスに働きます。休憩時間や入浴中、通勤電車でぼんやり外を眺めているときに、ふとアイデアが浮かんできたりしませんか?ずっと緩和していてはダメですが(笑)、仕事の合間の雑談で生まれる緊張と緩和はアイデアの源になります。

ゲーミフィケーションはリモートワークにも導入できるのでしょうか?

リモートワークにも、ゲーミフィケーションは有効です。リモートはお互いを「察する」ことができないため、従業員同士のつながりが希薄になります。その部分を、ゲーミフィケーションでケアするわけです。例えば会議を始める前や後に、最近何か楽しかったできごとを話してもらうなど、雑談タイムを設けるのもよいでしょう。会議の終了時に、皆で「バイバイ」と手を振ると、雰囲気が明るくなったりもしますよ。

また、オンラインの時間は常に顔が映されて緊張するため、息抜きできる時間というのを工夫してあげるのもよいです。アイデア出しの時に画面をオフにして、ペットの猫など自分の好きな写真を待ち受け画面にして音声だけで会話してみたら、アイデアが引き出せるようになったケースもありました。難しく考える必要はなく、このように遊び心を取り入れたほんの少しの工夫もゲーミフィケーションといえるでしょう。

企業でのゲーミフィケーション導入事例

企業でのゲーミフィケーションの事例を教えてください。

ある会社の業務はデータ入力と顧客対応が中心で、仕事が固定化していました。離職率は低いけれど、自発的に作業改善を行う意欲に乏しく、今後起こり得る変化への対応についても不安があったといいます。

そこで「ステータス・クエスト化」のゲーミフィケーションを実践しました。何をやったかというと、全員の仕事をリストアップして、難易度を明らかにしたのです。それを基にジョブローテーションを行い、各自が新たなスキルを獲得しました。以前は与えられた仕事をこなすのみの従業員がほとんどでしたが、できる仕事が増えたことで学習意欲が向上したそうです。

加えて管理職が短期的にフィードバックを行い、仕事への反応が少ないというルーティンワークならではの不満を解消しました。業務が終わったらすぐに褒めるのがポイントで、「ミスしたときだけ何か言われる」から「フィードバックがもらえて嬉しい、もっと成長したくなる」へと意識が変化します。

また、ある会社では中小企業向けの人事評価システムに、ゲーミフィケーションが取り入れられています。評価システムが「人事研修・日報・評価」の3本立てになっており、周囲の承認により働く意欲がアップすることを目指したプログラムです。

研修では「未来新聞」を作って会社の目的やビジョンを共有し、達成に必要なタスク・スキルを全員で考えます。日報はSNS風で雑談もでき、従業員間のコミュニケーションツールとしても活用可能です。そして評価は加点のみのため、褒められる体験が増えるとともに、上司側も減点評価のプレッシャーから解放されます。

とにかく褒める!ゲーミフィケーションを始める際のポイント

ゲーミフィケーションはどうやって始めたらよいですか?

トップダウンで全社に取り入れるか、まずはゲームに親和性の高い若い人の多い部署で始めて周囲に広げていくとスムーズです。経営者の中には「仕事は遊びじゃない」という人もいますが、楽しくなければ続かないし、自発的な働き方もできません。経営者が「楽しい」を容認する姿勢が、何より重要です。

ゲーミフィケーションの導入にあたって、報酬を用意する必要はありますか?

ゲームには報酬はないけれど、楽しく遊べますよね。つまり、夢中になれる仕掛けが入っていれば、報酬はいりません。報酬による動機付けは「外発的動機付け」と呼ばれています。外発的動機付けは初期には効果があるものの、より高い報酬を求めるようになってしまい継続は困難です。

また、日本の多くの会社では、今は賃金を上げるのも厳しい状況と言えるでしょう。ゆえに、従業員自らの意欲でモチベーションを維持する「内発的動機付け」に変えていかなければなりません。そこで、ゲーミフィケーションが有効な手立てとなるのです。

ゲーミフィケーションを導入する際のポイントを教えてください。

冒頭で、ゲーミフィケーションの6要素についてお伝えしました。そのうち、能動的な参加・成長の可視化・称賛の演出の3つを特に重視してください。

能動的に動いてもらうためには、ゴール設定を明確にし、会社が何を目指しているのかを共有する必要があります。もし、ゲームをするときに「お姫さまを助ける」などのゴールがなかったら、プレイし続けられるでしょうか。同様に、仕事の目的もはっきりさせないと能動的な参加を促せません。だからこそ、経営者も会社の使命や夢を大いに語るべきです。

次に成長の可視化についてです。レベルも経験値も表示されないRPGを想像してみてください。モンスターを倒しても何も起きないなんて、とてもじゃないけれどゲームを続けられませんよね。すなわち成長の可視化とは、仕事の成果やレベルを明らかにすることを指します。営業など、既に可視化されている実績以外の業務に関しても、貢献度を数値で表すなどの取り組みも良いでしょう。

最後は称賛の演出です。例えば1ステージをクリアするのに長い時間を要するゲームは、途中でだんだん飽きてきますよね。ステージをクリアできなければ褒めてもらえず、達成感も感じられません。一方で、定期的に細かく称賛の演出がなされると、モチベーションを維持しやすくなります。

称賛の演出で経営者にできることがあります。従業員の良いところを見つけてとにかく褒めてください。1つの結果に対してだけ褒めるのではなく、過程をスモールステップにして、その都度褒めるのも効果が見込めます。おすすめは「褒めポイント」の記録です。叱られたことは褒められたことより記憶に残りやすいため、褒めたらプラス1、ダメ出ししたらマイナス2の点数で計算しましょう。マイナスが上回っている場合は、従業員のモチベーションを下げているのは自分自身だと自覚するべきです。

ゲーミフィケーションを導入する際の注意点はありますか。

強制的に押し付けると拒否反応が出やすくなるので、決定事項として取り組む前に「ゲーミフィケーションを試してみたいんだけどどうかな?うまくいかなかったらやめるから」くらいのスタンスで始めるようにしましょう。

また、ゲーミフィケーション導入の目的は、自発的に仕事や勉強などに継続的に取り組んでもらうことです。導入後は定期的にフィードバックをもらい、改善していくことも大切です。


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この記事の著者

弥報編集部

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この記事の監修者

岸本 好弘(日本ゲーミフィケーション協会)

約30年にわたり、ナムコ、コーエーにて、ゲームクリエイターとして有名ゲーム開発を手がける、「ファミスタの父」と呼ばれる。東京工科大学メディア学部にてゲーミフィケーション、ゲームデザインを教える。4年前より、「世界を神ゲー」にするべく、日本ゲーミフィケーション協会を立ち上げる。著書「ゲームはこうしてできている」。好きな食べものはオムライス。

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