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コアなファンの獲得がカギ!成功事例から学ぶSNSマーケティング
2018.08.14
SNSが一般化した昨今、企業と個人の距離も大きく変化しつつあります。しかし、企業側は、意外とそのことに気付いていないこともあります。
「WebやSNSに広告を出したり、ツイッターに投稿したりして商品やサービスの拡散を期待しているが、いっこうに効果が出ない」――そんな悩みをお持ちの方は多いのではないでしょうか?
そこで、今回から4回にわたって、悩みをお持ちの企業にとって必要とされるSNSマーケティングについてお話をしていきます。この連載を読んでいただくことで、皆様にSNSマーケティングを実行するために必要な考え方をお伝えして、そのノウハウを学んでいただきたいと思っています。
本記事は、 宍戸崇裕 著『ファンと一緒にブランドを育てるSNSマーケティング実践法』(リスナーズ株式会社・刊)の一部を再編集したものです。
目次
ファンとの関係を深めることでさらなるファンの拡大と売上を実現
「宝塚歌劇団」と聞いて、皆さんはどんなイメージを持たれているでしょうか。
私は前職で、宝塚歌劇団のFacebookページの立ち上げに少しかかわっていたので、ゲネプロ(最終リハーサル、通し稽古)を見学させてもらったことがあります。そこで初めて宝塚の舞台を見ました。宝塚に「豪華絢爛」というイメージを抱いている方が多いと思いますが、まさにそのとおり。華やかで、熱量がすごく高い。そして熱烈なファンがたくさんいるのも大きな特徴です。
しかし、2012年頃には集客数の下落が課題となっていました。熱烈なファンは何度も会場に足を運びますが、新規や単発のお客様がなかなか来てくれない。以前のように行列ができることはなく、空席も見られるようになっていました。
ネット掲示板では、「〇〇組の△△さんはすごくいいよね」とか「□□の初日舞台を観に行った」など、宝塚の話題ですごく盛り上がっているのですが、それが集客増加につながっていない。そんな課題の改善にSNSを活用しようと、専用アカウントを立ち上げたのです。
宝塚歌劇団のFacebookページ「宝塚歌劇」には、16万人以上のフォロワー(2018年8月現在)がいます。基本的に情報発信をするのみで、コミュニケーションはとっていません。それでも投稿をすると、多くの人にシェアされ、コメントもたくさんつきます。
「〇〇さんと△△さんのコンビが新鮮で美しい」
「難しい一幕ものだと思っていたら終始笑える喜劇で、とっても楽しかった」
「人と人との出会い、触れ合い、優しさ。こういう心温まる作品が観たかったんです」
「男役の〇〇さん、新しい時代を見せてくれそうな期待が満載で好きになりました」
投稿されたコメントに対して宝塚歌劇団側はレスポンスをしないのですが、ファン同士の間では活発なコミュニケーションが生まれています。
「この演目の〇〇組の△△さんの、このシーンのこの台詞が一番の見どころ」
――そんなコメントも書かれているので、「その演目はまだ観ていない。ぜひ観に行きたい!」と、ファンのリピート率アップにつながるでしょう。
また、宝塚に興味はあるけれど観劇したことはない……という人がここを見れば「なるほど、こういう風に楽しむのね」ということが分かります。何より、ファンたちの「よかった!」というコメントを目にするうちに「行ってみたい!」というモチベーションが高まります。
このように「ファン」を獲得すると、一方的な情報発信のみだけでも、それを受け取ったファンたちが自主的に盛り上がってくれ、さらにファンではない人たちも呼び込んでくれるというわけです。
では、どのようにファンを増やしていくか、事例を踏まえてご紹介します。
コミュニケーションを通してコアファンを醸成
ハンドクリームで知られるユースキン製薬株式会社。昔ながらのハンドクリームというイメージがあるかもしれませんが、実は若い世代からも厚く支持されています。確かな商品力はもちろんのこと、地道な「ファン作り」が功を奏しているのです。
「ファン作り」というと、ブランド側から質の高いコンテンツを定期的に発信し、インフルエンサーのような立ち位置でフォロワーが増えていく構図が想像しやすいかもしれません。もちろん、ユースキン製薬も公式アカウントを開設しています。しかしユースキン製薬では、企業から一方向的に情報を発信するのではなく、SNSを「ユーザーと親密なコミュニケーションをとるための場」と捉えています。
では、ユースキンブランドはどのようにユーザーとコミュニケーションをとっているのでしょうか。
Instagramで「#ユースキン」と検索すると、2018年8月現在、5600件を超える投稿が確認できます。商品単体の写真から、自分の手を撮影した写真(ハンドセルフィ―と命名しています)や、お子様と商品が仲良く並んだ写真まで、投稿者それぞれの日常にユースキンが溶け込んでいる写真が多く見受けられます。
このハッシュタグ検索により、ユーザーの商品に対する反応を確認するだけでなく、投稿によってはコメントを残します。クチコミを信じて購入してくださったお客様に感謝を伝えたり、オススメの使い方を伝授したり、ときには会話に入っていってツッコミを入れたりと、カタくなりすぎないトーンで話しかけます。
例えば、唇の荒れに関して2人の女性がInstagram上でこんなやりとりをしていました。
「友達のオススメで買ったユースキンリップケア。唇が割れて血が出てたのにホントに一発で治った♪」
その投稿に対し、その友人が
「まてまて、あたしが教えたのこれじゃねえよww」
――と思わぬ展開に。
そこにユースキン公式アカウントが切り込みます。
「思わずコメントしてしまいましたf^_^;) 何はともあれ、唇割れ良くなってよかったです」
すると女性は、
「わお! ありがとうございます笑」
――と、少し驚いている様子。
このように、公式アカウントからのコメントはまだ一般的ではないため、コメントやフォローといった行為自体にインパクトがあるので、ネタにしてもらえることが増えます。
ブランドからフォローされると感じる「うれしい」という気持ちがリピーターに繋がる
Twitterでは、ユースキンがフォローした人たちからのこんなツイートが見られます。
「ユースキンにフォローされたwwかわいいw」
「ユースキンのリップのこと呟いたら公式さんがフォローしてくれたwwお世話になってます(^q^)」
普段使っているブランドからフォローされたりコメントされたりすると、嫌な気はしないですよね。
「ユースキンさんがわざわざリプをくれた上にフォローまでしてくれて、今年も断然ユースキンにする!!」
また、あるときはこんなツイートがありました。
「あーカミソリ負けってやつか。オロナインかユースキン買わな……」
それに対して公式アカウントがフォローしたところ、その3時間後には、
「ユースキンかオロナイン買おうとしたけど、ユースキンからフォロー来たんでユースキン買いますね」
まさに、ユーザーとコミュニケーションをとることによる理想的な形がこれです。直接的な言い方ですが、ファン作りの目的は、フォロワーを増やすことではなく、リピーターを増やし売上を伸ばすこと。
SNSを始めるとフォロワーを増やすことが目先の目標になりがちですが、その先の目的を忘れてはいけません。ユースキン製薬はSNSを通して、コミュニケーションをとるべき「コアファン」の潜在層を開拓しているのです。
顔の見える「身近な誰か」の発信はより親しみやすく信頼できる
コアファン醸成の取り組みとして、店舗ごとに公式アカウントを開設して、より地域性の高い、親しみやすい発信を行うといった企業事例もあります。
また、スタッフ個人のアカウントでPRをするといった取り組みを行っている企業も存在します。個人アカウントですので、PRだけではなくプライベートの投稿も入ってきますが、そこが逆に、発信した個人と近しい感覚を持った人たちにとって、より身近なものに感じられる要因となっています。
もちろん、発信を担当する店舗のスタッフには自由な発信を期待しつつ、投稿のガイドラインを設定したうえで進めていくことは欠かせないでしょう。そうしないと、SNSでの発信が原因となった炎上の危険は避けられません。
次回はSNSの運営を行う上で、必ず覚えておきたい「炎上」と、その抑止法についてお話ししたいと思います。
この記事の著者
株式会社BOKURA
2015年8月創業。『企業と生活者の距離を縮める』をテーマに、ユーザー目線での、ブランドとユーザーの距離を縮めるためのマーケティング支援およびSNSソリューションの展開を行っている。FacebookやInstagramなどのSNSを使ったマーケティング支援からWEB構築、リアルイベントの開催など幅広く支援を展開。『マーケターミーティング』という企業の広報担当者やマーケティング担当者を集めた勉強会&交流会を定期的に実施している。
この記事の監修者
宍戸 崇裕(ししど たかひろ)
株式会社BOKURA 代表取締役。自動車業界、不動産業界での営業経験を経て、2009年、モバイルSEOを手がける株式会社Speeeに入社。2011年よりイー・ガーディアン株式会社にてソーシャルメディア運用事業の立ち上げを行う。その後、2012年アライドアーキテクツ株式会社にてソーシャルメディアマーケティング事業部マネージャーとして200以上のクライアントのマーケティング支援、コンサルティングなどを行う。2015年にSNSマーケティング支援を行う株式会社BOKURAを設立、代表に就任。マーケターMTGというSNS運用担当者を集めたワークショップを月一で開催。リテラシーを上げながら、担当者同士の横のつながりを生み出す活動も行っている。
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