- 業務効率化
ずっと変わらない職場の人間関係に正直うんざり!【中小企業お悩み相談室 女性担当者編】
2017.07.12
著者:株式会社スコラ・コンサルト
著者:簔原 麻穂
「中小企業お悩み相談室」では、中小企業や小規模事業者のような「小さな組織」によく見られる実際の悩み事をピックアップ。組織風土改革のパイオニアとして30年以上の実績を持つ「株式会社スコラ・コンサルト」が回答します。
第3回目は、多くの中小企業にありがちな、会社のメンバーが固定化されてしまうことで起こりうる悩みについて回答します。
目次
Q.長年変わらない職場の人間関係にうんざり!仕事の進め方に悩んでいます
私が長年勤めている会社は、ここ数年新入社員も入らず、部署の異動もないため、ずっと同じメンバーで働いています。実は、過去に仕事でもめた先輩がいて、それ以来、関係性が悪く仕事がやりづらくなってしまいました。周りも「あの人とこの人は仲が悪いから」とか、「あの人はこういう人だから」など人のうわさ話ばかり。それも気になってしまい仕事がはかどりません。また、私の上司はいつも気心が知れてやりやすい決まった人だけに仕事を任せ、私たちには目もくれません。正直、言われた仕事だけをやっておけばいいやと、うんざりしてやる気が起こりません。
A.固定化された職場の人間関係で起こりやすい現象とその理由を考えてみましょう
中小企業では、組織の変更や人の入れ替えが少なく、入社以来ずっと同じ人たちと仕事をしているケースが多くあります。地方採用であれば、幼なじみや学校の先輩・後輩など、生い立ちから知っている仲間と働いていることもあるでしょう。
慣れ親しんだ仲間と働くことは、決して悪いことではありません。お互いのことをよく理解し、会社や部署の目標や将来に向けて日々、協力しながら仕事ができれば、こんな最高なチームはないでしょう。
しかし、長年家族のように過ごしてきたメンバーには、互いのプライベートまで知り合っている間柄に特有の人間関係の難しさがあります。「あの人はこうだ」という相手に対する凝り固まったレッテルが貼られ、固定化された上下の序列ができてしまいます。特に下のランクの人には、ネガティブな感情が生まれやすいのです。
このように固まってしまった人間関係を正常に回復するためには、①相手に対するレッテルを定期的に貼り直す機会をつくる、②上下の序列やランクが変わるような機会をつくる、などメンテナンスが必要なのです。
【ケース1】
職場に長年相性の悪い人がいて、気を遣ってしまい仕事が進まない
心当たりがありませんか?
- 仕事上のトラブルやささいなことでもめた人と、それ以来なんとなく気まずくなって、今では職場で顔を合わせても口を利かない状態に
- 仕事上話さないといけないのに、目も合わせてくれず無視されることも
- また無視されるのではないかと、いつも書類を回すのがおっくうでついつい後回しにしてしまう
人間はマイナスの感情を引きずるもの。そのまま放置していると、否定的なことだけを記憶に残すという「ネガティブバイアス」が働き、相手に対して、より否定的な感情を生み出してしまいます。
さらに面倒なのは、自分自身の中にある感情をそのままにして、「そんなふうに思ってはダメ」など、感情否定をしてしまうことです。抑えつけられた感情は、やがて抑えきれなくなり、自分の正当性を訴え始めて、相手との関係性をより悪化させてしまうことも。
関係性が悪くなると、相手との情報交換や会話も不十分になり、仕事の効率が落ちるだけでなく、ミスやトラブルの原因にもなってしまいます。元をたどれば、ほんのささいな感情を未処理のままにしていたことが、大きなトラブルや事故につながることだってあるのです。
固定化された関係性の対処法
今の関係性を変えるには、まずは、自分が相手に対して持っている印象、レッテルを剥がす必要があります。そのためには、まず、自分が抱いているマイナスの感情をしっかりと受け止め、嫌な思いをしたことを自分自身で認め、感情を落ちつかせます。その後で相手の話を聞くようにしましょう。自分の感情が未処理のままだと、相手を受け入れることが難しくなるため、まずは心を整える必要があるのです。自分の感情がフラットになり、自分の立場や期待を手放せたら、相手の立場や気持ちを受け止めることもしやすくなります。お互いの「そうなっている」理由や状態を受け止め合うことがスタートです。
①まずは「レッテル剥がし」
相手の話を聞くときに大切なことは、長年貼り続けた相手に対するレッテル(決めつけ、イメージ、印象)をいったん剥がしてから聞くことです。
そのためには、まず「自分は相手にどのようなイメージやレッテルを貼っているのか」を自分に聞いてみます。おそらく、たいていの場合、今の相手を見るのではなく、過去の相手のイメージのまま聞いている可能性がほとんどです。それを自覚することで、過去のレッテルを剥がすことができるのです。
今の相手を受け入れ、関係性を改善するためにも、意識して、相手が考えていることの背景にあるものやその人なりの理由などを聞きながら、過去のレッテルを剥がす作業をしてみてください。
②次に「レッテル更新」
もし、過去のレッテルが剥がせず、どうしても過去の出来事に納得できないのであれば、自分自身の感情を抑えつけている可能性があります。記憶をたどってその出来事の過去にさかのぼり、あのとき、相手に対して自分がどう思っていたか、そのときの感情を打ち消さないで受け入れ、可能であれば相手にそのときの気持ちを伝えてみます。それによって過去の記憶が塗り替えられ、相手に対する印象も変化します。
出来事にまつわる感情がなくなれば、今まで否定的に受け止めていた相手の言動の受け止め方も変わり、新たに関係性が構築され始めます。レッテルの更新は、相手の背景にあるものを理解し、考え方を受け止めた上で、相手の得意なことや興味を持っていることなど、相手の強みにフォーカスして新たに貼り直していきましょう。
【ケース2】
いつも重要な仕事は決まった人ばかり、自分は何の役に立っているのか
心当たりがありませんか?
- 新しいプロジェクトや重要な仕事は、上司が同じ社員ばかりを抜てき。選ばれた人だけで盛り上がって自分たちは蚊帳の外
- チャレンジしたいと思った時期もあったが、期待されていないことが分かり、今ではあきらめてしまっている
社員数が少なく、部署の異動や人の入れ替えがない場合は、いつも決まった人で仕事が回りがちになります。もちろん、抜てきされる人の能力が高く、その人しかいないという場合もあります。しかし、毎回同じメンバーに固定化されてしまうと、上下のランクができやすく、それ以外のメンバーのやる気は下がり、チャレンジ精神が失われていきます。
あきらめ感が広がり始めると、抜てきされた人に対する周囲の協力や応援はなくなり、冷めた目で見たり、陰口や嫌みを言ったりしてしまうことも。主役が固定されず、誰もが主役になれる組織が理想ですが、たとえ裏方でも光り輝く自分の強みと、人や組織・チームに役立っている実感を自ら持てるようにすることが大切です。
固定化された仕事を見直すための対処法
自分の強みを自覚して仲間や仕事に役立つことは、その人の存在価値そのものです。自分には能力がない、可能性はないと決めつけず、自分なら何ができるだろうかと考えることから始めましょう。そのためには、自分の過去のキャリア、自分にできることを整理して強みを自覚し、仕事としてどう活用できるかを考えて実践していきましょう。
①まずは「強みを自覚する」
人には必ず強みがあり、その強みを活かして仕事に貢献できます。しかし、意外なことに自分の強みを自覚し、今の仕事で上手に活かしている人はごく一部です。そこで、改めて自分の特性や持ち味を知るための振り返りをしてみます。やってみると、自分の強みを探すことは楽しいものです。
まず、自分が仕事を始めて今に至るまでの「キャリアライフライン」を描きましょう。自分が楽しく感じたこと、それがうまくいったときの環境はどうだったか。そのとき、どんな強みを使って仕事をしたか、またどのような仕事の仕方をしたかなどを考えると、自分の強みが発揮できる条件や勝ちパターンが見えてきます。ささいなことでも構わないので、その強みを使って今の仕事の中で試してみましょう。
②次に「強みで補完する」
自分の強みを具体的な仕事の役割に転換し、身の回りの仕事で実践できたなら、周りの人の強みも探して共有しましょう。相手の強みを知ることができたら、いざというときに助けてもらったり、助けてあげたりと、自分の強みと補完関係でチームを組むことができます。
誰かが抜てきされることよりも、自分が自分の強みで仕事や仲間に役立てることに注目しましょう。そうすると、周りのネガティブな感情は気にならず、お互いが困ったときに助け合える仕事の仕方に変わります。
最後に
ずっと同じ上司や部下、仲間と上手に付き合うには、お互いの不完全燃焼になっている感情を放置しないこと。人間関係は生き物のように、絶えずメンテナンスをしてあげないと、弱ったり、怒ったり、困ったりとストレスがたまってきます。
ささいな出来事でも、もし違和感があれば見過ごさず、自分の感情を受け止めた上で、相手との関係性を修復する行動に移してください。
長い付き合いの中では、こうした日々の行動を積み重ねていかなければなりません。そして何よりも、自分を大切にしながら固定化された関係性やランク意識を崩すには、自分自身が強みを自覚し、それを使って仕事と仲間に役立てている実感を持つ働き方に変えていくことが大切です。
この記事の著者
株式会社スコラ・コンサルト
組織風土改革のパイオニアとして企業・公的機関の支援に30年の実績をもち、実践を目的とした〈プロセスデザイン〉という独自の変革手法に特徴がある。「コンサルタントのいないコンサルティング会社」のスタンスを貫き、「プロセスデザイナー」が現地で現場の人たちと一緒に考える伴走型の支援を行う。本音でまじめな話ができる対話の場、職場や立場を離れてフラットな関係で行う「オフサイトミーティング」は、スコラ・コンサルトの代名詞になっている。
この記事の著者
簔原 麻穂(みのはら あさほ)
「株式会社スコラ・コンサルト」の組織変革プロセスデザイナー。国家資格キャリアコンサルタント、女性労働協会認定講師。経営層の参謀役育成やマネジメント改革、女性ならではの強みを仕事の成果につなげる支援を得意とする。
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