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【ハローワーク活用術】注目される求人票とスルーされる求人票は何が違うのか?
2025.05.15

求職者がハローワークで求職活動を行う場合、まずはハローワークインターネットサービスで求人検索を行います。この段階で、求職者が設定した条件に合った求人が「求人情報検索・一覧リスト」に表示され、目に留まった求人を選び、求人票本体にアクセスします。
しかし、注目されない求人はスルーされ、求人票本体すら見てもらえません。言い換えれば「最初の出会い」で求人票を見てもらえるかが決まります。この段階で注目を集め、興味を持ってもらえれば「第二の出会い」に進みますが、内容が期待外れならスルーされてしまいます。
このように求人票に応募してもらうには、大きく2つの関門を通過する必要があります。それぞれの段階で「注目される求人票」と「スルーされる求人票」の違いについて、ウエルズ社会保険労務士事務所の五十川将史さんにお話を伺いました。
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目次
「最初の出会い」求人情報検索・一覧リストで注目される求人とは?
「ハローワークで求人を出しても反応がない、応募がない」といった声をよく耳にしますが、こうした求人票の多くは、求人検索や求人票閲覧の段階でスルーされていることが原因の1つです。求職者が求人を検索する際、最初に目にするのは「求人票の一部情報」であり、ここで注目されるかどうかが決まります。
求人票の一部情報とは、具体的には求職者が求人検索で最初に閲覧する画面である「求人情報検索・一覧リスト」(以下、一覧リスト)のことを指します。求人検索では、求職者が職種や勤務地などの希望条件を設定すると、該当する全求人票が一覧リストとなって表示されます。内容は、職種名をはじめ、就業時間、年間休日数などの基本的な労働条件や応募条件などですが、仕事内容は求人票本体に記載さている全文の冒頭だけが表記される仕組みとなっています。
ハローワークインターネットサービスの「求人情報検索・一覧」画面

この一覧リストによる「最初の出会い」を書店で本を購入する状況に置き換えてみましょう。「いい本はないかな」とたくさん並ぶ本棚の中から手に取ってみたくなる本とはどういう本か考えてみると、多くの人は、まずは「本のタイトル」ではないでしょうか。タイトルに注目して本を手に取ったら、合わせて「帯」の推薦コメントに目を通し、その本への期待感を高めます。この「本のタイトル」と「帯」の2つが、求人一覧リストでは「職種名」と「仕事内容の冒頭3行90文字分」に相当します。
一覧リストの限られた情報から、注目を惹くことができると次のステップである求人票本体へのアクセスにつながります。もちろん、最初から賃金や年間休日数などで求人をスルーしてしまう求職者もありますが、「最初の出会い」の段階で注目されるためには、以下の2項目でどのようにアピールするかがポイントとなります。
1.職種名
ハローワーク求人票では、職種名は最大28文字まで記載できます。一般的には「営業職」や「機械組立スタッフ」「中型ドライバー」などと記載するものが多くあります。しかし、そうした職種を条件設定して検索をかければ、当然表示される求人票の職種名はどの求人票も同じであることが多く、他社との違いをアピールすることはできません。前述の本に例えれば、本棚に並んでいる書籍のタイトルが皆同じに近いということになり、自社の「本」に注目してもらえるチャンスはあまり期待できません。
職種名に注目してもらう方法の1つは、アピールしたいキーワードなどを職種名とセットにして28文字以内に記載することです。
営業職の場合、例えば
「営業職/建設資材のルート営業/未経験育成制度あり/土日休」
で28文字となります。この28文字から、営業スタイルは「ルート営業」であり、営業経験がなくても育成制度が用意されて安心なこと、また、週休2日制でゆとりのある働き方ができるなど求人票の全体像が連想できます。
職種名に求人票でアピールしたいことを盛り込むことによって、求人票全体をダイジェスト版で紹介でき、求職者にも注目される可能性が高くなり、次のステップである求人票本体へのアクセスにつながることが期待できます。
2.仕事内容の冒頭3行90文字
職種名と合わせて求職者の注目を左右するのが、本の「帯」に相当する仕事内容の「冒頭3行90文字分」です。求人票本体では、仕事内容は12行360文字記載できますが、一覧リストでは冒頭部分だけが表示されています。言い換えれば、この段階では4行目以降が表示されないため、いくら注目に値する説明やアピールがあっても、この段階では求職者に見てもらえません。まずは冒頭3行90文字分で、どれだけ求職者の注目や興味・関心を惹きつけることができるかどうかがポイントとなります。
一般的な求人票では、具体的な仕事内容の説明から始めますが、90文字では収まらないため、文章が途中切れの状態で終わってしまいます。「3行90文字分」という制約の中で、いかに求職者の注目を惹き、興味・関心を呼び起こす情報やメッセージを発信できるかが大切となります。
そのためには仕事の魅力や特徴、仕事内容の他社との違いなどを端的に紹介するほか、ターゲットに想定している求職者(例:未経験者、第二新卒などの若手、シニア世代など)に向けた応募へのメッセージをコンパクトにまとめることも効果的です。
「第二の出会い」注目される求人票とは?
求人一覧リストの「最初の出会い」をクリアして求人票本体にアクセスしてもらえると、いよいよ求人票のすべての情報が求職者の目に入ることになります。一読して注目される求人票とスルーされてしまう求人票の違いはどこにあるのでしょうか。
求職者は、まずは賃金や就業時間などの基本的な労働条件を見て、自分の希望や考えている条件として受け入れられるものであれば検討の候補になります。突出した好条件でも提示されていれば、求職者によってはそれだけで注目される求人票になり、応募を決断する人もあるでしょうが、多くの求職者は労働条件だけを見ているわけではありません。
「仕事は未経験の自分にもできるだろうか」「入社後はしっかり育成してもらえるだろうか」「時間外労働は毎日あるのか」など、入社後の疑問や不安がさまざまあります。そうした求職者の疑問や不安を理解し、少しでも解消につながる情報が提供されている求人票には求職者も注目します。
注目される情報とそのポイントは以下の通りです。
1.仕事内容:仕事をしている自分の姿がイメージできる情報
仕事内容は求職者が最も重視する情報です。注目される説明のポイントは、求職者が募集職種で仕事をしている自分の姿をイメージできることです。自分が仕事をしている姿や活躍している姿に納得できれば、「この仕事をやってみよう」との気持ちになります。そのためには、抽象的ではなく具体的な情報が必要となります。
未経験者の場合であれば、入社直後に担当する具体的な業務内容や、経験に応じて3か月後、6か月後の業務の紹介を、また経験者の場合であれば、同じ仕事でも同業他社との違いや特徴などの情報が効果的です。一例として配送ドライバーの場合、使用車両の種類、配送エリア、どんな荷物をどんな先にどれだけ配送するのか、1日の走行距離などの情報があると、求職者は自分が働いているリアルな姿をイメージできるようになります。
2.労働時間・休日:働き方がイメージできる情報
働き方に対する意識の高まりもあって、求職者の企業選択では「働き方」が重要な条件となっています。求人票には「労働時間」欄において就業時間および休日などの記載があります。また、簡単な特記事項欄があり、記載事項の内容を補足できるようになっていますが、多くの求人票では求職者が知りたい補足説明は少なく、求職者がリアルな働き方をイメージするために必要な情報が充分とは言えないようです。
例えば、「勤務は交代のシフト制です」や「土曜日が出勤になることもあります」「夏季休暇・年末年始休暇あり」などのコメントだけでは、求職者は、実際にどのような働き方になるのかがイメージできません。時間外労働についても、毎日発生するのか、月末や月初めに集中して発生するのかなどによって働き方は変わってきます。
そこで、例えば「シフトは原則1週間交代です」「土曜日出勤は繁忙期となる4月から7月までに計6回程度あります」などの補足があれば、求職者も実際の働き方がイメージしやすく、「この働き方なら大丈夫だな」と疑問も解消されます。なお、丁寧な説明が必要な場合は、600字記載可能な「求人に関する特記事項」欄も活用すると効果的です。
3.職場環境:職場の様子や雰囲気がイメージできる情報
求職者の中には、人間関係などを含む職場環境を理由に前職を離職している人も多くあります。そうした求職者はもちろんのこと、多くの求職者にとって新しい職場がどのような環境なのかは応募を検討するうえでの重要な条件の一つになります。求人票には「就業場所」欄に60文字の簡単なコメント欄がありますが、発信できる情報量も少ないためほとんど活用されておらず、求職者には職場に関する情報が提供されていない状態になっています。
そこで、活用したいのが「求人に関する特記事項」欄です。一緒に働く先輩や上司の性別や人数、年齢層、経験年数などのほか、職場の雰囲気が想像できる情報も提供できると注目されます。職場環境については、「アットホームな職場です」や「働きやすい職場です」などと紹介した求人がありますが、こうしたフレーズは他の求人票でも使用される汎用性が高いことからも、求職者が期待する具体的なイメージには充分とは言えないでしょう。
職場環境の情報提供でのポイントは事実や状況を紹介することです。例えば「社内では社長以下全員を『さん』づけで呼び合っています」や「社員から提案があった『ありがとうカード』で、感謝の気持ちを伝えたい人を毎月社内で発表しています」など、職場内での事例やエピソードを紹介するとリアル感も高まります。注目される求人票は、こうした職場環境のリアルな情報を提供することにより、求職者に親近感や安心感をアピールしています。
求職者目線の求人票が人を惹きつける
前述の通り、求職者が求人票をパッと目にした瞬間に、必要な情報が不足していたり、企業の魅力を伝えるための工夫が欠けていたりすると、検討段階まで進むことができません。加えて、求職者は基本的な労働条件や仕事内容、働き方などによって応募を検討しますが、当然すぐに決断できず迷うこともあります。そうした求職者の迷いを打ち消すためには、「この会社に転職する魅力やメリット」を明確に示すことが欠かせません。
転職希望者である求職者は現職において、労働条件や処遇、仕事の適性など、さまざまな課題を抱え、その課題を少しでも解決・改善したいと思って転職を考えます。転職しても抱えている課題に変化が期待できなければ行動につながりません。応募を検討している求人票から、転職理由が少しでも解決・改善につながることが見えると、気持ちも大きく動きます。
そうした転職希望者のニーズに対しては、求人票全体の中で応えていく方法もありますが、「求人に関する特記事項」欄において、具体的なメリットや他社との違いを明確にアピールできれば、応募につながる可能性も大いに期待できます。
同じ求人内容であっても、どれだけ求職者目線で作成されているか、つまり求職者の立場に立っているかが、注目される求人票とスルーされる求人票の大きな違いと言えるでしょう。
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この記事の著者
弥報編集部
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この記事の監修者
五十川 将史(ウエルズ社会保険労務士事務所 代表)
1977年、岐阜県生まれ。明治大学卒。大手食品スーパーの店長や民間企業での人事担当者、ハローワーク勤務を経て、独立。ハローワークを活用した採用支援を専門としている。商工会議所、労働局、社会保険労務士会などでの講演実績も多数あり、これまでの受講者は1万人を超える。著書に『中小企業のためのハローワーク採用完全マニュアル』(日本実業出版社)、『ハローワーク採用の絶対法則』(誠文堂新光社)などがある。
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