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Z世代が本当に望む「令和の教え方」とは?成長意欲を最大化する3つの育成法
2024.11.05
働き方や就業に対する意識は、この数十年で大きく変化しています。その最前線にいるのが「Z世代」と呼ばれる若者たちです。Z世代の価値観に合わせた適切な社員育成は、採用力や社員の定着率に直結し、長期的な企業成長を実現するうえで不可欠です。
今回は、株式会社ジェイックの近藤浩充さんに、Z世代の価値観に合った効果的な育成方法を紹介いただきました。ぜひ参考にしてみてください。
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目次
Z世代は「ダメな部分のきっちり指導」を求めている!ただし……
20代を中心とした「Z世代」と呼ばれる若者たちは、震災やパンデミックによる不況を経験し、社会や将来の予測不可能性を強く実感している世代です。また、生まれたときから少子化が進み、日本経済が右肩上がりに成長するイメージを持っていません。だからこそ「自分の人生を安定させるために成長したい」「市場価値の上がるキャリアを積んでいきたい」という思いを持っている傾向が強いです。
一般的にこのような価値観を持つZ世代の育成には、“令和時代に即した関わり方”で「キャリア安全性」を高める指導をすることが重要です。
会社に求めるものは「キャリア安全性」
キャリア安全性とは「市場価値が身に付く仕事をしたい」、言い換えると「転職に困らない力を身に付けたい」という欲求です。先に述べたように、Z世代の多くは「将来、社会はどうなるかわからない」という、不確実性を認識しています。したがって、自分が働く企業に対して、労働条件や福利厚生の充実だけでなく「キャリア安全性」を高められる業務経験やスキルの習得を求めています。
上司に求めるものは、令和版「ダメな部分のきっちり指導」
最近、管理職の方から「パワハラと言われるのが怖くて若い社員に指導できない」という声をよく聞きます。しかし、だからといって指導しないのは逆効果となります。成長欲求が強いZ世代は、上司からダメな部分をきっちりと指導してもらうことを望んでいます。
ただし、指導には現代ならではのコツが必要とされています。当社がZ世代の新入社員(2024年入社)800人に対して「上司に期待する教え方、関わり方」を調査したところ、1位は「ダメなことをキッチリ指摘する」、2位は「指示を具体的に出す」、3位は「褒めて長所を伸ばす」という結果が得られました。
つまり、Z世代を育成するうえでは「ダメなことは的確に指摘する」と同時に「具体的に指導する」ことや「長所や強みを褒めて伸ばす」ことが重要です。経営者や管理職層の世代では、上司や先輩の“背中を見て学ぶ”という学習、抽象的な精神論による叱咤激励、また“ダメ出し”を通じて課題を克服したりするような育成方法が主流だったかもしれません。
しかし、スマートフォンの普及により迅速に情報が得られ、多様な個性や価値観に触れて育ったZ世代は、具体的な指導やフィードバックを受け、自分の強みを伸ばしながら効率良く成長できるような育成を望んでいます。
経営者や管理職は、Z世代の育成に適したコミュニケーションスキルを習得し、時代に即した指導を行うことが求められているのです。
“誠実な関心”で、Z世代育成の土台となる「信頼関係」を築く
若手社員を育成する場面では、コミュニケーションの土台として、本音で話し合える「信頼関係」を築いておくことが重要です。特にZ世代の育成では、キャリアに関することや、上司からの指導に納得ができない理由など、率直に本音を話してもらうためにも、信頼関係が不可欠です。
ここでは信頼関係の構築に効果的な方法を紹介します。
先入観を持たず「誠実な関心」を持って接する
信頼関係を築くには、まず経営者や管理職が「誠実な関心」を持って、Z世代の社員と接することが大切です。誠実な関心とは「あなたを理解したい、貢献したい」という気持ちで相手に向き合う心の姿勢です。多くの商談や人材育成を経験してきた経営者・管理職にとっては当たり前のことと思われるかもしれません。
しかし、Z世代を含む若手社員に対しては、世代間の違いやメディアで報道される印象が先行し、無意識のうちに「Z世代はこうだろう」という、先入観を持って接してしまいがちです。また、自身の実績や経験から、若手に対して「相手を理解する」よりも「相手を説得する」という姿勢になってしまうことも少なくありません。
こうした先入観やコミュニケーションの姿勢はちょっとした態度や言動に表れ、相手に伝わり、信頼関係の構築を阻む原因になります。新しい顧客に接するときと同様に、誠実な関心を持ち続けることを意識してください。
“感情移入の傾聴”で、承認と尊重を感じてもらう
誠実な関心を具体的に伝える方法として、感情移入を伴った傾聴が効果的です。業務の話から雑談に至るまで、単に相手の話を聞くだけではなく、オープンクエスチョン(開かれた質問)を通じて、その話に込められた相手の感情や思いを理解したあと、相手の感情に寄り添うことが大切です。
例えば、「そのとき、どんな風に感じたの?」「その場面では、何が一番辛かった?」といった質問で相手の感情を引き出し、「嬉しい体験だったんだね!」「辛い思いをしたんだね……」と、承認する声かけを行います。こうしたやりとりを積み重ねていくと、相手は自分が尊重されていると感じ、信頼関係が深まります。相手の感情にすべて同調する必要はありません。ただ、相手が「どう感じたか?」を承認し、尊重することが大切です。
共通点を積み重ねる
相手との間に共通点を積み重ねていくことも、信頼関係を築くうえで役立ちます。信頼関係の作るうえで役立つ相手との共通点と、具体的なコミュニケーションスキルを紹介します。
〈立場、出身地、年齢、特技、興味、経験〉
雑談などのたわいない会話の際に、出身地・年齢・特技・興味・経験などを話題にすることで共通点を見つけられます。相手を良く知る社員に事前に聞くなどして、情報収集を行ってもよいでしょう。相手との共通点という意味では、相手に「自分自身に近い」という感覚を感じてもらうことが大切です。
例えば、相手がオンラインゲームに興味がある場合、「私は言語学習アプリで他のユーザーとスコアを競っている」と共通の話題に展開する、相手が北海道出身なら「数年前に旅行で北海道に行って、海鮮丼が美味しかった」といった会話ができます。ただし、共通点を探すことに集中しすぎると、不自然な質問になりがちで、逆効果になってしまうこともあるので注意が必要です。
〈姿勢、身振り手振り、話すペースや声の大きさ〉
加えて、話し方や仕草などを相手に合わせることでも、相手と一体感を生み出せます。例えば、表情、呼吸、視線、ボディランゲージ、姿勢などを鏡のように相手に合わせることです。簡単に行えるものとして、話す早さを合わせることです。早口の人には早口で、ゆっくりと喋る人にはゆっくりのペースで会話すると、一体感は生まれやすくなります。
“相手の言葉”を合わせる、いわゆる「オウム返し」も有効です。相手が話した事実、相手の気持ちや感情、相手が話した内容の要約を具体的に返していきます。例えば、社員が「昨年から、〇〇というアイドルにハマっていて、年に4回ライブに行っているんです」と話した場合、「いいね!」とだけ返すよりも「年に4回もライブに行ってるんだ!」と返すことで、相手にしっかりと話を聞いていると伝えられます。
令和版「ダメな部分をきっちり指導する」コミュニケーション術
成長を求めるZ世代の育成においては、「具体的に指示すること」と「長所や強みを褒めて伸ばすこと」がポイントです。具体的なコミュニケーション術をいくつか紹介します。
「結論」は“最後”に話す
Z世代の指導において、結論を最初に伝えるビジネスコミュニケーションの手法は、必ずしも効果的とは限りません。
従来の「結論ファースト」は情報伝達には有効ですが、Z世代は結論そのものよりも、納得感を大切にします。結論が先に来ると「なぜそれが必要なのか」という理解が深まらず、関心を失いやすくなることもあります。そのため、指導の際は結論から入らず、自分の経験やエピソードを交えながら話を進めることが効果的です。
例えば「2か月前に接触して反応が良くなかった顧客にも、再度連絡を試みてほしい」と指導したい場合、まず「自分が同じ行動をとって成功した体験」や「行動をとらず失敗したエピソード」などを話します。そして「だからこのように行動した方が良い」と続け、最後に「行動によってあなたが得られる具体的な成果」を示すとよいでしょう。
このような構成で指導することで、Z世代の社員の納得感を高め、自信を持って行動してもらえるようになります。もちろん結論を最初に持ってくるコミュニケーションが悪いわけではありません。ただ、相手を納得させ、何かの行動をしてもらいたい際には、結論を最後に話すテンプレートをぜひ使ってみてください。
反対意見は「肯定言葉」のあとに伝える
Z世代は多様な意見を尊重し、受け入れる姿勢を持っているため、自分の意見を同様に尊重されたいと思う傾向があります。そのため、自分の意見に対して「それは違う」というような否定的な反論をすぐ言われると、モチベーションが低下する可能性があります。
こちらの意見や意図と異なる意見を聞いた際、まずは冷静に相手の考えを受け止め、数秒間、相手の意図を考えてみることが大切です。
次に、相手の意見に対して肯定的な言葉を伝えます。例えば「その意見はとても興味深いね」や「〇〇さんの考えはよくわかる」といった表現を使うことで、相手に「自分の意見を受け止めてもらえるな」と感じてもらいます。
一方、初めから「でもね」や「そうは言っても」といった否定的な言葉は避けるようにしましょう。また、いったん受け止めた後も「しかし」「ただ」といった否定的な接続詞でつなぐのではなく、「そして」「同時に」といった言葉でつなぐことがおすすめです。そして、こちらの意見を伝える際は、先ほど紹介した「エピソード→行動→利益」の順番で話を展開します。
オフラインでもオンラインでも、“強み”が見えたら即レス!
Z世代の社員と関わる中で、相手の長所や強みを見つけたら、即座にフィードバックすることが大切です。長所や強みを褒めることでモチベーションが上がり、自己成長への意欲も高まります。
褒める効果を最大限に引き出すには、伝えるタイミングと頻度がポイントです。気づいた瞬間、軽い言葉でもよいので、すばやく声をかけましょう。例えば、「〇〇さんの分析力、すばらしいね」や「その視点は私も見習いたい」といった一言でかまいません。
リモートワークでも同様です。忙しくて返信ができない場合は、チャットでいいね!スタンプを押すなど、即座にポジティブな反応を示しましょう。社員の強みの見つけ方は、『【令和の社員育成】明日からできる!強みを活かすマネジメント』で詳しく紹介していますので、ぜひ読んでみてください。
Z世代の「キャリア安全性」を育む育成方法
最後に、Z世代の社員が求める「キャリア安全性」を高めるための具体的な方法についても紹介します。
早めに仕事を任せ、積極的なチャレンジを後押しする
冒頭でも述べた通り、Z世代の社員はどんな企業でも通用する「キャリア安全性」を高めたいという意欲が強い傾向にあります。そのため経営者や管理職層は、早期に成長機会を提供することが重要です。雑用を中心とした下積み時代を長くさせるのではなく、責任ある仕事を早期に任せ、チャレンジングな役割や異動を行うことが有効です。
特に優秀な層には「若さ」を理由に責任を与えないと離職の原因になる可能性もあります。少し早いと感じても積極的にチャレンジの機会を与え、成長を促しましょう。
1 on 1のテーマに、必ず“キャリアビジョン”を組み込む
Z世代の社員にとって、キャリアビジョンを描くことは「キャリア安全性」を高める重要なステップです。社員がどのようなキャリアを望んでいるのか、どのスキルを身に付けたいのかを上司が把握していなければ、効果的な育成はできません。
そこで役立つのが「1 on 1ミーティング」です。しかし、実際には業務の進捗や負荷に関する話題に集中しがちで、キャリアに関する話が十分にできていないことが多いのが現状です。
1 on 1では「キャリアビジョン」のテーマを組み込み、社員がどんな未来を目指しているのか具体的に話し合う時間を設けてください。特に「今後3〜5年でどんなスキルや経験を得たいか」「そのために挑戦してみたいことは何か」などの質問を丁寧に投げかけることで、方向性が明確になります。ビジョンがあいまいな社員には、現業務のやりがいが深まるような承認の言葉を深め、一緒にキャリアビジョンを作り上げる支援ができると良いでしょう。
社外キャリアコンサルタントとの面談を取り入れる
上司や経営層との1on1に加えて、外部のキャリアコンサルタントとの面談を取り入れるのも有効です。上司や経営層は若手社員からすれば“評価者”となるため、本音で相談しにくいことがあります。
特にキャリアに関する話は、不安や不満、転職の話が含まれることもあるため、社内では話しにくいテーマです。したがって、社内1 on 1に加え、中立的な立場の外部キャリアコンサルタントを活用することが有効です。上司と社外のキャリアコンサルタントの両者の視点を総合することで、より客観的にキャリア形成を考えられます。
私が在籍する株式会社ジェイックの子会社である、株式会社Kakedasでもキャリア面談プラットフォーム「Kakedas」にて国家資格キャリアコンサルタントによるキャリア面談、社外1on1を提供していますので、ご興味あればご覧ください。
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この記事の著者
弥報編集部
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この記事の監修者
近藤 浩充(株式会社ジェイック 取締役 教育事業部長)
大学卒業後、情報システム系の会社を経て入社。IT戦略事業、全社経営戦略、教育事業、採用・就職支援事業の責任者を経て現職。企業の採用・育成課題を知る立場から、当社の企業向け教育研修を監修するほか、一般企業、金融機関、経営者クラブなどで、若手から管理職層までの社員育成の手法やキャリア形成などについての講演を行っている。デール・カーネギー・コース認定トレーナー。昨今では管理職のリーダーシップやコミュニケーションスキルをテーマに、雑誌『プレジデント』(2023年)、J-CASTニュース(2024年)、ほか人事メディアからの取材も多数実績あり。
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