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資金調達に一役買う?「ベンチャーキャピタル」とは何か【教えて吉田先生!】
2023.09.26
弥報Onlineでは読者から資金調達に関するお悩みを募集しています。回答するのは、財務・資金調達コンサルタントの吉田 学先生。
今回は製造業の方から、資金繰りについての相談をいただきました。
「個人事業主として製造業をしています。受注から入金までの期間が空くので、資金繰りがひっ迫します。個人事業主でも利用できる低金利の短期借入はありますか?また、銀行などからの資金調達以外に方法があれば教えてください。」
個人事業者やスモールビジネス事業者などが、このような資金需要にどのように対応すればよいのかについて、吉田先生がわかりやすく解説いたします。
※本記事は2023年9月7日時点の情報を基に作成しております。法令などの最新情報については、政府から出ている文書をご確認ください。
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目次
「ベンチャーキャピタル」とは
今回は製造業の読者の方から「資金繰り」についてのお悩みをいただきました。資金調達の方法として、銀行融資などの他にどのような選択肢があるのでしょうか。
資金調達の方法としては、大きく分けて銀行などからの融資を受ける「間接金融」の他に、ベンチャーキャピタルなどのビジネス支援会社から資金提供を受ける「直接金融」があります。
「ベンチャーキャピタル(Venture Capital:VC)」とは、今後成長すると思われる未上場のベンチャー企業やスタートアップ企業などの将来性を判断して、資金提供(投資)や成長支援などを行う会社のことです。
ベンチャーキャピタルは金融機関や事業会社、投資家などから資金を集めてファンド(投資信託)を組成しています。このファンドを今後成長が期待できる、将来性あるベンチャー企業などに投資し、実際にその企業が上場した後に株式などを売却して発生する差益(キャピタルゲイン)を得ることで、収益を上げています。
ベンチャーキャピタルのビジネスモデルから考えて、そもそも上場などを目指していない小規模事業者などが、ベンチャーキャピタルから投資支援を受けるのはハードルが高いといえるでしょう。
しかし可能性はゼロではありません。ベンチャーキャピタルにも大小さまざまな会社があるので、各社のホームページなどで、投資先や投資方法、実績などを確認してみてください。また、国の政策実施機関として投資育成株式会社もありますので、後ほど解説します。
金融機関とベンチャーキャピタルの違い
銀行などの金融機関とベンチャーキャピタルは何が違うのですか?
まず銀行などの民間金融機関から受けた融資は返済が必須ですが、ベンチャーキャピタルから受けた出資は、原則として返済義務はありません(上場が見込めないなどと判断された場合は、所有株式の買戻しを求められることなどもあります)。
また貸借対照表に計上される箇所も異なります。銀行融資などは「負債」に該当しますが、ベンチャーキャピタルから受けた出資は負債ではなく「資本」として扱います。
そして最後にベンチャーキャピタルの場合、現時点では実績が乏しい企業であっても、ビジネスモデルや将来性、上場の可能性などを前提に投資を行います。それに対して銀行などの金融機関は、原則として赤字の企業などへの融資についてはかなり厳しいという大きな違いがあります。
公的なベンチャーキャピタル的存在「中小企業投資育成株式会社」とは
中小企業向けに「中小企業投資育成株式会社」というものがあると聞きました。ベンチャーキャピタルとの違いは何でしょうか。
中小企業投資育成株式会社は、中小企業投資育成株式会社法に基づいて設立された国の政策実施機関です。株式などの引き受けなどによる「投資」、中立的な立場で支援する「育成」の2つの側面から、中小企業の成長を支援しています。「公的なベンチャーキャピタル」と理解していただいてもよいでしょう。
投資育成株式会社とベンチャーキャピタルでは、投資対象や保有方針、期待する収入など、さまざまな点で異なります。例えば、投資育成株式会社の投資対象は「安定成長型の中堅・中小企業」が中心ですが、ベンチャーキャピタルは主に「急成長・上場志向型のベンチャー企業」が対象になります。
またベンチャーキャピタルは、出資先が株式公開またはM&A(実現できない場合、買戻し条項あり)をすることが前提となります。期待する収入に関しても、投資育成株式会社は安定的な配当であるのに対し、ベンチャーキャピタルは株式公開やM&Aなどのキャピタルゲインになります。
将来出資などを希望している事業者の方は、一度、相談してみてください。
(参考)
東京中小企業投資育成株式会社 Webサイト
大阪中小企業投資育成株式会社 Webサイト
名古屋中小企業投資育成株式会社 Webサイト
個人事業主はベンチャーキャピタルを活用できるのか?
個人事業主でもベンチャーキャピタルに出資を依頼することは可能ですか?
ベンチャーキャピタルは、基本的にベンチャー企業やスタートアップ企業の「株式に出資する」という形式で資金提供しますので、個人事業主には投資できません。将来的にベンチャーキャピタルからの支援を検討している場合は、原則として「株式会社」に法人化する必要があります。
ベンチャーキャピタルの探し方
他には、どのようなベンチャーキャピタルがあるのですか?またどうやって探せばいいでしょうか。
インターネットで検索すると、ベンチャーキャピタルはたくさんあることがわかります。一般社団法人日本ベンチャーキャピタル協会(JVCA)などの会員などからも検索可能です。
(参考)
一般社団法人日本ベンチャーキャピタル協会(JVCA) Webサイト
また中小企業基盤整備機構(中小機構)が出資する投資事業有限責任組合については、以下からファンド検索ができます(投資事業有限責任組合とは、未公開のベンチャー企業などへの投資を目的として、ベンチャーキャピタルを中心になって組成する投資事業組合の一つです)。
ベンチャーキャピタルへのアプローチ方法
どのようにベンチャーキャピタルにアプローチをすればよいですか?具体的な進め方を教えてください。
事業者自身がベンチャーキャピタルに直接アプローチをすることも可能ですが、専門家や公認会計士などの支援を受けながら、適切なベンチャーキャピタルに相談・打診することをお勧めします。またベンチャーキャピタルから、既に投資を受けている経営者から紹介してもらうのも一つの方法です。顧問税理士がベンチャーキャピタルとのつながりを持っている可能性もありますから、確認してみてください。
なお投資育成株式会社やベンチャーキャピタルなどでは、セミナーなどを開催しているところもあります。興味がある場合はぜひ参加してみてください。
※本記事は2023年9月7日時点の情報を基に作成しております。法令などの最新情報については、政府から出ている文書をご確認ください。
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この記事の著者
弥報編集部
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吉田 学(よしだ まなぶ)
財務・資金調達コンサルタント
株式会社MBSコンサルティング 代表取締役。1998年の起業以来、「資金繰り・資金調達支援」に特化して創業者や中小事業者を支援。これまでに1,000 社以上の資金調達相談・支援を行い、その資金調達支援総額は20億円超。主な著書に、「社長のための資金調達100の方法」(ダイヤモンド社)、「究極の資金調達マニュアル」(こう書房)、「税理士・認定支援機関のための資金調達支援ガイド」(中央経済社)、「税理士だからできる会社設立サポートブック」(第一法規)などがある。
また、全国の経営者・士業などを対象にした会員制の資金調達勉強会「資金調達サポート会(FSS)」を主催している。
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