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「IoT」って結局、何?どう使うの?スモールビジネスの活用事例を聞いた!

2018.03.05

著者:弥報編集部

お話を伺った方:青山満氏 株式会社サンコウ電子代表(左)、持田昇一氏 さがし愛ネット合同会社代表(右)

「IoT」とは「Internet of Things」の略称で、直訳すると「モノのインターネット」。パソコンなどの情報端末以外のモノをインターネットにつないで、世の中をより便利にする技術です。ただ、こんなふうに言葉にするのは簡単ですが、具体的などんなものか腹に落ちている人は少ないのではないでしょうか。

そこで今回は、少人数でIoTを活用した「地域の見守りサービス」を展開している「さがし愛ネット」の代表、持田昇一さんと、技術面のサポートをしているサンコウ電子代表の青山満さんに、IoTとはどんなもので、スモールビジネスではどう使われているのか、事例をもとに話していただきました。

株式会社サンコウ電子

電子機器設計・製造や電子部品販売、アプリケーション開発と並行し、さがし愛ネットやぶどう園などに技術協力を行っている。持田さんとともに、秋葉原の東京ラジオデパートにBeaconのブースをつくり、IoT技術を応用した試作品を展示している。

さがし愛ネット合同会社 

2014年から名古屋工業大学・未来医療介護情報学研究所と一般社団法人日本開発工学会・コーディネート経営研究会により、BLE(Bluetooth Low Energy)を用いた認知症徘徊見守りシステムの研究として進められ、同年11月には愛知県大府市で初の社会実験を実施。2016年5月に安心・安全なまちづくりのための地域見守りIoTソリューションを提供することを目的に、さがし愛ネット合同会社(LLC)を設立。

「IoTお守り」で認知症徘徊を減らす地域見守りサービス

東京都江戸川区西葛西では、認知症徘徊を見守る取り組みを始めています。そこで使われているのが、「さがし愛ネット合同会社」が開発した地域見守りサービス。そして、見守りサービスの核となっている技術がIoTです。

「仕組みとしては、お守り袋に入れたBluetooth(機器と機器をつなぐ近距離無線通信の規格の1つ)を発信するBeacon(電波を送信する機器。ここではBluetoothの送信を行うものを指す)を、認知症患者に持たせることにより、もし徘徊してしまっても、ある程度場所を特定できるというものです。自動販売機や街灯に取り付けた受信機や、専用アプリを入れたスマートフォンが、認知症患者が所持しているBeaconから発信するBluetoothを受け取ることで、おおよその位置情報を割り出すことができます。これは子どもやペットにも応用できる仕組みです。Beaconにもさまざまな種類があって、山の中や水中で捜索するときに使われるものもあるんですよ」(青山さん)

左がBeacon。大きさは10円玉ほど。右がそのBeaconが入ったお守り。このお守りが発信するBluetoothをスマートフォンなどで受信する
スマホアプリと地域のインフラが、高齢者や児童、ペットを守る

「さがし愛ネット合同会社」の主要メンバーは5名ほどの小さな組織。名古屋工業大学・未来医療介護情報学研究所と一般社団法人日本開発工学会・コーディネート経営研究会により、Bluetoothを用いた認知症徘徊見守りシステムの研究を進めてきました。2014年11月には愛知県大府市で初の社会実験を実施し話題に。比較的早くからIoTに着目していた「さがし愛ネット合同会社」代表の持田さんは、ここ数年で一気にIoTが普及した背景についてこう話します。

「モノがインターネットにつながる技術は10年以上前からありました。ロボット間通信や、路車間通信(道路システムと車の通信)などが有名でしたが、ここ数年ですそ野が一気に広がったのは、ハードウェアの価格とソフトウェアの開発コストが劇的に下がったからです。わかりやすい例でいうと、全国的に普及が進む小学校の児童見守りのシステムの場合、10年前なら5,000万円くらいかかったものが、今では200万円から300万円まで下がりました。また、Bluetooth通信ができるスマートフォンが広く普及したことによって、IoTを機能させるインフラが整っています」

さがし愛ネット合同会社代表の持田さんは、地域の見守りという課題に対して、IoTのテクノロジーに大きな期待を寄せている

地域を全部つなげて日本をまるごと見守りたい!

IoTを用いた見守りサービスにはまだ課題はあります。認知症患者にBeaconを持たせることができても、それを受信できなかったら、どこで徘徊しているのか特定できないからです。

「少しでも受信する方法を増やすために、『見守りアプリ』だけでなく、地域の健康と絡めて『ウォーキングアプリ』というスマートフォンアプリも開発しました。『ウォーキングアプリ』を入れたスマートフォンを持って歩けば、歩いた分スタンプをもらうことができ、健康管理に役立てることができるというものです。健康寿命を延ばすためには歩くことが大切ですし、健康寿命が延びれば医療費の負担や介護の負担も減ります。なおかつ、認知症徘徊の発見につながるかもしれません。安全で健康的な地域に貢献することが、われわれの目標です」(持田さん)

実はこうした地域の見守りのためにIoTの技術を活用するという取り組みは、全国的に行われています。しかし、今はそれぞれの地域が個別に動いている状態。持田さんは各地の取り組みをつなげていきたいと話します。

「たとえば渋谷は渋谷、江戸川は江戸川だけでやるのではなく、相互に協力できる体制をつくりたいと考え、オープンプラットフォーム(サービスの基本を構成する技術仕様などを公開したプラットフォーム)で開発を進めています。基本的にはどの地域もBeaconを活用しているので、考え方は同じです。見守り体制を強化するために、すでに開発協力を行っている地域もあります」

「IoT」の真骨頂!中小企業の特技をつなぎ新たな価値を生む

さがし愛ネットの技術面のサポートをしているサンコウ電子の青山さん

さがし愛ネットのように、中小事業者がIoTを使って新しいことを始めるケースは増えています。

「ある薬剤師さんのアイディアで、薬剤の棚にBeaconを置いて、薬剤を自動的に管理しているところもあるそうです。IoTの優れているところは、大手企業だけではなくて、中小企業や個人、地域という単位で、効率化を進めていける点ですね。今後はますますIoTが力を発揮する場面があるでしょう。少し見渡すだけでも、ボタンを押すだけで食料品を注文できるシステムとか、給湯ポットでお湯を出したことが安否確認になるとか、いろいろありますよね。地域社会と人がつながり続けられる仕組みが、これからどんどん生まれると思います」(持田さん)

IoTを切り口に中小企業が大きな資本を持つ企業をリードすることも可能です。技術開発コストが中小企業の手の届く範囲まで下がってきましたし、インフラも整っています。基本的にBeaconはすべてのスマートフォンに対応しているからです。

「たとえば、私たちは『ドアの開閉で要介護者の安否を確認するシステム』などの試作をしているのですが、こうした生活者に近い視点、ニーズを拾える、『地域密着の中小企業』だからこそできることもあると考えています」(青山さん)

つまり、最初から大手企業とほぼ同じ土俵で戦うことができるため、アイディアやビジネスモデルが優れていれば、中小企業発のソリューションが、世の中を席巻することも十分あり得るのです。

そして、見守りサービスの開発面で協力しているサンコウ電子の青山さんは、読者の皆さんに向けに、こんなアドバイスをしてくれました。

「持田さんはアイディアを持っているけれど、ハードは作れなかった。私はハードを作れるけれどアイディアがなかった。中小企業でも、得意分野を持ち寄れば、新しいサービスをつくることができるんです!いつか、読者のみなさんとつながって、新しいことを始める日が来るかもしれない。IoTをはじめとした情報技術にはそれを可能にする力があると思います」


今回の事例でぜひ注目していただきたいのは、アイディアを持つ会社と開発力を持つ会社が、IoTという技術でつながったこと。そして、中小企業の連携によって生まれたサービスが、地域から全国へと広がる可能性を秘めていることです。

次回は、農業の現場におけるIoTの活用事例をご紹介します。

■連載「中小企業のIoT活用最前線」

連載第1回「IoTって結局、何?どう使うの?スモールビジネスの活用事例を聞いた!」

連載第2回「ぶどう農家がなぜドローンを飛ばすのか?IoTを使った産地を守るための挑戦」

連載第3回「勘と経験だけに頼らないぶどう栽培を!IoTによる匠の技『見える化』プロジェクト」

この記事の著者

弥報編集部

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