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中小企業が使える運転資金の調達には何がある?【教えて吉田先生!】

2023.08.22

弥報Onlineでは読者から資金調達に関するお悩みを募集しています。回答するのは、財務・資金調達コンサルタントの吉田 学先生。

今回は製造業の方から、資金繰りについての相談をいただきました。

「個人事業主として製造業をしています。資金繰りは常にギリギリで、100万円以上の受注をいただいたとしても、製造費の約70万円の入金まで約1か月かかるというケースが多くあります。個人事業主でも利用できる低金利の短期借入はありますか?」

個人事業者やスモールビジネス事業者などが、このような資金需要にどのように対応すればよいのかについて、吉田先生がわかりやすく解説いたします。

※本記事は2023年8月4日時点の情報を基に作成しております。法令などの最新情報については、政府から出ている文書をご確認ください。


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売掛金で運転資金がひっ迫する時の対応策

――今回は製造業の読者の方から「資金繰り」についてのお悩みをいただきました。仕入れ・製造などを行う事業者では、売上金をすぐに回収できるわけではないので、受注したとしても売掛金を回収するまでの間、資金繰りがひっ迫してしまいます。どのように対応すればよいのでしょうか。

通常、仕入れ・製造などを行っている事業者の場合は、売上が計上されてもすぐに現金が入金されるわけではありません(売掛金の発生)。また仕入れなどの支払いについてもすぐに現金が支出するわけではありません(買掛金の発生)。

このように「掛取引」をしていて、特に入金サイトが長くて支払いサイトが短い場合はどうしても資金繰りが苦しくなり、一定額の運転資金が必要となります。そのような運転資金のことを「経常運転資金」といいます。よってこの「経常運転資金」を金融機関などから、短期で資金を借りることができれば資金繰りは安定します。

「経常運転資金」について具体的に知ろう

――「経常運転資金」について詳しく教えてください。

「経常運転資金」は売上債権+棚卸資産-買入債務で算出することができます。売上債権とは売掛金や受取手形などのことで、現金化されていない債権を指します。買入債務とは買掛金や支払手形を意味し、未払いの債務のことをいいます。

例えばある事業者の売上債権(売掛金)が300万円、棚卸資産(在庫)が400万円、買入債務(買掛金)が200万円だとすると、300万円+400万円-200万円=500万円となります。つまり常に500万円前後の経常運転資金が必要になるということです。

経常運転資金の調達方法

――具体的にどうやって経常運転資金を調達すればよいのですか?

実績のある中小事業者の場合は「短期継続融資」という制度を活用して、民間金融機関からプロパー融資などを受けているところもあります。「短期継続融資」とは期日一括返済を条件とした契約期間が、1年以内の短期融資のことをいいます。短期継続融資は原則として1年ごとに更新しますので、実質的には元金返済をせずに金利だけ支払えばよいということになります。

しかし小規模事業者の方の場合は実績も乏しく、必要資金も少額であることから民間金融機関から、直で短期継続融資を受けることが難しいかもしれません。判断は金融機関によって異なります。

――民間金融機関から直で短期継続融資を受けることが難しい場合、どうすればよいのでしょうか?

そのような場合、公的制度である「短期継続融資保証」などを利用することをおすすめいたします。窓口は主に民間金融機関及び各都道府県などの信用保証協会です。なお各都道府県によって制度内容が異なりますので、必ず地元の制度内容を確認してください。

「短期継続融資保証」とは

――もう少し具体的に「短期継続融資保証」について教えてください。

一例として横浜市信用保証協会の「短期継続保証」制度を取り上げて解説いたします。

出典:短期継続保証|横浜市信用保証協会

横浜市信用保証協会においては、例えば個人事業者の方は「直近の確定申告における申告所得額が200万円以上」というような要件に合致しないと利用することはできません。 各都道府県によって制度概要が異なりますので、必ず地元の制度を調べるようにしてください。

「短期継続融資」や「短期継続保証制度」が利用できない場合

――「短期継続融資」や「短期継続保証制度」などが利用できない事業者はどうすればよいのでしょうか?

日本政策金融公庫や自治体制度融資などの一般的な融資制度を利用して、一定額の運転資金を借りて対応します。短期継続融資のような使い方はできませんが、最低でも月商の1か月分(できれば3か月分)くらいの現預金(運転資金)を維持するように借入をしていきます。しかし原則として借りてもすぐに返済が発生しますから、手元資金は減少していきます。そのためさらに追加の借入をする必要がありますが、融資の本数が多くなり返済負担が重くなってしまいます。その際は借換や借入の1本化などをして返済額を減らすという方法を検討してください。

実際に短期継続融資を利用していない(利用できない)事業者の方も、このように対応していると考えられます。しかし追加融資を受けられなくなったらどうするか?など、不安定な方法といえるでしょう。また融資審査に時間がかかるなど、即必要な資金への対応が困難可能性もあります。

なお「即日融資」を受ける方法としては、オンラインレンディングを利用して小口融資を借りるというのも1つの方法もあります。

「オンラインレンディング」とは

――「オンラインレンディング」について詳しく教えてください。

オンラインレンディングとは「オンライン上(インターネット上)ですべての手続きが完結する融資サービス」です。従来の金融機関の融資は書類が多く手続きも面倒であり、さらに審査に関しては数週間から数か月を要する場合もあります。これに対してオンライン融資はAIが融資審査しますので、最短で即日~数日内で融資を受けることが可能です。

その他の経常運転資金調達方法

――その他には、どのような方法で経常運転資金を調達できますか?

ノンバンク(金融会社)などから短期で小口融資を受ける方法もあります。金利は高いですが審査も早いですし、使い勝手はよいかもしれません。事業性資金を貸し出しているノンバンクもありますので、選択肢の一つとして認識はしておきましょう。

(参考)
小規模事業者がノンバンクを活用するのは危険か?知っておきたい3つのセオリー|弥報Online

また一時的に売掛債権を売却して資金調達するファクタリングなどを利用して、早期現金化する方法もあります。売掛金を早期現金化できれば、手元キャッシュフローの改善に役に立ちます。しかし手数料などがとても高いファクタリング会社もありますので、十分な注意が必要です。

(参考)
ファクタリングの活用(1)|資金調達ナビ

ノンバンクやファクタリングなどを利用することは、積極的にはおすすめしません。もし利用せざるを得ない場合は、顧問税理士や専門家などにご相談のうえ検討してみてください。

※本記事は2023年8月4日時点の情報を基に作成しております。法令などの最新情報については、政府から出ている文書をご確認ください。


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この記事の著者

吉田 学(よしだ まなぶ)

財務・資金調達コンサルタント
株式会社MBSコンサルティング 代表取締役。1998年の起業以来、「資金繰り・資金調達支援」に特化して創業者や中小事業者を支援。これまでに1,000 社以上の資金調達相談・支援を行い、その資金調達支援総額は20億円超。主な著書に、「社長のための資金調達100の方法」(ダイヤモンド社)、「究極の資金調達マニュアル」(こう書房)、「税理士・認定支援機関のための資金調達支援ガイド」(中央経済社)、「税理士だからできる会社設立サポートブック」(第一法規)などがある。
また、全国の経営者・士業などを対象にした会員制の資金調達勉強会「資金調達サポート会(FSS)」を主催している。

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