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【トップの視点】V字回復を果たしたドムドムハンバーガー社長に聞く!「思いやり経営」で結果を出す組織を作る
2023.07.20
景気の停滞、人口減少――。さまざまな環境変化の中で、時代に合わせた事業展開をどのようにしていけばよいのか、頭を抱える経営者も多いのではないでしょうか。
今回は日本最古のバーガーチェーン店「ドムドムハンバーガー」をV字回復させた、ドムドムフードサービス社長 藤﨑 忍さんに、自身の経験から学んだ「結果を出す」経営術や、心がけている習慣、独自性のある企画を生み出すチームづくりについてお伺いしました。
39歳まで専業主婦だったという藤﨑さんが109のアパレルショップ店員、居酒屋の店主という異色の経歴を経て同社の社長に就任したのは2018年のこと。ユニークなアイデアで当時のドムドムのイメージを覆し、さまざまな施策で黒字化を実現しました。ぜひ、経営戦略や組織づくりの参考にしてみてください。
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目次
経営における「リーダーとしての信条」を教えてください。
私はこれまでの経験から「和をもって事を運ぶ」「尊重と思いやり」を、経営における信条に掲げています。
2018年にドムドムハンバーガーの社長に就任しましたが、その前にSHIBUYA109のアパレル店に勤務していました。当時の私は39歳の元専業主婦。それまでの人生でかかわることのなかった、いわゆる「ギャル」と呼ばれるスタッフたちとコミュニケーションを取る中で、それぞれの捉え方や考えがあるということに気づかされたのです。
固定観念に捉われず、仕事へ対する思いや「渋谷のカルチャー」を担う彼女たちへのリスペクトを伝えていくにつれ、彼女たちもまた私を尊重してくれるようになり、チームで店づくりをしよう!と積極的に参加してくれるようになったのです。その結果、売上は大きく拡大しました。
この経験から、私は「良い組織であることが、どれほど重要か」を学んだのです。性別や年齢に捉われず相手を尊重する姿勢は、組織の大小にかかわらず非常に重要となります。
リーダーとして、具体的に行っていることを教えてください。
一人ひとりとのコミュニケ―ションを大切にしています。特に社長に就任した当初は、自分自身を従業員に理解してもらうために、各店舗に足を運び、何気ない会話を積み重ねました。些細なことでも互いに言い合える関係性を築けるだけでなく、各店のオペレーションなどの改善点も明確になるので、社員とのやり取りは重要なアプローチです。
現在でも、毎朝の雑談で相手の変化を察知したり、対面でない場合は、些細な内容のメールにも必ず返信したりと、小さな積み重ねを大切にしています。
ドムドムハンバーガーをどのようにV字回復させたのでしょうか。
「ドムドムハンバーガーとはどんな会社なのか」を明確に把握したうえで、これまでの概念とは異なるイメージを打ち出しました。声優やアパレルブランドとのコラボイベントを企画した際は、社内の各所から反対意見が相次ぎましたが、結果として企画は大成功しました。新しいチャレンジを繰り返し、新たな顧客層を獲得できたことが業績回復の直接的な要因として挙げられるのではないでしょうか。もちろん、ハンバーガー店として「おいしい」を原点に置き続けていますが、固定概念に捉われない取り組みが、今の「ドムドムハンバーガー」らしさを築いたのです。
また、SNSを活用したことも大きいでしょう。ドムドムには、歴史あるハンバーガーショップとして愛着や期待を持っていただいているファンも多くいらっしゃるのですが、そういった方々とSNSを通してより親密になることで、ドムドムを一緒に作り上げていく動きが加速しました。結果として、お客さまに寄り添いながらブランドを育むことに成功し、さらなるファン獲得へとつながりました。
ドムドムハンバーガーの独創的なハンバーガーはもちろん、公式アカウントのアイコンでもある「どむぞうくん」が多くの方に愛されるようになったことには、驚きと嬉しさを感じました。現在では、企画立案は各担当者を中心に行いますが、固定概念に捉われない思考は、会社の文化として根付いています。互いを尊重し合い、従来の枠にはまらない思考を持つことこそが、売上拡大の核心にあると考えています。
ドムドムハンバーガーでの経営手法について教えてください。
ドムドムらしさを体現する柔軟な企画の数々は、各社員が担当していますが、文字通り各社員に裁量を委ねています。企画立案時に求める条件も、特に定めていません。大切なのは本質であり、企画者の熱量です。熱量があればより熟考しますから、自ずと責任感も強まりますし、説得力も増します。数字はその結果として後からついてくるものですから「考え抜いた企画がまったく売れないことはない」と、企画者を信じ抜くことが大切です。
もちろん、経営の視点では費用対効果を考慮する必要はありますが、当事者に対して売上至上主義を求めることはしません。会議においても、アイデアに異を唱えることはあっても、アイデアを出した人物を否定したり、頭ごなしに「却下」と伝えたりすることはありません。そのような環境があるからこそ、社員からは次々にやりたいこと、言いたいことが出てきます。柔軟性に富んだ企画が次から次へ出てくる企業文化を築くうえで、重要な経営手法といえるでしょう。
また、社員全員に仕事の意義を実感してもらうために、自社が今何をしているか、どういう形で社会貢献できているかを、管理部門も巻き込んで共有しています。売上はさまざまな施策の相乗効果で生まれるものです。店舗売上が増加した理由を分析すると、SNSでの施策が起因していることもありますよね。部署を超えた互いの施策のかけ算で、良い結果が出るという共通認識があれば、社内の情報共有は活発になり、一丸となって取り組むことができます。その関係性は売上を生むだけでなく、会社全体を良い方向へ導いてくれるのです。
経営課題にはどのように対応すべきでしょうか。
そもそも、ドムドムでは「課題」という言葉は使いません。数字はもちろん、社員やお客さまの声、あらゆる事象を成功へのヒントと捉え、考察後その場で指針を決定し、スピード感を持って実行します。実際に行動する際は私の意見も伝えたうえで、最終的な意思決定を担当者に委ねています。結果が振るわなくても、それは失敗ではありません。スピード感を持って常に改善を続けていけば、その道中で得た知見やノウハウは必ずあり、その集積が次につながるのです。
例えば、ドムドムのマスコット「どむぞうくん」のグッズ発売開始前日に、Twitterで情報を開示した時のことです。ありがたいことに公開後、すぐに話題沸騰となりましたが、たくさんの好意的な反応の中に「販売方法を変えたほうが買いやすい」というツイートがありました。それを発見した営業部長はすぐに社内で共有し、販売チームは指摘通りにサイトの販売方法を急遽変更して、翌日の発売開始にこぎつけました。その結果、想定した以上に大きな売上を獲得することができたのです。着手すべきという結論に至ったら、担当者が裁量権を持って迅速に対応するという企業体質がもたらした結果だと感じています。
コロナ禍を経て、改めてリーダーは何をすべきでしょうか。
今一度、自社がどんな会社なのか、自分に合う経営スタイルは何なのかを、立ち止まって考えてみる必要があると感じています。多様性の時代ですから、企業それぞれのスタイルやリーダー像があると思いますが、経営理念に反してさえいなければ、いろいろな取り組みを積極的に行ってみるのもいいでしょう。
最初から上手くはいかないかもしれませんが、事象に対して1つ1つ対策を打ち、社員を信頼して少しずつ前進してみてください。それこそが、前途洋々たる未来への近道です。きっと、できることはまだたくさんあります。1人で対応しようとせず、社員とその歩みを積み重ねていくことこそが、リーダーの在り方なのではないでしょうか。
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この記事の著者
弥報編集部
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この記事の監修者
藤﨑 忍(株式会社ドムドムフードサービス 代表取締役社長)
青山学院女子短期大学卒業後 21歳で結婚。主婦として子育てなどに奔走していたが、39歳の時に夫が病に倒れ、商業施設「渋谷109」、株式会社ブティックヤマトヤ「MANA」店長に。人生初の就職であったが若いスタッフと共に働き新しい価値観を見出す。その結果年商を倍に躍進させる。2009年夫が脳梗塞を患い介護生活に入る。5年間働いた後退職、居酒屋アルバイトを経て2011年から東京・新橋に家庭料理の店「そらき」を開店し、翌年には2軒目「SoRa-ki:T」を出店。2017年に再生事業を行う株式会社レンブラントインベストメント入社。併せて株式会社ドムドムフードサービス出向。ドムドムハンバーガーの新商品開発担当、新店店長、東日本地区スーパーバイザーを務める。2018年8月に株式会社ドムドムフードサービス代表取締役社長に就任。
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