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経理担当から代表取締役へ。女性経営者に聞く、経理のキャリアアップと重要性

2022.09.15

著者:弥報編集部

監修者:正木 千恵

ハウスウエディング事業を行っている株式会社ディアーズ・ブレインで執行役員を務める正木 千恵さん。ディアーズ・ブレインでは財務管理を担当しつつ、子会社である株式会社ワンダーステージで代表取締役も兼任しています。

正木さんの経理人生は、地元熊本で勤めた会計事務所に所属していた恩師との出会いがきっかけです。その後、現場から経営者にまで登り詰めました。今回は、ステップアップの道のりや、経営における経理の重要性について語っていただきます。


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【今までのキャリア】手間の多かった経理業務を通常サイクルに戻し、短期間で役職アップ

どのようなご経歴から、「経理」という仕事にめぐり合ったのか教えてください。

地元の熊本で働いていたとき、簿記3級を目指したのが、本格的に経理を始めたきっかけです。3級を取得した後は2級の勉強をしつつ、通っていた専門学校で3級の講師もしていました。

その後、勤めた会計事務所で恩師と慕う人との出会いがありました。「経理は机上だけの仕事ではない」と教わったんです。例えば土地の税金1つ取っても、実際に現場に行ってメジャーで測るのと図面を見るだけでは、計算が違ってきたりするんです。経理担当者の対応次第で節税も可能ですし、経理は知識が武器になるカッコいい仕事なんだと思うようになりました。

でも、知識や経験が自分にはまだ足りない、そう感じて上京を決意します。熊本時代に恩師から言われた「経理は仕訳に始まり、仕訳に終わる」という言葉は、今に至るまで糧となっています。

転職先にディアーズ・ブレインを選んだ理由は何でしょうか。

上場準備をしていたことと店舗展開がある点です。実は以前、外食チェーンで働いていたことがあり、そのときは本部と店舗の間に壁を痛感していました。本部の会議で決めた内容を現場に落とし込むには、とても時間がかかるんです。その経験を、ディアーズ・ブレインで活かせるのではないかと考えました。

ディアーズ・ブレイン ウエディング施設
わずか5か月でマネージャー、その後3年でグループマネージャーに昇進されていますね。

ディアーズ・ブレインに入社した当時は、月次決算書を出すのに2・3か月かかっていました。段ボールに入った伝票が本部に送られてきて、経理担当者が1つ1つていねいに処理しているような状態です。一瞬入社を後悔しましたが(笑)、まずは普通の状態に戻そうと。月次決算をきちんとやって、P/Lも10日で配信できるようにしました。

また当時は組織変更が多く、それに伴う諸手続きであったり、監査法人・税理士法人とのやり取りも一手に引き受けていたんですね。どんな相手でも対話に抵抗がなく、よい意味でクセのある営業部隊とも臆せず対応していました。そういう部分も含めて、評価につながっていったんじゃないかと思います。

子会社の設立に携わり、代表取締役へ

現在は子会社である株式会社ワンダーステージの代表取締役でもあると伺いました。経理担当のときと比べてどのような変化がありますか?

2016年にディアーズ・ブレインの子会社となる株式会社ワンダーステージの会社設立に携わり、後に2021年に代表取締役に就任しました。経営については、経理の経験がとても活きています。例えば、事業計画や資金計画の策定をする際、営業目線だと見通しが甘くなってしまいがちです。しかし経理の知識を活用すれば、計画の精度が上げられると思います。資金予測を使って早めの手立てを打っておけば、資金難も防げますし。

経理担当のときは、とにかく自ら手を動かしてガツガツと働いていました。でも、いざ自分が抜けたら、メンバーの主体性が失われていると気付いたんですね。自立を促してはみるものの、ついつい首を突っ込みたくなってしまって……。今は、「人に任せる」難しさを感じているところです。

20年以上愛用の電卓
ワンダーステージのブライダルローンは、どのような商品なのでしょうか。

婚礼代金の立替払いローンを行っております。ワンダーステージでは、挙式翌営業日にローン代金を一括で返済いただければ、金利手数料はいただいておりません。通常ですと結婚式の代金は、1週間ほど前にまとめて入金するケースがほとんどです。ワンダーステージでは、ご祝儀を充てられるよう代金を立て替えて、式の後に返済していただきます。新郎新婦のお2人には安心して、実現したい結婚式の準備を行ってもらえます。

ワンダーステージの利益は分割払いの手数料なので、1回払いで手数料が発生しなかったら利益も出ません。それでも0円サービスを行っているのは、新郎新婦の夢の実現と、ウエディングプランナーの業務負担を減らすためです。ブライダルローンでお金の不安を排除すれば、ウエディングプランナーも安心して企画・提案ができるようになります。

ここも経理の経験が活きているところなんですが、商品設計にあたっては、いかに会場の未入金と、ワンダーステージの未回収を減らせるかという点にこだわりました。例えば、利用金額が100万円以下の場合は申込者の配偶者に、100万円を超える場合は加えて、新郎または新婦の3親等以内の親族2名に連帯保証人になってもらっています。その結果、延滞率は1%未満に留まっています。また、独自のノウハウにより審査の承認率もかなり高く、新郎新婦のお2人と会場のウエディングプランナーに満足いただけています。

ブライダルローンに限らず、未入金を防ぐ・回収するには、その事実をできるだけスピーディーに把握するのも大切ですね。


今後の会社の展望について教えてください。

この会社は、まだまだ可能性をたくさん秘めていると考えています。国内の出店を増やすだけでなく、海外にも出て行って、ブライダルのマーケットでナンバーワンシェアを取りたいです。そのためには、少子高齢化社会でも生き残れる、付加価値の高い商品を増やす必要があります。スムーズに資金調達ができるよう、責任者として財務の健全性・成長性をアピールしていきたいです。

経理も経営も経験したから言える「経営に経理の視点を入れるメリット」とは

経営者目線で見たときに、特に重要だと感じる経理業務は何でしょう。

月次決算書の作成は特に重要な業務だと思います。例えば、コロナ禍で補助金や借り入れの申請をする際、直近のデータや過去との比較が必要ですが、うちの会社はすぐ数字を出せました。資金調達の面において、特に有事の際ではそのスピード感と正確性が大きなメリットになるでしょう。

経理には、タイムリーに数字を出すことと、データをもとに評価や追加投資を行う「効果検証」という役割があります。新たな事業展開を行うなど会社に変化を起こしたいときは、この効果検証が役に立つんです。経営と経理が情報共有し、経営に経理の視点を入れる。これがよい関係性だと考えています。


最後に、弥報Onlineの読者である経営者や経理担当者の皆さんにメッセージをお願いします。

経営者って、営業畑を歩んできた方が圧倒的に多いんですね。だから、経理の重要性についてピンと来ない人もいるかもしれません。しかし先ほどもご説明した通り、経営に経理の目線を取り入れると大きなメリットがあります。経理は数字を知っているのはもちろん、社内の情報や人間関係にも詳しいです。組織を変えるだとか、新事業を始めるときは、ぜひ経理の人の知見も入れてください。経営者と営業だけで決めるよりずっと、経営判断の材料が増えると思います。

経理の人には、結果を処理するだけでなく、お金の動きを事前にキャッチアップできるようになろうと伝えたいです。そのような場数を踏んでいけば、この取り引きのお客さまはどういう人で、営業はどんな思い入れがあるのかといった背景も見えてきます。すると、面倒だった繁忙期が「売上が上がったり、だれかが頑張っているのが嬉しい」と感じられたりして、仕事が楽しくなりますよ。

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この記事の著者

弥報編集部

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正木 千恵(株式会社ディアーズ・ブレインホールディングス 執行役員)

株式会社ワンダーステージ 代表取締役
株式会社情報科学研究所に入社し、個人・中小企業における決算処理および税務申告業務について約2年間経験する。その後、上場企業の経理業務および上場準備を経験するため、株式会社レインズインターナショナルグループへ入社し、株式会社レッドロブスタージャパンの経理スタッフとして従事。2004年に同社を退職し、同年12月株式会社ディアーズ・ブレインに入社。経理、財務とキャリアを積んでいき、2016年に子会社となる株式会社ワンダーステージの会社設立に携わり、商品設計、業務オペレーションおよび経理業務の設計を行い、2021年に代表取締役に就任する。同年3月より親会社となる株式会社ディアーズ・ブレインホールディングスの財務部門も担当している。

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