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意外なリスクも?小さな会社が「メディア掲載」される際に注意すべきこと
2019.10.24
「中小企業」「PR/広報」のキーワードで検索すると、「どうやってあのTV番組に取り上げられるか」「新聞の一面に載るにはどうしたらいいか」などのノウハウが出てきます。中には「PRは無料で会社の宣伝ができる手段」などと、ちょっと偏った解説をしているケースもあります。
もしかするとこの記事を読んでくださっている人の中にも「いつメディア掲載のノウハウが出てくるのか?」と思っている方がいるかもしれませんね。メディアを通した自社情報の拡散は、もちろん、有効なPR/広報の手段の一つです。
しかし、効果が見込める一方でメディアに掲載される際には注意しておきたいポイントもいくつかあります。
私は企業広報専門のライターとして活動していた期間も含めて、これまで100社以上の中小企業に対し、PR/広報活動の実態についてヒアリングを重ねてきました。今回はそのリアルな声と最近の事例から見えてきた、メディア掲載に関する近年のリスクヘッジについて紐解いていきます。
対外的な自社発信を実践するうえでのポイントを解説した、前回の記事「小さな会社の情報発信、3つのポイント」も参考にしてみてください。
目次
メディア掲載は、基本的に「コントロール不可」
まず大前提として、メディアは独立した編集権をもっており、企業側で掲載時期や内容をコントロールすることはできません。ここは意外と勘違いしている企業の方が多いのではないでしょうか 。
もちろん、事実と異なる内容を書かれてしまった場合には訂正すべきです。しかし「もっと詳しく説明してほしい」「ここは削除してほしい」「言葉のニュアンスを変えたい」など、細かな修正は基本的にできません。
たとえ企業側の意に沿わない取り上げられ方だったり、想定した以上に小さな扱いの記事になったりしたとしても、それは仕方のないこと。内容の決定権、編集権はすべてメディア側にあるからです。
もし「自分たちが思った通りの表現で、自社のことをもっと詳しく説明したい!」と思うのであれば、費用を支払い、広告(記事広告など)を出稿するしかありません。
メリットばかりじゃない!メディア掲載のマイナスな側面とは
では、「コントロール不可」なメディアに自社の記事が掲載される際、どんなリスクを想定しておけばよいのでしょうか。
ここからは、これまで私が仕事で接点をもった企業の方からヒアリングした実際の事例を中心に紹介していきます。
<ケース その1>
「メディアとの関係が強いPRの専門家に高額な費用を払い、大手新聞に自社の小さな記事が出たが、特にプラスの変化はなかった」
「PR/広報の専門家(会社)」と一口にいっても、得意分野はそれぞれ異なります。特に多いのは、社会のトレンドなどを汲んでメディア掲載のための企画を立て、マスメディアの記者などとのネットワークを活かして、企業の広報活動をサポートすることに長けた会社や専門家の方たちです。
ただし、いち企業としてメディアの方からの信頼を得ていくには、本来、長い時間と地道なコミュニケーションが必要です。費用を支払ってプロに依頼したとしても、その目的はあくまでも「きっかけをつくってもらう」ことであって、広報活動を丸投げできるわけではないのです。
これまでまったく広報活動をしてこなかった会社が、 たった数回メディアに取り上げられただけでは、ビジネスに与えるインパクトはそれほど大きくありません 。もし掲載後も継続的に売上げを保つためには、事業内容や取り組みによほどの価値(話題性や新規性)が必要となります。
そしてその「ニュースになる価値」は、プロに頼めば自動的に生まれるものではなく、企業努力によって培われるものです。
<ケース その2>
「TV番組に取り上げてもらえることになったが、企業として発信したい内容とは異なる解釈で放映されてしまった」
「メディアで取り上げられたのに何も変化がなかった」だけならまだしも、意図と違う切り取られ方をしてしまうケースもあります。
例えば、TV番組のコーナーでサービスが取り上げられ、それに対してコメンテーターに否定的なコメントをされてしまった。数社まとめてWebメディアで特集されることになったが、ネガティブな事例として使われていた、など……。
前述の通り、メディアで報道される内容や、コメンテーター個人や記者の考え方は、企業側がコントロールできるものではありません。「メディアで取り上げてもらえるから」といって無条件で話に乗るのではなく、メディア側の意図を事前にしっかり確認する、自社の情報が正しく伝わる資料をあらかじめ用意するなど、こちらも長期的かつ丁寧なコミュニケーションが必要です。
<ケース その3>
「テレビや雑誌で特集された飲食店が、一時的に顧客が激増。しかし、そのために常連客の足が遠のいてしまい、新規顧客もリピーターにはならず、閉店に追い込まれてしまった」
こうしたケースをよく耳にすることはありませんか。「取り上げられたのに反響がなかった」のとは逆で、想像以上に問い合わせや発注が集中してしまうケースです。
店舗側はうれしい悲鳴かもしれませんが、その裏で既存のお客様を失ったり、取引先や従業員に無理を強いたり、本来はないニーズを「ある」と勘違いしたりしかねません。知らずしらずのうちに信頼を落とさないよう、気をつけたいところです。
<ケース その4>
「企業として『育児のための制度充実』を大々的にうたっており、それがメディアに取り上げられた。しかし、そうではない実態が社員によってSNSで暴露され、炎上した」
こちらは、企業側の意図とは関係なく、ネガティブな文脈でメディアに取り上げられてしまった事例です。実際にニュースになっていたので、目にされた方もいるかもしれません。
あるとき、とある上場企業に勤める社員の配偶者が、子どもが生まれたばかりにも関わらず転勤を命じられた心情をSNSで吐露しました。途中から実際の社名が明かされると、あっという間に炎上。
その会社が公式サイトで「育児のための制度充実」をうたっていたこと、企業側の公式リリースが遅れたこと、その内容が「法的には問題ない」の一点張りだったことなどが火に油を注ぎ、最後には大手マスメディアで取り上げられるまでの騒ぎになってしまいました。
SNSなどによって個人から情報がオープンになるのは、これからの時代、どうしても避けられない流れです。最近では飲食店などと同様に、実際に働いている(いた)人が匿名で書き込める、企業の口コミサイトも増えています。
そのため企業がメディアを通じて発信する「表向きの良い情報」を疑う人も多く、ときには「良いこと」を言えばいうほど、ネガティブ要素に拍車をかけてしまうリスクがあります。
会社が「(実態とは異なる)良い情報」をつくろって発信することに対して、現場の社員がしらけてしまう。それはかえって信頼性の低下を招き、逆効果です。普段から「言行一致」の状態をキープできるよう、気をつけておきたいところですね。
大切なのは社員との「言行一致」
メディア掲載のマイナス事例について、大半の要因は「言っていることと、実際にやっていることのギャップ」にあります。
例えば「自社でプッシュしていきたい情報が、社会的なニーズと合っていない」(ケース1、2)、「社会に対して宣言している“理想の姿”と、“現実”に乖離がある」(ケース4など)
「うちは大丈夫!」という企業の方も、いま一度、自社の状況を冷静に客観的な視点から見直してみてください。
「女性の活躍を後押しする」と宣言しているにも関わらず、女性役員がいない……、育休制度が整っていない……。社員に対しては手厚い福利厚生を保証しているのに、取引先には厳しい条件を要求している……。そんなことは、ありませんでしょうか。
口コミサイトやSNSの普及によって、こうしたギャップや乖離に企業が足元をすくわれるリスクが以前よりも高まっています。それが小さな会社であればあるほど、その影響範囲は大きくなります。
メディアに取り上げられる際だけではなく、普段から「言行一致」を意識していただくことで、リスクは回避されるでしょう。
冷静にリスクヘッジしたうえでPR/広報活動を
今回はメディア掲載について、多くの中小企業に対するヒアリング内容と、いくつかの事例から考えてみました。
一つひとつは些細なことに思えるかもしれませんが、その「些細なこと」を軽視してしまったがために、リスクに直面し、思わぬところでダメージを受けてしまった企業の事例が過去にたくさんあります。
もちろん、だからといってリスクを恐れ「何も情報発信はしない」「メディア掲載お断り」などと殻に閉じこもってしまうのは、非常にもったいないです。
冷静にリスクを想定したうえで、地に足のついたPR/広報活動を継続的に行うことを意識してみてください。
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この記事の著者
大島 悠
企業広報を専門とする編集パートナー、 合同会社ほとりび代表
デザイン制作会社勤務を経て、2013年より「企業広報支援ライター」として活動。BtoBビ ジネス領域の広報ツール、各種コンテンツの編集・制作に多数携わる。2018年7月に法人化し、現在は中小企業向けに、編集の技術をいかした伴走型の広報支援サービスを提供している
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