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お歳暮・お中元は贈るべき?取引先との絆を強める贈答・見舞いのビジネスマナー

2018.10.30

著者:弥報編集部

著者:牧 亜津子

日本には、お中元・お歳暮や酉の市など、お付き合いの慣習や商売繁盛につながるさまざまな行事が古くからあります。それらが生まれた由来や作法を知り、取引先とのお付き合いや社員とのコミュニケーションに役立ててみませんか?

今回は「取引先との絆を強める贈答・見舞いのビジネスマナー」と題し、会社としての立場からの、心が通うやり取りの方法をご紹介します。

不要論なんて不要? お中元・お歳暮の由来と好印象を与える贈り方

最近は「虚礼」などの理由で不要論も出ているお中元・お歳暮。しかし、用件だけをメールでやり取りする現代のコミュニケーションスタイルのなかで、「これからもよろしくお願いします」の気持ちを表現できるお中元・お歳暮の贈答習慣は、あなたの会社の存在をさりげなくアピールできる貴重なコミュニケーションツールといえます。それぞれの由来は以下のとおりです。

お中元

老子の教えにもとづく「道教(どうきょう)」から生まれました。中国では旧暦1月15日を上元、旧暦7月15日を中元、旧暦10月15日を下元といい、上元は天の神、中元は地の神、下元は水の神とされ、このうち中元の地の神は人間の罪を許す神であったことから、7月15日の中元の日に贖罪の行事が行われるようになりました。

これが日本に伝わると、仏教の先祖供養の行事、「盂蘭盆会(うらぼんえ)」(お盆)と結びつきます。贈答につながったのは、先祖供養に訪れた親族たちが、両親や親戚、近所の人たちに日頃の感謝を伝えるために贈答品を持ち寄ったことによります。江戸時代には、中元の贈答が定着し、主人が使用人に祝儀として金品を贈る習慣も生まれました。さらにこの習慣が拡大解釈され、仕事関係者などにも贈答を行うようになったといわれます。

お歳暮

一年間お世話になった方への贈答を意味しますが、これは先祖の霊を迎えて祭る「年越しの御霊祭」に供える品物を、本家に届ける習慣が変化したものとされます。お供えに贈る品物は、塩鮭、塩ぶり、数の子、するめ、米、餅などで、いずれも正月の準備に欠かせない物でした。

贈る期間は、一般的にお中元が7月初旬から15日まで(関西など地域によって8月15日まで)、お歳暮は12月初旬から20日くらいまでとされます。贈る相手は、日頃お世話になっている担当者でよいですが、送り先は自宅ではなく担当部署にします。贈る品物は、ジュースやコーヒーなど、職場のみんなが分け合えるものがよいでしょう。金額の目安は、お中元が5,000円、お歳暮は、一年間の感謝を表す意味で、お中元より高め(1万円前後)にすることが多いようです。

お中元・お歳暮の贈り方には、手渡しと配送がありますが、相手が会社の人だからといって、特に決まりがあるわけではありません。お中元やお歳暮の時期に、贈りたい相手とたまたま打ち合わせなどがあれば、手渡しがよいでしょう。直接会う機会がない、あるいは重量があって持ち運びが大変、という場合は配送にします。

最近は、贈答品のことで時間を取らせるのはかえって失礼になる、との考え方から、あえて配送を選ぶことが多いようです。なお、お中元やお歳暮などの贈答品は、公務員や政治家は受け取ることが禁止されていますので、その点は心得ておきましょう。

開店開業・受章祝いの正しい贈り方は?

取引先の規模が大きく、店舗や事務所の開設が頻繁に行われるような場合は別ですが、取引先にとって「かねてからの夢だった」店舗や事務所オープンのニュースが入ったら、一緒に喜びを祝うつもりで贈り物をしましょう。

贈る品は、フラワースタンドや観葉植物、時計や置物などの調度品が一般的ですが、「好みが合わない」「ほかの人と品物が重複した」などと先方にがっかりされないよう、事前に必要な物を聞いてから品物を選びます。

ちなみに、祝い事に贈る花として代表的な品種は、蘭の一種の胡蝶蘭です。この花が選ばれるのは、華やかで見栄えがよく、格調の高さを感じさせ、さらに日持ちがよいからです。花色には、ピンク、白、赤と白のコンビなどがあります。このうち、白はお悔やみに用いられることがあるので、祝い事には白以外の花色を選ぶのが無難です。

金額の目安は1~3万円。表書きは「御祝い」「祝御開店」「祝ご開業」などとし、紅白蝶結びの水引をかけます。贈る時期は、調度品ならオープンの前日までに、花などは当日に届くようにします。

また、取引先の商品がコンクールで受賞したり、取引先に所属する選手やチームが試合で優勝(入賞)したりなどの知らせを聞いたら、速やかに電話か電報で祝意を伝えます。贈る品物は、花束、シャンパンやワインなどの酒類、あるいは菓子などがふさわしく、金額の目安は1~2万円程度で。表書きは「御祝い」「御受賞(優勝)御祝い」「祝御受賞(優勝)」などとし、紅白蝶結びの水引をかけ、受賞(優勝・入賞)後、1週間~10日以内に届くように手配します。

気軽なコミュニケーションツール「暑中見舞い・残暑見舞い」を活用しよう

取引先へのご機嫌伺いや感謝の気持ちを表すものは、何も贈答品ばかりではありません。たとえば暑い盛りに相手の健康を気遣う暑中見舞いや残暑見舞いも、重要なコミュニケーションツールの一つです。いずれも、頭語(「こんにちは」に相当する「拝啓」など)、結語(「さようなら」に相当する「敬具」など)をつける必要がありませんから、気軽に書けるのが魅力。手紙だからと気負わずに積極的に活用したいものです。

暑中見舞いの投函期間は、梅雨明けの7月中旬くらいから立秋(その年によって若干異なりますが、だいたい8月8日頃)まで。立秋を過ぎたら「残暑見舞い」に変わり、8月中に届くように出します。

絆を強める病気見舞い・災害見舞いのビジネスマナー

たとえば取引先の担当者が病気やけがで入院した、あるいは取引先が地震や水害、火事などに見舞われた……などというときは、利害関係を抜きに、相手を見舞いたい気持ちが湧き上がることと思います。しかし、どんなに純粋な気持ちからでも、見舞う行為自体が相手の迷惑になることもあるので、病気見舞いや災害見舞いに関しては、相手の状況を一番に考えて行動するようにします。

病気やけがの見舞いの場合

あらかじめ事情に詳しい人に容態を確認し、見舞いに行ってよいかを判断しましょう。一週間程度の入院であれば、退院後に花や果物を贈るのでもよいでしょう。病院へ見舞いに行く場合は面会時間を厳守し、患者の負担にならないよう、短時間で切り上げます。

見舞いの品はかつては生花や果物が一般的でしたが、現在では生花であれば害虫や菌がついている可能性があり、果物も食事制限に引っかかるとして、それぞれ持ち込みを禁止する病院が多いものです。こうしたことを考慮すると、5,000~1万円程度の現金や金券がベストということになります。

災害に遭われた場合

まずは災害に遭われた方の安否確認をしましょう。先方に直接電話をするか、それが難しい場合は役所などに問い合わせます。地震や水害など自然災害の場合は、駆けつけること自体が不可能だったり、二次災害の原因になったりすることがありますから、行動を起こす場合は、冷静に状況を把握することが大切です。

状況が少し落ち着いた頃、先方が必要とする品物や現金を送るのがよいでしょう。復旧の助けになるよう、社内で義援金を募って送るのも有意義です。

お礼は必要。でも、お返しは要らない!?

自分自身がお中元やお歳暮をいただいた場合、一般的にはお礼状を出したり電話でお礼を述べたりするものです。しかし、会社同士の付き合いでは、礼状は大袈裟であるし、電話は相手の時間を奪うことになりますから、メールでのお礼がもっともふさわしいといえます。ただし、病気見舞いや災害などのお見舞いを受けた場合は、元気になったこと、状況がよくなったことを報告するために、直接電話で礼を述べます。

贈り物をいただいたときの「お返し(返礼品)」については、一般的に次のような慣習があります。

  • お中元・お歳暮→不要
  • 災害見舞い→不要
  • 病気見舞い→必要(返礼の表書きは「快気祝い」「内祝い」など)
  • 開店開業祝い、受賞祝い→必要(返礼の表書きは「開店記念」「開業記念」「受賞記念」など)

お歳暮・お中元などを介して取引先との絆を強めることもひとつのビジネスマナー。これを期にご挨拶の贈り物を改めて見直してみましょう。

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この記事の著者

弥報編集部

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牧 亜津子(まき あつこ)

フリーランスライター。東洋の自然思想に惹かれ、年中行事、暦、東洋占術などを研究。共著に『3時間で一生がわかる算命占星術』(説話社)、企画編集に『誕生花事典』『和ごよみの暮らし』(いずれも大泉書店)などがある。アシェット・コレクションズ・ジャパン発行の週刊分冊百科『占いの世界』では東洋占術を執筆。

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