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問題を主体的に解決できる社員の育成方法とは。企業の競争力強化につながるアクションラーニングの活用法

市場の先行きが見えにくい状況では、企業側にも臨機応変な対応が求められます。そのために社員にスキルアップを促したいところですが、指示待ち社員のマインドを変えることは容易ではありません。

そんな中、注目を集めている教育方法がアクションラーニングです。近年、中小企業にも多く導入されているこの教育方法は、組織の現実的な課題をテーマにし、小集団(スモールチーム)で解決法を考えて実践する学習方法です。市場の変化に柔軟に対応できる社員の育成に有用でしょう。

そこで今回は、株式会社アイデムの波多野 雅彦さんにアクションラーニングの概要や進め方、効果、事例などについてお話を伺いました。スモールチームにおけるリーダー育成や組織力を強化するためのヒントにしてください。


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波多野 雅彦(株式会社アイデム 教育・企画/研修トレーナー)

キャリアコンサルタント(国家資格)、明治大学大学院経営学研究科博士前期課程修了
大手ゼネコンにて国内外建設プロジェクトの施工管理に従事。その後、建設会社に特化した経営コンサルティング会社にて、経営体質改善・人材育成支援事業に携わる。現在、株式会社アイデムにて、教育・研修のプロデュース、そして自らトレーナーとして、お客さまが目指す組織づくり、人づくりにお役に立てることを目指して日々業務に取り組む。一部上場メーカーの若手社員、管理職育成のトレーナー、中堅小売チェーンストアの階層別研修プロデュース、プロスポーツ団体の新人研修など、業界業種規模を問わず、多数の企画、トレーナーを務める。株式会社アイデム


業務改善・課題達成・問題解決に直結!アクションラーニングとは

――そもそもアクションラーニングとは、どのような教育方法なのでしょうか?

アクションラーニングとは、チームで目標達成に向けた問題や課題に取り組む過程で、個とチームが学習し、共に成長を目指すトレーニング方法です。1930年代に英国の物理学者レッグ・レヴァンス氏によって提唱されたもので、以降、多くの企業や組織で、幅広く活用されています。諸説あると思いますが、実践する時のベースになる考え方には、米国の組織行動学者デービッド・コルブ氏が提示した経験学習モデルがあります。

ヒトは実際の経験から学ぶものなので、見ただけでは学べません。経験を積んで、振り返り(省察)を行い、成功体験を概念化した後、更なる実践を繰り返すという学びのサイクルを作ることが経験学習モデルだといわれています。

経験学習モデルを推進していくポイントは「問いかけと振り返り」です。その「問いかけと振り返り」の方法は、実施者によってさまざまだと思いますが、例えば、会議の場を活用することも有効です。我々は、株式会社アイデムのオリジナルメソッド「FITT式」研修を活用して、個とチームの成長を支援しています。

FITTとは「Feel」「Idea」「Theory」「Training」の頭文字です。まず体験ゲームを行って気付きを得て、理論で説明した後、自分でトレーニングができるように職場のケースに置き換えて考えてもらいながら必要なスキル、ノウハウを体得していきます。

アクションラーニング自体は、新しい手法ではありません。しかし市場の先が読みづらい近年の状況において、チームで問題解決、課題達成に取り組む必要性が高まったことで再び注目を集めているのでしょう。


――アクションラーニングを実施するメリットを教えてください。

アクションラーニングのメリットは、直接的に仕事の改善や課題達成、問題解決につながる点です。座学の勉強と異なり、アクションラーニングを実践することによって、個のスキルアップ、チームの組織行動力アップ、そして結果的に職場改善、問題解決も可能にします。

組織行動力を高めるためには、「リーダーシップ力」「マネジメント力」「コミュニケーション力」「率先垂範で周囲を変える主体変容力」のすべてが欠かせません。アクションラーニングを実施することで、同時にこれらのスキルを向上させることも可能です。

さらに、インプットしながらアウトプットすることで、自ずと組織内に学び、実践するしくみが構築される点もメリットです。


――アクションラーニングの実施によって、どのような人材が育成できて、どのような企業に適しているのでしょうか?

弊社のFITT式を活用したアクションラーニングでは、自分自身で目標を設定し、周囲と積極的にかかわり合い、チームで改善しながら最後までやり切る「自律/自立型人材の育成」に効果的です。自律/自立型人材であれば、チームビルディングや業務改善を実施しやすくなるでしょう。

また、従業員が個々に業務を遂行していて横のつながりが薄く、改善活動や問題解決に未着手状態の企業や、社長だけ頑張っていて、社員は主体性なく従うだけといった状況の企業は、アクションラーニングの実施がおすすめです。

例えばベンチャー企業などに多くみられるのが、個々のスキルは高いにも関わらず、組織としてまとまっていかないケースです。自分の仕事は、きちんと責任をもって遂行するのですが、他人が何をしているかわからないため組織として機能しづらくなります。

このような企業が「事業を拡大したい」「人材を増やしたい」としたときに社員同士がコミュニケーションをとり、お互いの仕事を見える化し、最適な役割分担を実現するアクションラーニングは有効です。ちなみに昨年、弊社のお客さまである社員数が5名の企業がアクションラーニングを行った結果、1年で4倍の20人体制を実現しました。


――アクションラーニングに適している業種や業態はありますか?また、逆に向いていない業種や職種などがあれば教えてください。

基本的に業種、業態は問いません。どのような仕事でも、チームで目標を達成することが求められるからです。小規模、中小企業が組織固めをして次のステージへシフトしたいケースや、多店舗展開をしていてマネジメントしにくい場合などにも効果的です。

一方、アクションラーニングが若干導入しづらいのは、小規模、中小企業の経理や人事などの間接部門でしょう。小規模、中小企業の場合、経理や人事担当者は1名というケースも多いため、業務内容を他の社員と共有する機会が少ないからです。また、営業などと違い、目標の数字が立てづらい点も挙げられます。

しかし、どのような職種においても、仕事はチームワークです。間接部門だからこそ他部署と連携できることもあります。また、間接部門ならではの課題はありますから、アクションラーニングを実施することは可能です。

小規模、中小企業でのアクションラーニングの導入事例

――小規模、中小企業でアクションラーニングを導入して高い効果を上げた事例を紹介してください。

チェーン展開しているドラッグストアの事例と、学童保育におけるアクションラーニングの事例を紹介します。

中堅チェーンストアA社の取り組み事例

都内でチェーン展開中の中堅ドラッグストアが、以下のような課題を抱えていました。

  • ライバル店の台頭による業績低迷
  • 人材不足
  • 業務は増えるが残業は抑制
  • 店長がプレイヤー化し、職場のリーダーである店長が疲弊
  • 店長とパートの関係が悪い店舗は業績悪化(パート離職。結局、店長も退職)

そこで同社では、バッドサイクル(負のサイクル)を断ち切るために、店長、ブロック長、部長といった各層でアクションラーニングを実施しました。一人ひとりが単なる店長ではなく、オーナーシップを持つように促し、視座を高めてもらうためのインプットを実施しつつ、リーダーシップやマネジメントもしっかり学んでもらいました。

また、店長にはスタッフと1 on 1ミーティングを実施してもらい、コミュニケーションと関係の質強化につとめてもらいました。

現在も継続中ですが、3か月に1回研修を行いながら1年間継続した結果、以下のような成果が現れはじめています。

  • 各層ごとに研修行なったことで、店長同士、ブロック長同士、部長同士の同じ役職同士での職場での情報共有が以前より頻繁に行われるようになった
  • 部長⇔ブロック長⇔店長⇔パート間でのお互いに認め合う関係づくりができつつある
    (特に店長の前向きな言動、行動により社内、店舗の雰囲気が良くなってきた)
  • 採用Webページに社内の良い取り組み事例として研修状況を掲載したところ、求職者が増えた

アクションラーニングを実施したおかげで、社内でのグッドサイクルが確実に回りはじめています。

学童保育施設の取り組み事例

ある地方都市のNPO法人学童保育が、継続して指定管理者として選定されるよう、管理運営体制の強化を目指し組織変更を行うことになりました。

これまで児童に対応する支援員だった若手女性職員を、エリアマネージャーやクラブマネージャーに抜擢することにしたのです。そこで、リーダーシップやマネジメントの基本を身につけるために、アクションラーニングを実施することにしました。理事にも参加してもらっています。

女性職員の多くは、もともと子どもが好きで入職してきます。しかし、組織としてはマネージャーとしての役割も果たしてほしいことから、まず女性職員の意識改革を実現する必要がありました。また地方自治体から補助金をもらっているため、一定の成果を出す必要があったことも、アクションラーニングを実施した目的の1つです。

女性職員にはまず自分が働く目的を明確化するために、企業の行動方針を記述してもらいました。ビジョンや自分の役割、関係者を可視化して、業務の目的や重要性を再認識してもらいました。

研修後の業務においては、自己カイゼンチェックシートを活用して、毎日の自分の行動ができたかどうかを確認していきます。

またマネジメントツールを作成して、自分の担当する業務を管理できるようにしました。

本研修は4チームで行って、チームごとに設定した課題解決に取り組む「段取りシート(A4/1枚)」を提出してもらいます。1枚につき1つの課題が解決するため、1つの研修で4つの課題解決を実現することが可能です。さらに、これらの段取りシートは全工程運用マニュアルとして活用できますので、もし、同じ課題に直面した際には、同じ手順で対応できます。

リーダー経験のない若手女性職員の意識改革からアクションラーニングをスタートして、現在は以下のような成果が現れはじめています。

  • 自分が変わることによって周囲を変えていくことができつつある
  • 半年でプロジェクトマネジメントに取り組み、職場の問題解決に挑戦し成果を出すことによって、リーダーシップ力、マネジメント力を着実に身につけつつある

――「社長の言いなりになって自発的に動かない社員が多い」企業の実施事例などはありますか?

新型コロナウイルス感染症の影響で、実は郊外の一戸建てが多く売れはじめており、不動産業界がにぎわっています。その中で不動産の敏腕営業マンだった方が、数名の同僚と数名の従業員を採用して会社を立ち上げました。

社長は自分の営業スキルが非常に高いので、他の従業員に対しても「なぜこんなことができないの?」「これぐらいできるだろ」というパワハラと受け止められかねない態度で接していた時期がありました。その結果、他の従業員が萎縮して社長に何も言えず、思考停止状態に陥り、言われたことだけを淡々とやり続け、メンタル不調になった方もいました。

この状況をまずいと思った共同経営者の方が弊社に相談にいらっしゃって、現在のバッドサイクルをグットサイクルに変えたいとアクションラーニングを実施した事例があります。

アクションラーニングでは、業務や役割の整理をしながら、社長の想いを従業員へきちんと伝えてもらうようにしました。コミュニケーションが強化されたことで関係性の質が向上し、また社長が抱えていた業務の一部を従業員に任せることでオーナーシップも目覚め、会社がうまく回りはじめました。短い期間で風通しのよい社風に変わった成功事例といえます。

ちなみに、このときの研修には社長自身も参加しました。いつもは上から目線だった方が従業員と同じ目線に立ったことで、良い方向にマインドが変化したのでしょう。このように、アクションラーニングは社内の流れを良いものにすることが可能となる、有効な研修手段なのです。

「やりっぱなし」にしないことが重要!アクションラーニングの実施方法

――自社でも実施できるように、アクションラーニングの具体的な進め方を教えてください。

事前に求める人材の開発計画を立てる必要があります。ご存知の方も多いと思いますが、バート・カッツモデルを活用するとわかりやすいです。マネジメント層に必要な能力を階層ごとに明示したモデルで、人材育成の計画や組織開発の方針づくり、研修内容の策定などに役立ちます。問題解決力や業務応用力などの「コンセプチャルスキル(概念化能力)」とビジネスマナーやコミュニケーションスキルなどの「ヒューマンスキル(対人関係能力)」、そして専門技術の「テクニカルスキル(職務遂行能力)」の3つのカテゴリーで対象者別に育成プランを練るのがわかりやすいと思います。

中小企業の場合、どうしてもテクニカルスキルに寄った人材が多くなりがちです。しかし組織を大きくしたり、多店舗展開したりする場合には、コンセプチャルスキルとヒューマンスキルがないと行き詰まります。コンセプチャルスキルとヒューマンスキルをインプットとアウトプットを繰り返して、組織行動力を高めることが重要と考えてください。

アクションラーニングは4~6人程度の小グループで実施することをおすすめしています。弊社のFITT式研修の場合、5名×4チーム程度で実施しています。5名程度の小さな会社の場合は、1チームでもかまいません。

手順としては、まず事前課題を実施した後、研修を受けてスキルや情報をインプットします。研修中に職場や業務の課題を整理し、職場で改善行動に取り組むまでがワンサイクルです。

次の研修には新たな課題を持ち寄り、新しいスキルや情報をインプットして、課題や行動を整理し、実践するという流れを継続して繰り返します。これが弊社のFITT式研修を活用したアクションラーニングの基本的な流れです。

つまり、あるべき姿に向けてPDCAサイクルを回すイメージです。通常の研修は座学で終了というものも多いのですが、アクションラーニングは実際の業務、現場での実践を伴うため「やりっぱなし」としない点が大きな特徴です。

上図は、組織をおにぎりに例えたイメージです。小さなおにぎり(社員)を組み合わせて、大きなおにぎり(組織)を作ります。組織行動力が低いと、小さなおにぎりでさえも方向がバラバラで、米粒が落ちたり海苔が巻ききれなかったりして、ボロボロのおにぎりしか作れません。しかし組織行動力を高めれば、小さなおにぎりを同じ方向に向けることにより、しっかりした大きなおにぎりを作れるようになります。

弊社のアクションラーニングは、成功循環モデルの流れで進めています。遠回りと感じるかもしれませんが、個々、チーム間の関係の質を高めることから取り組みます。

また研修後、受講レポートに目標設定、行動項目を記してもらい、参加者全員と社長で共有します。有言実行してもらうために目標を宣言し、実践後、成果報告をメーリングリストやチャットで共有して相互に確認、影響し合います。

なお、現在、FITT式研修をベースにしたアクションラーニングは集合型だけでなくオンライン研修など、さまざまな実施方法を選ぶことが可能です。会社によって事情はさまざまだと思いますので、都合や目的に合った実施方法での受講を検討してみてください。


――アクションラーニングに取り組むには、課題設定(抽出)が必要だと思います。どの程度明確化して進める必要があるのでしょうか?

まず、会社の経営計画における売上や利益などから落とし込む定量目標と、最終的にどのような状態になっていたいのかを示す定性目標を掲げ、現状とのギャップを可視化します。その際、年計の目標達成にマッチする形の課題を抽出することがポイントです。

経営計画と求める人材像がない場合は、経営理念、ビジョンから求める人材像について社内で協議しながら整理することも必要です。部署やグループなど細かい単位に数字や課題を落とし込むことも重要です。


――アクションラーニングは自社のみで実施することは可能でしょうか?その際、押さえておくべきポイントも教えてください。

アクションラーニングは自社のみの実施も不可能ではありませんが、インプットとサポートについては専門家に依頼するのがベストです。特に小規模、中小企業は教育担当者が不在のところも多いので、自社だけで進めるのはハードルが高いです。外部の専門家に任せらることで担当業務に集中できるという点もメリットだといえるでしょう。

また、参加者の範囲は対象となる企業の規模や課題などの状況によって異なります。社長自身も参加するかは、社長の判断次第です。基本的に社長はオブザーバーとしての参加をおすすめしています。

また、職場でアクションラーニングを実施している最中に、以前の方法に固執したり、社長、幹部が実践しないのは厳禁と考えてください。社長自身が率先垂範して社員のお手本になる。ポジティブな発言、行動をすることが、職場環境整備を成功させる秘訣といえるでしょう。

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著者:弥報編集部
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