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【小室淑恵に聞く】家族から応援される「新しい働き方」。持続させるには、従業員の声を聞ける環境作りを

若い世代を中心に、かつてのような、仕事ひと筋の土日返上で働いて、残業もしてといった家族やプライベートの時間も取れない働き方は、受け入れられなくなってきました。日本が抱える人手不足・地域の過疎化を解決するためにも「働き方改革」は必須です。では、家族や地域を重視するという価値観の変化において、積極的に取り組むべき施策は何でしょうか。

今回は株式会社ワーク・ライフバランス 代表取締役社長の小室 淑恵さんに、家族や地域との信頼関係の構築にもつながる「テレワーク」や「男性の育児休暇」「評価制度のメリット」について伺いました。それらを導入するだけに留まらず、長く続けるための方法も併せて解説します。

<その他の組織づくり記事は【こちら】から>

小室 淑恵(株式会社ワーク・ライフバランス 代表取締役社長)

2006年に株式会社ワーク・ライフバランスを設立。多種多様な価値観が受け入れられる日本社会を目指して、多数の企業・自治体などに働き方改革コンサルティングを提供し、多くの成果を出している。自らも子育てをしながら、会社としても全社員が残業ゼロと有給取得100%を実現したうえで、増収増益を達成し続けている。

「家族からも応援される働き方」のための重要施策は?

2019年に、まず大企業への働き方改革関連法が適用されましたよね。そうしたら、新橋にどっと人が増えたんです。仕事が早く終わっても家庭に居場所がない、いわゆる「フラリーマン」と呼ばれる人たちでした。

なぜ、そんなことになってしまったのかというと、それまでの人生において会社が家族との時間を散々切ってきたからです。急な転勤で単身赴任させたり、妻が出産して一番大変なときに何も手伝えなかったり、そういう積み重ねが「今さら早く帰って来られても……」という空気を家庭に作り出したと言えるでしょう。

若い人たちは特に、仕事中心の人生を望んでいません。人生100年時代、100年間におけるトータルの幸せを考えたとき、評価軸となるのは家族と地域社会だという価値観が浸透してきました。つまり「家族からも応援される働き方」をゴールに置いて、働き方改革を進める必要があります。その中で重要になってくる施策が「テレワーク」「男性の育児休暇」です。

テレワークで家族との時間・労働力不足・地域の過疎化を解決

私の会社(株式会社ワーク・ライフバランス)では、約30名の従業員のうち2割が地方に住むテレワーカーです。新型コロナウイルス感染症が流行する前から、静岡で子育てしたいので移住しますとか、群馬在住のままで就職したいといった要望に応えてきました。現在はほぼ100%の仕事をオンライン化していて、クライアントに会うのも直行直帰になっています。その分の時間を子育てや自分の時間に充てられ、効率的な働き方を可能にしています。

長期の視点で未来を見たときに、住む場所と頭脳を提供する場所は、必ずしも一致しなくなってくるのではないでしょうか。能動的に自分がかかわりたい地域コミュニティを選んで、そこに根ざしていく流れが進んでいくでしょう。だからテレワークを導入しなければならないのはもちろん、転居を伴う異動や会社の近くに住むことを強要するのもやめるべきだと思うんです。

コロナ禍でテレワークが広がると「休校などに対応できて助かった」「親の面倒を見られるようになった」という声が上がりました。過疎化した地域では収穫や雪下ろしなどの人手も足りておらず、若い世代が地元に留まればその手伝いが容易になります。それに住む場所を限定しなければ、人材を全国から探せますよね。まさにテレワークは、労働力不足・地域の過疎化を解決するカギなんです。

テレワークをはじめITに関する設備には、助成金などの支援が充実している今のうちに、しっかり投資しておきましょう。それが従業員の疲弊を防ぎ、能力の高い人にずっと会社に残ってもらうことにつながります。ただしテレワークだからといって、各自が孤独に作業を行うような状態は避けてください。オンライン上でもかまわないので、居場所は離れていても集まりたくなるコミュニティ作りは欠かせません。

会社ひと筋ではない世代に、男性育休でアピール

以前「【小室淑恵に聞く】残業月1.1時間削減で人気企業に!人材確保に悩む中小企業に「新しい働き方」がメリットをもたらす」の記事で、残業時間1人平均月1.1時間を実現したサカタ製作所という会社をご紹介しました。サカタ製作所では男性の育児休暇の取得も推進していたにもかかわらず、取得実績は2014年までゼロだったんです。なぜかというと「会社が推進していても、現場では取ると言いづらい」から。

そんな男性社員の意見を聞いた経営者は、翌日の朝礼で「育休は対象となる全社員が取らなければならない」と宣言することで、本人たちが自信を持って言い出しやすい環境にしたといいます。その後、2018年には男性社員の育休取得率が100%に達し、厚生労働省の「イクメン企業アワード2018」も受賞しました。

産後2週間から1か月は、妻が産後うつになりやすいんです。そういう時期に夫婦が協力し合えないと、なんと妊娠期から子どもがゼロ歳までの1年で、夫婦の愛情度は20%開き、その差はその後縮まらないという結果が出ています。赤ちゃんを育てる12年は、長い人生のうちの短い期間じゃないですか。そこを会社中心にしてしまって本当にいいのでしょうか。優秀な人材の確保につなげるためにも育休の拡充が必須です。

新しい働き方には、評価制度をセットで整備することが大事

評価制度がなく、あいまいな会社では、どれだけ残業しているかなどの「頑張っている感」が従業員にとって会社へのアピール材料になっていました。自ら好んで残業していたケースも、決して少なくなかったんです。そういう人たちは、働き方改革で残業が減ってくると逆に不安を覚えます。新しい働き方を取り入れる際は、評価制度も並行して整備しなければなりません。

最初に着手していただきたいのが、スキルマップの作成です。業務の一覧に対して、従業員ごとに「〇×」のような形式でレベル分けしてください。それにより「Aさんが産休に入ったら仕事を引き継ぐのはBさん」といった流れが可視化されていきます。また、どのスキルを習得したら昇格できるかも一目瞭然です。

スキルマップは、会社ではなく現場主体で作ると透明性・納得度ともに高いものができます。ただし、1回作成して終わりではありません。スキルのレベルはもちろん、業務も変わっていくため「スキルマップには完成がない」と覚えておきましょう。

新しい働き方を持続させるコツは「心理的安全性の確保」

新しい働き方を始めるだけでなく、長く維持するためには「心理的安全性の確保」が必要です。心理的安全性とは、自分の考えを安心して発言できる状態を指します。今までやっていたことを変えると、だれだって不安です。問題が起きるんじゃないか、納期が遅れたりはしないだろうか……。心理的安全性がないとそういう気持ちを口に出せず、何に対しても立ち止まってしまいがちです。

心理的安全性を確保する際の障壁となるのが、管理職が「心理的安全性とは何か」を知らないケースです。心理的安全性とは、組織の中で自分の考えや気持ちを発言しても、拒絶されることなく心配のない状態のことを言います。なので、まずは管理職に対して心理的安全性の研修を行い、理解を深めてもらいます。管理職のスキルアップについてはコーチング研修も有効です。ティーチングからコーチングの手法に変えていくと、部下が自発的に動き始め、常により良い働き方を模索し続けるサイクルが生まれます。

再三お伝えしている通り、新しい働き方に取り組むときは従業員の声に耳を傾けるようにしましょう。望まれていない施策を押し付けても、やらされ感が出て定着しません。経営層や人事部主導で考えるより、現場の意見を聞いて課題を洗い出してください。それこそが本当の働き方改革なんだと、経営者自身が肝に銘じることです。

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著者:弥報編集部
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