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「新型コロナ対策資本性劣後ローン」審査を通過するための書類作成方法

2021.04.27

前回の「毎月の返済が必要ない「新型コロナ対策資本性劣後ローン」とは?」に引き続き、今回も資本性劣後ローンについて説明いたします。今回は申請に必要な書類や、事業計画書の作成ポイントなどについて解説いたします。ぜひ参考にして、資本性劣後ローンの手続きを進めてください。

どこに相談すればよいのか?認定支援機関の探し方

日本政策金融公庫の新型コロナ対策資本性劣後ローンの対象者は、大きく3つに分かれます。そのうちの1つの対象要件として「原則として認定経営革新等支援機関(認定支援機関)の指導を受けて事業計画を策定した方であって、かつ民間金融機関などとの協調支援により事業の発展又は継続を図る方」と定められています。

次の手続きプロセスで、相談先などを検討してください。

1)顧問税理士、取引先金融機関に相談する

本制度は「認定支援機関の指導を受ける」ことが、原則となっています。まずは顧問税理士に認定支援機関に登録しているかどうかを確認して、登録している場合は支援を依頼してください。

「民間金融機関等との協調支援」という原則もありますので、取引先の金融機関に協調融資の可能性などについて相談するのも、忘れないようにしてください。認定支援機関に登録している金融機関もありますので、確認・相談することから始めましょう。

2)紹介を受ける。検索する

認定支援機関である顧問税理士などからの支援が受けられない場合は、顧問税理士に他の認定支援機関の紹介を依頼する方法もあります。「認定経営革新等支援機関検索システム」から探すことが可能です。

認定支援機関は、商工会や商工会議所なども登録しています。会員の方は、支援を受けられるかどうかを確認してみましょう。

3)どうしても見つからない場合は?

どうしても認定支援機関が見つからない場合は、認定支援機関に登録していない資金調達の専門家などから事業計画などのアドバイスを受けながら、認定支援機関である顧問税理士の内容確認を受け、申請をする方法もあります。

本制度では、認定支援機関の「事業計画に対する所見の記載、署名、及び押印」が必要です。3)のやり方を選択する場合は、あくまでも認定支援機関である顧問税理士に内容を確認していただき、指導を受ける必要があります。

それでも見つからないという場合は、日本政策金融公庫に相談してください。認定支援機関からの支援を受けなくても、申請可能なケースもあるようです。

どのような書類が必要なのか?

国民生活事業の「新型コロナ対策資本性劣後ローン」に申請する際には、以下のような書類を準備・作成して提出する必要があります。

提出する書類一覧

書類説明
借入申込書日本政策金融公庫の国民生活事業のページに、借入申込書のフォーマットがアップされています。表面および裏面を両面印刷、または2枚出力して提出します。
最近2期分の確定申告書・決算書のコピー勘定科目明細書を含みます。
事業計画書日本政策金融公庫の国民生活事業のページの「54事業計画書(新型コロナ対策資本性劣後ローン用)」を印刷して使用します。
資金繰り表相談月から最低1年間の資金繰り表を作成のうえ、事業計画書上黒字化するまでの期間を作成します。
これまでに日本政策金融公庫と取り引きのない事業者
  • 法人の履歴事項全部証明書または登記簿謄本(原本)
  • 企業概要書または創業計画書(税務申告未了の場合は創業計画書を提出します。)
  • 許認可証のコピー(飲食店などの許可・届出等が必要な事業を営んでいる方)

出典:3 新型コロナウイルス感染症対策挑戦支援資本強化特別貸付(新型コロナ対策資本性劣後ローン)」(2 ご提出書類|日本政策金融公庫

なお税務申告が1期しか完了していない事業者は、1期分の確定申告書・決算書のコピーの準備が必要です。事業を始めて間もない事業者で税務申告未了の場合は、提出する必要はありません。

事業計画書については「既に策定されている事業計画書と重複する項目がある場合は、改めて記載する必要はない」とされていますが、できれば記載するようにしましょう。日本政策金融公庫が用意しているフォーマットを中心に資料作成をして、提出することをお勧めします。

上記書類の他にも、面談の際に帳簿などの資料が必要になります。また設備資金を申し込む場合は、見積書も必要です。

事業計画書の書き方について

事業計画書は、以下のような構成になっています。

  1. 事業の概要、商品、サービスの特性
  2. 新型コロナウイルス感染症の影響
  3. 新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた今後の見込み
  4. 事業の継続・発展を図るために必要な資金
  5. 業績推移と今後の計画
  6. 借入金・社債の期末残高推移
  7. 認定支援機関の所見等
  8. 認定支援機関連絡先

項目1~6については、事業者が作成を行い、項目7~8は認定経営革新等支援機関等が記載することになっています。1~6についても、認定支援機関の専門家に相談に乗ってもらいながら作成することは可能です。

提出前には、必ず認定支援機関より事業計画に対する所見の記載、署名、および押印を受けてください。

日本政策金融公庫の国民生活事業のページの「54事業計画書(新型コロナ対策資本性劣後ローン用)」を参照にした事業計画書作成イメージは、以下のようになります。事業計画書作成の参考にしてください。

〈新型コロナ対策資本性劣後ローン 事業計画書作成イメージ〉

〈業績推移と今後の計画作成イメージ〉

続いて、日本政策金融公庫の国民生活事業のページの「54事業計画書(新型コロナ対策資本性劣後ローン用)」の、業績推移と今後の計画を参考に作成したイメージは、次の通りです。事業計画書に添付する業務推移と今後の計画を作成する際には、参考にしてください。

事業計画の作成ポイントを押さえよう

最後に、事業計画の作成ポイントごとに、注意点をまとめました。内容をしっかり押さえ、準備を進めてください。

  1. 事業の概要、商品、サービスの特性

「事業の概要、商品、サービスの特性」については、自社のことですから書こうと思えばいくらでも書けると思われます。しかしここは限られた文字数で、なるべく簡潔にまとめるよう意識してください。

  1. 新型コロナウイルス感染症の影響

新型コロナウイルス感染症の拡大によって、1で説明した事業や製品サービスがどのような影響を受けたのか、影響によってどうなったのかについて、ヒト(人材)・モノ(製品)・カネ(資金)などを切り口にして、可能な限り端的に書くよう意識してください。

  1. 新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた今後の見込み

2を受けて現状の置かれている状況に対して、今後どのような対応策を検討しているのか、今後どういった展開が考えられるのか、また資金をどのように活用するのかについて端的に書いてください。

  1. 事業の継続・発展を図るために必要な資金

特に難しい箇所はないと思われますが、「民間金融機関からの借入」の箇所については、融資決定前および融資後1年以内に状況確認のため日本政策金融公庫から協調支援予定先に連絡する場合があります。事前に取引金融機関に了承を得るように注意してください。

  1. 業績推移と今後の計画

今後の計画については、別紙で事業者によっては最大20年にもおよぶ計画書を作成する場合もあります。「10年、20年後にどうなっているのかなど、分からない」と思われるかもしれませんが、それでも必要な計画です。

日本政策金融公庫が公表している記入例については、4年期目~7年期目までは売上高・利益は同じです。さらに8年期目~10年期目までが同様な推移になっています。大きく捉えてこのような大雑把な長期的な展望としての数値でもかまわないと考え、作成してください。

  1. 借入金・社債の期末残高推移

前期実績から今期見込、計画1期目から最終目標まで記載します。実際には、今後ここに書かれている借入金の返済する必要がありますので、5の「業績推移と今後の計画」との整合性についても十分に注意してください。

簡潔にポイントについて説明しましたが、さらに提出したい資料や計画書などがあれば、別紙として用意しましょう。認定支援機関と相談しながら、準備を進めてください。


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この記事の著者

吉田 学(よしだ まなぶ)

財務・資金調達コンサルタント
株式会社MBSコンサルティング 代表取締役。1998年の起業以来、「資金繰り・資金調達支援」に特化して創業者や中小事業者を支援。これまでに1,000 社以上の資金調達相談・支援を行い、その資金調達支援総額は20億円超。主な著書に、「社長のための資金調達100の方法」(ダイヤモンド社)、「究極の資金調達マニュアル」(こう書房)、「税理士・認定支援機関のための資金調達支援ガイド」(中央経済社)などがある。また、全国の経営者・士業などを対象にした会員制の資金調達勉強会「資金調達サポート会(FSS)」を主催している。

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