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ネーミングアプローチを知って、愛される商品・サービス名を付けよう

新しい商品やサービス、メニューなどに付ける名前は、その商品やサービスの行方を左右する鍵。その役割の重要性を理解してはいても、実際に愛される・売れる商品名やサービス名を付ける「ネーミング」は、難しいものです。

そこで今回は、日本ネーミング協会会長である岩永 嘉弘氏にネーミングの役割や重要性について解説していただきました。適切なネーミング方法やコツ、極意を「ネーミング基礎講座」として解説します。

岩永 嘉弘(日本ネーミング協会 会長)

一般社団法人 日本ネーミング協会会長、コピーライター、ネーミングクリエイター。代表的なネーミングに「日立洗濯機からまん棒」「新宿MY CITY」「東急Bunkamura」「日清oilio」「ホンダFIT」「渋谷109」「大塚製薬UL/OS」「Solaseed Air」などがある。著書『最強のネーミング』(日本実業出版社)、『ネーミング全史』(日本経済新聞出版社)など多数。日本ネーミング協会を設立し、ネーミングの質の向上、価値の創造を目指す。

愛されるネーミングには「つい口ずさみたくなる、親しみやすさ」がある

――ずばり「ネーミング」とは何でしょうか?ネーミングの役割や効果、重要性などについて教えてください。

ネーミングとは「モノ・コト」に名前を付けることです。商品ありきで、商品企画から誕生したばかりの名なしの商品に名前を付ける行為、これがネーミングです。ネーミングされていなければ、どんなに良い商品があったとしても世間に周知できず、手にとってもらう機会が生まれません。ネーミングは、その商品やサービスの最初の一歩であると考えましょう。

ネーミングされた商品名やサービス名はデザインされ、ロゴやパッケージになることもあります。そして、ネーミングの冠をかぶった商品が企業のブランディング戦略に則って、店頭に並ぶ。これが、商品の開発から販売に至るまでの一連の流れとなっています。

なおネーミングと共に、商品を消費者に訴求する手段が広告です。広告はネーミングをビジュアル化・音声化し、商品の存在を世の中へ効果的に伝えます。広告を見た消費者が実際にお店へ足を運んでくれるかどうか、買ってくれるかどうかは、ネーミングの質しだいということです。ネーミングは、広告マーケティングにおける核のようなものと考えましょう。

――愛される・売れるネーミングかどうかを判断するポイントや、共通点を教えてください。

ターゲットの心に届く言葉であることが、前提になります。そのうえでネーミングで重要になる要素が「音になったとき、口ずさめるような親しみやすさ」です。ネーミングは商品に限らず、キャンペーンなどの「モノ・コト」を広く伝えたい場合にも、その効果を発揮します。

例えば、「三密」といったこれまでにはなかった概念が一気に広がったのも、「密閉」「密集」「密接」という3つの密を表現するネーミングが、その機能を果たしたことが理由だと考えます。

愛される・売れるネーミングは、それが言葉になったときに、

  • 読みやすさ
  • 聞きやすさ
  • 覚えやすさ

という3つのポイントを押さえています。

歌のように口ずさめるくらい親しみやすいと、伝わりやすいネーミングとなるでしょう。

――商品名やメニュー名を変えたら、売上などが上った事例もあると思いますが、最近の事例も含めをいくつか教えていただけますか?

商品名を変更して売上が上がった事例としては、以下のようなものが挙げられます。

  • ネピア:ネピア モイスチャーティッシュ→鼻セレブ
  • 伊藤園:缶入り煎茶→お〜いお茶
  • サントリー:WEST(ウエスト)→BOSS(ボス)
  • 日清:カップカレーライス→カレーメシ
  • レナウン:フレッシュライフ→通勤快足

これらはネーミングの響きだけでなく、その商品が持っている機能や特徴を見事に表現することで、爆発的な売上を達成しました。消費者が商品に対して抱いている期待感をネーミングで可視化できたことが、成功の要因といえるでしょう。

――逆に、愛されない・売れないネーミングには共通性などはありますか?

商品やサービスの特徴やメリット、競合との差別化が言語化されていないネーミングは、あまり効果がありません。

少し昔の話になるのですが、牛乳やお茶の市場ではブランド名だけで商品を販売していた時代がありました。例えば、牛乳であれば「森永牛乳」「明治牛乳」「雪印牛乳」といったように、社名やブランド名がネーミングになっていたわけです。

それまで、漠然としたブランドやイメージだけで販売していたので、消費者もそれぞれの商品にどのような違いがあるのか認識していませんでした。しかし、あるときから「毎日骨太」「雪印メグミルク牛乳」「特濃」と商品の強みをアピールするネーミングを使いだしたのです。

その結果、一見しただけでは内容や種類が分からない、強みが明確に伝わらないネーミングの商品よりも、購入者の期待感を刺激するネーミングが施された商品の方が売上がアップする結果となりました。とにかく、分かりづらいネーミングはNGと考えましょう。

ネーミングプロセスを知ろう

――ネーミングの実施方法は千差万別だと思いますが、具体的な方法や考え方などがあれば紹介していただけますか?

ネーミングを実施するステップは、以下のようになります。

  1. 商品実態の把握
  2. マーケティングコンセプトの把握
  3. ターゲットの分析
  4. ネーミングアプローチの設定
  5. キーワード検索
  6. ネーミング作成
  7. ネーミングチェックポイント検証
  8. ネーミングの商標登録

商品実態の把握~マーケティングコンセプトの把握

まず、対象となる商品について、

「屋内・屋外どちらで楽しむものなのか?」
「日常的に利用するものなのか?」
「旅行やレジャーで使うものなのか?」
「利用するシーンは朝・昼・夜?」

といったさまざまな視点で検証することで、目指す方向性を定めましょう。一方、どんな商品が競合になっているのかについても調査しておく必要があります。

ターゲットの分析

次に、商品のターゲットになる層を明確化しましょう。

「男性か女性か?」
「若者かシニアか?」
「既婚か未婚か、子どもは何人いるのか?」
「大学生か高校生か?」
「理系か文系か?」
「ホワイトカラーかブルーカラーか?」
「戸建住まいか賃貸住まいか?」

など

ターゲットのペルソナを可能な限り明確化しておくことが重要です。

ネーミングアプローチの設定

コンセプトが決まったら、今度はそれをどのように消費者に伝えれば良いのか、アプローチの方向性を検討します。

例えば、

「ユーザーの立場に立ったほうが良いのか」
「単純に安いことを主張したほうが良いのか」
「おいしいということをアピールしたほうが良いのか」

といった視点で、消費者へのアプローチの方向性を決めていくのです。

キーワード検索

アプローチの方向性が決まったら、次はキーワードの検索をします。例えば「若い」という方向性を打ち出したい場合は、「若い」ということを表す言葉をいくつも探して集めることがコツです。

日本語はもちろん、英語やフランス語、イタリア語、さらに古語や昔話などさまざまな言葉から取り出してきます。このキーワード探しが、ネーミングの作業で最も時間がかかる部分です。

ネーミング作成

あらゆるジャンルから集めてきたキーワードを、組み合わせたり加工したりしながらネーミングを作っていきます。とはいえ、いきなり名前を考えるのは困難なので、ネーミングアプローチを決めてから実施するのがおすすめです。

例えば、薬のネーミングを行う際には、

  • 製法
  • 効用
  • イメージ
  • ターゲット
  • ライフスタイル

などの中から検討していくと良いでしょう。

一方、食品の場合は、

  • 原料
  • 場所
  • 時間
  • 栄養価

といった要素から検討してみるのが良いと思います。

また、以下のような視点も加えることで、さらに多様なアプローチが可能です。

  1. 漢字
  2. 語呂合わせ
  3. 当て字
  4. 略語
  5. オノマトぺ(擬音語、擬態語)
  6. 記号数字
  7. 会話語
  8. 言葉遊び

ネーミングアプローチの方向性を決めたら、そこから抽出したキーワードを以下ネーミングの基本パターンを使って、案を出してみましょう。

  • 素ネーミング: 「山崎」「響」など、そのままの単語を使うもの
  • 足し算ネーミング: ママ+レモン=ママレモン、wash+let=ウオッシュレット、カロリーメイト、ハッピーターンなど2つ以上のキーワードを足したもの
  • 引き算ネーミング:(安心ですメロン)―シン=アンデスメロンなど、組み合わせた単語の一部を引いたもの
  • 掛け算ネーミング:HipHop、カラムーチョ、シン・ゴジラなどのように、語呂や音感で言葉を組み合わせたもの

ちなみに、文字数は俳句などと同じ「575」の音節で作るのも効果的ですが、必ずしもそこにこだわる必要はありません。

ネーミングチェックポイント検証

我々が言葉を発し、そして聞くとき、本能的に以下のような感覚を抱く傾向があります。その傾向を理解し、ネーミングを実際に発話した際、消費者が抱くイメージと狙ったネーミングアプローチが合致するのが理想的です。

具体的な確認方法としては、ネーミングの素案ができあがったら商品の特徴やターゲット、マーケティングコンセプトにマッチするかを以下の母音、子音の表から確認し、必要があれば再検討しましょう。

ネーミングの商標登録

ネーミング案が絞り込めたら、必要に応じて商標チェックを行います。同一または類似する商標がないか、登録に関して問題はないかをチェックしていきます。このとき同じ名前が既に存在していた場合は、候補から除外するのが一般的です。

そして、実際にできあがったネーミングを社内でレビューして、反応が良かったものに絞り込む社内調査を実施します。この段階でかなりのネーミング案がボツになるわけです。その後、プレゼンを行ってネーミングの最終決定をします。

ネーミングが決定したらデザイン部隊と合流し、容器のデザインや形、ロゴなどを含めたパッケージを作っていきます。このとき、パッケージやデザインの商標チェックも忘れないようにしましょう。ネーミングはOKでも、デザインなどが意匠登録されているケースがあります。

この段階でようやく商標登録の申請が行えます。なお、商標の確認は特許庁のホームページで調査できますので、必ず事前に確認しておきましょう。

――ネーミングにおいてターゲットにマッチする言葉選びは非常に重要ですが、例えば企画者が40代でターゲットが10代である場合など、あまりにも年代が違いすぎると発想するのが厳しいケースもあると思います。このような場合はどうしたら良いのでしょう?

ターゲットに近い年代の方にキーワード選出を依頼したり、古い言葉やマニアックな言葉が必要な場合は、専門家に相談することもあります。しかし、実際にはそのような時間的余裕がなく、ネーミングをする方のセンスやボキャブラリーに頼らざるを得ない部分が多分にあります。

例えば、「獺祭(だっさい)」という日本酒があるのですが、「獺」は「カワウソ」のことで、正岡 子規のエピソードなどを知っていないとおそらく出てこない言葉です。また、「青天の霹靂(へきれき)」という名前のお米も同様ですね。そもそも、青天の霹靂というボキャブラリーを持っていなければ、そのようなネーミングはなかなか思いつかないでしょう。

したがってネーミングを行う人は、普段からボキャブラリーや知識を増やすために勉強しておくことが必要なのです。

愛されるネーミングを生み出すコツ

――愛されるネーミングを生み出すコツを教えてください。

ここまでお話してきた、さまざまな方法を使ってネーミングを考えるわけなのですが、実際のところクライアントの好みで決まることも多いものです。ただし最後の1つに絞り込む作業は難航することが多いので、私なりの8つのポイントで決めていきます。

  1. 理念の凝縮化(商品企画のコンセプトが表現されているか)
  2. 簡明か(覚えやすいか)
  3. 視覚性(美しいか)
  4. サウンド性(音に乗れるか)
  5. 耐久性(流行りなどで経年劣化が早いか否か)
  6. 比類似性(他に似たものがないか)
  7. 品格(会社やブランドのイメージにふさわしいか)
  8. 親しみやすさ(ターゲットと親和性があるか)

以上のポイントに加えて企業やブランドのカラーを考慮し、トータルなポイント数で決めていけば、消費者の琴線に触れる「愛されるネーミング」が生まれる可能性が高くなるでしょう。

――リリース後、名称変更を検討するべき判断基準はありますか?

ネーミングを世に出した後、実はネガティブな意味を含んでいたことが発覚したケースなどですね。しかしネーミングを検討する際に、かなり慎重に調査を重ねるので、実際に名称変更が必要になるケースは、ほとんどありません。

ただしマーケットや国によっては、そのようなケースもあり得るでしょう。例えば、ホンダの「フィット」という名前にはスペイン語のスラングを含むことからアメリカや中国以外では「ジャズ」という名前で売られていたり、「カルピス」がアメリカでは「カルピコ」という名前で売られていたりするケースが挙げられます。

ですが同じマーケットの中では、よほどマイナーなものが隠れていない限り、ネーミングの検討段階でつぶせることがほとんどでしょう。

――最後に、商品やサービスのリリース後に、ネーミングが成功したか否か判別する方法を教えてください。

目標の売上を達成することが最大の目的ですが、考案したネーミングがいかに多くの人に伝わったかという点も重要です。そのネーミングが狙い通りに市民権を得ることで、メディアへの登場回数増加や、多くの人に使用されることが成功の指標といえます。

例えば「渋谷ヒカリエ」というネーミングによって、いくら売上が上がったかという効果は分かりません。しかし、渋谷ヒカリエという言葉を多くの人が使って、広く流通しているという結果が重要なのです。

ネーミングを付ける目的はさまざまなので、単純に売上などのKPIだけでは測れない部分も多いことを覚えておきましょう。

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