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【経理の日特別対談】スモールビジネス飛躍の鍵は「ファイナンス思考」とデジタル活用

3月31日の「経理の日」にちなんで、「経理・会計」をテーマにした特別対談をお送りします。ゲストはシニフィアン共同代表の朝倉 祐介氏。元ミクシィ代表取締役社長兼CEOとして、同社業績のV字回復をけん引しました。朝倉氏の「ファイナンス思考」の重要性に触れながらコロナ禍でデジタル化が進む現在、スモールビジネスの飛躍のポイントなどについて伺いました。ホストは弊社代表取締役社長の岡本 浩一郎です。

朝倉 祐介(シニフィアン株式会社 共同代表)

兵庫県西宮市出身。2007年に東京大学法学部を卒業後、マッキンゼー・アンド・カンパニーに入社。2010年に大学在学中に設立したネイキッドテクノロジー代表兼CEOに就任。2011年、同社のミクシィへの売却に伴い、ミクシィ代表取締役社長兼CEOに就任。2015年、セプテーニ・ホールディングス社外取締役、Tokyo Founders Fundパートナーなどを務める。2017年にシニフィアン設立、共同代表に就任。政策研究大学院大学客員研究員。著書に、『論語と算盤と私』、『ファイナンス思考』など。

岡本 浩一郎(弥生株式会社 代表取締役社長)

1969年、神奈川県生まれ。東京大学工学部を卒業後、野村総合研究所に入社。約7年にわたりエンジニアとして大企業向けシステムの開発・構築に携わる。その間、カリフォルニア大学ロサンゼルス校のアンダーソンスクールに留学、MBA取得。ボストンコンサルティンググループを経て、2000年6月にコンサルティング会社リアルソリューションズを起業。2008年4月より現職。

会計は、目的地に向かう会社の「現在地」を示すもの

岡本:本日はよろしくお願いします。まずは朝倉さんのご紹介から始めたいと思いますが、現在はシニフィアンの共同代表として、どんな事業をされているのですか。

朝倉:よろしくお願いします。シニフィアンは上場・未上場を問わずスタートアップの成長支援をする会社で、パーパス(存在意義)に「未来世代に引き継ぐ新産業の創出」を掲げています。具体的には、スタートアップを支援するグロースファンド「THE FUND」を通じてリスクマネーを提供したり、クライアントの経営陣と一緒に経営戦略のブラッシュアップをしたり、経営アドバイザリー業務も手がけています。

岡本:そんな朝倉さんを迎えての対談のテーマは「会計」です。朝倉さんにとって会計が意味するものとは?

朝倉:どの会社にも、戦略、事業計画、ビジョンなど、目指す方向や目的地がありますよね。それらに対して自分たちの会社がどの位置にいるのかという現在地を確認するもの。それが会計の一機能だと思います。

岡本:私もそう思います。一般に会計というと、「税金を納めるため」など後ろ向きな捉え方をされますよね。そうではなく「自分たちの会社が今どこにいるのか、目的地に向かって時速何キロメートルで走っていて燃料がどれだけあるのか」を可視化するのが会計ですよね。それに基づいてアクションを取らなければ、走り続けることはできません。

痛感した資金繰りの難しさ。自分の叫び声で飛び起きた

岡本:朝倉さんのその会計の捉え方は、学生時代の起業やミクシィでの経営者経験で培われたのでしょうか。

朝倉:そうです。自分が経営者になって、会計や経理、ファイナンスの重要さを痛感しました。マーケティング、組織論、オペレーションなど、ビジネスに関わる重要な機能は多々ありますが、そうした機能の中でもファイナンスは段違いで重要だと思っています。

岡本:日本ではお金に関する教育はなぜかタブーですね。そのため起業後に資金繰りに苦しむ経営者は多い。朝倉さんはいかがでしたか。

朝倉:私も資金繰りのことが常時頭の中にあり、昼間は資金繰り表を見ながらお金の回収に頭を悩ませ、パソコンのオンライン口座の画面を見ながら、更新ボタンを連打して何かの間違いでお金が増えないかと考えたこともあります。夜は資金ショートする夢を見て自分の叫び声で目が覚めたり。寝ている間の歯ぎしりで歯も折れてしまいました。

岡本:すごいエピソードですね。

朝倉:給料日というのは多くの方にとっては楽しみな日ですが、私は憂鬱でした。支出は私の役員報酬も含みますが、会社のお金がそれだけ減ったと実感する日でしたね。

岡本:私の予定表も、毎月25日の欄に「給料日」と記入しています。これには従業員にお金を支払う日、自分がお金を受け取る日、会社がキャッシュを確保しなければならない日など、いろいろな意味を込めています。

朝倉:コンサルティングファームで働いていたときも、PL(損益計算書)を扱う機会はありましたが、BS(貸借対照表)やCF(キャッシュフロー)は見る機会はなかったんですね。経営者になって、財務三表はもちろんですが、それ以上に日々の資金繰りが、小規模な企業経営においては重要だと痛感しました。

岡本:私もそうでしたが、コンサルタントはPLの数字の裏にあるキャッシュを見ませんね。自ら資金回収することもないですし、今考えると視点が浮世離れしていました。本来はキャッシュイン、キャッシュアウトの動きを見ることが大切で、資金繰りが厳しければ早めに資金調達の手を打つことを決める。それが会計であり、経理であり、ファイナンスの基本だと考えています。

ミクシィ代表に就任した直後に同社初の赤字を経験

岡本:ミクシィの代表に就任されたのは、同社が初の赤字を出した年だそうですが、朝倉さんが業績回復に向けて意識されたこと、感じたことは。

朝倉:当時のミクシィは全社的に収益の意識が欠けがちだと感じました。そこはスタートアップにいたころとの大きな違いでした。とはいえ利益は出ており、上場以来キャッシュで困ることはありませんでした。いかに良いサービスを作るかに集中していましたね

私が代表に就任した年の第一四半期に、上場以来初の赤字決算になりました。3月決算で株主総会が6月にあり、私の就任から直後のことでした。

岡本:最終責任者とはいえ、納得がいかないですよね(笑)。

朝倉:赤字になったミクシィですが、当時の売上が130億円程度あり、それと同等額のキャッシュがある状態でした。良くなかったのは、そのキャッシュが非常備蓄化していたことです。

しかし、その発想は間違っていますよね。キャッシュは社員が食いつなぐためにあるのではなく、それを元により大きな事業を作り、世の中に貢献していくためのものです。当時、投資家に還元しないのであれば、成長投資に使うべきだと言い続けました。

岡本:赤字に転落して、社内に危機感は生まれましたか。

朝倉:危機感はあったと思います。社内で働いていたのはイノベーター層で、競合サービスと比べて自社サービスの状況がよくないのは明らかだったはずです。とはいえ、既存のサービスの質を上げて、FacebookTwitterに対抗するのも難しい状況でした。

04年ごろから世界各地でローカルSNSが勃興しては、資本力やエンジニアの数に勝るFacebookにつぶされていましたから。まともに戦っては勝ち目がなかったんです。

広い視野で将来を含めて見る「ファイナンス思考」の重要性

岡本:そこからターンアラウンドして、短期間で業績をV字回復させるわけですが、そのためには目先の売上を作る、コスト削減をするだけでなく中長期的な成長のバランスを取ることも必要ですよね。朝倉さんはどうされたのですか。

朝倉:この先もジリ貧のままなら、株主、従業員、ユーザー、クライアントなどステークホルダーのことを考えると、本当に自分たちの会社が独立経営していくことが正しい選択なのかという点まで振り切って考えていました。

そこまで考えたうえで、目先の事業に関してはコストを削りつつ、売上の減少を抑制する施策を講じました。これはブレーキを踏む方です。一方、既存事業に加えて、新しい事業への投資も行いました。これはアクセルを踏む方です。違うアクションを同時に行うため、どうしても混乱は生じますが、両方のバランスを取りながら進めるしかない。

リンクトイン創業者のリード・ホフマンが、「スタートアップとは、崖から飛び降りる中で部品を与えられ、地面に墜落するまでの間に飛行機を造ること」と言っています。当時、私も同じような意識を持っていましたね。

岡本:両方のバランスをとると言うのは簡単ですが、結果を求めると、目先の売上やコスト削減を優先したくなりますよね。しかし、それでは将来の展望を描けません。そこで必要なのが朝倉さんが提唱する、広い視野で将来を含めて見る「ファイナンス思考」です。

最もスモールビジネスの経営者は、「経理は経理で分かるが、ファイナンスって何?」という感覚を持つ方も多いものです。私は大企業やスタートアップだけでなく、スモールビジネスにもファイナンスの知識や感覚は重要だと思いますが、その点いかがですか。

朝倉:おっしゃるとおりです。100%オーナー企業で、もう事業を大きくするつもりがなく、35年したらリタイアして会社を閉じればいいと考える経営者がいてもいい。そういう方にとっては、ファイナンス思考は縁のない話です。

ですが、成長意欲を持つ会社や先々の世代に事業を承継したいと考える経営者であれば、ファイナンス的なモノの考え方は必ず理解しておきたいものです。

岡本:そうですね。皆やりたいことや夢を持って起業・開業します。しかし、23年経つと日々の売上確保に精いっぱいになり、最初の動機や目的を忘れてしまいがちです。目先のキャッシュを稼ぐことに集中してしまうと、目的地にたどり着けなくなります。ここで広い視野を持つファイナンス思考が必要になってくる訳です。

朝倉:私はファイナンス思考の対比で「PL脳」という言葉を揶揄的に使っていますが、経営者はPLを見ることも必須です。注意したいのは、PLの利益はキャッシュではないということ。これをキャッシュと誤解していると黒字倒産しかねません。「うちは無借金だから問題ない」「うちは黒字だから健全経営だ」という経営者がいます。しかし、資金調達にもお金はかかっており、資金を上回るリターンを出せなければ実質赤字です。

例えば個人の資産運用でも、3%の金利の債権を買うために、8%の金利で融資を受ける人なんていませんよね。利回りが金利より低いと、返済分も賄えません。けれども、同じようなことを、会社レベルだとしてしまっているケースが少なくありません。PLだけ見て黒字だからOKと誤解している経営者は上場企業にも見受けられます。

岡本:「うちは黒字だから大丈夫」は私もよく聞きます。

朝倉:またPLをよく見せようとしてコスト削減をするあまり、将来の成長投資を削らないようにすることも大事です。それは未来に得られたであろうキャッシュフローの先食いですから。ブランディング、研究開発、設備投資などの投資も、5年後、10年後に利いてくるものもある。自分の代で会社は終わりでもいいと考えられるような環境であればそれでもいいのでしょうが、会社の成長を望むならファイナンスのバランス感覚は磨いておきたいですね。

DXの進展やデジタル化が意味するものとは

岡本:昨年からの新型コロナウイルス感染症の影響で、経営者にとっては暗闇の中を手探りで歩む日々が続いています。一方で、これまで理想論とされてきた新しい働き方が実現してきており、新たなビジネスチャンスも生まれています。朝倉さんはこのニューノーマルなビジネスの現状をどう見られていますか。

朝倉:昨年は「働き方改革」に、あらゆる経営者が順応せざるを得なくなった年でした。きっかけは新型コロナウイルスという不幸な事象ですが、働き方改革やDX(デジタル・トランスフォーメーション)は進展しましたね。

岡本:公的支援が円滑に行われず、デジタル化の遅れを指摘する声も聞かれました。このDXの進展やデジタル化が意味するものとは。

朝倉:DXの概念は突然降って湧いたものではありません。以前から「本来あるべき姿はこう」と求められていたものが、労働慣習や慣行を破り、必要性に迫られて出てきたのです。例えば、私たちはエンタープライズ向けSaaSを事業展開するスタートアップを応援しています。SaaSは日本企業の非効率な働き方、押印やFAXでのやりとりといった労働慣習をオンラインに置き換えて生産性の向上や効率化を図るものですが、これも同じ。御社もDXが言われる以前から経理データのデジタル化を進めていますよね。

岡本:そうですね。デジタル化は何かと考えるとき、単に紙のデータ化を指すわけではないですよね。例えばAさん、Bさん、Cさんがいて、順に回していた紙の資料をデータ化することで、次からはAさんからCさんにデータを直接渡せるようになれば、業務改革につながります。そこまで変えて初めてデジタル化の効果と言えるのだと思います。

朝倉:デジタル化においては、おそらくステップ1で「生産性の改善」があり、ステップ2またはステップ3で「情報の共有・解析」があります。それを使って現場の動き方を変えていくことになりますね。

岡本:その先にあるのがDXですね。私なりのDXの定義は、会社の事業や業態を変えることです。例えば、Amazonの出発点はオンライン書店ですが、現在は小売りもありAWSというクラウドのインフラを提供し、医薬品も販売するなど、業種・業態を定義できません。このように、デジタルの力で定義を超えていくのがDX。大企業に限らずスモールビジネスにとっても、会社の事業や業態をデジタルの力で変えることが可能です。

コロナ禍でリアルな場に足を運びづらい現在は、お客さんの元に食べ物をデリバリーするビジネスが伸びています。例えばホテル事業では、従来はお客さんにホテルに来てもらい、おもてなしをしておいしいものを食べてもらっていました。それはそれですばらしいことですが、これからはそうした既存のビジネスのやり方に縛られる必要はないと考えています。

朝倉:そうですね。私はリアルとデジタルがつながる部分のビジネスに注目しています。これまでIT企業のサービスの多くがオンライン完結型でした。それが現在はデジタルがオフラインの物理的な空間に関与し始めていて、今までなかったデータを解析して現場にフィードバックしていくサイクルができてきています。

例えば、デリバリーサービスで、どこを配達員が走っているかなどのデータを集約的に管理・解析することで、現実世界により便利なサービスがフィードバックされるようになります。

スモールビジネスの飛躍のチャンスはデジタル活用にある

岡本:一般にデジタルの世界はスケールばかりが追求され、スモールビジネスは追いやられる側と見られがちです。しかし、スモールビジネスこそ従来のやり方に縛られず、デジタルを活用することで飛躍できるのではないでしょうか。

朝倉:スモールビジネスは、デジタル化やコロナ禍など時代の変革のタイミングで、自分たちの会社が何屋なのかを見つめ直すことが重要です。ミクシィでもSNS事業がシュリンクしていく中で、これを徹底的に議論しました。先ほどのホテルの話も、ホテルは会場に人を集めて食べ物やサービスを提供するというところから、より発展的な定義づけを迫られているのかもしれません。

大企業の資産はアドバンテージですが、決まった行動様式や組織の慣習に縛られたり、資産を維持する苦労もあります。

その意味で、事業の方向性を身軽に変えることができるスモールビジネスはチャンスだと思います。また数十年前なら、大企業しか導入できなかった高価な会計ソフトも安価で導入できますし、eコマースも増え、個人でも商品をお客さんに直接届けるしくみが整っています。スモールビジネスがこれらを利用すれば、百貨店や大手メーカーと同じ土俵で戦えますよね。スモールビジネスだからこそフットワークの軽さを発揮できるはずです。

岡本:おっしゃるとおりですね。この対談のまとめとして、まずは会計を通じて、会社の現在地をしっかり確認する。そこから目的地に向かって進むために起業・開業の原点を思い出し、現状に基づいたアクションを取る。それと同時に、時代がどう変わるのか、そこで自分がどんな価値を提供できるのかを見つめ直し、デジタルを活用してチャンスをつかむ。私はスモールビジネスだからこそ時代に適合して成長できると信じています。本日はどうもありがとうございました。

朝倉:こちらこそありがとうございました。

 


以下、経理の日特設サイトでは対談動画も配信しています。ぜひご覧ください。


弥報編集部
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