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なぜ小さな会社にも就業規則が必要なのか?【労働トラブルを防ぐ就業規則の作り方】

会社の成長には優秀な人材が不可欠です。従業員数百人規模の大企業であれば、その知名度だけでも人は集まりますが、社員が10人未満の小さな会社で優秀な人材を採用するには、まず「社会的信用」があるかが問われます。

この社会的信用の目安の一つとなるのが「就業規則」です。就業規則は労使間のさまざまなトラブルを防ぐというメリットもあります。今回は、小さな会社での就業規則の必要性と作り方のポイントについて解説していきます。

執筆者:和田 栄(特定社会保険労務士)

和田経営労務研究所所長。1988年、茨城大学人文学部社会科学科卒業。同年、日本鋪道株式会社入社。1996年11月、社会保険労務士試験合格。1997年7月、和田経営労務研究所(社会保険労務士事務所)開業。2007年3月、第2回特定社会保険労務士試験合格。4月、特定社会保険労務士登録。著書に、『ちょっと待った!! 社長! その就業規則 今のままでは紙切れ同然です!!』『ちょっと待った!! 社長! その残業代 払う必要はありません!!』『ちょっと待った!! 社長! 御社の人件費 もう見て見ぬふりはできません!!』(すばる舎)。座右の銘は、「成せばなる 成さねばならぬ 何ごとも 成らぬは人の 成さぬなりけり」(上杉鷹山)。

就業規則は「会社にルールと規律があることの証明」

従業員10人以上の会社には就業規則の作成義務があります。労働基準法に定められており、違反した場合は30万円以下の罰金が科されます。なぜ10人以上なのかは定かではありませんが、それくらいの人数になれば組織としての体をなすことになるので、会社のルールを明確にして労働トラブルが起こらないようにするという趣旨なのだと思います。

一方、従業員が10人未満であれば就業規則がなくても何とかなるだろう、ということなのでしょうが、本当にそうでしょうか?

ある会社で1人の応募者に内定通知を出したところ、その親御さんが「就業規則を見せてほしい」と言ってきました。しかし、その会社には就業規則がなかったので断ると「就業規則もない会社に子どもを就職させられない!」と内定を辞退してきたそうです。

スモールビジネス事業者も多い弥報Online読者の皆さまは、この話をどうお考えになるでしょうか。これは極端な例かもしれませんが、応募者本人やその家族が、ルールも明確でない会社で働くことに不安を感じるのも無理はありません。ブラック企業が横行する昨今はなおさらです。昔も今も「なぜ社会保険にも加入していない会社に就職するんだ」と言う親御さんは多いですが、就業規則についても同じような状況になりつつあります。

会社の発展のためには優秀な人材が欠かせません。しかし、ルールや規律が整っていない会社に優秀な人材は集まりません。社会保険への加入は最低条件で、加入していなければ世間一般にはブラック企業と見られます。また雇用契約書も必須です。書面での契約を交わさない会社は、怪しいと思われても仕方ありません。

そして、もう1つ重要なのが「就業規則」があるかどうか。就業規則があることは、その会社がルールに基づいた企業経営をしているという証明になるからです。

従業員に安心感を与え、労使間のトラブル防止に役立つ

従業員が能力を存分に発揮するには、安心して働ける環境がなければなりません。施設や機械設備などハード面の環境整備も大事ですが、就業規則などソフト面の環境整備も不可欠です。

その都度、社長の思いつきで物事が決まるようでは従業員はたまったものではありません。また、ルールは事前に公表されていないと間違いが起こります。このルールを明文化したものが就業規則です。

例えば病気で長期間休業した場合に退職となるケースで、就業規則がある場合とない場合を比べてみましょう。

【就業規則がない場合】
従業員:「療養が長引いてしまって、ご迷惑おかけして申し訳ございません」
社 長:「気にしなくていいよ。でもそろそろ3か月になるか。すまないけど退職になってしまうね」
従業員:「えっ、解雇ってことですか?」
社 長:「いや休職期間満了だよ。どこの会社でもあるだろう」
従業員:「確かにありますけど、聞いていませんよ」
社 長:「今まで休職者がいなかったからね。君が初めてのケースなんだよ」
従業員:「だからって突然退職と言われても……。私にも生活がありますよ」
社 長:「健康保険の休業補償は退職後も続くらしいから、生活は大丈夫だと思うよ」
従業員:「でも不安ですよ。何とかなりませんか」
社 長:「何とかと言われても。会社としても困るんだよな……」

また社長は休職期間満了と言いますが、休職制度が明確になっていないので、一方的に退職させる場合は解雇となります。解雇には正当な理由が必要です。はたして休業3か月が正当な理由になるかどうかは微妙なところです。一方的に解雇すれば、解雇無効の訴えを起こされる可能性もあります。

休業が3か月に及んでもまだ復帰の目処が立たないのでは、業務に支障を来します。社長が退職してほしいと考えるのも無理はありません。しかし従業員からすると、そんな話は事前に聞いていないし、働くことができない状態で退職させられては生活が困窮します。何としてでも退職を拒否するはずです。

【就業規則がある場合】
従業員:「療養が長引いてしまって、ご迷惑おかけして申し訳ございません」
社 長:「気にしなくていいよ。でも就業規則では、休職期間は3か月までと規定しているんだ。すまないけど退職になってしまうね」
従業員:「はい、それは承知しています。でも健康保険の休業補償は続きますよね?」
社 長:「それは大丈夫。詳しい説明はあらためて担当者からしてもらうから心配いらないよ」
従業員:「ありがとうございます。お世話になりました」

誰でも病気になったときのことを不安に感じています。特に仕事を続けられるかどうかは、従業員にとって切実な問題です。ですから就業規則にはどんなときにどれくらいの期間休めるのか明記しておくことが重要です。いざというときにどうなるのかを知っていれば、従業員は安心ですよね。

もちろん本人は会社を辞めたくないでしょうが、あらかじめ休職制度について知っていたので、心の準備ができています。100%納得するのは難しくても、仕方ないというレベルでは納得してもらえるでしょう。

【記載例】
第〇条(休職)
1.従業員が私傷病により欠勤し、欠勤開始後1か月以内に復職できなかった場合は、休職とします。
2.休職期間は次のとおりとします。
 ① 勤続年数1年未満      1か月
 ② 勤続年数1年以上5年未満  3か月
 ③ 勤続年数5年以上10年未満 6か月
 ④ 勤続年数10年以上     1年

就業規則は従業員に安心感を与えると同時に、労使間のトラブル防止にも役立ちます。これは社長にとってメリットになります。悩みの中でも人に関するトラブルは大きなストレスになるからです。これを取り除ければ、社長は安心して事業に専念することができるはずです。

従業員の権利は会社の義務、従業員の義務は会社の権利

「就業規則は従業員の権利を定めたもの」と思っている方も多いでしょうが、実際はそうでもありません。権利について定めている一方で、義務についても定めています。むしろ一般的には権利よりも義務の方が多めです。ルールとは自由を制限するために作るものだからです。

私が就業規則を作ると、権利よりも義務の方が3倍くらい多くなります。従業員に厳しくしているわけではなく、ルールを明確にすると自然とこのくらいの量になるのです。

権利と義務は表裏一体です。従業員の権利は会社の義務、従業員の義務は会社の権利になります。就業規則の項目を権利と義務に分けると次のようになります。

【従業員の権利/会社の義務】
・勤務時間、休憩、休日
・年次有給休暇、慶弔休暇、裁判員休暇
・休職
・生理休暇、妊産婦の時間外制限、産前産後休業、育児休業、介護休業、短時間勤務
・給与、賞与、退職金
・表彰

 

【従業員の義務/会社の権利】
・提出書類、身元保証人、採用の取消し、雇用契約の有効日、試用期間
・超過勤務、日直・宿直、職場外労働
・復職
・出張、異動、出向、転籍
・服務規律
・出勤、退勤
・安全、衛生
・懲戒処分
・解雇
・退職
・教育訓練

項目数を見ると義務は権利よりも多少多めといったところですが、「服務規律」と「懲戒処分」のボリュームが大きいので条文の数は3倍くらいになります。実はトラブル防止にはこの2つの項目がキモになります。これらを明確に記載することで従業員はすべきこと、してはいけないことを理解するのです。

服務規律には従業員にしてほしいこと、してほしくないことを記載します。

【服務規律の記載例】
従業員は次の事項を守り、品位の保持と良好な人間関係の構築に努めてください。
・勤務時間内外を問わず、常に品位を保ち、会社の名誉や信用を傷つける行為をしないこと

懲戒処分には禁止事項を記載します。

【懲戒処分の記載例】
従業員が次のいずれかに該当した場合は、けん責、減給、出勤停止、降格降給のいずれかの処分にします。
・無断または許可を受けることなく(無許可)、欠勤、遅刻、早退、私用外出、面会をしたとき

就業規則をしっかり読ませることがトラブルを防ぐ

重要なのは従業員に就業規則を読んでもらうことです。いくら就業規則に詳細に記載していても、誰にも読まれなければ意味がありません。したがって従業員がいつでも読める状態にしておく必要がありますが、できれば入社時に読んでもらうのがいいでしょう。

スポーツやゲームはルールを知らなければできません。これと同様に会社で働くのであれば、その会社のルールを事前に知っておく必要があります。それが雇う側・雇われる側それぞれに安心感を与え、無用なトラブルを防止することになるのです。

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和田 栄(わだ さかえ)/ 特定社会保険労務士
著者:和田 栄(わだ さかえ)/ 特定社会保険労務士
和田経営労務研究所所長。1988年、茨城大学人文学部社会科学科卒業。同年、日本鋪道株式会社入社。1996年11月、社会保険労務士試験合格。1997年7月、和田経営労務研究所(社会保険労務士事務所)開業。2007年3月、第2回特定社会保険労務士試験合格。4月、特定社会保険労務士登録。著書に、『ちょっと待った!! 社長! その就業規則 今のままでは紙切れ同然です!!』『ちょっと待った!! 社長! その残業代 払う必要はありません!!』『ちょっと待った!! 社長! 御社の人件費 もう見て見ぬふりはできません!!』(すばる舎)。座右の銘は、「成せばなる 成さねばならぬ 何ごとも 成らぬは人の 成さぬなりけり」(上杉鷹山)。

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