- 事業成長・経営力アップ
日本政策金融公庫の融資申請資料「企業概要書」書き方のコツは?【教えて!吉田先生】
2024.11.12
日本政策金融公庫に融資の申請をする際は、多くの資料を提出しなければなりません。それがネックとなって、なかなか申請に踏み切れないケースもあるのではないでしょうか。
なかでも、意外と知られていないのが「企業概要書」です。創業計画書や借入申込書についてはご存じかもしれませんが、企画概要書についてはよくわかっていないという人もいるかと思います。今回は、企業概要書の作成ポイントなどについて、財務・資金調達コンサルタントの吉田学先生に伺いました。
※本記事は2024年10月時点の情報を基に作成しております。法令などの最新情報については、政府・各省庁などから出ている文書をご確認ください。
弥報Onlineでは他にも「資金調達」をテーマにした記事を発信しています。
資金調達の記事を読む
目次
企業概要書とは何ですか?
「企業概要書」とは、日本政策金融公庫(国民生活事業)と初めて取引をする際に、事業者の商品・サービスなどの概要について記入する書類です。日本政策金融公庫の担当者が事業者や事業内容などを把握したり、面談時間を短縮したりするなど、その企業に対する事前理解を深めるために活用されています。
なお「新たに事業を始める方、または事業を開始して間もない方」は、指定の「創業計画書」を提出しますので「企業概要書」を提出する必要はありません。
〈企業概要書の記入例〉
作成時のポイントについて教えてください。
記入例を見ていただけるとわかると思いますが、限られたスペースですので的確に記入する必要があります。日本政策金融公庫からExcelとPDFをダウンロードできますが、所定様式のためファイルが保護されています。記載内容がおさまらない場合は、別紙(様式適宜)にて提出しても大丈夫です。
ダウンロードは、以下ページの各種書式「10.企業概要書」のExcel、PDFそれぞれからダウンロードできます。
・各種書式ダウンロード「10.企業概要書」|日本政策金融公庫
企業概要書には「可能な範囲でご記入ください」と書かれていますが、なるべく余白部分を作らずに、しっかりとアピールするようにしましょう。また、日本政策金融公庫から公表されている【記入例】をそのまま、まねるようにして作成しないようにしてください。あくまでも記入例であって、事業者本人の言葉・表現で作成することが重要です。担当者に理解を深めてもらうために、企業・事業内容がわかる資料(パンフレットなど)も用意することをおすすめします。
「企業の沿革・経営者の略歴等」欄の書き方
記入例では、沿革と略歴について空白が目立ちますが、沿革や略歴はもっと詳細に記載できるはずです。無理やり埋める必要はありませんが、積極的にこれまでの実績なども記載しても構いません。また「後継(予定)者」の箇所については、高齢の経営者などの場合は「有」の方が事業承継対策も検討しているというプラスのイメージでアピールにつながる可能性もあります。
「従業員」欄の書き方
法人については「常勤役員の人数」を記載します。「従業員数」については、3か月以上継続雇用している従業員の人数を記載しましょう。直近の雇用の場合は、3か月以上継続雇用を予定している従業員も含みます。そして、そのうち「家族従業員」と「パート従業員」の人数も記載してください。
「関連企業」欄の書き方
「関連企業」の欄は、申込人もしくは法人代表者、またはその配偶者が経営している企業がある場合に記入します。小規模・中小企業の場合は、他の事業体も含めて一体として判断される傾向があるので、注意が必要です。融資をしてその資金が業績の悪い関連企業に回されるようなことは、基本的には許されません。担当者は注意深く確認しています。
「お借入の状況」欄の書き方
個人の借入などについて記載をすると「融資をしてもらえないのではないか?書かない方がよいのでは?」と悩まれる方が多いです。日本政策金融公庫としては「公庫が必要と認めた場合~個人信用情報機関に~与信取引上の判断のために利用する」と借入申込書に書かれています。原則として、日常生活において当然必要と判断される借入(住宅ローン)などがあっても、それが大きく審査に影響することはありませんが、使途によっては不安を感じる方もいるでしょう。その際は申請前に専門家に相談してみましょう。
〈参考:日本政策金融公庫「借入申込書」一部〉
「取扱商品・サービス等」欄の書き方
「事業内容」については伝わりやすいように、シンプルかつ具体的に書いてください。「取扱商品・サービスの内容」について端的に記すのもよいのですが、ここでは可能な限り具体的にアピールしたいです。別途、追加の資料など(飲食業ならメニューなど)を提出しても構いません。「売上の季節変動」について、変動の大きい事業の場合は必ず記載するようにしてください。
「セールスポイント」については切り口などを活用しながら、例えば「ヒト、モノ、カネ」「強み、機会」や「商品・サービス、販売チャネル、価格、立地特性」などの優位性などを書いてもよいでしょう。
「販売ターゲット・販売戦略」には「だれに、何を、どのように売るのか」について3行で端的に書き記しましょう。ビジネスにおいてとても重要な要素ですし、売上計画にも直結します。書ききれない場合は別紙を用紙してしっかりとアピールするようにしてください。
「競合・市場など企業を取り巻く状況」については、担当者があらゆる業種・業界について精通しているわけではありません。特に停滞している業種などの場合は、自社がどうやって競合対策をしているのかなどについても記入するようにしてください。
「悩みや苦労している点、欲しいアドバイス等」について、この箇所を書くと融資をしてもらえないのではないかと不安になる方もいるようですが、決してそんなことはありません。「当社としてはこのような課題を抱えていますが、このように対策を講じています。よってさらに改善するためにも、日本政策金融公庫から融資などの協力を得たい」という主旨の内容を記入してください。
「取引先・取引関係等」欄の書き方
シェアの高い順に記載しましょう。小規模・中小事業者の場合は、有名な取引先企業などがあればアピールになりますので、しっかりと記載します。書ききれない場合は、別紙にて作成してください。「販売先」は売上計画に直結します。また「掛取引割合」や「うち手形割合、手形のサイト」などは資金繰りに直結しますので、日本政策金融公庫側はしっかりと確認しますから、書き込むようにしましょう。
疑問点があり、自力で作成できない場合はどうすればよいですか?
もちろん、日本政策金融公庫に相談をしてもアドバイスしてくれます。顧問税理士がいる方は、顧問税理士に相談しましょう。また過去の経歴(金融事故)や関連企業や個人の借入に課題を抱えている方は、融資・資金調達の専門家にご相談されることを強くおすすめします。
日本金融公庫の融資申し込み時に提出する企業概要書は、審査に大きく影響する重要な書類です。多少時間を費やしてでも、内容が充実したものを作成することは今後必ずプラスに作用します。前向きにチャレンジしてみてください。
弥報Onlineでは他にも「資金調達」をテーマにした記事を発信しています。
資金調達の記事を読む
この記事の著者
弥報編集部
弥生ユーザーを応援する「いちばん身近なビジネス情報メディア」
この記事の著者
吉田 学(よしだ まなぶ)
財務・資金調達コンサルタント
株式会社MBSコンサルティング 代表取締役。1998年の起業以来、「資金繰り・資金調達支援」に特化して創業者や中小事業者を支援。これまでに1,000 社以上の資金調達相談・支援を行い、その資金調達支援総額は20億円超。主な著書に、「社長のための資金調達100の方法」(ダイヤモンド社)、「究極の資金調達マニュアル」(こう書房)、「税理士・認定支援機関のための資金調達支援ガイド」(中央経済社)、「税理士だからできる会社設立サポートブック」(第一法規)などがある。
また、全国の経営者・士業などを対象にした会員制の資金調達勉強会「資金調達サポート会(FSS)」を主催している。
資金調達ナビ
新しいチャレンジや安定した経営を続けていくために、資金調達は欠かせません。
「資金調達手段を探す」「資金調達を学ぶ」「創業計画をつくる」「専門家に相談」の4つのサービス・コンテンツで資金調達を成功に導く情報サイトです。
「弥生会計 オンライン」ご利用ガイド
「弥生会計 オンライン」をお使いのお客さま向けのご案内です。基本的な操作方法から、便利な応用機能、知っておくと役立つ情報まで、ご導入いただいてすぐの方にぴったりな情報を一つにまとめています。ぜひ一度ご覧ください。
「やよいの青色申告 オンライン」でおトクに確定申告!
現在「やよいの白色申告 オンライン」をお使いのお客さまは「やよいの青色申告 オンライン」に無償でアップグレードいただけます。節税効果はもちろん、インボイス制度にもしっかり対応!白色申告の作業とほとんど手間が変わらずに青色申告をすることができます。初年度は無償でご利用いただけます!
弥生のYouTubeで会計や経営、起業が学べる!
【無料】お役立ち資料がダウンロードできます
弥生では、スモールビジネス事業者の皆さまに役立つ資料を各種ご用意しております。
経理や確定申告、給与、請求業務の基礎が学べる資料や、インボイス制度や電子帳簿保存法など法令対応集、ビジネスを成功させる起業マニュアル、弥生製品がよくわかる資料など、お役立ち資料が無料でダウンロードいただけます。ぜひご活用ください!
関連記事
事業支援サービス
弥生が提供する「経営の困った」を解決するサービスです。