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どうなる?政府による中小企業の資金繰り施策の今後について【教えて!吉田先生】
2024.10.29
2024年6月7日に経済産業省・金融庁・財務省より、2024年12月までのコロナ関連の中小企業向け資金繰り支援について公表されました。同時に、政府・省庁より官民金融機関などに対して、コロナ資金繰り支援策の転換を踏まえた事業者支援の徹底が要請されています。
今回は資金繰り施策と要請内容について、財務・資金調達コンサルタントの吉田学先生にお話を伺いました。
※本記事は2024年10月時点の情報を基に作成しております。法令などの最新情報については、政府・各省庁などから出ている文書をご確認ください。
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目次
「資金繰り支援策」の内容について教えてください。
2024年6月7日に公表された内容は主に以下の3点です。小規模・中小事業者の資金繰り対応策については、以下の1と2がメインとなっていますので、今回は主にこの2点を取り上げて解説いたします。
1.今後の中小企業向け資金繰り支援について 2.官民金融機関等に対する要請について 3.事業再生情報ネットワークについて |
今回の資金繰り支援策で最も重要なのは、2024年3月8日に公表された「再生支援の総合的対策」の方向性を引き継ぎ「2024年7月以降は、能登半島地震の被災地に配慮しつつ、各種資金繰り支援策についてはコロナ渦前の水準に戻し、経営改善・再生支援に重点を置いた資金繰り支援とする」という主旨です。つまりコロナ禍に実施された実質無審査のような資金供給は完全に終了して、経営改善や再生を図ろうとする事業者への支援に完全に切り替えるということです。
具体的にはどのような資金繰り支援策が実施されているのですか?
今回の支援策では、コロナ渦に焦点を当てた支援策は終了しますが、コロナ禍の影響で苦しむ事業者への再生支援が強化され、また円安などの経済情勢で苦しむ事業者向けの制度も継続されます。具体的には以下の3点になります。
1.コロナ資金繰り支援 2.コロナ禍からの経営改善・再生を図るための資金繰り支援 3.円安等に伴う資材費等の価格高騰対策 |
1について「コロナセーフティネット保証4号」および「コロナ借換保証」は、2024年2月末で終了しました(能登半島地震の影響が残る地域においては「コロナ借換保証」が継続され、2024年7月以降は3か月ごとに見直しが実施される予定)。
今後については、小規模事業者に対してはコロナ禍前からある「小口零細企業保証」(100%保証)を活用し、借換などの支援は継続されます。小口零細企業保証については、各都道府県の信用保証協会などのWebサイトなどでご確認ください。
(参考)
小口零細企業保証制度(全国小口)・(小口)・(小口つなぎ)|東京信用保証協会
次に2ですが「コロナ経営改善サポート保証」、日本公庫の「コロナ資本性劣後ローン」および「新型コロナウイルス感染症特別貸付」などは、2024年12月末まで延長されます。
〈参考〉日本政策金融公庫Webサイトによる案内
新型コロナウイルス感染症特別貸付(※)、生活衛生新型コロナウイルス感染症特別貸付(※)、新型コロナ対策資本性劣後ローン、生活衛生新型コロナ対策資本性劣後ローン、[新型コロナ関連]マル経融資(小規模事業者経営改善資金)(※)及び[新型コロナ関連]生活衛生改善貸付(※)の申込期限並びに[新型コロナ関連]農林漁業セーフティネット資金の融資決定期限が令和6年12月末まで延長されました。 (※)令和6年7月1日(月)のお申込受付分から、融資後3年間の0.5%利率引下げ及び設備資金のお取扱いが廃止となりました。 |
3については、資材費などの価格高騰対策として実施している日本公庫などの「セーフティネット貸付(利益率▲5%→金利▲0.4%)」は、2024年12月末まで継続されます(5年貸付の場合、金利引き下げ後は中小事業:1.1%、国民事業:1.7%、2024年6月時点)。
〈中小企業向け資金繰り支援の全体像〉
政府から官民金融機関などに対する要請とはどのような内容ですか?
今回の資金繰り支援が公表されたのとほぼ同時に、政府から官民金融機関などに対して支援要請(全4ページの文書)が発せられています。要請文の基本的な主旨は「今回、公表された資金繰り支援策を積極的に対応するように」という内容でした。以下、その他重要な箇所について一部抜粋、解説いたします。
〈要請内容〉一部抜粋、要約
- 融資判断に当たっては、それぞれの事業者の現下の決算状況・借入状況や条件変更の有無等のみで機械的・硬直的に判断せず、丁寧かつ親身に対応すること。返済期間・据置期間が到来する既往債務の条件変更や借換え等について、申込みを断念させるような対応を取らないことは勿論のこと、事業者の実情に応じた迅速かつ柔軟な対応を継続すること。
- 新型コロナウイルス感染症特別貸付等について、新規の設備資金融資を今般対象外とする。
- 日本政策金融公庫等においては、小規模事業者も含め、引き続きコロナ資本性劣後ローンの利用促進に取り組み、借換え等の相談に柔軟に応じるとともに、経営改善支援に取り組むこと。
- 信用保証協会においては、民間金融機関をはじめとした関係機関と連携して、例えば信用保証付融資のシェアが高い事業者など、主体的に経営支援の必要性を検討し、支援を行っていくこと。
出典:コロナ資金繰り支援策の転換を踏まえた事業者支援の徹底等について|金融庁
まず融資、借換、条件変更などについては、門前払いしてはならないということは当然のこととして、実情に応じた対応が要請されています。また、日本政策金融公庫のコロナ貸付に関しては2024年12月まで延長されるものの、設備資金は対象外となっています。コロナ資本性劣後ローンについては、小規模事業者への対応、借換などの取組について要請されています。
また、信用保証協会においては、主体的な事業者支援の要請がされています。小規模・中小事業者の多くが、保証付き融資のシェアが高いので該当すると言えるでしょう。状況に応じて、信用保証協会への直接の資金繰り相談なども可能だと思われます。
金融機関などが支援してくれない場合は、どうすればよいですか?
事業者がご自身で官民金融機関などに申請手続きをして、要請文の主旨のような対応を受けることができなかったと感じた場合には、顧問税理士や専門家に相談してください。申請した経営改善・再生計画の内容が、説得力あるレベルであったかどうかについての確認をしてもらいましょう。そのうえで改めて申請可能かどうかについて、アドバイスを受けてください。
また、今回の公表された「3.事業再生情報ネットワークについて」ですが、現在「経営改善・事業再生支援の取組に関する金融庁相談窓口」などが開設されていますので、利用するのも一案です。
(参考)
経営改善・事業再生支援の取組に関する金融庁相談窓口の設置について|金融庁
中小企業の資金繰りに関しては、さまざまな施策が行われています。「知らなかった」では、せっかくの機会を逃すことになりますから、情報を積極的にキャッチし、活用できるものはぜひ利用していきましょう。
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吉田 学(よしだ まなぶ)
財務・資金調達コンサルタント
株式会社MBSコンサルティング 代表取締役。1998年の起業以来、「資金繰り・資金調達支援」に特化して創業者や中小事業者を支援。これまでに1,000 社以上の資金調達相談・支援を行い、その資金調達支援総額は20億円超。主な著書に、「社長のための資金調達100の方法」(ダイヤモンド社)、「究極の資金調達マニュアル」(こう書房)、「税理士・認定支援機関のための資金調達支援ガイド」(中央経済社)、「税理士だからできる会社設立サポートブック」(第一法規)などがある。
また、全国の経営者・士業などを対象にした会員制の資金調達勉強会「資金調達サポート会(FSS)」を主催している。
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