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【令和の社員育成】明日からできる!強みを活かすマネジメント
2024.08.23
昭和・平成の時代には、会社の方針に「右に習え」で従い、上司から降りてきた業務や指示・命令に真摯に取り組むことで、自身の成長を実感してきた方もいらっしゃるかもしれません。しかし令和においては、このようなマネジメントだけでは社員のパフォーマンスは上がりません。社員の世代や価値観が多様になる中で重要なのは、社員の「強みを活かす」マネジメントです。社員一人ひとりの才能や持ち味を開花させ、パフォーマンスを発揮させることが、企業を成長させるカギになります。
今回は、社員の強みを活用するマネジメントの必要性と、その具体的な方法について、株式会社ジェイックの東宮美樹さんが解説します。社員の強みを活用したマネジメントは、離職防止、帰属意識やパフォーマンスの向上など、さまざまな人事課題に有効になりますので、ぜひご覧ください。
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目次
令和は、マネジメント“大変革期”
既に感じていらっしゃる方もいるかと思いますが、令和の今、経営者・管理職に求められるマネジメントは変革期を迎えています。ポイントは、「管理・統制」から「強みの活用」のマネジメントの変化です。
当社が経営者・人事担当者に実施したアンケート調査で、「20年前と現在で求められていると思う管理職のマネジメント」について、それぞれの内容を聞ききました。すると、「部下の強みや個性の重視・活用が求められると思う」と答えた人の割合は、「現在の管理職像」の数値が「20年前の管理職像」と比べて11%多い結果となりました。さらに20代の求職者に実施した調査でも「上司に希望する育成方法」の1位は「自分の強みや個性を活かしてくれる」が過半数を占める結果となりました。
(出典)
経営層・人事に「求められる管理職像の変化」を調査|株式会社ジェイック
20代求職者に「上司に希望する育成方法」について調査|株式会社ジェイック
昭和や平成初期のころは、マネジメントする上司が成功体験や正解を持っていたため、指示や命令を起点にした管理・統制型のマネジメントによって成果をあげられることも多くありました。一方で現在は、機械化やIT化によって単純作業が減っています。さらに外部環境の変化スピードも速く、従業員一人ひとりに、自ら考え行動することがより求められる時代です。
結果として、社長が独りで考えて指示するスタイルだけでは、うまくいかないことも増えています。加えて、多様性・個性が認められる教育や環境で育ってきた20〜30代の若手社員たちは、一方的に型にはめられるような業務指示や育成を嫌う傾向もあります。このような状況の中で経営者や管理職は、個々の社員の強みを活かしたマネジメントで、社員のパフォーマンスを向上させることが重要です。
「強みの活用」で社員のパフォーマンスを引き上げる
強みを活用したマネジメントを実践すると、社員のパフォーマンスを格段に向上させることができます。世界的な調査会社であるギャラップ社の調査では、自分の最も得意とすることを毎日行う機会がある人は、ない人よりも6倍も意欲的かつ生産的に仕事に打ち込み、「生活の質が高い」と述べる割合も3倍以上に上ることが明らかになっています。
さらに、人材育成において上司が従業員の強みに着目すると、従業員が周囲に悪影響を与える確率はわずか1%にまで低下する、という結果も示されています。
一方、上司が部下の弱みに着目する場合、従業員が周囲に悪影響を与える確率は22%にもなります。さらに、上司が部下を無視する場合は、その確率は40%と一気に跳ね上がり、周囲への悪影響がさらに大きくなるといわれています。ここでいう悪影響とは、例えば従業員に仕事を依頼しても「それは私の仕事ですか?」と引き受けてくれない状態や、能力が高いのに手を抜いて仕事をする、影で会社や上司の不平不満をまき散らすなどといった行為を指します。
強みにフォーカスした人材育成のメリット 〈毎日自分の最も得意とすることを行う機会がある人〉 ▶︎ 意欲的、生産的に取り組む姿勢 6倍 ▶︎ 生活の質が高いと述べる傾向 3倍 〈従業員が周囲に悪影響を与える確率〉 ▶︎ 上司が部下を無視する場合 40% ▶︎ 上司がまず、従業員の弱みに着目する場合 22% ▶︎ 上司がまず、従業員の強みに着目する場合 1% |
もちろん、致命的な弱みは改善してもらう必要がありますが、強みを活かした方が社員のモチベーションやパフォーマンスは確実に上がります。例えば、分析力が強みである社員に、その力を活かして企画・提案型の業務で成果を出してもらったことはありませんか。また、プレゼンテーション能力のある社員に、商談業務に専念できる営業職を担ってもらった結果、業績が上がって意欲も増した、などの例もあるかもしれません。マネジメントに携わっているのであれば、これまでのビジネス経験に照らし合わせて「強みを活かすことは、確かにモチベーションや成果につながる」と思い当たるでしょう。
一方で、弱みについても、ボトルネックにならない必要最低限レベルまでは改善する必要があります。極端な例ですが、名刺交換でひどい悪印象を与えてしまったら、どんなにプレゼンテーションが得意でも成果は上がらないでしょう。しかし、ここで念頭に置いていただきたいのは、弱みの部分を標準レベルまで引き上げる必要はないということです。弱みを一生懸命改善しても、それが強みになる可能性は低く、本人の苦痛になりかねないからです。
日本の教育自体は長らく「課題を改善していく」ことに重点を置いてきました。また、経営者や管理職層になると重い責任を担っているからこそ、上手くいっていないこと・課題に目が向いてしまうことも多いでしょう。令和のマネジメントでは、これらの視点・思考に囚われることなく、社員の強みと弱みに向き合っていく必要があるのです。
明日から実践!社員の強みを見いだす方法
社員の強みを見いだす、具体的な方法をご紹介します。いくつかの方法を紹介しますので、取り組めそうなものから実施してみてください。
社員の強みを書き出す
社員や部下全員の一覧を作って、それぞれの強みを、3つずつ書き出してみましょう。深く考える必要はなく、直観的に思いついた範囲の言葉や文章で大丈夫です。
「弱みは出てくるけれど、強みが出てこない……」という方は、思いつく弱みを強みに裏返す方法もおすすめです。弱みと強みは表裏一体です。例えば、細かいことが気になるという弱みを持っている場合、注意深さや丁寧さという強みとしても活きているかもしれません。ネガティブな面をポジティブな観点から再評価することも、強みを見つける手がかりになります。
社員の仕事を観察する、本人と対話する
強みを書き出せなかった社員がいた場合、その社員の日々の業務を観察し、どのような場面で力を発揮しているのかを確認しましょう。過去の成功事例を掘り起こして、その成功の要因を分析してもよいですね。
日々のミーティングやフィードバック面談も強みを探れる良い機会になります。面談が目標やKPIの進捗確認、人事評価を伝えるだけになっているのであれば、進捗に対して本人がどこをうまくいっていると思っているかを聞くなどして、社員のことを知る時間に変えていきましょう。成功に対しては、その要因をしっかり振り返れば強みも見いだせるかもしれません。
他の社員や顧客に聞いてみる
強みは、本人にとっては日常的に行っているので、自分では気付かないものです。そのため本人だけでなく、同僚や他部署のマネージャーなどの第三者にも聞いてみると、客観的な視点から社員の強みを把握できます。
日常業務での行動やパフォーマンスを間近で見ている同僚や上司は、社長が気付いていなかった強みを教えてくれるでしょう。何人かに聞いて、重複して出てくる内容は間違いなくその人の強みです。
同僚や上司だけでなく顧客からの評価が強みを見つける参考になることもあります。例えば、社内で目立たない営業事務の社員が、実は顧客からとても良い評価をもらっているというケースもあります。
ワークショップ形式で書き出す&フィードバックする
「社員の強みを見いだす」と「本人にフィードバックする」を同時にする際、互いの強みを紙に書き出して渡し合うワークショップも有効です。強みに注目したフィードバックは、コメントする側も参加しやすいですし、本人のモチベーションや意欲も高まりますので、おすすめのワークショップです。
具体的な方法としては、「みんなの強みを再確認し、それを活かすような取り組みをしてみたい」とメンバーに呼びかけ、集まってもらいます。例えば5人のグループの場合、各メンバーに5枚の紙を配布します。Aさんは自分の強みを5個以上、箇条書きで紙に書き出します。そしてB~Eさんにも、それぞれAさんの強みを5個以上書き出してもらいます。これを人数分繰り返せば、参加者全員の強みを一気に集められます。時間に余裕があれば、B~EさんにAさんの強みについて、一言コメントしてもらいましょう。コメントなしであれば、参加人数×3分程度、コメントありでも参加人数×10分程度で終わります。
強み診断ツールを活用する
社員の強みを見いだす方法をいくつかご紹介してきましたが、強み診断ツールを活用することもおすすめです。強みを診断するツールには、「クリフトンストレングスファインダー®」や「VIA-IS」、「Strength Profile」などがあります。
「クリフトンストレングスファインダー®」は、ギャラップ社が開発した強み診断ツールです。このツールは、50年以上にわたる心理学の研究や、ビジネスパーソンへのインタビューなどを基に開発された才能(資質)診断ツールです。「適応性」「コミュニケーション」「達成欲」など34の資質から、自身の上位5つの資質を知ることができます(標準版では上位5つ、オプションを使うと34資質すべて順番がわかります)。
「VIA-IS」は、ポジティブ心理学の第一人者であるクリストファー・ピーターソン博士と、マーティン・セリグマン博士が開発した強み診断ツールです。日本では、一般社団法人・日本ポジティブ教育協会のWebサイトで公開されています。大人向けの診断では、20~30分の無料診断で、自分の特徴や強みを把握可能です。診断結果の概要は日本語で確認できますが、詳細な有料レポートは英語での出力になります。
「Strength Profile」は、キャップフィニティ社が提供する診断ツールで、60種類の強みを測定します。強みのバランスを視覚的に示し、強みの活用度やエネルギーレベルを評価してくれます。
強み診断ツールを利用すると、強みの言語化・自覚化が容易にできます。また、強みの認識が共通言語になるので、強みを活用したマネジメントを推進しやすくなるというメリットもあります。「クリフトンストレングスファインダー®」の診断を全社員に取り入れて、新人の自己紹介や人事異動があった際のチームビルディングに活用する。また、同じ上位資質を持つ社員を集めたグループで、懇親を深めるといった活用も可能です。
社員の強みを活かす方法と注意点
見いだした社員の強みを活かすための、具体的な方法もご紹介します。
強みが活きる仕事をアサインする
適材適所という言葉があるように、日ごろから社員の強みを把握し、強みを活かせるプロジェクトや業務をアサインする必要があります。
また、任せ方や頼み方に「強みを活かす」という視点を持ち込むことも効果的です。例えば「このプロジェクトは、君のリーダーシップを発揮できる場面が多いから任せたい」といった形で、社員の強みと共に仕事を依頼すれば、動機付けがしやすくなります。社員は自分の強みが評価されていると感じ、モチベーションが高まります。そうすれば、より積極的に業務に取り組むようになるでしょう。
強みを組み合わせたチームを作る
強みを組み合わせてチームを作ることも有効です。異なる強みを持つ社員が集まれば、チーム全体のバランスが良くなり、各メンバーが自分の強みを発揮しやすくなります。例えば、創造性に富んだ社員と計画性の高い社員が協力することで、革新的なアイデアと実行力を兼ね備えたプロジェクトが実現できます。このように、強みを補完し合うチーム作りは、組織全体の生産性向上に寄与します。
ただし、強みを組み合わせる際の注意点として、事前に「人は(お互いが)異なる強みを持っている。強みを活かすことがハイパフォーマンスにつながる」という相互理解の土壌を作っておく必要があります。この土壌がないまま異なる強みの人を組わせると、逆にコミュニケーションのトラブルが起こりやすくなります。
社員に「強みを活かす」ジョブクラフティングを教える
ジョブクラフティングとは、任された仕事を自分なりに解釈・アレンジすることで、仕事へのモチベーションや、やりがいを高める手法です。先ほどの「このプロジェクトは、君のリーダーシップが発揮できる場面が多いから任せたい」という伝え方は、上司によるジョブクラフティングです。これを社員が自分自身でできるようになると、仕事へのモチベーションが高まりますし、社長や管理職はマネジメントしやすくなるでしょう。
診断テストなどで自分の強みを理解し、仕事への活かし方を学んでもらったうえで、ジョブクラフティングの概念とやり方を教えましょう。ジョブクラフティングを実践すると、やる気の向上が期待できるだけでなく、次期リーダーとなる人材なども出てきやすくなり、組織活性化にもつながります。
社員の強みを活かすことは道徳論ではなく、パフォーマンスや業績の向上につながるものです。紹介したアプローチを参考に、社員一人ひとりの強みを見いだし、成果につなげていただければ幸いです。
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この記事の著者
弥報編集部
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この記事の監修者
東宮 美樹(株式会社ジェイック 執行役員)
ハウス食品株式会社で営業職を経験、人材紹介会社で求職者(3000人)のカウンセラーを経験した後、2006年ジェイックに入社し、「研修講師」としてのキャリアをスタート。2014年には前例のない快挙となる、講師として「リピート率100%」を3年連続で達成。組織開発相談など支援実績多数。定着・活躍推進、キャリア自律、イクボス、女性活躍推進などを中心に活躍中。グループ会社、株式会社Kakedasの取締役を兼任。
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