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売掛債権を担保にして資金調達をスムーズに!ABL(動産・売掛債権担保融資)の使い方や注意点を税理士が解説
2022.11.15
著者:弥報編集部
監修者:室田 昌克
中小企業が金融機関から融資を受ける場合、決算書の内容に基づいて借入をするのが一般的でした。しかし、2017年5月改正・2020年施行の譲渡制限特約の変更によって「売掛債権も担保にできる」ようになりました。
売掛債権とは、取引先との契約で後日の支払い期日を定め、後払いの約束をするものです。これらの担保化は、中小企業における資金調達の手段の一つとして注目を集めています。
今回は、新たに売掛債権が担保にできることとなった譲渡制限特約の変更内容と、ABL(動産・売掛債権担保融資)について、Biz Bloom 経営会計事務所代表の室田 昌克さんにお話を伺いました。
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目次
そもそも担保融資とは?
担保融資がどのようなものか、簡単に教えてください。
担保融資とは、簡単に言えば会社の資産を担保にした資金調達方法です。
一般的な会社の融資は、決算書の内容に基づいて借入をするケースがほとんどだと思います。決算書の内容によっては、借入の条件として社長や役員などの個人が保証人となることが求められる場合があり、その借入したお金が返済できなくなった場合、保証人になっている社長などに返済責任が発生します。
一方、担保融資は借入時に会社の資産などを担保に設定するため、返済できなくなった場合はその権利が債権者(貸主)のものになります。例えば土地を担保にした担保融資の場合、返済できなくなったときは、その土地の所有権が債権者へ移ることになります。これが担保融資の中で最も一般的な不動産担保融資です。
不動産の他にどのようなものを担保にできるのでしょうか?担保融資の種類を教えてください。
担保融資を利用する際、担保にできるものとしては不動産や在庫、機械などの動産、債権などが挙げられます。ただし動産を担保にする場合は、借入する金額に相当する価値があると認められるものに限定されます。
中小企業の場合は、売掛債権を担保にすることが多いです。また、経済産業省も中小企業がスムーズに資金調達できるように、売掛債権の利用を推奨しています。その一環として、民法における債権や債務関係を律する法体である債権法が2017年5月に改正、2020年4月に施行されました。
債権法の改正で、具体的に何が変わったのでしょうか?
この度の債権法改正では、譲渡制限特約が原則無効となりました。譲渡制限特約とは、債権の譲渡を禁止したり制限したりすることを、契約書などにおいて債権者と債務者の間で合意することです。
改正以前、売掛債権の売買契約には譲渡制限特約を入れるのが一般的でした。そのため、個人事業主や中小企業が自社の売掛債権を担保にしたり、第三者である譲受人に譲渡して資金調達することができなかったのです。
しかし今回の改正で、債権者が譲渡制限特約の付いた売掛債権などを資金調達目的で譲受人に譲渡した場合、それは譲渡制限特約の趣旨に反するものではないと認められるようになりました。債権譲渡を理由に債務者から債権者に対する損害賠償請求や、取引を打ち切る行為は権利濫用とされ、認められなくなったのです。
この改正により債権者となった個人事業主や中小企業は、スムーズに資金調達を実施できるようになりました。
売掛債権を担保に融資を受ける方法には何がありますか?
売掛債権を担保に融資を受ける方法としては「ABL(Asset Based Lending):流動資産担保融資」が挙げられます。また、売掛債権を譲渡(売却)することで融資を受ける「ファクタリング」といった資金調達の選択肢が増えました。
詳しくは次の章で解説します。
売掛債権や機械なども担保にできるABLについて
ABLについて、教えてください。
ABLは「Asset Based Lending」の略語で、売掛債権や機械・車などの動産を担保として借入をする資金調達方法で、返済できなくなった場合、債権者は売掛金や動産を処分し、相殺する権利を手に入れます。
ABLを資金調達に活用したい場合、中小企業が注力すべきポイントを教えてください。
売掛債権の評価と担保資産の状況や、業績の報告をするためのモニタリングに注力する必要があります。
ABLは売掛債権を担保に入れる必要があるため、売掛金の保全を保証するためにも、売買契約や注文書などをきちんと揃えておくことが必須です。また、売掛債権を担保にする場合は、債権者側に在庫や売掛金の情報を適宜報告する義務も発生します。
それ以外は売掛先の問題になるので、どれだけ信用度の高い企業と取引ができるかという点が、ABLを活用する場合には重要です。
中小企業がABLを活用した場合、実際どの程度の融資を受けられるものなのでしょうか?
ケースバイケースではあるのですが、ABLは基本的に売掛債権が担保になるので、最大で売掛債権の8割程度の額で融資が受けられます。
ABLに向いている中小企業とその理由を教えてください。
ABLを活用しやすいのは、元請けが大企業で、そこから仕事を受注しているような中小企業などです。理由は先ほど説明した通り、取引先が大企業であることで売掛債権の評価が上がり、高額な融資を受けられる可能性が高くなるためです。
よってABLを利用することにより、自社の信用度や決算内容では融資してもらえないような金額の融資が受けられる可能性もあります。
ABLが向いていない中小企業とその理由を教えてください。
小売業など対個人でやっている中小企業などは、ABLを活用した資金調達は不向きといえるでしょう。おそらく売掛債権の評価も低くなると思われます。そのため、ABLを有効活用できる企業は限定的で、実際に使っているところはそれほど多くないというのが現状です。
一方、ファクタリングは利用者が増えているようで、今後個人事業主や中小企業の資金繰り方法として広く活用されることが予想されます。
売掛債権を売却し、現金化できる「ファクタリング」について
ファクタリングについて、教えてください。
ファクタリングは売掛債権を譲渡(売却)することによって融資を得る資金調達の方法です。ABLとの違いは、融資を受ける際、売掛債権を担保にするのではなく売却してしまう点です。
ファクタリングは、通常の融資と比べて早期に資金調達ができるというメリットがあります。銀行からの融資ですと、1か月以上かかることは珍しくありませんが、ファクタリングの場合、数日で資金調達ができるケースもあります。
ファクタリングには、企業とファクタリング会社で行う2社間ファクタリングと、企業と売掛先、ファクタリング会社で行う3社間ファクタリングがあります。2社間ファクタリングの場合、ファクタリング会社は売掛先から直接売掛金を回収できないため、その分リスクも鑑みて手数料が高くなっています。3社間ファクタリングの場合はそうではないので、その分手数料が安くなります。
実際には、ほとんどが2社間ファクタリングとなるため、手数料は高くなります。そのため、可能であれば金利が安い銀行の融資を活用したほうが会社にとっての負担は少なくなるケースが多いといえるでしょう。
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この記事の著者
弥報編集部
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この記事の監修者
室田 昌克(Biz Bloom 経営会計事務所代表 税理士)
大学卒業後、複数の企業の財務部門で国内外の税務業務に加え、資金繰り・資金調達、経営計画策定およびM&A業務に携わり、その後、税理士法人および税理士事務所において法人・個人の税務業務および相続税の申告に携わる。その後、独立開業して現在に至る。「成長経営の羅針盤」として会社のお金の流れの見える化(管理会計)、経営計画策定、資金繰り・資金調達といった「財務」サポートを提供している。
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