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【教えて!吉田先生】銀行から一目置かれるために社長が把握しておくべき「現預金」「純資産」
2022.01.13
有利な条件で融資を受けるためには、やはり良好な財務状況であることが必要になります。「財務」というとちょっと難しそうに感じるかもしれませんが、「現預金」「純資産」の数字を意識するだけで財務状況は改善して、金融機関からは「融資したいお客さま」になり、一目置かれることになります。
今回は、金融機関から融資を受けやすい財務状況にするためのコツを、財務・資金調達コンサルタントの吉田 学先生に伺いました。
目次
金融機関の融資審査では、何を重視しているのですか?
金融機関の融資審査では「定量的な視点」「定性的な視点」など、総合的な視点から判断されます。現在、担保や保証に頼らず将来性などを加味する「事業性評価融資」が推し進められていますが、やはり定量的な視点である「決算書」などの過去の数字情報も、まだまだ重視される傾向があります。
「財務指標」などをベースに審査を進めますから、主に重視されているのは「資本利益率」「流動比率」「債務償還年数」「売上高月商比率」「自己資本比率」「売上高対利益率」などです。では、経営者の皆さんが具体的にどのような点を理解しておくべきか、見ていきましょう。
財務指標のなかで、経営者が知っておくべきポイントを教えてください。
先ほど代表的な財務指標を列挙しましたが、専門的なことは顧問税理士さんや外部の専門家からアドバイスを受けるようにしましょう。経営者の皆さんに知ってほしいのは「利益が出ているのか?現状黒字か、赤字か?」「現預金はどれくらいあるのか?」「純資産合計額はどれくらいか?」の3点です。
多くの事業者の方は「利益が出ているのか?現状黒字か、赤字か?」については、把握されていると思われます。しかし「現預金はどれくらいあるのか?」「純資産合計額はどれくらいか?」については、あまり意識されていない方が多いのではないでしょうか。今回はこの2点について解説いたします。
「現預金」はどれくらいあればよいのですか?
自社の貸借対照表から「現金及び預金」を確認してください。直近の実績は通帳などで確認できます。「現金及び預金」は「月商の3か月分」を常に維持できれば、大変理想的です。実際のところ、多くの小規模・零細事業者の場合は月商の1か月以下か、前後くらいではないでしょうか?現状においてはコロナ融資を借りているため、月商の3か月分の現預金を保有している事業者も多いと予測されます。
現預金を増やすには「利益を増やす」「借入をする」「増資をする」などの方法があります。極論を言いますと、借入金が多くても現預金額が多ければ、金融機関は安全な貸出先として判断する傾向にあると言えるでしょう。
よって借入を増やしても現預金の3か月の保有を目指す、というのは1つの基準でもあり、あながち間違いではありません。まずは1か月分の現預金保有を目指す。そして2か月分、3か月分の保有と維持を目指しましょう。
さらに「次期の決算時には、どれくらいの現預金を保有しているのか?」についても把握する必要があります。そのためには資金繰り計画表が必要になります。顧問税理士のアドバイスを受けながら、ぜひ予測してみてください。
そして、金融機関担当者に対して「現在の当社の現預金は○○○万円です。月商の×か月分です。顧問税理士の指導を受けながら△か月分に増やしたいと考えています。今期末に向けて売上高が上がる予定ですので、資金繰り計画によると□月には現預金が●●万円くらいまで減少してしまいます。よって、◎◎◎万円の融資をお願いします」と話すことができれば、銀行から一目置かれる経営者になることができるでしょう。
「純資産合計額」は、どれくらい必要ですか?
直近の自社の貸借対照表の「純資産合計」を確認してください。次に「純資産合計」の下に「負債・純資産合計」が表示されていますから、この数値にも注目してください。
業種によっても異なりますが「純資産合計」が「負債・純資産合計」の3割ほど保有していれば良好だと思われます。3割保有していれば「自己資本比率30%」ということになります。また「純資産合計」がマイナス表示(△、-)の場合は「債務超過」となりますから、原則として融資の対象になりにくいのが現実です。純資産合計を増やすには「利益を上げる」「増資をする」などの方法があります。
金融機関担当者に対して「現在の当社の純資産合計は○○○万円です。自己資本比率△△%です。来期の決算に向けて、これを□□%まで向上させる計画です。そのためには売上高・利益をこの事業計画通りに進めていかなければなりません。そのためにも借入金●●●万円の融資をお願いします」とお話しできれば、一目置かれること間違いありません。
金融機関の交渉をよりうまく進めるためのポイントを教えてください。
基本的には、売上・利益が増えれば「純資産額」も増えます。そしておのずと「現預金」も増えていきます。さらに借入をすることによって「現預金」を増やすことができます。「そんなこと当たり前だろう!」って思われた方もいると思いますが、自社の数値の推移を常に把握している事業者は少ないものです。
実はこの「現預金」「純資産」2つの数値を改善できれば、冒頭で解説した難しそうな財務指標は平均して改善されます。すべてつながっているのです。
今後、事業者が行うべきことは「現状把握」と「予測」です。まずは現状把握をしましょう。そして、毎月の試算表からこの2つの数値がどう変化しているのかをタイムリーにつかんでください。そしてこのまま決算を迎えると、この2つの数値がどうなるのかを顧問税理士さんに相談に乗ってもらってください。
また、顧問税理士さんのアドバイスを受けながら、次の決算時における「現預金」と「純資産額」の計画を立ててください。そして、計画達成をするために「借入を増やすのか?」「売上・利益をアップさせるのか?」「経費削減が必要なのか?」などについて、事業計画の策定に取り組んでください。
この2つの数値について把握できていれば、金融機関からは「社長は自社の数値や資金繰り状況を把握している。事業計画達成のために常に財務を意識している」と判断されるでしょう。一目置かれるということは、「融資が受けやすくなる」「支援を受けやすくなる」とも言えます。同時に「この社長やり手だから、ちょっとやりにくいな」と感じる担当者もいるかもしれませんね。
以下記事も、参考にしてみてください。
(参考)銀行は「貸借対照表」のココを見ている!融資攻略につながる5つのポイント
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この記事の著者
吉田 学(よしだ まなぶ)
財務・資金調達コンサルタント
株式会社MBSコンサルティング 代表取締役。1998年の起業以来、「資金繰り・資金調達支援」に特化して創業者や中小事業者を支援。これまでに1,000 社以上の資金調達相談・支援を行い、その資金調達支援総額は20億円超。主な著書に、「社長のための資金調達100の方法」(ダイヤモンド社)、「究極の資金調達マニュアル」(こう書房)、「税理士・認定支援機関のための資金調達支援ガイド」(中央経済社)、「税理士だからできる会社設立サポートブック」(第一法規)などがある。
また、全国の経営者・士業などを対象にした会員制の資金調達勉強会「資金調達サポート会(FSS)」を主催している。
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