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【教えて!吉田先生】コロナ融資を返済できなくなった!どうすればいい?
2021.11.09
著者:吉田 学
新型コロナウイルス感染症の影響で、業績が悪化した事業者を支援するために実施されたコロナ融資や補助金。これらの制度は多くの事業者を救いました。しかし据え置き期間を短く設定していた事業者などは、その返済が既に始まっています。業績回復が見込めず、返済ができない状況にある事業者は、どのような対策を取り得るのでしょうか。今回は、財務・資金調達コンサルタントの吉田 学先生に、コロナ融資に関する疑問をQ&Aスタイルで伺いました。
目次
新型コロナウイルス対策融資の返済が始まるのですが、売上高・利益の回復が見込めず、借入金返済が難しい状況です。どうすればよいでしょうか?
返済できないまま放置してはいけません。まずは金融機関に対して「据置期間の延長」を申し出てください。そうすれば、ひとまず元金返済を延長できます。
2020年4月の緊急事態宣言を受けて、多くの事業者の方が2020年春から秋にかけて、日本政策金融公庫の「新型コロナウイルス感染症特別貸付」および、民間金融機関の「実質無利子・無担保融資(保証)」を利用しました。
その際に据置期間「1年」という条件で融資を受けた事業者の方も、多かったのではないでしょうか。その場合2021年の春、夏以降から元金返済が始まります。業績が回復していない事業者の方にとって、元金返済は非常に厳しいことが考えられます。据置期間の延長に関しては、現在国・管轄官庁から金融機関に対して積極的に応じるように要請がでているので、積極的に活用しましょう。
据え置き期間延長については、以下の記事に詳細をまとめていますので参考にしてください。くれぐれも高利のローンや、闇金融には手を出さないようにしてくださいね。
〈参考記事〉元金返済開始前に交渉しよう!「コロナ特別貸付」据置期間延長
どうしても新型コロナウイルス対策融資の返済ができなくなった場合、どうすればよいのでしょうか?
返済がどうしても厳しい場合は、借入金の返済条件を変更する「リスケジュール」を検討してください。
据置期間の延長に応じてもらえない場合や、さまざまな事情で返済ができなくなった場合、リスケジュールをすると毎月の返済が楽になります。例えば毎月50万円の返済が、ゼロになったとしましょう。そうすると1年間で、50万円×12か月=600万円の返済をせずに済みます。つまり、600万円の資金調達をしたのと同じ効果を得ることができる、という見方もできます。リスケジュールが成功すれば、資金繰りがとても楽になります。
リスケジュールに関しても、現在国や管轄官庁から金融機関に対して、据置期間の延長と同様に条件変更についての要請も出ています。
新型コロナウイルス対策融資をリスケジュールすることに、デメリットはありますか?
デメリットは追加融資を受けることが原則困難になる点です。返済をストップしている状態では、金融機関としても追加融資できません。
こうしたデメリットもありますから、リスケジュールをする際には慎重に検討し「据置期間の延長」を最優先にして金融機関に相談しましょう。「据置期間の延長」を申し出ると、リスケジュールの手続きを行う金融機関もあるようですので、注意してください。
リスケジュールの提出資料は、簡単に作成できますか?
提出する資料の準備は、手間と時間が必要となります。しかし、新型コロナウイルスが収束していない現状もありますから、最低限の必要資料、手続き資料などで対応してくれるケースもあります。通常は「改善計画書」「損益計画書」「資金繰り計画表」など、さまざまな資料を作成して交渉する必要がありますが、コロナ禍ですから、そのあたりは多少融通してくれている状況です。
「資料の準備が大変そう」「相談に行く時間がない」と、後回しにしてはいけません。とにかく、まずは金融機関に相談してください。我慢に我慢を重ねて、ギリギリになってから相談するのではなく「このままでは、3か月後は返済できません」というような状況で、顧問税理士や専門家などを交えて、金融機関に相談するのがよいでしょう。
「新型コロナ特例リスケジュール」という制度があると聞きました。これはどういう制度ですか?
事業者が、金融機関を相手に交渉するのは大変ですよね。「新型コロナ特例リスケジュール」は、中小企業再生支援協議会が事業者と金融機関との調整をしてくれるリスケジュール支援策です。中小企業再生支援協議会とは、中小企業の事業再生に向けた取り組みを支援する「国の公的機関」として47都道府県に設置されている再生支援の窓口です。
リスケジュールは顧問税理士や専門家に相談しながら金融機関に直接交渉することもできますが「新型コロナ特例リスケジュール」を利用するのも一案です。「取引している金融機関が複数あり、リスケジュールの交渉が大変だ」という場合などは、利用を検討してみてください。
コロナ融資返済が厳しくなったときに、その他に取りうる対策にはどのようなものがあるのでしょうか?
苦しい状況にあるとは思いますが、現在小規模・中小事業者ができる対応策は大変限られています。そのなかで効果的な対応策としては「据置期間の延長」や「リスケジュール」が中心です。経営改善や借換、他の公的制度の利用などによって対応できる場合もあるかもしれませんが、事業再生の専門家などからのアドバイスが必須となります。
2021年8月現在、政府は「中小企業の実態を踏まえた事業再生のための私的整理等のガイドラインの策定」を検討しています。その他に「事業再生ADR」の利用という方法もありますが、これは相当規模の中小・中堅企業が対象ですので、小規模事業者の公的相談窓口としては中小企業再生支援協議会になります。
コロナ対策融資返済について専門家からアドバイスを受けたい場合、誰に相談すればよいのですか?
まずは顧問税理士さんにご相談ください。もし顧問税理士が対応できない場合は、事業再生や資金調達などの専門家に相談することをお勧めします。シンプルなリスケジュールの相談でしたら、相談に応じられる専門家は多いです。ただ取引先の金融機関が複数あって、取引も複雑であり、売上高規模も大きい事業者の場合は「事業再生の専門家」または「中小企業再生支援協議会」に相談するといいでしょう。
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この記事の著者
吉田 学(よしだ まなぶ)
財務・資金調達コンサルタント
株式会社MBSコンサルティング 代表取締役。1998年の起業以来、「資金繰り・資金調達支援」に特化して創業者や中小事業者を支援。これまでに1,000 社以上の資金調達相談・支援を行い、その資金調達支援総額は20億円超。主な著書に、「社長のための資金調達100の方法」(ダイヤモンド社)、「究極の資金調達マニュアル」(こう書房)、「税理士・認定支援機関のための資金調達支援ガイド」(中央経済社)、「税理士だからできる会社設立サポートブック」(第一法規)などがある。
また、全国の経営者・士業などを対象にした会員制の資金調達勉強会「資金調達サポート会(FSS)」を主催している。
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