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SNSマーケティングの狙いは拡散ではなく、ファンとの距離を近づけるもの

2018.09.11

著者:株式会社BOKURA

監修者:宍戸 崇裕

SNSが一般化した昨今、すべての個人が「主人公」である時代がやってきました。「誰が言っている情報なのか」ということが信頼性の基準となりつつある今、個人の発信力や影響力は今後もより一層大きくなってくるといえるでしょう。

そうした時代を迎えたなかで、企業のSNSマーケティングはどうあるべきか。連載最終回となる今回は、SNSマーケティングの現在のトレンドと今後の展望についてお伝えしたいと思います。


本記事は、 宍戸崇裕 著『ファンと一緒にブランドを育てるSNSマーケティング実践法』(リスナーズ株式会社・刊)の一部を再編集したものです。

ユーザーの情報入手元は「有名人」から「身近な一般人」へ

SNSとは「ソーシャル・ネットワーキング・サービス」というくらいなので、社会的な大きな箱の中でつながりができていくイメージです。コミュニティのようなものですね。そして今後は「その中に誰がいるか」が重要になっていきます。もっとパーソナルに寄っていくのではないかと、私は考えています。

私の実家は八百屋でした。学生時代、当時の昼番組『おもいッきりテレビ』で、みのもんたさんが「カイワレは身体にいいらしい」と言うと、あっという間にカイワレが売り切れました。12時台にその放送が流れると、13時頃には在庫が尽きる。親から「すぐに市場に行って仕入れて来い!」と言われ、急いで買いに走ったものです。

このように一昔前は、有名人が発信する情報によって多くの消費者が動いていました。そして、そうした影響力はどんどん「一般レベル」に降りてきています。読者モデルが発信する情報をもとに、若い女性が服や雑貨を購入する、といったようにです。

それがさらに身近になってきて、今では「顔見知り」の人が発信することに影響を受けるようになっています。SNSでは、友人を通じ、その友人ともつながります。会ったことはなくても、友人の友人だけに価値観や志向が似ていて、「この人が言っていることには共感できるな」「この人が好きなものなら自分も気に入りそうだ」など、「自分に影響を与える人」が増えているのです。

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実際、私もSNSでつながっている友人の影響で、行動を起こすことがあります。

例えば、私の友人に、毎日必ず1食はカレーを食べている「T」という男性がいます。彼は1年以上、毎日カレーを食べ続けて、その感想をFacebookやInstagramに投稿しています。

「1年以上、毎日カレーを食べ続けている人」というパーソナルな情報を知っているから、私が「カレーを食べたい」と思えば、必ず彼にお勧めの店を聞きます。必ず、です。要は「食べログ」よりも彼に信頼を置いているということです。

仮に、TのSNS上の友達が5人しかいなかったとしても、「カレー」というテーマに関しては、その5人に対して絶大な影響力を持つわけです。同様に、家電だったら〇〇、映画だったら△△といったように、そのテーマにくわしい個人が発信する情報を求める人が増えていくはずです。

そうなると、受け手にとって、もはや彼のフォロワー数は関係ありません。情報元が信頼に足るかどうか。これだけが基準です。リーチ数を重視するのであれば、芸能人の情報の方が何百倍も多くの人に届きます。しかし、影響力という意味では、芸能人もTには及ばないと思うのです。

カレーを毎日食べているTが全力でオススメするカレー店があったら、私は90%くらいの確率でその店に足を運びます。一方、好きな芸能人がインスタで「ぜひ行ってみて!!」と声高に叫んでいても、「この子はこのカレー屋で感動したんだな」とほっこりするくらいで、実際に足を運ぶには至らないと思います。

では、カレー屋の立場になってみましょう。私が店主なら、数多くのフォロワーを有するインスタグラマーより「Tを自分の店のファンにしよう」とアプローチします。そして、どうしたらTを唸らせるカレーができるかを必死に考え、完成度をさらに上げようと努力します。

店側としては「うちのカレーこうなんです。食べに来てね」とSNSで投稿するのが、これまでのプロモーション。近い将来には、カレーオタクをSNS上で見つけ出して、一緒によりよいメニューやサービスを共創していこう、という使い方がされるのではないかと思います。プラットフォームとしてのSNSという場は残ると思いますが、細かい機能はさらにパーソナルに特化した作りになっていくことが予想されます。「有名人が何を言うかより、より信頼のおける身近な誰が言うか」の時代が来ているのです。

一般の人の中から「コアなファン」を増やしていく

このように、SNS上においては「個人」がそのコミュニティに対し、発信力と大きな影響力を持ちつつあります。

ですから企業側としては、有名人を広告に起用する以上に、個人のファンを増やすことでプロモーション効果につなげることができるわけです。

そこで、これからのSNSマーケティングでは、まず「自社のファンを増やし、コアなファンに育てていく」ことが重要です。ブランドを好意的に利用してくれているファン層を、コアなファンに育成していくことで、自分の身の回りの友人を中心とした新たな潜在層に、能動的かつ好意的に情報を発信してくれます。結果、中長期でのマーケティングコスト削減や、半永久的なファンベース構築につながるのです。

では、「ファン」は、どのようなプロセスを経て「コアなファン」になっていくのでしょうか。私がずっと通っているラーメン屋さんを例にお話ししましょう。

そのラーメン屋さんは、私が十数年通っているお店で、つけ麺がすごく美味しいのです。友達に「美味しいラーメンが食べたいんだけどいい店知ってる?」と言われたら、大体この店に連れて行きます。そして、友達が「美味しい」と言ってくれると、私は「このお店に連れて来てよかった」と、すごくうれしい気分になります。

それまで、自分の中だけで「このお店は美味しいな」と思っていたのが、誰かを連れて行って、その人が喜んでくれるという「成功体験」を積むことで、そのお店がさらに好きになる。そして、そのラーメン屋さんに頼まれたわけでも何でもないのに、さらにいろいろな人を連れて行くことになります。今ではそのラーメン屋さんの店長とFacebookでつながり、お互いの誕生日にはお祝いのメッセージを送り合うような関係になりました。

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本や映画でも同じ。自分が勧めた本や映画を、友達が「面白かった」「感動した」と言ってくれれば、自分がその本や映画に抱いている「面白い」「感動する」の感情がさらに増幅するのではないでしょうか。

こうして「コアなファン」になれば、また他の友人にもそれを紹介したくなり、友人・知人との共有が広がっていくことになります。

企業のSNSマーケティングでは、ファンに「成功体験」を積んでもらうことがポイント

この話を企業のSNSマーケティングに置き換えてみましょう。

企業は、すでに使ってくれているユーザーさんが「成功体験をどのように積んでいくか」というポイントを重視してあげると、ファンベースでのSNS構築を促進することができます。

例えば、私のクライアント企業にアパレルブランドがあるのですが、「#(ブランド名)」といったハッシュタグで検索すると1,200件ぐらいの投稿があり、そのブランドを好きな人たちが、自分が持っているアイテムを投稿しています。

それに対して「いいね!」が押されていたり、「素敵ですね」といったコメントがついたりしているので、きっと投稿者は「自分のセンスが認められた」とうれしく思っていることでしょう。つまり「承認欲求」が満たされるのです。このブランドと関わったことで承認欲求が満たされ、「投稿してよかった」という成功体験をすれば、その人はこのブランドをもっと好きになるに違いありません。

こうした投稿を眺めていると、「このブランドをかなり好きなんだな」というユーザーさんが目に留まります。そこで、ブランドの公式アカウントから、例えばこんなコメントを送ります。

「〇〇さん、投稿いただきありがとうございます。素敵なお写真ですね」

すると、このユーザーさんは「商品がいいだけじゃなく、顧客に感謝を伝える姿勢もすばらしい。なんていいブランドなんだ」と好印象を抱き、もっとファンになってくれるかもしれません。

さらに、こうした方々にダイレクトメッセージで「今度ファンイベントがあるので、ぜひ来ていただけませんか?」と声をかけます。そして、商品をプレゼントしたり、少し安く買えるサービスを提供したりしてあげると、さらにコミュニケーションが密にとれるようになるでしょう。

リアルにファンとブランドの担当者が会って、商品の説明をしてあげたり「これからはこういう展開をしていくんですよ」というような少し先の情報を教えてあげたりする。それにより「自分は特別に扱われている」という心地よさを感じていただければ、その人は一生のファンになるのではないでしょうか。そして友人・知人にも、そのブランドの良さを積極的に伝達していってくれるのです。

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量より質のSNSマーケティング

世間一般のSNSマーケティングでは、ようやく「量」より「質」に目を向けるようになったばかりです。ですから、この4回の連載でお伝えしてきた「ファンづくり」に注力する方法が一般化するのは、もう少し先なのかなと思います。まだまだ事例も少なく、費用対効果も明確ではありませんから。

しかし「ファンがいる」というのは、本当に強いです。これは確信を持って言えます。ファン歴が長くなるほど、ユーザーの愛は強まります。だからこそ、ファンを大切にするという取り組みを、いち早く始めるメリットは大きいと思います。

SNSというマーケティングツールはここ数年の産物ですが、やっていることの本質は、優良企業が昔から大切にしてきた「消費者との接し方」と何ら変わりありません。企業はこれからの時代、SNSを「拡散ツール」ではなく、「ユーザーと距離を縮めるためのツール」として使っていくことが大事だと思います。

この記事の著者

株式会社BOKURA

2015年8月創業。『企業と生活者の距離を縮める』をテーマに、ユーザー目線での、ブランドとユーザーの距離を縮めるためのマーケティング支援およびSNSソリューションの展開を行っている。FacebookやInstagramなどのSNSを使ったマーケティング支援からWEB構築、リアルイベントの開催など幅広く支援を展開。『マーケターミーティング』という企業の広報担当者やマーケティング担当者を集めた勉強会&交流会を定期的に実施している。

この記事の監修者

宍戸 崇裕(ししど たかひろ)

株式会社BOKURA 代表取締役。自動車業界、不動産業界での営業経験を経て、2009年、モバイルSEOを手がける株式会社Speeeに入社。2011年よりイー・ガーディアン株式会社にてソーシャルメディア運用事業の立ち上げを行う。その後、2012年アライドアーキテクツ株式会社にてソーシャルメディアマーケティング事業部マネージャーとして200以上のクライアントのマーケティング支援、コンサルティングなどを行う。2015年にSNSマーケティング支援を行う株式会社BOKURAを設立、代表に就任。マーケターMTGというSNS運用担当者を集めたワークショップを月一で開催。リテラシーを上げながら、担当者同士の横のつながりを生み出す活動も行っている。

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