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中小企業がChatGPTを使い倒すには?プロが教える実践テクニック

2024.10.24

著者:弥報編集部

監修者:森 一弥

いまや生成AIの活用はビジネスの現場でも一般的になりつつあります。その中でも特にChatGPTは、人工知能を活用した画期的なツールの1つであり、個人事業主から大企業まで多くの企業で導入が進んでいます。しかし特に中小企業においては、どのようにChatGPTを業務に取り入れ、最大限に活用するかについて、まだ模索している段階にある企業が多いでしょう。

今回は、ソフトウェアやサービスを開発・販売しているアステリア株式会社で、高度な技術をお客さまに中立的な立場で解説する「エバンジェリスト」として活躍している森一弥さんに、ChatGPTを実際の業務で活用する方法や、指示の出し方などについて解説いただきました。中小企業がChatGPTを効果的に活用している具体的なシーンや事例も紹介していただいたので、ぜひ参考にしてください。


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ChatGPTの魅力と最新の進化ポイントとは

ChatGPTはなぜ広く注目されているのでしょうか?

ChatGPTは、OpenAIが提供する生成AIで、だれでも自然な会話形式で操作できる画期的な点が特徴です。同様の生成AIサービスの例として、Google社の「Gemini(ジェミニ)」、Anthropic社の「Claude(クロード)」などがあげられますが、特にChatGPTが急速に普及した要因の一つは、いち早く一般のユーザーが手軽に使える「チャット形式」を採用したことにあると考えられます。2022年12月のリリース以来、生成AIブームの火付け役として個人や企業間で幅広く認知されています。

生成AIは従来のFAQボットとは異なり、ユーザーの質問に対して独自の回答をリアルタイムで生成する能力があります。特にChatGPTは文書作成、リサーチ、プログラムの補完など幅広い用途に柔軟に対応できるのが強みであり、主に業務効率化やアイデア創出に役立ちます。それだけにとどまらず、経営戦略やビジネスの意思決定においてもコンサルタントのような役割も果たせるようになりました。AIを通じて蓄積されたデータを基にした高度なアドバイスや提案が、企業の経営判断をサポートする例も増えています。

特にリソースが限られている中小企業にとっては、人手不足を補いながら生産性向上を実現できるツールであり、活用することが得策だといえるでしょう。

ChatGPTは、日々どのように進化しているのでしょうか?

2022年12月のリリース当初は、ChatGPTは主に会話するためのツールでしたが、現在では多くの機能が追加されています。特に「GPTs」という新機能は、特定の役割を持ったアシスタントのような役割を持たせることが可能です。

例えば、弁護士の知識を持たせて法律相談を行ったり、秘書の役割を担い、スケジュール管理をサポートしたりすることができます。このように各部門の業務負荷や専門性の必要な業務が軽減され、効率的な企業活動を実現できるのです。

広がる活用範囲!中小企業の業務効率化の事例と成功の秘訣

ChatGPTを活用した業務効率化の例はどのようなものがありますか?

最近では社内規定などの文書を事前にChatGPTに読み込ませる「RAG:Retrieval-Augmented Generation(検索拡張⽣成)」という手法も主流になってきました。

例えば、社員が「出張手当の計算方法を教えて」などとChatGPTに質問すると、読み込んだ社内規定データを参照して回答してくれるため、総務担当者の手間が省けるという仕組みです。こういった業務の自動化により、日常的な対応業務が迅速化され、社員はより重要な業務に集中できるようになります。

また、ある中小企業では、顧客からの問い合わせに対する自動応答システムを構築しました。商品に関するよくある質問(FAQ)をChatGPTに学習させ、顧客が質問すると自動で答える仕組みを導入したといいます。お客さま対応の業務負担が軽減され、回答のスピードも向上しました。

その他、日々の業務では文書作成、アイデア出し、リサーチなどにおいて活用されています。例えば、社内マニュアルや顧客対応文書の作成から、新商品開発のための情報収集やコンセプト作成まで、幅広く活用できます。

実際にChatGPTを活用する際のコツは何ですか?

ChatGPTを効果的に活用するためには、以下のポイントを押さえておくとよいでしょう。

まず、ChatGPTは人間のように「行間を読む」能力や、暗黙の理解に頼ることができません。そのため、指示や質問を明確かつ具体的に伝えることが重要です。あいまいな表現を避け、詳細な説明や背景情報を含めることで、適切な回答を生成しやすくなります。特に日本語では主語が省略されることが多いですが、ChatGPTに対しては主語を明確にした方が良い結果が得られます。

また、一度の指示で完璧な回答を期待せず、段階的にやり取りを行うことも重要です。人との会話と同じように、少しずつ情報を補完して進めると効果的です。「回答を生成するにあたって、必要な情報があれば質問してください」とChatGPTに伝えると、追加の質問が来ることもあります。ChatGPT側の持つ情報が、回答を生成するのに十分かどうかを確認しながら進めましょう。

具体的なChatGPTへの指示の出し方を教えてください。

どんな活用シーンでも有効なのは、キャラクター設定をすることです。例えば、「あなたは有能な弁護士です」といった設定を伝えると、その通りのトーンで回答が生成されます。また、「箇条書きで回答してください」と回答形式を指示したり、参考ファイルを添付したりして、「このような形で返してください」と伝えるのも効果的です。

期待通りの回答が生成されなかった場合は、変更してほしい箇所を細かく指摘し、より具体的な言葉で、指示の目的や回答イメージを伝えましょう。例えば、生成された回答が専門用語の多用により伝わりにくい場合、「小学生にもわかるように説明してほしいです」などと伝えるとよいです。逆に、ある特定の技術や知識を持つ人向けの回答が欲しい場合は、「より細かい技術的な部分において、詳しく説明してほしいです」と伝えることで、求める回答が生成されるでしょう。

【プロンプト例あり】ChatGPTの能力を最大限に引き出すためのコツ

日々の業務において、実際にChatGPTに依頼する際に活用できるプロンプト(指示文)やコツなどがあれば教えてください。

先ほどChatGPTを活用できる日々の業務としてあげた「文書作成」「アイデア出し」「リサーチ」に特化して解説していきましょう。

文書作成

まずは「キャラ設定」をChatGPTに理解してもらってから、文書の種類(例:レポート、エッセイ、記事など)や文字数を指定することで、より具体的な文章が作成できます。実際にはこのように指示出しを行います。

【プロンプト例】
あなたはプロのWebライターです。
専門的で信頼性のあるトーンで、一般人向けにChatGPTについて解説する記事の文章を作成してください。「ですます」調の文章で、文字数は500文字程度です。

一度に文章を作成してもらう以外に、目次などの文章構成を先に作成してもらうのもおすすめの方法です。例えば、「○○についての記事を作成します。目次を作成してください」と指示し、その後各項目について文章を生成することで、構造的で整った文章ができあがります。1つ1つの指示出しのタイミングで、「理解したら、はいと答えてください」などと伝えるのも効果的です。

〈実際のChatGPT画面〉

アイデア出し

ChatGPTへアイデア出しを指示する際は、あくまでも多角的な視点で数を多く出してもらうという意識で行いましょう。例えば新サービスのアイデアを生成してもらうと仮定します。

【プロンプト例】
あなたは有能な企画担当者です。
○○についての新規サービスアイデアを、箇条書きで10個出してください。ターゲットは20代の男女です。

生成された回答結果の中から適していると思うものを選び、「〇番のアイデアに関して、より詳細な内容を教えてください」と詳細を求めることで、さらに深掘りした回答が得られます。

一方で生成AIはツールであり、最終的な判断や責任は常に人間にあることを忘れてはいけません。AIの出したアイデアが具体的なプロジェクトに発展する場合、法的リスクを避けるためにも人間が精査したり、専門家の助言を求めたりといった、リスクマネジメントを行うことが大切です。

〈実際のChatGPT画面〉

リサーチ

リサーチに関しては、基本的な前提としてChatGPTだけでなく、複数の生成AIチャットサービスや検索エンジンなどを活用して行うことをおすすめします。例えば、ネット情報を網羅した検索が得意分野である生成AI「Perplexity(パープレキシティ)」なども併用してみましょう。

【プロンプト例】
あなたは有能なマーケターです。
○○に関して、注目度の高いキーワードを調べて教えてください。

AIをリサーチに活用する際には、使用した情報源の確認が不可欠です。特にGoogleなどでは、参考にした情報元が表示されることがあるため、その信頼性や正確性を人間が検証する習慣が求められます。

アイデア出しのときと同じように、最初は「○○についての概要を教えてください」と全体的な回答を求め、次に「さらに○○の観点において詳しく教えてください」段階的に深掘りしていくのが効果的です。専門用語や特定の項目に関するキーワードが出た場合も、積極的に「それはどういう意味か教えてください」と質問することで理解が深まります。

生成AIは、会話履歴を基に過去の質問や回答を踏まえたうえで返答するので、1度目のリサーチで出てきた結果に対して「もう少し詳しく教えてください」と依頼すると、追加情報を提供してくれる可能性も高いです。

ただ、生成AIの情報は必ずしも正確とは限らないため、自分で情報を確認し、他の信頼できる情報源と照らし合わせるフェーズを必ず挟みましょう。

〈実際のChatGPT画面〉

また、お伝えしたすべてのプロンプトはあくまでも現段階のChatGPTで有効です。ChatGPTの進化と共に指示の出し方も変わっていく可能性も大いにありますので、日々情報収集し、都度アップデートを行っていく方がよいと捉えてください。

その他、どのような活用方法がありますか?

意外と知られていませんが、ChatGPTは画像やグラフの生成なども行うことができます。バナーやポスターのデザイン、資料に使用する画像の作成など、ビジュアルコンテンツの制作をサポートします。使用用途などの要件を詳しく伝えると、生成物の精度も高くなります。

また、Webサイトや動画などの内容を要約する機能もあります。例えば、YouTubeの動画URLを入力すれば、その動画の要点を瞬時にまとめてくれるため、時間を節約しつつ効率的に情報を得ることができます。

中小企業では活用シーンが少ないかもしれませんが、プログラミングの分野でも、コードを入力すると、自動でロジックの修正を行ってくれるので、開発スピードの向上も期待できます。

有料版検討の判断基準と安心利用のためのステップ

有料版を使用すべきかどうかの、判断基準があれば教えてください。

現在はテキスト量の上限など、いくつかの制限はあるものの、無料版でも最新バージョンを使うことができます。無料版でもセキュリティ対策のために、チャット履歴をAIの学習に利用されないための設定が可能となりました。プロフィール欄から簡単に操作できるので、ぜひ確認してみてください。

しかし機能や量に制限があり、業務での利用には向いていない場合があります。特にデータの安全性や保証が重要な場合、有料版を検討するのがよいでしょう。有料版には、より高いセキュリティやサポートが提供されるものもあります。特に高度なカスタマイズを行ったり、社内のチームで活用したりする場合は、有料版が適しているでしょう。

なお、2024年10月現在の有料版プランは、個人プランの有料版「Plus」、チャット履歴がAI学習に使われないことでセキュリティ面を担保した「Team」、大企業での利用を想定した「Enterprise」の3種類が用意されています。用途に合わせて検討しましょう。

ChatGPTを活用するうえでの注意点や対策はありますか?

やはり懸念されるのは、機密情報の漏えいなどのセキュリティ面でしょう。無料版でも、先ほど解説した履歴を残さない設定にすれば、一定のリスクを回避できます。また、社内のプライベートクラウド環境を整えればさらに安全です。AzureやAWSを使えば、社内のクローズド環境で利用できるChatGPTを構築できます。自社のデータのプライバシーを保証し、OpenAIのデータサーバーからの完全に分離されたチャットツールとして運用可能です。

活用に当たっては、社内ルールの策定とその浸透も大切です。特に新入社員や若手社員は無料版を使い慣れているかもしれませんが、会社のデータを扱う際には注意が必要です。社外に情報が漏れないよう、社員教育の機会を設けましょう。

また、ツールに対する抵抗感がある社員もいることでしょう。その際はまず使いたい人から導入し、効果を示すことで他の社員にも使ってもらいやすくなります。ChatGPTを活用した業務改善アイデアを持ち寄る社内コンペの開催や、おもしろい使い方を共有することで、生成AIを活用するモチベーションも向上します。これらの対策を講じながら、積極的にChatGPTを業務に取り入れてみましょう。


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この記事の著者

弥報編集部

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この記事の監修者

森 一弥(アステリア株式会社 エバンジェリスト)

アステリア株式会社にてエバンジェリストを務める。2017年3月までは主力製品「ASTERIA WARP」のシニアプロダクトマネージャーとしてデータ連携製品の普及に務め、特に新技術との連携に力を入れる。その後、ブロックチェーンを活用した実証実験の実施や株主投票では特許を取得。現在はブロックチェーン、AI、IoTなど先端技術の可能性、勘所を業務で検討中の皆さまにお伝えするエバンジェリストとして活動中。

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