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知らなきゃ損?小規模事業者経営改善資金(マル経)について【教えて吉田先生!】

2024.07.25

著者:弥報編集部

著者:吉田 学

小規模事業者経営改善資金とは、商工会議所や商工会などの経営指導を受けている小規模事業者が、経営改善に必要としている資金を無担保・無保証人で利用できる融資で「マル経」とも呼ばれています。

コロナ禍の影響で売上が減少した場合や、天災などで事業者が被害を受けた場合には、臨時的な融資枠が設けられることもありました。ちなみに「マル経」と呼ばれるようになった理由は「申請書類の『経営改善』の文言に丸印(マル)をつけたことがきっかけ」といった説があるようです。

しかし、この制度はあまり知られていないのが実情です。経営者としてぜひ知っておいておきたい制度ですので、今回は小規模事業者経営改善資金(以降マル経)について、財務・資金調達コンサルタントの吉田学先生に伺いました。

※本記事は2024年6月時点の情報を基に作成しております。法令などの最新情報については、政府・各省庁などから出ている文書をご確認ください。


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マル経とは何ですか?この制度はお得なのですか?

マル経は、商工会・商工会議所などの経営指導を受けている小規模事業者が利用できる融資制度となっています。最大のメリットは、商工会・商工会議所などの推薦を受けると、日本政策金融公庫から、無担保・無保証人で融資を受けられるという点です。マル経の制度概要は以下の通りです。

マル経の条件やポイントを簡潔にまとめると、以下の通りです。

  1. 【規模要件】従業員20人以下の法人・個人事業主の小規模事業者が対象
  2. 【指導要件】商工会・商工会議所(経営指導員)の経営・金融指導を受けている
  3. 【居住要件】1年以上、同一の商工会・商工会議所の地区内で事業を行っている
  4. 【納税要件】税金(所得税、法人税、事業税、住民税など)を完納している
  5. 【業種要件】商工業者であり、日本政策金融公庫の融資対象業種を営んでいる
  6. 無担保・無保証人である
  7. 融資をするのは日本政策金融公庫である
  8. 特別利率が適用されている(低金利)

条件は細かいのですが、小規模事業者にとってはありがたい無担保・無保証人制度ですので、ぜひ利用を検討してください。

マル経を利用する際の相談先や流れは?

マル経を利用する場合の相談窓口は、最寄りの商工会・商工会議所になります。全体的なスキームは以下の通りです。

マル経の特徴としては、推薦するかどうかについての「審査会」が開催されることです(日本政策金融公庫の融資審査ではありません)。マル経を利用する際は、商工会・商工会議所に相談し、その後、原則6か月以上の経営指導を受ける必要があります。

その後、商工会・商工会議所において審査会(マル経の推薦を審査する機関)が開催され、事業者を日本政策金融公庫に推薦するかどうかが決定されます。審査会は、およそ3〜7名程度の審査委員で構成されており、商工会・商工会議所などの役職員や関係者、税理士や民間金融機関関係者などが任命されているケースもあります。

なお審査会においては、原則として委員全員の一致がないとマル経の推薦はできません。よって、経営指導員からしっかりと指導を受けることがとても重要です。そして、商工会・商工会議所からの推薦を受けて日本政策金融公庫は融資審査をすることになります。

商工会・商工会議所の会員にならないと利用できませんか?

マル経は、原則として商工会・商工会議所の会員を対象としていますが、絶対条件ではありません。この点に関しては、商工会・商工会議所によって対応が異なる場合がありますので、最寄りの窓口に確認するようにしてください。

また、6か月の指導を受けるのは負担に感じる事業者も多いと思われますが「厳密に6か月必要か?」という点についても、商工会・商工会議所によって対応が異なる場合がありますので、最寄りの窓口に確認するようにしてください。なおマル経については、日本政策金融公庫は必要に応じて経営指導員ともやり取りをしています。また商工会・商工会議所の審査会を経ているので、推薦から融資判断の結論が出るのは早いといえます。

商工会・商工会議所は違う組織ですか?同じものですか?

商工会・商工会議所は、共通点と異なる点があります。両者とも地域の事業者が会員となり、事業や地域の発展のために活動を行う団体であり、スモールビジネスを支援するさまざまな施策を実施しています。

商工会と商工会議所との大きな違いは、根拠法が異なる点です。実務的には「商工会」は「原則として一の町村の区域」に設立されています。「商工会議所」は「原則として市(都の区のある地域においては、そのすべての区を合わせたもの)の区域」に設立されています。

以下のサイトから地元の商工会・商工会議所を確認してください。
全国の商工会
全国の商工会議所

日本政策金融公庫の通常の無保証人制度とマル経では、どちらがおすすめですか?

日本政策金融公庫には「経営者保証免除特例制度」があります。マル経でなくても、本制度の要件に合致すれば経営者保証なしで融資を受けることができる可能性が高いです。

(参考)
経営者保証免除特例制度|日本政策金融公庫

ただ、既に商工会・商工会議所の会員事業者の方は、マル経の利用がおすすめです。金利が低く、担保も保証人も不要という大変利用しやすい制度ですから、マル経を計画的に利用することを検討してみてください。ただし、6か月の経営指導は期間が長いため、日本政策金融公庫に直接融資を申し込む方がよいという考え方も間違いではありません。

どうしても判断に悩む場合は顧問税理士や地元の商工会・商工会議所などの意見を聞きながら、ご自身の状況に応じて判断するようにしましょう。


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この記事の著者

弥報編集部

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この記事の著者

吉田 学(よしだ まなぶ)

財務・資金調達コンサルタント
株式会社MBSコンサルティング 代表取締役。1998年の起業以来、「資金繰り・資金調達支援」に特化して創業者や中小事業者を支援。これまでに1,000 社以上の資金調達相談・支援を行い、その資金調達支援総額は20億円超。主な著書に、「社長のための資金調達100の方法」(ダイヤモンド社)、「究極の資金調達マニュアル」(こう書房)、「税理士・認定支援機関のための資金調達支援ガイド」(中央経済社)、「税理士だからできる会社設立サポートブック」(第一法規)などがある。
また、全国の経営者・士業などを対象にした会員制の資金調達勉強会「資金調達サポート会(FSS)」を主催している。

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