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定着率&業績が良くなる!AI分析でわかった「最強チーム」に共通する5つのルール

2024.06.27

著者:弥報編集部

監修者:越川 慎司

「個人は決して能力が低くないはずなのに、なぜかチームプロジェクトは結果につながらない」「組織の士気が低く、退職者も多い」と悩む経営者やリーダーは少なくありません。一体なぜでしょうか。

実は、安定して継続的に成果を出すチームには「5つの共通点」があると言います。今回は『最強チームの条件を1冊にまとめてみた』などの著者である越川慎司さんに、成果を出し続ける最強チームの特徴をはじめ、最強チームを目指すための具体的なアクションなどについて、実際のビジネスシーンでの実例を交えて解説いただきました。


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チームのパフォーマンスが上がらない原因は?

チーム作りにおいて、中小企業が抱える悩みはどのようなものが多いのでしょうか?

今の日本企業においてチーム作りに関する悩みでよく聞くのは「実績が出ない」「業務効率が低い」「早期退職が多い」「信頼関係を築けない」など、チームのパフォーマンスが安定しないことがあげられます。これらは独立した課題というよりは、それぞれの課題が複雑に絡み合っており、悪循環を招いています。放っておくとチームや個人の士気を下げるだけでなく、会社の業績悪化にもつながってしまいます。そうなる前に早めの対策が必要です。

これらの課題の根本的な原因の1つにコミュニケーション不足があります。特に中小零細企業の場合は人数が少ないこともあり、コロナ禍以前は「阿吽の呼吸」のように、仕事の詳細を伝えなくても双方向で理解し合えるような状況がありました。しかし現在は、リモートワークが増えたり、多様な価値観を持った社員が増えたりと、これまでと異なる社会背景があります。結果として互いの共通項目が減り、感情共有ができないことからコミュニケーションが取れず、情報伝達がスムースに行えないという事象が起こるのです。

またコロナ禍を経て、DXに取り組む中小企業の少なさが露呈しました。つまり、業務の可視化ができておらず、対面機会がないとわからない仕事が多いということです。生活様式が変わり、従来の働き方に対して疑問を感じ、会社への帰属意識も薄れてしまう人が増えたのも事実です。

しかし、そのような背景下でも成果を出し続ける組織が一定数あります。私たちは、そのチームを「最強チーム」と定義し、AI分析によってその特徴を見つけました。

「最強チーム」に共通する5つのルール

「最強チーム」とは、どのようなチームを指すのでしょうか?

「最強チーム」とは、メンバーや外部環境の変化にかかわらず、定量的な目標を達成し続け、会社の生産性と従業員の働きがいを両立させているチームのことを指します。私たちは、815社17万人を対象に調査し、全体の約7%がこの最強チームであると発見しました。

「最強チーム」には、どのような特徴がありますか?

対象者の行動をAIで分析した結果、「朝のあいさつを必ずする」「会話中のうなずきが深い」などの細かな行動も含めて、最強チームには共通する特徴が100個以上あることがわかりました。私たちはさらにその中から、再現しやすく、チーム改善に効果的な要素を探しました。実際に、調査対象者にチーム改善の行動実験を行ってもらい、再現率が8割を超えチーム改善につながった要素を5つに絞ることができました。1つずつ解説していきましょう。

正しく対話する

最強チームは、会話よりも対話を意識しており、一般的なチームよりも対話時間が41%多いことがわかりました。コミュニケーションがいかに重要か、ここでも明確になりました。対面でもリモートでもうまくいっている最強チームは「今、ちょっといいですか?」と互いに声を掛け合うことが多かったです。コミュニケーションの頻度と密度が高く、対話のハードルが低いことも特徴として見受けられました。

業務の見せる化を浸透させる

部下が上司に「業務を見せる」習慣もよく見られました。行動目標を部下と一緒に決めることで、自律的に課題に取り組めるようになれば、自ずと進捗報告や相談なども頻度が高くなります。また、共有する際は、タスク管理ツールなどを活用しているチームが多かったです。

感情を共有する

よくある仕事上の情報共有よりも、感情共有を重視していました。感情を共有する目的は、腹を割って話せる心理的安全性が保たれている状態を作り出すことにあります。「楽しかった」「うれしかった」などの感情を、豊かな表情とともにチームと共有すれば、共感共創が生まれ、より意義のある意見交換ができるようになります。

タイムマネジメントをする

何かを新しく始めるときには、代わりに何かをやめる意識を持っていることも、特筆すべき点です。無駄な時間を極力減らし、できた時間を重要な仕事に充てるチームが多かったです。内省の時間を設け、常にタイムマネジメントを意識していることがわかりました。

周囲を巻き込む

そもそもチームは、互いの弱みを補いつつ、強みを高め合うことで複雑な課題を解決する共同体を意味します。最強チームは周囲を巻き込むことで、チームメンバーの得意分野を組み合わせ、全員で目標達成することを目指していました。また、社外の取引先も巻き込み、共感・共創の姿勢を持つことによって、より良い関係性構築を行っていました。

「最強チーム」を真似することがチーム改善の第一歩

チーム改善のために、何から始めればよいのでしょうか。

まずは最強チームが実践している行動習慣を真似してみることから始めてみましょう。再現することはあくまでも1つの手段です。いきなり意識改革をしようと思っても、何から手を付けていいかわからないですよね。真似から入る行動変革をすれば、自ずと意識も変わってくるはずです。

具体的にはどのような取り組みをすべきでしょうか?

5つのルールを再現すべく、さらに具体的な行動例に掘り下げてみたので、ぜひ参考にしてください。

対話時間を増やすには、1 on 1の時間を設ける

コミュニケーションはすべての基盤です。会話ではなく、対話を意識した1 on 1の時間を設けましょう。普段なかなかできない個別の対話だからこそ、互いの思いや考えを共有できるようになることが目標です。

関係性の構築ができたら、具体的な行動支援を行いましょう。部下には全体の7割話をさせることが理想です。月に1回1~2時間話すよりも、2週間に1回15分程度の頻度でコミュニケーションを取ることをおすすめします。例えば朝にコーヒーを飲みながら会話するだけの15分でも効果的です。出社のタイミングで対面にて話す機会を設けていれば、リモートワークでもコミュニケーションが取りやすいことがわかっています。

業務の見せる化を浸透させるには、フィードフォワードを行う

「フィードフォワード」とは、タスク実行中の途中で進捗を共有してもらい、軌道修正を図る方法です。仮にうまくいっていないとしても、まずは部下から見せてもらうように意識付けをしましょう。ポイントはタスクや目標を一緒に決めてから取り組んでもらうことです。

例えば、資料作成においては、進捗20%の状態で一度見せてもらうようにします。実際に、フィードフォワードを導入して資料の差し戻しが74%も減ったという結果もあります。

感情を共有するには、会議冒頭に雑談の時間を設ける

例えば、会議冒頭などに雑談の時間を確保することから始めてみましょう。目安は2分程度です。雑談は、相手との共通点を見つけるコミュニケーションです。2つ以上の共通点があると、心理的安全性を確保しやすくなります。雑談の定番テーマは「天気」や「ニュース」などに関する話題ですが、1.2万人の実験で「飲食」が最も効果がありました。

会議冒頭で雑談すると、その後の参加者の会議中の発言数が1.7倍、発言者数が1.9倍になり、意義のある話し合いを実現できたという実験結果もあります。これは、雑談することによって参加者間で共感共創ができたことにより、発言しやすい空気が生まれたからと言えるでしょう。

また話すときは、口角を上げたり深いうなずきをしたりと、表情にも意識を向けましょう。特にテレワークでは感情がわかりにくいので、普段の倍くらい大げさに表情を作ってみるのも効果的です。

効果的なタイムマネジメントを行うには、会議時間を減らす

タイムマネジメントの中でも有効なのは、会議改革です。実は、働く時間のうち45%が社内会議という調査結果があります。一般的な会議は60分で設定されるケースが多いですが、これを45分に短縮できるとすれば、単純に社内会議が25%減ることになります。

例えば、会議の24時間前にはアジェンダを共有すれば、会議への参加意識も高まり、積極的な意見交換を促せます。「結局何のための会議だっけ?」というような時間のロスや、議題の脱線を防げるでしょう。また、そもそもアジェンダが作成できない会議があるとすれば、その会議は不必要な場合が多いです。思い切って、会議をやめることを決めるのも1つの手です。

また、別の調査では、会議参加者の記憶定着率は最初の1分と最後の5分ということがわかっています。会議終盤には決定事項やアイデアなどを整理した簡易的なスライドを作成し、参加者に求めるアクションをリストアップしてください。そうすることで、会議後の動きもスムーズになります。

周囲を巻き込むには、相手のメリットを考え、巻き込み構文を活用する

仕事をだれかに依頼するとき、伝え方で相手の対応は大きく異なります。冒頭に相手のメリット、もしくは意義・目的を伝え、最後に相手の行動ハードルを下げる言葉を伝えることを意識してみてください。「べき論」だけでは相手は動きません。相手がどのようなメリットを享受できるのかを考えたうえで、依頼することを忘れないでください。

実際に、チーム改善に成功した企業の例を教えてください。

チーム改善に取り組む企業には、自分たちのチームがチャレンジできそうな項目を選んでもらうところから始めてもらいました。

従業員数30名のサービス業の企業は、業務の見せる化を浸透させた結果、業務効率を半年で30%向上することができました。最初は新しい取り組みに戸惑いのある社員はいたものの、業務の優先度を明確にするなどの改善を繰り返し、効率化を図ったといいます。

また、従業員数20名の小売業の企業は、感情共有を促進し、1年で顧客満足度が20%向上したそうです。取り組みの効果を定量的に測定するのに苦労したようですが、定性的な評価を行いながら、徐々に定量的な指標を決めることができました。

改善期間はそれぞれの企業によって異なりますが、目安としてまず1か月試してみて改善点を洗い出しながら、その後3か月ごとに様子を見ていくようにしました。結果は、もちろん複合的な理由もあるかもしれませんが、企業に良い効果をもたらしていることは間違いありません。

チーム改善を成功に導くポイントとは

チーム改善に取り組むうえでのポイントがあれば教えてください。

ポイントは2つあります。

1つ目は、あくまでチーム全員が自主的に取り組めそうなものから導入していくことです。なぜなら、チーム改善にはチームメンバー1人ひとりの当事者意識が必要不可欠だからです。皆で話し合い、「これだったらできるかもしれない」というものを選びましょう。小さな行動変革から始めて、チームメンバーが「意外と良かったね」という感想を持てれば、次の施策にも前向きな姿勢で取り組めるでしょう。

2つ目は、継続的に改善に取り組み、最適化していくことです。すべてに言えますが、行動を変えたからといって、すぐに変化が目に見えて現れるわけではありません。特に行動実験は継続のうえ、都度軌道修正する力が必要になります。

コツは、楽しみながら改善することです。例えばゲーミフィケーションの要素を取り入れ、行動改革を1つ行うごとにポイントが付く、というルールを決めた企業もありました。ポイントが貯まったら、皆でご飯を食べに行こう、というようにプロセスを楽しみながら取り組んでいたんですね。行動ハードルを下げ、前向きに改善できるよう工夫するとよいでしょう。

若い世代とのコミュニケーションに苦労する管理職も多いと聞きます。どのように接するべきでしょうか?

仰る通り、20代の社員とのコミュニケーション方法がわからず、つい放置してしまうという管理職は少なくありません。しかし、そのまま孤立してしまうと退職につながりやすいので注意が必要です。基本的には、他の社員に接するのと同じように、威圧的にならないよう感情共有を大切にしながら話をするとよいでしょう。

特に質問を投げかけるときは、「AとBだったらどっちに興味があるの?」などといった、クローズドクエスチョン(選択式質問)を投げかけてあげると効果的です。コミュニケーションに慣れていない20代でも回答しやすい質問方法なので、ぜひ試してみてください。


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この記事の著者

弥報編集部

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この記事の監修者

越川 慎司(株式会社クロスリバー 代表取締役社長)

国内通信会社などを経て、2005年にマイクロソフトに入社。業務執行役員としてPowerPointやExcelなどの事業責任者を務める。2017年に株式会社クロスリバーを設立。創業当初から全メンバーが週休3日、複業、7時間睡眠を実践。約700社の中小企業に対して年間400件以上のオンライン講座を提供。著書『トップ5%リーダーの習慣』など30冊。フジテレビ「ホンマでっか!?TV」などメディア出演多数。

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