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経営者なら知っておきたい!社員育成&組織力アップにつながる「フォロワーシップ」とは?
2024.04.11
経営者や役員として、日々社員を導き会社の舵取りを行っているのに「自ら考えて動く社員が少ない」「指示待ちで主体的に動いてくれない」などと感じることはありませんか。
実は、リーダーが統率する組織では、社員が能動的に動かなくなると言われています。なぜなら、自分で何とかしなくても上司が動き、責任を負ってくれるだろうという考えが根本にあるからです。しかし、変化が激しく課題も複雑化する時代において、会社を前進させるためには従来より思考力を持った組織が必要になります。では、どのようにして主体的な組織作りを行えばよいのでしょうか。
解決策の1つとして、リーダーがメンバーを支える「フォロワーシップ」を発揮するマネジメント方法があげられます。今回は株式会社チームボックスの中竹竜二さんに、リーダーが行うとよいフォロワーシップの概要や詳細などをお伺いしました。「日本一オーラのない監督」と周囲に言われながら、早稲田大学ラグビー蹴球部を2年連続全国制覇に導いた中竹さんが提唱するこれからのリーダーの在り方を、組織力を強化するためのヒントにしてください。
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目次
社員の主体性、奪っているのはリーダーだった?
なぜ「自ら考えて動く」社員が少ないのでしょうか。
社員の性質にもよりますが、原因の1つとして、経営者や役員たちが統率型の組織作りを行っていることがあげられます。社員は命令を聞く環境に慣れてしまうと、考える余白が奪われてしまうので主体性は一向に育ちません。結果として指示待ち人間が増えてしまい、統率している側は「やっぱり任せられない」と指示出しや管理を繰り返してしまいます。
統率型の組織作りが悪いわけではありませんし、会社やリーダーによってスタイルが異なりますから、一概に間違いとは言えません。しかし課題が複雑化し、従来のノウハウでは対応しきれず、議論や複数の見解を重ねて施策を見出す昨今の状況に鑑みると、組織の全員が思考力を持ち、能動的に動けることは有利に働く可能性が高いです。
成長しないからといって社員のせいにしたり、諦めて上層部だけで仕事をしてしまったりしてはいけません。スポーツチームでも、継続して良い選手を育てなければ数年後にはチーム自体の存続が危ぶまれます。会社にとっても、社員育成や組織作りは必ず乗り越えなければいけない壁であるといえるでしょう。
「自律的・主体的な組織」は、リーダーのフォロワーシップがカギ
どのようにして主体性のある組織を作ればよいのでしょうか。
組織は通常、リーダーとフォロワーの2層に分けられます。私が提唱するのは、リーダーがフォロワーの一人一人の能力を活かすために動く「フォロワーシップ」を発揮させて組織作りを行うことです。
主体性・自律性を持つ組織というのは、言い換えるとフォロワーがリーダーと同じように考えながら、個々の能力を活かして動くことを指します。リーダーは、フォロワーたちが自分で考えて動けるようにサポート役に徹するのです。もちろん、最終的に決断を下すのはリーダーですが、指示や命令でフォロワーを動かすトップダウン型のマネジメントとは異なり、組織のメンバー1人1人を主役にした組織作りを行うことが重要なのです。
具体的に「フォロワーシップ」とは何を指すのでしょうか。
この場合のフォロワーシップとは、どうすれば社員が自然と成長してくれるかを突き詰めて考え抜くことを指します。リーダーとしての優れた育成スキルや教育手法を意味するのではなく、あくまでもフォロワー側の視点に立つことが重要です。
具体的なアクションとしては、これまで行ってきた指示出しや統率ではなく、どのように支えるかに注力するのです。権限委譲を行ってフォロワーに考えさせる時間を作ったり、個人面談でどのようにフォロワーが自走できるようになるかを一緒に考えたりと、リーダーシップを発揮するよりはるかに難易度の高いマネジメントです。なぜなら、つい意見を言いたくなるのをぐっとこらえ、時にはもどかしい感情を抱きながら社員を見守らなければならないからです。しかし、そのリーダーの姿勢はフォロワーのリーダーシップを発揮させ、結果として主体性のある組織へと変容させていくのです。
リーダーは「リーダーシップ」を発揮すべきでないのでしょうか。
リーダーシップは立場にかかわらず、必要であれば発揮されるべき力であると考えています。あくまでも「統率する」行為そのもの指しますから、絶対にリーダーがすべきだという定義は当てはまりません。何事も「こうあるべき」ということはないですよね。立場にかかわらず、柔軟な動きができるようになれば良い状態であるといえるでしょう。
もちろん、そもそも自社組織にフォロワーシップが必要かどうかは検討する必要があります。統率型の組織にもメリットは多くあります。自社や自身のスタイルに合っていれば、トップダウンも効果的といえるでしょう。自分たちの組織について本当に考えるタイミングが来たと感じているのであれば、フォロワーシップの必要性を認識したうえで、取り組んでもらえればと思います。
「質問・傾聴・観察・承認」の4つのスキルを身に付けよう
フォロワーシップを発揮するために必要なスキルなどはありますか。
リーダーがフォロワーシップを発揮するために必要なスキルは、相手の思考を引き出す「質問力」、相手の話に耳を傾ける「傾聴力」、相手の状態や変化に気付く「観察力」、相手の良いところを認め、言葉にして伝える「承認力」の4つです。
人の話を聞かないと良い質問はできませんし、その人をしっかりと見ていなければ良い点も見つけられません。4つは相関関係にあるので、すべてのスキルを総合的に上げていく必要があります。
「リーダーは道を示さなければ」と先頭に立ち、懸命にリーダーシップを発揮してきた経営者にとって、おそらくこれらは重要としてこなかったスキルでしょう。しかし、その状態で本当に社員と健全なコミュニケーションができているのでしょうか。仮に、経営者の言うことに何でも「はい」と了承する、会議はすべて経営者が話し続ける、などの状態が続いているのであればイノベーションも生まれにくく、これからの時代を生き抜くことが困難な状態である可能性が高いです。改めて自身のリーダースタイルを見直し、変化に適応するタイミングであると認識してください。
4つのスキルは、どうやって身に付ければよいのでしょうか。
有効なトレーニング方法が2つあります。1つ目は、自身の日々の行動を振り返ってみることです。例えば社員との1 on 1や、チームミーティングなどを録音して後から聞いてみると、どれだけの割合で自分が話しているかがわかります。多くのリーダーが、自分が話している時間が長いことに驚くでしょう。それを理解したうえで、少しずつ自分の話す割合を減らし、質問したり傾聴したりするように努めましょう。例えば「この会議は任せたから、皆でやってね」と伝えるなど、小さなことからでよいので取り組んでみるのがお勧めです。
2つ目は、相手に自分へのフィードバックを求めることです。「正直、どうだった?」と都度自分の言動について聞いてみましょう。社員はいきなり本音は言わない可能性もありますが、継続して変わろうとする姿を見せることで、少しずつ良い関係性が築けるようにもなるでしょう。
加えて、社員に感謝の言葉をたくさん伝えてみてください。最初は社員も不思議に思うかもしれませんが、その姿勢が継続され、定着していけば社員も受け入れてくれるはずです。
こうすべきという成功法はありませんし、すぐ身に付けられるものでもありません。自身を振り返って周囲を頼りながら、継続して地道な努力を続ける必要があるのです。
リーダーの意識改革は根気強く
実際にフォロワーシップを発揮するための意識改革には、どれくらいの期間が必要なのでしょうか。
これまでさまざまな企業でリーダーの意識改革を支援してきましたが、本気で変わろうとすると、約半年から1年はかかります。従来築き上げてきたリーダーシップの意識や手法は、すぐに変えられるものではありません。最初は皆、不安を感じて消極的なリーダーがほとんどです。しかし、今後の企業成長のことを考えると、リーダーが自身の居心地の良い環境を抜けて努力しなければ、組織は変わらないのです。
また「社員とは世代が違うから、理解するのは無理だ」と世代のせいにして途中で諦める方もいます。しかし、そもそも、最初から互いにわかり合える人なんていません。どんな世代であっても、1歩踏み込んで知ろうと思えば苦手意識などは自ずと消えていくでしょう。わからないのであれば聞けばいいのです。スポーツの筋トレと同じように、根気強く続けていきましょう。
「そうは言ってもなかなか社員に任せられない」と考えるリーダーは少なくありません。どうすればよいのでしょうか。
変革にリスクはつきものだという認識を持ってください。人は間違いなくして成長しません。
支援先のリーダーからも同じように「失敗されたら困るから社員に任せられない」という声を多く聞いてきました。しかし大前提として、育成と成果は必ず矛盾します。新しいことをするときは間違えて当然ですし、至極真っ当なことでもありますよね。リスクを承知のうえ、場数を増やして成長を促す覚悟が必要なのです。何を任せるかはリーダー自身のマネジメントの課題でもあるので、ある程度の失敗が起こることは想定したうえで、何の仕事をどのように任せていくかを考えるとよいでしょう。
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この記事の著者
弥報編集部
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この記事の監修者
中竹 竜二(株式会社チームボックス 代表取締役、日本オリンピック委員会サービスマネージャー)
福岡県生まれ。早稲田大学人間科学部卒業後、レスタ―大学大学院社会学修士課程修了。帰国後、三菱総合研究所で経営コンサルタントとして業務を行い、その後早稲田大学ラグビー蹴球部監督に就任。
フォロワーシップという新しい概念を創出、自律支援型の指導法を用い、全国大学ラグビーフットボール選手権大会にて全国二連覇を果たす。
その後、日本ラグビーフットボール協会ではじめての「コーチのコーチ」であるコーチングディレクターに就任。就任期間中、U20日本代表ヘッドコーチを3期兼務、また協会理事も務める。
現在は、日本オリンピック委員会(JOC)のサービスマネージャーとして、全オリンピック競技における国を代表する指導者の育成・強化を主導している。
またさまざまなスポーツにおける人材育成経験を活かし、株式会社チームボックスの代表取締役を務め、企業における経営幹部のマネジメント強化、エグゼクティブコーチング、組織開発を行っている。
著書に『ウィニングカルチャー勝ちぐせのある人と組織のつくり方』(ダイヤモンド社)、『自分を育てる方法』(ディスカヴァー21)など多数。音声配信サービスVoicy”成長に繋がる問いかけコーチング”では、パーソナリティをつとめる。
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