- 人材(採用・育成・定着)
離職率の低下につながる!従業員エンゲージメントを向上させる3ステップをプロに聞く
2023.11.14
「従業員エンゲージメント」という言葉を聞いたことはありますか?これは「企業と従業員の相互理解・相思相愛度合」を測る指標です。従業員エンゲージメントの向上は会社にさまざまなメリットをもたらしてくれます。そのうちの1つとしてよくあげられるのが「離職率の低下」です。
では、従業員エンゲージメントはどのように測り、どうすれば上げられるのでしょうか?
今回は「従業員エンゲージメントを仕組み化する スキルマネジメント」著者である、中塚 敏明さんにお話を伺いました。自社の従業員エンゲージメントを上げ、人材不足の解消につなげましょう。
弥報Onlineでは他にも「人材」をテーマにした記事を発信しています。
人材の記事を読む
目次
そもそも「従業員エンゲージメント」とは?従業員満足度との違い
従業員エンゲージメントとはどのようなものか教えてください。
従業員エンゲージメントとは、企業と従業員の「相互理解・相思相愛」度合です。企業が目指す方向性や目的に対する従業員の理解度や共感度、さらに行動意欲を示す指針といえます。
つまりやるべきことをやる、責任を全うしてからやりたいことをやる行動特性が、エンゲージメントの高い状態です。
一方、従業員エンゲージメントとよく混同されがちなものが、従業員満足度です。こちらは従業員自身が、職場や組織を判断する点に違いがあります。従業員満足度は人によって基準が異なるため、リソースの少ない中小企業では対応しきれない部分も多いでしょう。
従業員エンゲージメントを測定する方法を教えてください。
従業員エンゲージメントを測定するためには、質問を用意して社内でアンケートを実施したり、オンラインで質問票を配布したりする方法が考えられます。例えば以下のような質問を従業員に投げかけることによって、測定することが可能です。
- 「会社が掲げる使命に対して心から貢献したい」と考えていますか?
- 「チームメンバーがサポートしてくれる」と感じますか?
- 仕事上で自分に期待されていることを明確に理解していますか?
- 仕事では常に成長が必要だと思いますか?
- 上司やチームメンバーと価値観が共通していると思いますか?
- 仕事で日常的に強みを発揮するチャンスはありますか?
- 今の職場では優れた仕事をすれば評価されると思いますか?
- 会社の未来は明るいと確認していますか?
このような社内アンケートを、最低でも半年に1度は実施するべきでしょう。
従業員エンゲージメントと離職率の関係
従業員エンゲージメントが高まると、離職率が下がると聞きました。なぜ従業員エンゲージメントを高めることが、離職率を下げることにつながるのでしょうか?
従業員エンゲージメントが高い状態というのは、従業員が会社の目指す方向性や姿に共感しており、仕事に対する行動意欲が高い状態です。そのような状態の従業員は会社とのつながりを強く感じます。会社とのつながりを強く感じる従業員は会社を辞めようとは考えないでしょう。そのため、従業員エンゲージメントの高まりは離職率の低下につながるのです。
離職率の低下の他に、従業員エンゲージメントを高めるメリットがあれば教えてください。
離職率の低下以外にも多くのメリットがあります。代表的なものは以下のとおりです。
- 労働生産性の向上
- 営業利益率の向上
- 顧客満足度の向上
- 株価の向上
先ほども述べましたが、従業員エンゲージメントの高まりは従業員の行動意欲の高まりにつながります。行動意欲の高い従業員は創意工夫して業務に取り組みますので、生産性の向上につながります。その他にも、従業員は会社が掲げた目標を達成するための行動を取るようになり、会社は数字目標を達成できる可能性も高くなります。
例えば従業員エンゲージメント低い従業員に「会社の利益率を上げたいので、〇〇をしてください」と伝えても「自分の仕事が大変だし……」「自分には直接関係ないし……」と考え、なかなか動いてもらえないでしょう。しかし従業員エンゲージメントの高い状態であれば、同様の依頼でもすぐ動いてくれる可能性が高いです。
また目的に対して積極的にかかわろうとする意識が高まることにより、顧客満足度も向上するでしょう。その結果、株価も上がるなど、さまざまな波及効果が期待できます。
従業員エンゲージメントを高める方法
従業員エンゲージメントを高める方法を教えてください。
従業員エンゲージメントは以下3つのステップで高めることができます。
- 不満の解消
- 成長の促進するための環境整備
- 企業理念の浸透
1.不満足の解消
まずは従業員が抱えている不満を解消する必要があります。従業員に不満がたまると離職率が上がるので、離職率が高い場合は従業員に何かしらの不満があると考えましょう。
実は以前、我々の会社も従業員数が50名ぐらいになったときに、事業を大きく前進させようと27名採用したことがありました。ですが、そのうち20名が退職してしまいました。その当時の離職率は41.5%です。これは今でもかなり苦い経験となっています。
従業員に不満がたまっていると気付いたら、まずは現状をしっかりと把握するために従業員に話を聞きましょう。そこで明確になった課題を解消し、マイナスからゼロの状態へいち早くリセットすることが重要です。
ただ、従業員からあがった不満のすべてを解消することは難しいかもしれません。リソースも限られていますから、優先順位をつけて取り組みましょう。優先順位をつける際には頭や手を使って今すぐ改善できることから始めるのも1つの方法ですし、従業員の不満が多かった課題から解決するのもいいでしょう。
なお、従業員の不満としてよくあげられるのが「人事評価制度が整備されていない」ことと「会社の方針が不明瞭である」ことです。従業員数が5~15名の会社の場合、社長との距離が近すぎて逆に「社長が何を考えているのかわからない」という状況に陥るケースがあります。社長は自分の考えを、しっかり言語化して発信することを心がけましょう。
2.成長の促進
従業員の不満を解消したら、次は従業員の成長を促進するための環境整備を行います。例えば人事評価の制度面でいうと「社長に気に入られたから給料が上がる」のではなく「自分の仕事がしっかりと評価されたから給料が上がる」というのがあるべき姿です。そこに対する筋道を立てる意味でも、評価制度の整備は重要になります。どうやったら給料が上がるのかを可視化しましょう。
3.企業理念の浸透
従業員の不満を解消し成長する環境を整えても、そもそも従業員が会社のことを理解できていなければ、従業員エンゲージメントの向上にはつながりません。企業理念を従業員に浸透させる必要があります。
会社の方針を明確化したり制度を作ったりするだけでなく、言語化された情報を冊子などにまとめるのも良い方法です。会社の透明性を高め、理念や行動指針などを図やイラストなども活用しながら、わかりやすい形で発信しましょう。
こうした取り組みは従業員に会社の一員として、働くことの意義や意欲を再認識させることにつながります。
従業員エンゲージメント向上のための施策を実施する際、留意すべき点があれば教えてください。
最も重要なことは前述の3つのステップを適切に整理し、バランスを取って進めることです。
私たちの過去の失敗例をあげると、満足度に重点を置きすぎてマネージャーが疲弊してしまったというものがあります。離職率が高くても、従業員を過度に甘やかす方向に走らないように注意が必要です。このバランスを見誤るとマネージャーが負担を感じて辞めてしまい、一般社員だけが残ることもあります。
従業員の不満解消は腹八分目程度に控え、成長を求める方向に意識を向けてください。その結果、離職率を10%以下に抑えられれば、従業員エンゲージメントの高い状態になったといえるでしょう。
弥報Onlineでは他にも「人材」をテーマにした記事を発信しています。
人材の記事を読む
この記事の著者
弥報編集部
弥生ユーザーを応援する「いちばん身近なビジネス情報メディア」
この記事の監修者
中塚 敏明(スキルティ株式会社 ネットビジョンシステムズ株式会社 代表取締役)
1976年生まれ、2000年にNTT東日本に入社。2011年にネットビジョンシステムズを設立、組織力向上と従業員エンゲージメントを重視し、スキルマネジメントシステム「skillty」を開発。これにより、リンクアンドモチベーション社の従業員エンゲージメント診断で従業員エンゲージメント上位2%となる組織偏差値70を超え、同業種同規模ランキングNo1の称号を得る。2022年にスキルティを設立、中小・ベンチャー企業の個人の成長と組織の発展を両立するしくみ作りの支援を行っている。2023年2月に書籍「スキルマネジメント」を刊行。一般社団法人ITキャリア推進協会 理事
関連記事
事業支援サービス
弥生が提供する「経営の困った」を解決するサービスです。