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【3つの悩み別】人手不足の今、人材確保のためにできること

2023.10.31

著者:弥報編集部

監修者:窪田 剛士

近年、労働人口の減少が深刻化しています。人材を募集しても集まらなかったり、自社に合った人材を見つけることがより難しくなるなど、採用の問題に頭を抱える経営者も多いのではないでしょうか。

今回は株式会社帝国データバンクの窪田 剛士さんに、採用の難しい現代に適した人材確保の方法や、採用のコツなどについてお話を伺いました。

実際の採用シーンを想定し「求人を出しても応募がない場合」「求める人材の応募がない場合」「採用時にミスマッチが起こる場合」の3つの悩み別に対処法を紹介します。自社の抱える悩みと照らし合わせてご参考ください。


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深刻な人手不足が加速

人手不足が叫ばれる昨今ですが、実際のデータなどがあれば教えてください。

動向調査によると2013年以降、人手不足を体感する企業の割合は増加傾向にあり、コロナ禍前の2018年11月時点で、正社員不足は過去最高値を記録しました。下図は、正社員・非正社員における不足割合の月次推移です。

帝国データバンク調べ

コロナ禍を経て現在も再び人手不足感が高まっており、過去最高値に近い割合の企業が人手不足を訴えています。特に観光業と飲食業では「正社員が不足している」と回答する企業が全体の7割を超えており「非正社員が不足している」と回答する企業に至っては8割を超えました。

他にも、情報サービス業や建設業などでは「仕事はあるのに、人がいなくて対応できない」という声があり、人手不足が受注機会の損失原因となっている現状が見受けられます。こうした動きは、少子高齢化のあおりを受けると同時に、人材のミスマッチなどによっても助長されていると考えられます。

求人を出しても応募がない場合の対処法

応募数がまったくない場合、まずは何から改善すべきでしょうか。

まずは自社ホームページの見直しを行いましょう。今の多くの応募者は、企業の公式ホームページを確認したうえで求人にエントリーしています。ホームページの内容やデザイン、採用ページへのアクセスのしやすさなどで企業に対する印象が大きく変わります。今一度自社のホームページを見直してみるとよいでしょう。

ホームページのどのような点を見直せばよいでしょうか。

「良いホームページ」を具体的にひも解くと、ページとしての見やすさはもちろん、純粋な見栄えの良さも重要なポイントです。また、働きたいと思えるような事業説明になっているか、給与などの働くうえで知っておきたい基本情報は記載されているかなどを確認しましょう。自社ホームページがない場合は、地域の商店街などのホームページ上にページを設けてもらうこともお勧めです。

採用の応募数を増やすために、他にできることはありますか。

採用方法の見直しや、従来の人材採用と異なるルートでの募集を検討しましょう。例えば、地域の大学や自治体と連携するなど、実際に人材採用に成功している企業の中には、既存のルート以外の採用を行っているケースも見られます。

大学との連携を図る場合、まずインターンシップとして学生を募集するのもよいでしょう。ある企業では学生に、既存商品のノウハウを活かしながら新商品を提案してもらうという研修を行った結果、そこからヒット商品が生まれたといいます。学生はインターン後、その企業に就職したそうです。地域とのつながりの中で人材を採用すれば、より定着率も上がります。

また、他社と協力することで採用に成功する場合もあります。人手不足が深刻といわれる業界の1つである運送業では、同業他社と一緒にイメージアップを図るポスターなどを制作して各社で訴求した例があります。その結果、業界全体のボトムアップを促すことに成功し、人材採用につながりました。

その他、SNSで求人募集の広告を流すなど、新しい手法を取り入れた企業も多くあります。さまざまなベクトルでの人材採用を行ってみるのがよいでしょう。

求める人材の応募がない場合の対処法

応募はあるが、自社に適した人材が集まらないと感じる場合、何を改善すべきでしょうか。

求めている人材像を明確にしましょう。人材像というのは、営業なのか、エンジニアなのかといった職種ではなく、求める人材の特性を表します。募集要項に、職種や求めるスキルだけを記載している企業は意外と多いものです。人材像を明確にすることで、具体的にどんな人に入社してもらいたいのかを決めるとよいでしょう。

例えば帝国データバンクでは、行動力がある「能動型」、思考力や強い意欲を持った「変革型」、コミュニケーション能力の高い「協調型」、専門スキルを持った「地力型」というように、人材像を大きく4つに分類しています。

それぞれの人材像は強みや特性の傾向があるので、事前に採用側で整理し、理解することが大切です。このようにして求める人材の特性が整理できたら、募集要項に「求める人材像」の箇所を作成しましょう。記載内容はより具体的に書くことを意識してください。例えば「協調型」の人材を希望する場合は、「周囲と協力し合い、円滑に物事を進めることができる」「グループワークではチームワークを重視し、全員で協力する体制を築いた経験がある」などと記載するのがよいでしょう。

その他、対応すべきことはありますか。

具体的な労働条件を提言しておくことも重要です。給与水準などの他、必要なスキルや資格の有無なども表記しておくとよいでしょう。過大な表現や、誤解を招くような言い回しは避けた方がベターです。

採用時にミスマッチが起こる場合の対処法

最終面接まで進んでも候補者側から辞退される場合、何が原因なのでしょうか。

今は売手市場ですから、たとえ良い人材に出会えたとしても、必ずしも自社を受け入れてもらえるとは限りません。例えば、オンライン面接では互いに良い印象だったのに、最終面接で実際に会社を訪れた際に、急に辞退されてしまうこともあります。このようなことが起きた場合、会社の雰囲気や社員同士のコミュニケーションの有無などを観察されている可能性があります。候補者が安心して勤務できると思える環境の構築や、企業風土の見直しにも注力するとよいでしょう。

候補者が入社後の展望を描けなかったり、想定していた業務とのギャップが大きいと判断されたりして、入社に至らなかったケースも散見されます。入社後の具体的な仕事や展望など、候補者の希望もある程度加味して、認識の相違がないように説明しましょう。明確に示すことで、企業側も自社が求める人材像とのすり合わせができて、ミスマッチを防ぐことができます。双方にとって非常に重要なフェーズですから、しっかりと時間をかけて行いましょう。

その他、現代特有の採用課題などはありますか。

最近では、時に勤務体系において柔軟な働き方が可能であるかどうかが重要視されるようになりました。特にコロナ禍でオンラインでのコミュニケーションに慣れてしまった求職者たちは、在宅勤務を希望する傾向があります。柔軟に対応できるのであれば、応じる姿勢が好ましいでしょう。

「これからの採用」は柔軟に

採用が難しい現代ならではの悩み別にお答えしましたが、以下にそれぞれの対処法をまとめましたので参考にしてみてください。

採用に関して不安を抱える経営者に向けて、メッセージをお願いします。

労働人口は減少をたどる一方ですので、必ずしも新卒採用にこだわる必要はありません。さまざまな事情から大学在籍中に就職活動をしない人もいますし、学歴や社歴だけを基準にして、話を聞かずに判断するのは機会損失に当たります。ブランクがある方も含めて、幅広い対象者から、自社が求める人材を採用するように心がけましょう。


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この記事の著者

弥報編集部

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この記事の監修者

窪田 剛士(株式会社帝国データバンク 情報統括部 情報統括課 主席研究員)

2007年に帝国データバンクに入社。関東学院大学 非常勤講師(兼任)。15年以上にわたりTDB景気動向調査など企業経営者意識の定量調査に従事。TDBマクロ経済予測モデルを開発し、短期および中期の日本経済予測を主幹。人口動向や業界の見通し、各種レポートの執筆、講演などを多数手がけている。

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