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目指せ日本の上位1%!中小企業が100億円企業を目指す方法
2023.10.03
日本企業のうち、100億円企業の割合はたった1%程度です。もちろんその中には大企業だけでなく、中小企業から100億円企業へ成長した事例もあります。
中小企業が100億円企業になるためには、第2・第3の柱となる事業の創出が必要です。とはいえ何から手をつけたらよいのかわからない、という企業も多いのではないのでしょうか。
そこで今回は株式会社船井総合研究所の鈴木 圭介さんに、100億円企業に成長するために必要なことや注意点、成功事例などを紹介してもらいました。
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目次
100億円企業に成長するためには
100億円企業に成長するためには、どうすればいいのでしょうか。
本業1本で100億円企業になるのは難しいので、第2・第3の柱となる新規事業創出に取り組んでください。
一般的に「新規事業」というと、これまでになかったものを生み出すというイメージが大きいかと思います。ですが、それは主にスタートアップ企業にとっての「新規事業」にすぎません。中小企業にとっての「新規事業」は、既存の事業に新たな付加価値を生み出すものとお考えください。
中小企業の新規事業の例
中小企業にとっての新規事業とは、具体的に以下のようなものがあげられます。
- 新商品や新サービスの提供
既存の市場や顧客層ではなく、新しい需要やニーズを持つ市場に参入することで新商品やサービスを提供
- 新たな地域への進出
既存の事業を異なる地域や国に拡大
- プラットフォームやアプリの開発
新たなソーシャルメディアプラットフォームやモバイルアプリ、オンラインマーケットプレイスなど
- ビジネスモデルの革新
既存の業界や市場においてサブスクリプションモデル、シェアリングエコノミー、クラウドサービスなど、新たなビジネスモデルを導入すること
新規事業はイノベーションや市場の変化に対応するために、非常に重要な取り組みです。新規事業の創出や育成に取り組むことで競争力を維持し、継続的な成長を実現できるでしょう。
100億円企業に成長するためにはなぜ、新規事業を創出する必要があるのでしょうか。
売上が100億円を超える会社は日本全体の1%程度ですが、このような会社の多くは複数の事業部門を持つコングロマリット企業として成り立っています。コングロマリットは「多角化」という意味を持つ言葉です。そのコングロマリット企業の中でも「地域コングロマリット」と言われる、特定のある地域で複数の事業を営むスタイルの企業を目指すことがおすすめです。(地域コングロマリット経営とは、「特定の地域で複数の事業体を持つ経営」という意味の船井総研の造語となります。複数の事業体を持つだけならば、「多角化経営」といった言葉もありますが、地域コングロマリット経営は多角化とは一線を画します。)
コングロマリット企業の概要については以下の記事をご覧ください。
多角化経営で安定した成長を実現?「コングロマリット企業」とは|弥報Online
例えば住宅や自動車販売、不動産、エネルギーなど、売上規模の大きな業種は他県への進出などを行いながら、単一業種で売上100億円超えを目指すことも可能です。しかし売上単価が小さな他の業種の場合、新しいエリアに進出する戦略は厳しいため、地域に特化した地域コングロマリット企業を目指すケースが多いのです。そのため100億円企業になるには、新規事業の創出が鍵といえます。
新規事業を創出することにより、大きく業績や市場における競争力を上げた企業の事例は多いのでしょうか?
はい、実際に大きく成長した中小企業もあります。しかし売上が1億円前後である場合は、現在の業種において突破口を見出すことが重要であり、本当に新規事業を展開するかどうかは慎重に検討すべきでしょう。
自社の強みと顧客への訴求力見極めが鍵!新規事業の策定を進める方法
中小企業が新規事業に取り組むべきタイミングの基準はありますか?
本業の売上や成長目標に基づいて逆算する必要があるため一概にはいえませんが、一般的な目安としては、売上が約20億円程度になった時が新規事業を検討するタイミングといえるでしょう。この規模になると調達環境が整いやすくなり、経営者や優秀な従業員の時間とリソースも割けるようになるからです。
では、どのようなことから始めるべきでしょうか?
中小企業が100億円企業を目指す際は、伸びる事業を何個作れるかがポイントとなります。そのため、まずは自社の状況を客観的に診断することから始めましょう。
ビジョンや将来の目標を整理し、他社の成功事例も参考にしてください。既存事業の将来性を分析し、成長が見込める領域を明確化します。中小企業の場合、既存事業よりも成長が期待できる新規事業は稀です。そのため経営者の得意分野や経験を考慮しながら、既存事業を分析します。また具体的な目標金額や財務状況を設定し、計画を立てることも必要です。
新規事業を始める手っ取り早い方法としては、フランチャイズがあります。フランチャイズを通じて地域に根付き、成長している企業も多いです。既にノウハウが確立されているため、初めての場合でも比較的スムーズに事業を進められるでしょう。
また何から取り組んでよいのか迷う場合には、既に成功しているビジネスモデルを追うことが成功への近道となることがあります。既存のビジネスモデルに沿って事業展開することで、初期投資からの回収を早く見込める可能性も高いです。
ただし選択肢が多すぎて使いこなせないと感じるケースもあるかもしれません。その場合は新規事業に関連する情報を集め、大手企業の取り組みや斬新なアイデアを参考にしてみてください。
スタートアップの成功率は非常に低いものです。中小企業が新規事業に失敗した場合、本業の継続が難しくなる場合もあるでしょう。そのためこの世にない新たなビジネスの開発に取り組むよりも、確実に需要があるものを追求し、その分野での事業展開を進めるというのが中小企業にはおすすめです。需要が確実なものに取り組むことで、失敗のリスクを軽減できます。
中小企業が新規事業に取り組み始める際、押さえるべきポイントはありますか?
中小企業が新規事業に取り組む際の重要なポイントは次の2つです。
- 資金調達力と信頼性
- 自社の強みと顧客への訴求力
まずは既存の事業を担保にして資金を調達することが、中小企業にとっての1つの選択肢です。しかし金融機関から融資してもらう際には、正確な財務情報や決算書の提出が重要です。まずは数字の信頼性を高め、資金調達のための状況を整えましょう。補助金の活用も大変重要です。
また中小企業が新規事業を展開する場合には、自社の強みを活かし他社よりも高い価値を顧客に対して提供することが重要です。例えば自動車販売会社の場合、単に車を販売するだけでなく、さまざまな付加サービスを提供することで、より多くの顧客ニーズに応えられるようになります。顧客に訴求する新たな価値を創造することが、新規事業成功の鍵となるでしょう。
ローカルな中小企業が100億円企業へ成長した事例
地域の中小企業から100億円企業へ成長した企業の事例をいくつか紹介してください。
人口減少が発生している地域においても成長を続けている企業について、お話いたします。参考となる好事例を書籍『地域コングロマリット経営』でも紹介している会社様をご紹介させて頂きます。
福井県の株式会社エル・ローズは、このような地域における企業の役割を体現する地域コングロマリット企業の一つだ。福井県もやはり人口減少にあえぐ県の一つである。人が離れ、地域の生活インフラも減っていく様子を目の当たりにした同社は、「持続可能な地域を作るために自分たちが存在している」と考えている。生活小売店からスタートしたが、外車ディーラー事業、中古車販売・買取事業「売ッチャリ買ッチャリ」、自動車のスズキの代理店を展開。また、福祉施設、フィットネスクラブ、テーマパーク「芝政ワールド」の再生に取り組む等、次々に柱となる事業群を作り、業績を伸ばしている。
現在、年間の売上はグループ合計で230億円。従業員は830人と大きな雇用と地域のインフラを生み出している。地域を活性化できる影響力が、地域コングロマリット企業にはある。周囲から寄せられる期待も増すことだろう。ESGの観点で企業の成長性を見極める投資家も現れている。どのように地域の資源を守り、共に成長していくか。地域コングロマリット企業は、地域の未来を担う存在なのだ。
(書籍「地域コングロマリット経営」より引用)
ローカルな中小企業がスタートであっても積極的なM&Aをしていくことで急成長・100億企業化を目指すことは十分に可能となります。
地域コングロマリット経営ではM&Aにより規模を広げていくという事例は多い。広島県で自動車販売を行う広島マツダは 22年1月に、お好み焼き店「みっちゃん総本店」を運営するISE広島育ちの全株式を取得した。広島マツダは以前から、自動車販売以外の事業へも参入しており、その一環だ。
地域にある企業が、地域の文化を守り、そして広げる。こうしたストーリーは共感を呼びやすいという点でも、結果的に新規事業参入の成功確率を上げることにつながると考えられる。業種という垣根を超え、新規事業に参入していくことの意義を教えてくれる一例であり、これこそ地域コングロマリット経営の本領発揮だと考える。
(書籍「地域コングロマリット経営」より引用)
以上のように、ローカルな中小企業であってもこれから地域の再編の流れを味方につけることで急成長を望むことは十分に可能だと考えられるでしょう。
成功の鍵は「人材」!100億円企業化するためのポイント
新規事業を立ち上げ100億円企業を目指す場合に注意するべきポイントがあれば教えてください。
まずは経営者自身の思いや考えを整理することが大変重要です。また従業員の共感を促すために、経営者自身の思いを明確に打ち出す必要があります。自社の目的やミッション、ビジョン、価値などを整理することから始めましょう。
一方、自社の状況を客観的に把握するために、事業の強みや顧客リストなどを整理し、最新のビジネスモデルを理解する必要もあります。そして自社の事業との相性や、人材や資金といった必要なリソースの準備計画も必要です。計画を実行するためには、人材育成も欠かせません。
大まかな目標や勢いだけで進めるのではなく、しっかりと計画を立てて成功確率を高めることが必要です。特に、10〜20億円程度の企業の場合、計画立案と人材育成は成功に向けて不可欠と考えてください。最終的に100億円企業を目指すためにも、計画の立案と人材育成をしっかり行っていくことが求められます。
100億円企業を目指す過程において、どういった人材が必要と考えるべきでしょうか。
信頼できる人材が必要です。信頼できる人材とは例えば、お金だけを追求する人材ではなく、ビジョンに共感し実現したいという意思を持つ人材のことです。採用して育成するか、既存事業から既に活躍している担当者を選ぶかの2択と考えてください。
なお、従業員が既存業務に取り組みながら、片手間で新規事業を立ち上げることは絶対に避けましょう。成功の可能性が著しく低くなってしまうからです。経営者の目標やビジョンに共感し、実現しよう!という志を持つ人材は、必ずいるはずです。売上が安定し、タイミングと人材が整ったら、100億円企業を目指して動き出してみてください。
弥報Onlineでは他にも「中小企業の新規事業」をテーマにした記事を発信しています。
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この記事の著者
弥報編集部
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この記事の監修者
鈴木 圭介(株式会社船井総合研究所 価値向上支援本部 アカウントパートナー室 マネージング・ディレクター)
2007年株式会社船井総合研究所(現株式会社船井総研ホールディングス)に新卒で入社。法律事務所の事業戦略・マーケティング支援・組織開発に従事し、業界を代表する事務所・士業グループ(開業から30億円士業グループA事務所、ご支援10年で12億円士業+事業コングロマリットグループB等)を多数輩出。
法律部門責任者を経て、2021年より「中堅企業向けコンサルティングサービス部門」の立ち上げに参画し、特に20億~50億企業が100億企業になるためのコングロマリット企業化・ロードマップ策定に関する専門性を有する。「日本の未来を担う企業の成長を加速させる」ことをミッションに日々コンサルティングを行っている。2023年より同部門責任者(マネージングディレクター)に就任。『地域コングロマリット経営』(2023年)同文舘出版、 『士業の業績革新マニュアル』(2015年)ダイヤモンド社等、多数の書籍を執筆。
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