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多角化経営で安定した成長を実現?「コングロマリット企業」とは

2023.08.31

著者:弥報編集部

監修者:成田 優紀

近年「コングロマリット企業」と呼ばれるものが注目を集めています。

コングロマリット企業とは、特定の地域で複数の事業を展開する企業のことで、ブランド力があり、採用活動や企業成長を実現しやすいという特徴があります。

今回は株式会社船井総合研究所のレジャー&スポーツ支援部マネージング・ディレクターである成田 優紀さんに、コングロマリット企業は地⽅経済でどのようにビジネス展開をしているのかやメリット・デメリット、成功するためのポイントなどについて解説してもらいました。


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地⽅経済で注⽬を集めるコングロマリット企業

そもそもコングロマリット企業とは、どのようなものなのでしょうか?

コングロマリットを一言で説明すると、多角化という意味になります。コングロマリット企業とは、地域内の需要を点ではなく面でしっかり獲得できる事業を展開する多角化企業を意味します。事業のコングロマリット化を図ることによって、顧客獲得・人材採用・リスクヘッジの3点をしっかりと抑えられるのが特徴です。

コングロマリット化を実現することで、強い企業体へと成長できます。東京商工リサーチの企業リストを基に一般的な企業の売上を母数にすると、100億円を超える企業は全国で1%程度ですが、コングロマリット化を行っている企業のみに絞ると、売上100億円を超える企業は15%となり、売上100億を突破する企業の多くはコングロマリット化を行っていることがわかります。

中小企業でもコングロマリット企業を目指すことは可能なのでしょうか。

お客さまには「まず地域コングロマリットを目指しましょう」とお伝えしています。

地域コングロマリットは、大商圏だけでなく小商圏でも成立する点が特徴です。人口が7〜18万人程度しかいない都市でも、十分成り立つケースがあります。

地域コングロマリット企業には、どのようなものがありますか?

コングロマリット企業には、5つのパターンがあります。

  1. 自社アセット&リソース型
  2. 客層特化型
  3. 事業ドメイン特化型
  4. サプライチェーン統合型
  5. 機能スピンアウト型
  1. 自社アセット&リソース型は10~30万人商圏で成立するパターンで、既存の資金や物件、人財資産を活用することで、小売・サービスでの多業種展開を行うケースです。例えばもともとはパチンコ企業だった会社がアミューズメント事業を展開する、といったケースが考えられます。不景気やウイルス、気候変動といった災害状況に合わせた方向転換がしやすいというメリットがあります。
  1. 客層特化型は、主たる商品・サービスに付随する商品・サービスを付加するパターンです。既存顧客資産のLTV向上や粗利ミックス(粗利益率の低い商品と、高い商品を組み合わせ、最終的に粗利益を確保する販売戦略)を図りつつ、ワンストップサービスを目指します。例えば自動車販売を行っている会社が販売に加え、車検や整備・鈑金、自動車保険といった事業を展開するという例が挙げられます。
  1. 事業ドメイン特化型はマーケットサイズ、および客層を付加し専門店化することによって、業態を細分化しながらシェアアップするタイプです。建築不動産をはじめ、医療介護福祉、食関連・観光など、既存事業の延長線上で参入できます。例えば住宅建築事業を手掛けている企業が、賃貸仲介事業やリフォーム事業を展開するケースなどが挙げられます。
  1. サプライチェーン統合型は業界トップクラスの実績を元に内製化を推進し、M&Aで周辺領域を強化しつつ、間の市場を発掘するタイプです。難易度は高めですが、デジタルプラットフォーム化することにより業界再編を主導することもできます。FC本部もこのタイプに含まれます。例えば一般家庭向けの家具販売事業を営んでいた企業が、ホテルやハウスメーカー、工務店などへの販売や空間設計事業や、店舗経営事業を手掛けるケースなどがあります。
  1. 機能スピンアウト型は自社のコア機能を活用し、時流に合った事業を展開するパターンです。自社DXのおすそ分け事業などもこのパターンに含まれます。例えば印刷事業を営んでいた会社から販促企画機能を発展させた形でWeb事業を展開したり、商品輸入機能をスピンアウトさせてコーヒー商社やカフェ事業を営むケースなどです。

コングロマリット企業のメリット・デメリット

コングロマリット企業のメリットを教えてください。

コングロマリット企業のメリットとして、1つの事業に依存しないため安定的な収益を期待できる点が挙げられます。コロナ禍においては飲食店など特定の業種に依存している企業は、収益への打撃が非常に大きかったのは記憶に新しいところでしょう。一方で他の事業を展開していた企業は、被害に多少の緩和がみられました。いざという時に1つの事業がダメージを受けても、他の事業が安定していれば企業の存続が可能です。こうした理由でコングロマリット企業はおすすめなのです。

さらに地域経済への貢献、地元企業と良好な関係を築くことによって、顧客満⾜度やリピート率の向上も期待できます。

また地域において高いブランド力を築ける点もメリットとしてあげられます。ナショナルブランドの企業であれば問題ありませんが、ブランド力のない地元企業の場合、思うように企業成長が望めないケースもあります。また近年は人材獲得が非常に困難な状況にあるため、ブランド力がない企業には人が集まらず、思うように人材を採用できない傾向にあります。事業をコングロマリット化することによって、企業のブランド力が高まり採用活動や企業の成長にもポジティブな影響を及ぼす可能性が高まります。

コングロマリット企業のデメリットがあれば教えてください。

「1つの事業を大きく育て上げる」というビジョンをしっかりと持たなければ、コングロマリット化に失敗する可能性が高いでしょう。新規事業を始める際に「とりあえず何か新しいことをやればよい」という感覚で進むと、せっかく投資したのに期待した見返りが得られない可能性があります。

また経営資源の分散についても、一般的な事例だけでなく地方都市ではさらに顕著になる傾向があると予測されます。特に人材獲得が難しい場合には、分散効果によってナショナルチェーンなどに打ち負かされる可能性は高いでしょう。

事業を育て上げるためには具体的な計画が必要です。例えば外食業界やフィットネス業界などでは、店舗数や売上目標などを明確に設定する必要があります。しかしこうした計画があまりなく「一度失敗したら次に移る」といった、短期的な思考で動いてしまう企業は多いです。

そのためコングロマリット化を推進する際には、長期的な視点と短期的な視点の両方を持つ必要があります。そのうえで地域密着型のブランディングを展開し、複数のドメインでの拡大を図ることによって、認知度が高まり新規顧客やリピーターの増加につなげることが可能です。

コングロマリット企業になる方法

中⼩企業がコングロマリット企業になる方法を教えてください。

年間の売上が20億円未満の企業は、まずは1つの事業を育てることに集中しましょう。本業が安定していれば、新規事業に失敗してもある程度の立て直しは可能です。

しかし本業がまだ安定していない場合には、初めての新規事業で失敗しないためにも、関連性のある事業を選択するべきでしょう。関連性のない事業へのリソース分散を避け、本業と関連性のある分野を選ぶことが重要です。

事業規模が最初から大きい場合でも、関連性のない事業はおすすめはしません。例えばパチンコ企業は投資型ビジネスが得意で、人手を必要としないようなビジネスを選ぶことが多くあります。インドアゴルフのように、人手を必要としない事業が適しているでしょう。

また資金調達も重要なポイントです。金融機関だけでなく、補助金などの情報収集もしっかり行う必要があります。例えば事業再構築補助金や対象となる企業は限定されますがものづくり補助金も活用できますし、システム開発やITツールの導入が必要な場合にはIT導入補助金も有効です。最近では銀行からの融資やクラウドファンディングなど、さまざまな方法で資金調達が行われていますが何億単位で資金を調達するのは難しいです。

さらに売上が100億円から300億円の規模になれば、次のステップとしてホールディングス化やロードマップの作成も検討されるかもしれません。

どのような業種の企業が、どのような業種に⼿を出すことが多いのでしょうか?

自社がどの業種や事業にトライするかについての判断は難しいため、専門家への相談が得策です。

同じ属性の事業を展開していくケースが成功しやすいです。例えば観光系の事業である、単品スイーツやコーヒー関連は飲食や宿泊業の方が展開する事例が増えています。コンパクトリゾートと呼ばれるホテル事業など投資型のビジネスである住宅・不動産会社やぱちんこ会社・自動車販売会社が手を出しやすいでしょう。

ヘルスケアの場合は人手をかけずに収益化しやすい投資型のビジネスと親和性が高いです。不動産や建設関連は参入障壁が高いため、周辺事業を強化するのがおすすめです。

社内で新規事業を進める際には、どのような方にプロジェクトを任せるべきでしょうか?

新規事業の担当者は、行動力のある20〜30代の方がうまく進められることが多いです。

新規事業を開発する際にはコンサルタントなどの専門家と協力することが重要ですから、積極的に行動し柔軟に対応できる能力が求められます。過去の経験を活かすよりも、新しいアイデアに取り組む姿勢を重視すべきです。

また調整やコミュニケーション能力の高さも必要となります。特に社長との調整を円滑に進めることは、どのビジネスにおいても重要なポイントです。基本的に資金や土地などの調達は社長の役割となるため、新規事業担当者には調整力が必須と考えてください。

コングロマリット企業が地⽅経済で成功するためのポイント

コングロマリット企業が地⽅都市で成功するために、押さえるべきポイントを教えてください。

コングロマリット化を進める際に抑えるべきポイントは「創出と調達」です。

創出とは既存資産、既存事業から伸びている要素を発見し投資対象として独立採算にすることです。一方調達は外部のビジネスチャンスや魅力的な事業モデル、今は持ち得ない経営リソース(補助金、M&Aなど)を引っ張ってきて、投資対象とすることを指します。

地方都市では、どのように顧客やリピーターを獲得すればよいでしょうか。

地方都市においては、顧客が生まれてから亡くなるまで1つの企業にお世話になる傾向があるため、このような効果が期待できると考えられます。地域密着型のブランディングを通じて、顧客とのつながりや信頼関係を築くことが重要です。地域に根ざしたサービスや商品の提供、地元の文化やニーズに合わせた展開など、地域に密着した戦略を取ることによって、顧客のロイヤルティを高められるでしょう。

地域密着型のブランディングは、口コミや地域コミュニティの支持を受けやすい点が特徴です。地域住民同士のつながりが強く、情報が広がりやすいため良い評判や信頼が広まりやすくなります。これにより新規顧客の獲得やリピート率の向上につなげることが可能です。

さらに地域密着型のブランディングは、地域経済の活性化にも寄与します。地元の企業や雇用の創出、地域の資源や特産品の活用など、地域経済全体を活性化させる効果が期待できます。その結果顧客の愛着や応援意識が高まり、地元企業やブランドへの支持が一層強まることでしょう。

中⼩企業がコングロマリット企業を⽬指す場合に、注意すべきポイントを教えてください。

中小企業がコングロマリット企業を目指す際には、事業の選択に注意してください。将来の成果や収益性を見極めることが求められます。

事業選定には2つの方法があり、その1つがフランチャイズ(FC)の力を借りる方法です。フランチャイズを選択する場合は、慎重に判断してください。

もう1つは、弊社のようにビジネスモデルを開発している企業に相談して進める方法です。この場合、既存の成功したビジネスモデルを踏襲できるため、失敗するリスクが低くなります。

自社だけで初めての新規事業を立ち上げることは極力避けるべきです。多くの中小企業オーナーは自己信頼感が強く、自社のみで事業を展開しようとする傾向があります。しかし新規事業は非常に難しいものです。そのため成功率が非常に低くなります。初めて新規事業を始める場合は経営的に失敗を許す余地がないため、成功確率を高める方法を選択することが重要です。


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この記事の著者

弥報編集部

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この記事の監修者

成田 優紀(株式会社船井総合研究所 ライン統括本部 第四経営支援本部 レジャー&スポーツ支援部 マネージング・ディレクター)

2010年に株式会社船井総合研究所に入社。入社後は小売・サービ業部門に属して2014年にチームリーダー、2018年にグループマネジャーに昇格。成熟業種の立て直しを行うために2019年に部長に昇格。その後、成熟産業であるパチンコ・アミューズメント企業を再び成長曲線にのせるために第2の収益の柱やブランド向上を狙った新規事業の提案・経営ビジョンの提案を行う。さらには、エンターテイメント・スポーツ関連のコンサルティング部隊を新規で立ち上げて、成長支援に乗り出している。今後は、エンタメ・スポーツ・レジャー・アミューズメントという「余暇産業」という分野における総合コンサルティングを展開するために活動中。

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