- 人材(採用・育成・定着)
社員がすぐ辞める理由はこの2つだった!離職を防ぐためにやるべき対策は?
2022.09.13
著者:弥報編集部
監修者:田島 智也
人材不足のご時世、新卒・中途とも採用は大変です。それなのに、やっと採用できた社員がすぐ辞めてしまったら……。時間もお金もかけているだけに、特に小さな会社にとっては大打撃となりかねません。
今回は、業界シェアNo.1のキャリア形成支援プラットフォーム「派遣のミカタ」を運営する株式会社manebi代表取締役CEO田島 智也さんに、採用した社員がすぐ辞めてしまう理由や離職を防ぐ対策について伺いました。田島さんは「離職要因は採用の時点でほぼ解消する」と言います。そのうえで入社後にできる対策なども教えていただきました。
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目次
辞める理由で多いのは「人間関係」と「入社前とのギャップ」
採用したばかりの社員がすぐ辞めてしまう理由として、どのようなことが考えられるでしょうか。
新卒の場合は新しく始まる人間関係が多く、上司に限らずチームメンバーとのコミュケーションがうまく取れないパターンが見受けられます。また、最近では価値観の多様化による影響も大きいです。
一例をあげると、Z世代と言われる新卒社員は会社の全貌を知りたがる傾向があるように思えます。経営や組織についてフラットな情報開示を求めているのです。新人は言われたことをやっておけばよいという「新卒扱い」も受け入れません。なぜその仕事があって、どうして自分がやるのか。その意義に納得できなければ不満が生じるし、理由もなく単調な業務や雑務をこなすのも耐えられないでしょう。さらにコロナ禍においては、採用活動からずっとリモートの人もいて、会社への帰属意識が持ちづらい面もあります。
一方で、中途採用でよく聞くのは「思っていたのと違う」という入社前とのギャップです。業務内容だけでなく職場の雰囲気や環境も、ギャップが生じる要因になります。そして、中途採用の人は前職の文化に根強く染まっている可能性が高いため「前の会社ではこうだった」「私のやり方はこれ」と固執してしまいがちです。
会社の規模や業界によって、辞める理由に特有の傾向はありますか?
規模や業界によるというより、残業やハラスメントに関するルールの整備が遅れている企業だと、それを理由に辞めるケースはあります。特に女性は、産休の取りやすさなどでライフプランにズレが生じそうな場合、離職につながっていくのではないでしょうか。
下積みが長かったり、年功序列や古い慣習が残っていたりする業界も、転職されやすいと言えるでしょう。「石の上にも三年」のような考え方は、通用しなくなってきています。
入社後より「入社前のコミュニケーション」で離職を防ぐ
社員がすぐに辞めないように、これだけはやっておくべきということは何でしょう。
入社後の施策よりも、エントリーマネジメントが大事です。入社前の採用時点でいかにギャップを減らしておくかを重視してください。待遇・業務内容はもちろん、価値観やライフプランに至るまでお互いしっかり話し切れていれば、離職要因はほぼ解消できるでしょう。
逆に「人が足りないのでまず入社してほしい」という理由で、良い面しか話さないのは本当に危険な行為です。一方で求職者の側も、ネガティブな情報は出したがらない傾向があります。面接では「私はあれもこれもできる」とアピールしがちですし、プレゼンがうまい人もいます。その人の本質や過去の行動成果を知るために、あらゆるアプローチを試みましょう。
まず、面接以外にカジュアル面談・座談会・食事会といったイベントを通して、会社の従業員と直接交わる機会を設けてみてください。実際の雰囲気を見てもらいつつ、お互いに話したい・知りたいことを伝えてミスマッチを防ぎます。
前職での実績については、リファレンスチェックの実施がおすすめです。リファレンスチェックとは、採用予定者や内定候補者の前職での勤務状況や人物などについて確認することです。サービス会社を利用してもよいですし、本人に了承を得て前職の人を紹介してもらう方法もあります。特に幹部候補などを採用する際は、リファレンスチェックは必須です。
入社後に行う対策としては、何があるでしょうか。
対策をまとめると下記の7つになります。
〈入社後に行う対策〉
1.定期的な部内交流会の開催
2.上司との定期的な1on1
3.メンター制度の創設
4.新入社員同士の集まりを用意する
5.ミッション・ビジョン・バリューの共有
6.経営者からのメッセージ
7.経営状況の開示
メンター制度のメンターは上司ではなく、フラットな立場で気軽に人生相談ができるような人を配置します。新入社員同士の集まりについては新卒・中途を分けず、近い時期に入った「同期」のコミュニティを作ってください。
5・6・7に関しては動画を作ったり、資料を用意したりするとより伝わりやすくなります。なお、幹部候補の場合は入社時期に関係なく、部署を横断した幹部同士の1 on 1を頻繁に設けましょう。
新入社員のフォローは、どのような体制で行うのがよいですか。
全体を統率するのは人事部になると思います。新入社員に対して人事部から1人付けるというより、メンターや上司を含めた3〜4人のチームで、3か月くらい伴走するようなイメージでしょうか。
弊社の場合、こういったチームに役員も入っています。大きな会社だと、役員が人材育成に直接かかわるのは難しいですよね。新入社員がさまざまな立場の人と接することができるのは、風通しのよい小さな会社ならではの利点だと言えます。
中途採用の社員には、どのような対策を行うのがよいでしょうか。
中途採用の社員には、今まで得た知識や習慣をいったん横においてもらうのが大切で、これを「アンラーニング」と呼んでいます。アンラーニングは、能力採用でこそ実施すべきでしょう。
能力の高い人に前職のやり方が強く残っていると、その会社らしさが失われるばかりでなく、社内に混乱を引き起こしてしまうからです。新卒だけでなく、中途採用への研修も強化したほうがよいと思います。
確かに、中途採用の研修は、新卒と比べると手薄な会社が多いかもしれません。
中途採用でも会社への順応は2年かかると言われていますから、ぜひ研修でサポートしてほしいですね。
中途採用の研修の基本は「会社の価値観」を理解してもらうことです。事業内容・理念・歴史など、あらゆる情報を提示します。その次に行うのが、ビジネスマナーやマネジメント・IT・DXの知識といった基本的な仕事に関する研修です。経験者なら既に身に付いていると思われがちですが、バラバラの場所で学んでいるため、内容のすりあわせをしなければなりません。
どこまで定着率にこだわるべきなのか、今一度考えてみる
社員がすぐに辞めてしまった後は、会社としてどのような取り組みを行うべきですか?
「どこまで定着率にこだわるべきなのか?」と、今一度考えることも重要かと思います。人材の流動性が低いと生産性も停滞するというのが、近年の定説になっています。能力の高い人はたくさんの会社で活躍したほうが、社会や経済にはプラスなんです。それにずっと同じ場所にいると、自分の能力を上げたいといった学びの意欲が低下してしまいます。
従業員の定着にこだわり過ぎず、適切な流動性について再定義することが不可欠です。その結論を踏まえつつ、個別のケースで「なぜ辞めたのか」を検証するのが良いでしょう。
ある程度の流動性は必要だとしても、時間が育む絆や「阿吽の呼吸」は価値あるものです。入れ替わりの激しい会社より中長期的なプロジェクトを計画しやすくなりますし、採用・人材育成に関するコストも低くなります。対外的なイメージもよくなり、従業員のモチベーションコントロールにもなるでしょう。
これまでご紹介してきたエントリーマネジメントやメンター制度などの取り組みを継続したうえで、結果として定着率が良好なら、それがベストだと思います。
小さな会社で採用や研修にリソースが割けない場合は、外注することも可能でしょうか。
小さな会社で人事を分厚くし、新入社員専任の担当を置くのは簡単ではありません。外部の採用支援サービスや研修をアウトソーシングするのも、1つの手です。最近は、フリーランスでメンターなどを行う人も増えてきていますので、活用してみるのも良いのではないでしょうか。
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この記事の著者
弥報編集部
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この記事の監修者
田島 智也(株式会社manebi 代表取締役CEO)
12歳の時、父が他界し家業が倒産。その後、母の背中を見て育ち、親への恩返しの想いと就活中に出会った経営者への志に触れ23歳で起業。2013年株式会社manebiを創業、代表取締役CEOに就任。2016年にスタートした派遣業界特化のキャリア形成支援プラットフォーム「派遣のミカタ」は業界で日本No.1のシェアを持ち、パッションリーダーズアワード2016準大賞を受賞。また社員教育ツール「playse.ラーニング」は多種多様な業界に対応し、大企業からベンチャー企業まで多くの企業で導⼊されている。社員教育を通し、個⼈と組織の幸せと成長を⽬指す。
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