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『トップ5%社員の習慣』著者に聞く、中小企業の生産性を上げる社員育成方法

2021.12.07

少子高齢化による労働人口の減少や新型コロナウイルス感染症などの影響により、生産性向上が求められる中小企業にとって、社員のレベルアップは必要不可欠です。そのため、社員教育に課題を持っている中小企業の経営者や人事担当者も多いと思いますが、生産性の高い人材はどのように育成したらよいのでしょうか?

そこで今回は『AI分析で分かったトップ5%社員の習慣』の著者である越川 慎司さんに、中小企業の生産性を上げる社員の育成方法などについてお話を伺いました。


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トップ5%社員とはどのような人材なのか

「トップ5%社員」とは何でしょうか?それはどのような人材なのでしょうか?

トップ5%社員とは、各企業において突出した成果を出し続ける、人事評価が上位5%の社員のことを意味します。彼らは別の部門に異動した場合はもちろん、まったく別の業種に転職しても高い成果を出し続けることができる能力を持っている人材です。


トップ5%社員は、どの会社にも存在しているものなのでしょうか。

存在しています。というのは、トップ5%社員の母数は対象企業の中のトップ5%なので、日本中の社員におけるトップ5%ではありません。10人の工務店の中の5%であったり、5万人の会社の5%であったりするため、相対評価としてトップ5%社員は存在します。

ただし、建設業界のトップ5%社員と流通業界のトップ5%社員など、会社によっては持っている能力が異なる場合もあります。しかし調査した結果、意外と共通点が多いことがわかりました。


社員の分析にはAIを活用して調査されたそうですが、具体的にどのように行い、どのように判断されたのでしょうか。

弊社のクライント企業25社にお願いし、トップ5%社員とその他の95%の一般社員、合計18,000名にリサーチしました。ICレコーダーやセンサーなどを装着してもらい、デスクには定点カメラなどを設置し、普段通り行動してもらうようにお願いしました。トップ5%社員の方々のなかには、リサーチされていることを忘れてしまう方もいるほど仕事に集中されていましたね。

また、対面でのヒアリングやクラウドサービスなども活用することで、彼らの行動や発言をレコードして調査も実施しています。さらに個人を特定しない形で、メールやチャット、オンライン会議などの利用履歴も収集しました。

これらのデータをAIの専門家が分析することで、5%社員にみられる共通点や95%の一般社員との違いを判断しています。


トップ5%社員の行動や考え方には共通項がみられるとのことですが、どのような傾向があるのでしょうか?

トップ5%社員は達成感を大切にしており、「経緯よりも結果を重視している」点が大きな特徴です。一方、95%の一般社員は充実感を重視する傾向があります。

トップ5%社員は95%の一般社員とは目指す頂上が違うので、山の登り方が変わってきます。例えば、達成感を目的にする人は、無駄なプロセスを経ることなく最短距離で成果を残す方式を考えます。一方で充実感を大切にする人は、派手なExcelPowerPointを作ることが目的になって、徹夜して夜遅くまでグラフィカルなExcelのグラフなどを作って満足してしまい、成果にはつながりません。

トップ5%社員が求めるのは達成感なので、PowerPointExcelの作成時間も極端に短い点が特徴です。自己満足はやめて成果につながることだけに取り組むため、95%の一般社員とは働き方が根本的に違います。


社内でトップ5%社員になり得る人材を見つけて育成するのは難しそうな気がしますが、実現できるものなのでしょうか?

そもそもこの『AI分析で分かったトップ5%社員の習慣』を出版しているのは、トップ5%社員を増殖させることが目的です。つまり、短い時間でスマートに、手を抜けるところは抜きながら成果を出している人の行動をまねしませんか?という本なんですよ。

私の会社は働き方改革を支援していますが、トップ5%社員が短い時間で成果を出す方法を、行動実験して皆でやりませんか、という支援をしています。例えば、トップ5%社員が実践していたPowerPointの作り方を95%の一般社員にまねしてもらったら、9割ぐらいの人が「成果が上がった」と言いはじめました。

つまり、山登りの最短距離のルートを知っている人がいたら、他の人はそれをただまねすればよいだけなので、少なくとも今よりはプラスになるだろうということが調査結果として出ているのです。

トップ5%社員の行動をまねるだけで生産性は上がる

トップ5%社員に共通する行動や考え方を一般的な社員が意識したりまねるだけで、アウトプットに変化が出るものでしょうか?

トップ5%社員が実践した成果の出し方をいかに再現できるかが、ポイントだと思います。

正直なところ、中には再現できないのもあります。例えば、センスや生まれ持った才能などはまねすることはできません。一方、やり方であればまねができます。

例えば、PowerPoint1スライド105文字以内で色は3色以内で作成するなど、数字を出したほうが、まねしやすくなります。そして「それをやってみてください」「やってみて成果が出たら続けてください」というやり方を、現在16万人以上に展開して少なからず成果が出始めています。もちろん、完全にコピーすることはできないのですが、時間当たりの生産性を上げる点においては今のところ成功していると言えるでしょう。


なるほど、トップ5%社員の行動をトレース(まね)することで、95%の一般社員の成果にも影響があるのですね。

トレースはあくまでも1つの手段だと考えていて、変化に対応するには、やはり行動を変える必要があります。しかし、行動を変えるとき、どう変えたらよいかわからないので、成果の出ている技術をまずはまねてみようというのが第1ステップです。

私は「内省」することが非常に重要であると考えています。内省を繰り返しながら「実際にやってみて、良かったら続けていきましょう。駄目だったらやめるか、修正していきましょう」という習慣を身につけてもらうことを目的としています。

これができるようになると、個人でPDCAが回せるようになります。そして、私はこれが働き方改革の本質だと思っていて、内省ができれば「トップ5%社員の本」がなくても行動実験する人に変わってくるのです。

その結果、現在のトップ5%社員ではない、他の優秀な方々が出てくることが期待できます。


残り95%の社員がトレースするべき、おすすめのトップ5%社員の習慣はありますか?

トップ5%社員は短い時間で成果を出すという考え方がベースですので、ある意味スマートでちょっとだけズルい面もあります。彼らはカレンダーや手帳などで2週間に1回程度、コーヒーを飲んだりタバコを吸ったりしながら内省を実施し、無駄なものを省く作業を自ずと行っているそうです。

その中でぜひ読者の方にもまねしていただきたいのは、「社内会議と資料作成の見直し」です。全労働時間のうち、社内会議は4割程度、資料作成には2割程度の時間を費やしています。彼らはそこにポイントを当てて、日常的にどう時間を絞っていこうか考えているのです。

トップ5%社員がやっているように、2週間に1回たった15分でよいので、カレンダーを振り返ってください。無駄な会議と無駄な資料が絶対に出てきますので、それを来週からやめましょう。この振り返りの行動は、すごくまねしやすくて成果が出やすい点が特徴です。

16万人に展開したら、全員の労働時間のうち11%の無駄な時間が減りました。この働く時間の振り返りは、2週間にたった15分ということで、トレースしやすいのでぜひ読者の方にもまねしていただきたいと思います。


無駄な時間と有益な時間の違いを、その人自身が判断してしまってもよいものなのでしょうか? 

そこが成果なんですよ。例えば、働く方の多くは資料作成とメールと社内会議に7割の時間を費やしています。会議や資料、メールは、作っているときには成果が出ているかどうかは分かりません。成果が分かるのは、会議が終わった後や資料の内容を提案した後です。

トップの営業さんはPowerPointを使わずに紙の資料を1枚持っていくケースが多く、時には手書きで渡すこともあります。営業本来の目的を考えれば、資料作成に時間を使うよりも、事前ヒアリングをお客さんに行うべきだという本質的な行動が見えてくるのです。

本質的に必要な行動を見極めるために必要なのが、過去を振り返る時間です。特にテレワークで忙しい現在は、非常に重要だと思います。

95%社員を5%社員に育成する環境づくり

まずはトップ5%社員の思考や行動をマネジメント層が理解し、その後社内に浸透させる教育環境づくりが必要だと思います。マネジメント層にトップ5%社員の存在や有用性を理解してもらうためには、どのような手段をとるべきでしょうか?

トップ5%社員は突出したエリートで成果を出しているので、上司も気づいているんですよ。

しかしここで問題となるのは、その人に頼り切ってしまうことと、パフォーマンスを出さない人を切り離してしまうことです。そのため成果を上げているトップ5%社員を広げて、組織全体の生産性を上げていくためのキーマンは管理職と言えるでしょう。

今回、管理職に調査をしてわかったのは、トップパフォーマーだけでなくローパフォーマーや新人がいても成果を出し続ける、いわゆるトップ5%リーダーという管理職の存在があったことでした。

彼らがやっていることは、部下に自由と責任を与えることです。「こうやらなきゃダメだ」と教える作業ばかりを行っていると、部下が自分の頭で考えなくなってしまいます。つまり、言われただけをやる社員になってしまうのです。

変化の激しい社会情勢の中で成果を出し続けるためには、自分たちで考えて動く「自走する組織」を作る必要があります。自走する組織の中では言われたことをやるのではなく、上司と部下が「一緒に考える」「一緒に行動する」「一緒に振り返る」という3つのステップが必要です。

具体的には、昨今のテレワークでは会議が増えて会話が減っているため、管理職の方は11の対話をどんどん増やしていただいて、部下と腹を割って話す関係をまず作ることが必要です。これは心理的安全性と呼ばれるもので、雑談できる関係性となります。

部下との関係性を強化して一緒に行動目標を考え、一緒に行動し、一緒に振り返るようにしましょう。トップ5%リーダーは、これを自然にやっています。1on1ミーティングですね。

雑談ができる関係性を作ることで、自分の行動を修正する部下が7割程度増え、ローパフォーマーも自分でそれなりに考えるようになっていきます。


コロナ禍においては対面で雑談する機会を作ることが難しいケースもあると思いますが、Zoomなどを活用した1on1などでも効果はあるのでしょうか?

今は物理的にテレワークしかできない方々がいるので、半分から6割くらいはZoomTeamsで実施されるケースだと思います。その場合でもまったくコミュニケーションを取らないと、部下が孤立して職場のモチベーションが下がってしまうため、やはり対面がベストです。

テレワークでもしっかり補完して、やはり最低でも月に1回、可能であれば2週間に1回は5分〜10分でもよいので対話する時間をあえてとらないと、5%社員は増えていかないということが調査でわかっています。心理的安全性が担保されると弱みと失敗を言い合える関係性が構築でき、部下が成果を出しやすくなります。


トップ5%社員の行動を他の社員へ理解させ、行動を変えて結果を出させるためのマネジメントや教育方法を教えてください。

今はオンラインでのやりとりが多くなっていますが、トップ5%リーダーはノンバーバルコミュニケーションと呼ばれる、言葉ではないコミュニケーションにすごく力を入れています。トップ5%リーダーが実際にやっていたことを2つお伝えします。

1つ目が、口と首のボディーランゲージを有効活用することです。

トップ5%リーダーが喋っているとき、口角が一般の管理職よりも2cm上がっていました。管理職は年配のおじさんが多く、素の顔が怒っているように見える方もいるのですが、部下は上司が怒っているとき最も気遣いをします。

不動産会社と新聞会社で「口角を2cm上げてくださいキャンペーン」という試みを実施した結果、会議時間が8%も減りました。これまで、いかに部下が気をつかっていたかということですね。

眉間にしわを寄せて話すよりも、口角を少し上げて話してもらったほうが効果的です。ただし、マスクをしていると口角が見えないので、そのときはうなずきを3cm4cm大きくするように意識しましょう。

自分が話しているときに、相手に大きくうなずかれると嬉しいものですよね。上司にうなずかれると、部下のモチベーションもアップします。

2つ目は心理的安全性を取るために、社内会議の冒頭2分間は雑談することをおすすめしています。

仕事とは関係ない話をすることによって、共通点を探りだすコミュニケーションを図ろうということですね。冒頭2分の雑談を入れる会議4,000時間と、入れない会議4,000時間の記録を取って調査した結果、前者の発言者数が1.9倍になり、さらに予定時間よりも早く終わる確率が45%高いこともわかりました。

つまり、始めに時事ネタや天気の話などをしたほうが心理的安全性も担保され、結果的に失敗や弱みなどが言いやすくなるということをトップ5%リーダーは勘づいていて、積極的に雑談を取り入れているのです。これは他の方でもまねできますので、ぜひ試してみてください。


雑談の内容に関しては、どのようなものでもよいのでしょうか?

雑談の内容もすべて分析しました。雑談はだいたい天気の話と時事ネタ・ニュース、家族の話、飲食が4大テーマだと言われています。

天気と時事ネタに関しては、ポジティブなものだけにしましょう。「暑いな」「感染者数多いなあ」というネガティブな話題は、参加者のテンションが下がってしまうため禁止です。

そして、意外とNGなのが家族の話です。匿名で19,000人に調査したところ、家族の話を雑談したくないという人が24%いました。腹を割って話せる関係性ができていない場合や、心理的安定性が取れていない場合は家族の話は避けたほうが無難でしょう。

一番鉄板だったものが、飲食に関する話題でした。飲食は男性や女性、若手から年配者、外国籍の方でも必ず行う行為ですから、共通点が見つけやすいメリットがあります。

例えば、トップ5%リーダーは「僕はオムライスを自分で作って食べたんだけど、皆お昼食べた?」と尋ねます。自分が食べたものを言うので、部下も「僕パスタです」「シャキシャキレタスのサンドイッチ食べました」などと言ってくるため、「出勤してるな」「今日は炭水化物が多いな」といった共通点がわかるようになるのです。また、ラーメンの話が膨らんで九州の話題になることもありますよね。このように、さまざまな膨らみ方をし、共通点が増えるのもメリットの1つです。

雑談は、相手との共通点を探りだすためのコミュニケーション術です。何か共通点が見つかれば一気に突破口が開けるため、実は雑談を入れると営業でも成約率が22%上がることがわかっています。

上司との信頼関係構築と目標数値化で部下の行動が変わる

自ら考えて動ける人材がいる組織は強いと思いますが、すべての部下にいきなり多くの裁量を与えて実践するのは、ややリスキーに感じられます。実際に裁量を与える際にはまずどの程度の仕事から与え、どのようなステップを経るべきでしょうか?
突然行動が変わることは、まずありません。

97%の経営者や管理職の方が、部下になんとか変化に対応して自分で考えて動いてほしいと思っているので、その思いをしっかり伝えるために以下2つのステップを踏みましょう。

ステップ1.上司と部下が雑談できる関係性を構築する

1on1などを実施する場合、最初の12回は仕事の話ではなく、雑談、相談だけやるようにしてください。まずは上司と部下で10分以上雑談できる関係の質の向上を目指しましょう。

強みと弱みが言い合える、互いを尊重する信頼関係が構築できていない段階で行動目標をディカッションしても、上司がアイデアを出して部下はそれに従う、従来型のミーティングで終わってしまいます。上下関係のあるミーティングではなく、腹を割って話せる関係性を構築したうえで、仕事における課題をディスカッションすることに意義があると考えましょう。

ステップ2.行動目標を一緒に考えて「やってごらん」と実践させる

管理職の方々が取るべき、おすすめのアクションは2つあります。

収益性は損益計算書の側面で見ると、売上高ベースで検証することが一般的でしょう。以下の代表的な「利益率」指標を読み取り、状況を把握します。


アクション1:評価基準を部下へ明確に伝えること
例えば「あなたは今年こういうことやったら評価するよ」「こういうことができることを期待しているよ」など、直接言葉にして伝えてください。

アクション2:行動目標を決めること
ただし「早く帰りましょう」「Excelの処理時間を短くしよう」といった、あいまいな行動目標では効果がありません。例えば「メールの処理を去年よりも10%短い時間でやってみない?」「PowerPointの資料を去年よりも20%短い時間で少なく作ってみよう」というように、具体的な数値目標を決めることがポイントです。

この2つのアクションを上司と部下で一緒に決めて実践し、一緒に振り返りを行うことで、気づきやアイデアが生まれ、思考の質が変わっていきます。

自走する組織を作るポイントは「結果の質から入らない」ことです。まず雑談相談で関係の質を作って、小さい行動実験を実施し一緒に振り返る。結果が出たら仲良くなるので、さらに関係性が高まり行動の質が変化します。これを繰り返すことで一緒に考えて、一緒に行動して、結果が変わるというサイクルが生まれるでしょう。


社員の育成には最適な評価方法も欠かせないと思います。部下に納得感を持たせながら評価をするコツはありますか?

評価を納得させるポイントですが、その答えはコミュニケーション密度にあります。

実は良い評価をもらっている人でも、悪い評価をもらっている人でも、上司との対話時間や会っている時間が短いと、たとえ良い評価もらっていても納得度は低いです。逆を言うとコミュニケーション頻度が高いと、悪い評価をもらっているのに納得しているんですよ。ぴったり相関関係が出ているんです。

特にテレワークでなかなか対面ができない状況ですから、1on1Web会議を活用してコミュニケーション頻度と密度を高めないと、どんな評価でも納得してもらうことは難しいでしょう。

次に、先ほどもお話した「あなたにはこの成果を期待しているんだよ」「これを達成したら評価するよ」というのは、必ず期初に実施しなければいけません。「それ先に言ってよ……」という不満となり、納得感が得られなくなります。

また、行動目標設定も納得度を上げるためには、すごく効果的なツールです。例えば「成果が出てないのは、約束したこの行動ができてなかったからだよね」と伝えられれば、とてもわかりやすいと思います。


評価制度の作り方のポイントを教えてください。

評価制度を作る際に注意してもらいたいのは、ジョブ型の評価制度をそのまま実施しないことです。私も800社の人事評価制度を変えてきたのですが、ジョブ型一辺倒は非常に危険だと思います。特に小規模・中小企業では、なおさらでしょう。成果主義は解雇とワンセットで実施されるからです。

例えば、私がいたマイクロソフトなどのグローバル企業は、パフォーマンスが出ない下位1020%の人は会社にいられないという制度とセットになっています。しかし、労働基準法では解雇できないので、日本ではそのまま実施できません。成果第一主義というのは実は非常に危険で、やはり同僚がライバルになるため、日本企業ではあまり根付かない傾向にあります。

そこでおすすめしている方法が、ジョブ型と今やっているメンバーシップ型を組み合わせたハイブリッド型の評価制度です。

メンバーシップ型とはチームで目標を達成していくという考え方で、人を助けたらプラスになる評価方法です。今は市場の変化が激しいので、1人で課題解決することは非常に難しくなっています。そのため、いろいろなメンバーを巻き込んで、複雑な課題をチームで対応することが求められているのです。やはり縁の下の力持ちも必要ですし、相手を助けるという行為も必要になってきます。ですので成果を出した人には評価、そして周りの人を助けた人にも加点評価する評価制度を作ることが重要と考えましょう。この2つがないとチーム目標を達成できないので、ジョブ型とメンバーシップ型のハイブリッド型、これを企業で導入していただければ、成果が出やすいと思います。

意識改革はできないが、行動改革はできる!

トップ5%社員をさらに成長させれば、企業の生産性がよりアップしそうな気がしますが、そのようなことは可能なのでしょうか?また、どうすれば実現できるのでしょうか?

生産性という言葉について、少し説明させていただきます。多くの企業が求めているものが、時間生産性です。例えば「特定の時間でどれぐらい成果が残せるか」「残業が減っても売上が上がっている」といった目標を定めて、業務効率化などを実施します。

しかし、これには限界があります。労働時間は17時間〜8時間が基準なので、これ以上短くすることはできません。したがって時間削減、いわゆる時間効率を高める行為はいつか上限がくるでしょう。

そのため特に小規模、中小企業の方に目指していただきたいのは、時間生産性が高まった段階で、フェーズ2として事業生産性を高める活動へシフトすることです。事業生産性とは1時間当たり、もしくは1人当たりの利益を指します。

そのために、まずフェーズ1で労働時間を絞り込み、時間を創出しましょう。その一部は社員に渡して早く帰ってもらうのですが、それでもまだ時間が余ります。

そこで余った時間を、新規事業開発と社員のスキルアップに投資してください。

この2つは今後の成長戦略に必要不可欠です。新規事業は純増、純利益のため、青天井で上限はありません。例えば、自動車メーカーがクラウドサービスを始める場合などは新規事業です。

とはいえ皆さん忙しいので、新規事業開発になかなか時間を費やせません。しかし、労働時間を絞り込むことで、新規事業開発に時間を費やせるようになってくると、そこから利益が上がってくるようになります。その結果、車が売れなくなったらクラウドで儲けるといったことも可能になるのです。

そして新規事業を開発するためには、社員のスキルアップが欠かせません。無駄な会議や資料作成をやめさせて、未来に必要なIoTEAなどのスキルアップの時間を費やせるようになれば、未来のビジネスが生まれてきます。

一方で、労働時間が減ってそれで終わりというのは一番ダメなパターンです。労働時間を生み出したら、その生み出された時間をスキルアップと新規事業開発へ再配置しましょう。そうすることで新規事業が生まれてくるので、労働時間が減っているのに利益が上がるモデルが作れるようになるのです。事業生産性を高めるような働き方改革を推進していただければ、トップ5%リーダーがさらに成果を出すようになります。また、トップ5%リーダーだった人たちと同じような行動をする人も増えるでしょう。


新しいことにチャレンジしたがらない方に向けて、そのような方を後押しするようなアドバイスをいただけますか?

私も大きな影響を受けたトップ5%社員の言葉で、読者の方にもぜひ覚えていただきたいものがあります。それは「意識変革はできないことを、認識する」です。

ヒトの意識が変わるには5年から10年必要なので、意識変革はできないと覚悟したほうがよいと思います。それは私自身も、会社の経営陣も同じです。

意識が変わるのは、行動を変えた後です。通常多くの方が意識変革をして、それで行動変革をしようします。しかし行動変革が先にあり、振り返って意外と良かったというときが、最も意識が変わるものなのです。

「意外と良かった」を体感することが、唯一の成功パターンと考えましょう。

例えば、経理や総務の方々は、月末などは特に忙しくそれどころじゃないと思うので、行動を一変する必要はありません。小さな行動実験を行うことが大切です。

「明日から全部AIにします」「明日からメールじゃなくてチャットにします」だと、ハードルが高すぎて、だれもやってくれません。しかし「第3金曜日の午前中だけ、メールじゃなくてチャットにしてみない?」といった行動変革であれば、皆さん意外と対応してくれるものです。また、抵抗勢力の方もやってくれます。

行動実験は月1回程度はやっていただきたいのですが、その後に抵抗勢力の方が「意外とできた」と言ったりするものです。

小さな行動実験を行った後「意外とできた」「意外と良かった」と思えたら、勝手に行動変革する人に変わっていきます。「Excelを変えよう」「会議の内容を変えよう」といったアクションも生まれるでしょう。

まずは意識ではなく行動を変えること。行動を変えるのは、1か月に5分でも10分でもよいので、行動を変えて振り返ってください。これが抵抗勢力を説得させるポイントです。

ただし、小さな行動実験をする際は、成功を目指してはいけません。新しいものにデメリットがないものはないからです。実験することが目的なので、実験して失敗した先に成功があります。

例えば、メールからチャットへ移行したことが成功しても成功しなくても、そんなことはどうでもよくて、メールからチャットに変えたことがすごく重要なのです。小さな行動実験を振り返って感じたものがアウトプットで、成功や完璧を目指さないというのは、トップ5%社員もトップ5%リーダーも何度も口にしていましたので、ぜひ読者の方々にも試してもらえればと思います。


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この記事の著者

弥報編集部

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この記事の監修者

越川 慎司(株式会社クロスリバー 代表取締役社長)

国内通信会社などを経て、2005年にマイクロソフトに入社。業務執行役員としてPowerPointやExcelなどの事業責任者を務める。2017年に株式会社クロスリバーを設立。創業当初から全メンバーが週休3日、複業、7時間睡眠を実践。約700社の中小企業に対して年間400件以上のオンライン講座を提供。著書『トップ5%リーダーの習慣』など30冊。フジテレビ「ホンマでっか!?TV」などメディア出演多数。

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