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元金返済開始前に交渉しよう!「コロナ特別貸付」据置期間延長
2021.02.25
著者:吉田 学
2020年3月17日に日本政策金融公庫にて「新型コロナウイルス感染症特別貸付」が開始されました。その後、民間金融機関においても新型コロナウイルス対策の実質無利子融資が実施されています。2020年の3月~4月頃に据置期間1年で融資を受けた事業者は、この春には元金の返済が開始されます。今回は「据置期間の延長」をしてもらうための方法について解説いたします。
目次
据置期間とは?据置期間が終了するとどうなるのか
据置期間とは、「利息のみの支払いをすればよい期間のこと」です。据置期間が完了すると、元金+利息の返済が始まります。
日本政策金融公庫は、2020年の3月17日に「新型コロナウイルス感染症特別貸付」の取り扱いを開始しました。開始と同時期に申請をした事業者の中には、据置期間を「1年」で申し込みをされた方が多いのではないでしょうか。また、長期の据置期間を希望しても「1年」しか据置期間を設定してもらえなかったケースもありました。
しかし2020年4月7日に緊急事態宣言が発出され、それ以降に申請した事業者の中には3年、5年と長期の据置期間を設定してもらった方も少なくありません。
据置期間が終了すると元金の返済が始まります。当然ですが元金返済が可能な事業者に関しては、返済を開始して問題ありません。しかし2回目の緊急事態宣言が発出され、延長も決まった現在、元金返済が始まると資金繰りが厳しくなる事業者も多いのではないでしょうか。
元金返済が厳しい事業者においては、まずは借入した金融機関の窓口・担当者に「据置期間の延長」の相談をしてください。各窓口が混雑する可能性も高いので、できる限り早急に相談することをおすすめします。
政府・行政も金融機関に「据置期間の延長」を要請
現在、政府・行政からも金融機関に対して、以下のような「据置期間の延長」に関する強い要請が出されています。
〈主な金融機関等に対する要請〉
要請 | |
2021年1月7日 | |
2021年1月8日 | 緊急事態宣言を踏まえた資金繰りの支援等について要請しました |
2021年1月19日 | 新型コロナウイルス感染症の影響拡大を踏まえた資金繰り支援等について(要請) |
これらの要請文のポイントについて簡潔にご説明いたします。
2021年1月7日の金融庁からの要請については、【別紙】の「留意事項」にて触れられています。また、2021年1月8日の経済産業省からの要請については、「日本公庫」「商工中金」「信用保証協会」それぞれに要請されています。2021年1月8日の要請文が内容的に分かりやすいので、以下でご紹介いたします。
〈一部抜粋〉
緊急事態宣言の発出による影響により、中小企業・小規模事業者等の資金繰りに支障が生じないよう、新型コロナウイルス感染症特別貸付の融資等に当たっては、中小企業・小規模事業者等への親身な対応、適時適切な貸出、担保徴求の弾力化、新型コロナウイルス感染症特別貸付等の借入の据置期間が到来する場合も含めた元本・金利の返済猶予等の既往債務の条件変更について、引き続き個別企業の実情に応じた最大限の配慮を行うこと。 |
出典:緊急事態宣言を踏まえた資金繰りの支援等について要請しました|経済産業省
また2021年1月19日の要請については、「内閣総理大臣」や各閣僚の名前で、金融機関に対して下記のような要請が出ています。
〈一部抜粋〉
新規融資・資本性劣後ローンの積極的な実施・活用について最大限の配慮を行うとともに、返済期間・据置期間が到来する貸出を含めた既往債務の条件変更について、返済期間・据置期間の延長等の措置など、中小企業・小規模事業者等の実情に応じた最大限柔軟な対応を行うこと。 |
出典:新型コロナウイルス感染症の影響拡大を踏まえた資金繰り支援等について(要請)|経済産業省
このように政府・各行政庁から各金融機関に対して強い要請が出ています。なお、これらの要請文は、「据置期間の延長」だけについて触れられているわけではありませんので、余裕のある方は全文に目を通してみてください。
「据置期間の延長」を交渉する際に気をつけるべきポイント
資金繰りが厳しく返済が困難な場合は、まず借入をした窓口の支店や担当者に早急に連絡をして「据置期間の延長」を申し出ましょう。その際に、万が一「据置期間の延長はできません」と門前払いされるようでしたら、上記の要請書類を見せて「このような要請が出ているはずです。要請に基づいて、何卒ご検討していただけませんか?」と、感情的にならずに冷静に交渉するようにしてください。
なおコロナ貸付に関する据置期間の延長については今後、金融機関側が実際に現場でどのような対応をするのか、まだまだ不透明な点が多い状況です。現時点で考えられる交渉方法について、ケース別に説明いたします。
〈ケース1〉
「据置期間の延長をすると、条件変更になります」と言われた場合
〈対応方法〉
2020年の緊急事態宣言以降に借入をした知り合いの多くの事業者が、長期の据置期間を設定してもらっています。当社も長期を希望しましたが、その頃は緊急事態宣言前で、新型コロナウイルスもすぐに落ち着くのではないか?という憶測もあり、1年しか据置期間をいただけませんでした。とても不公平ではないでしょうか?どうか、条件変更ではない形式で据置期間延長を検討していただけませんでしょうか。 |
金融機関の担当者に上記なような主旨でお願いしてみてください。現在のところ、「借換」という方法を使って、据置期間の延長に成功した事例が出ています。
〈ケース2〉
「信用保証協会が据置期間の延長などは認めませんから、無理です」と言われた場合
〈対応方法〉
政府・行政から、このような要請が信用保証協会宛てにも出ています。あらためてこの要請文に基づいて検討してくださるように、信用保証協会に強く訴えていただけませんでしょうか? |
通常は、このような対応をされることはないと思われます。直ぐに据置期間延長が可能かどうか検討してくれるはずです。しかし、唐突に「協会が認めない」という主旨を述べる担当者がいるかもしれません。もしそのように跳ね返されるようでしたら、上記のように訴えてください。それでも面倒臭そうな対応をする場合は、以下のように交渉してください。
〈対応方法〉
それでは、私から信用保証協会の担当者さまに相談をしたいと思いますので、協会担当者さまをご紹介ください。私から直接、国・行政の要請に基づいて検討していただけるように、お願いしてみます。 |
ここまで丁重にお願いすれば、担当者は上司や協会に相談してくれるはずです。それでも担当者の段階でストップしてしまうようでしたら、顧問税理士や資金調達・融資の専門家に相談してください。
総理大臣の要請でも「最終的な判断は金融機関」なので注意!
2021年1月19日の要請文は、「内閣総理大臣 菅 義偉」「財務大臣兼金融担当大臣 麻生 太郎」「厚生労働大臣 田村 憲久」「農林水産大臣 野上 浩太郎」「経済産業大臣 梶山 弘志」とそうそうたる閣僚の名前で、各金融機関の協会トップに要請が出されています。
しかし金融機関側としては、たとえ総理大臣から要請されたとしても無理なものは無理なのです。最終的な判断は、金融機関側の裁量で決定します。総理大臣からの要請だからといって、絶対に対応しなくてならないということではありません。
よって「総理大臣からの要請が出ているので、延長するのは当然だ」というような高飛車な姿勢に出ると、金融機関を説得できません。丁寧に相談し、それでも応じてもらえない場合は、銀行交渉術に長けた実績のある専門家に相談するようにしましょう。
また据置期間終了後、元金返済を開始してから「やはり資金繰りが厳しい」と感じ、延長の申し出ると条件変更(リスケジュール)になり、話が複雑化することが考えられます。資金繰りが厳しい事業者は、元金返済が始まる前に金融機関に対して早急に「据置期間の延長」の相談をすることをおすすめいたします。
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この記事の著者
吉田 学(よしだ まなぶ)
財務・資金調達コンサルタント
株式会社MBSコンサルティング 代表取締役。1998年の起業以来、「資金繰り・資金調達支援」に特化して創業者や中小事業者を支援。これまでに1,000 社以上の資金調達相談・支援を行い、その資金調達支援総額は20億円超。主な著書に、「社長のための資金調達100の方法」(ダイヤモンド社)、「究極の資金調達マニュアル」(こう書房)、「税理士・認定支援機関のための資金調達支援ガイド」(中央経済社)、「税理士だからできる会社設立サポートブック」(第一法規)などがある。
また、全国の経営者・士業などを対象にした会員制の資金調達勉強会「資金調達サポート会(FSS)」を主催している。
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