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今から準備「e-Taxではじめての青色申告」2020年分から65万円控除の要件が変わる?

2019.12.25

著者:弥報編集部

監修者:辻・本郷税理士法人 菊池 典明

※こちらの記事は2021年2月25日に更新いたしました
2020年分(2021年4月締切分)の確定申告から青色申告特別控除65万円を受けるための要件が変わります。これまでの要件に加え「e-Taxによる申告(電子申告)」または「電子帳簿保存」をする必要があり、要件を満たさないとこれまで最大「65万円」だった控除額が「55万円」に下がってしまいます。

具体的にe-Taxで申告をするメリットと注意点とはどのようなものがあるのか、辻・本郷税理士法人の菊池典明先生にお聞きしました。

※編集部追記

2021年2月2日、国税庁より2020年(令和2年)分の確定申告期限の延長が発表されました。

■所得税の申告期限・納付期限

当初の期限2021年(令和3年)3月15日(月) → 延長後の期限2021年(令和3年)4月15日(木)

■消費税の申告期限・納付期限

当初の期限2021年(令和3年)3月31日(水) → 延長後の期限2021年(令和3年)4月15日(木)

【参考】国税庁:申告所得税、贈与税及び個人事業者の消費税の申告・納付期限の延長について

e-Taxを利用するために必要なものは?

2020年分(2021年3月締切分)の確定申告から、青色申告特別控除の要件が変わります。今までの要件に加え、仕訳帳及び総勘定元帳の電子帳簿保存を行うかe-Taxでの申告をすれば、特別控除額が最大「65万円」となりますが、そうでなければ最大「55万円」の控除となり、10万円の差が出ます。確定申告をするタイミングでも適用を受けられるので、これを機にe-Taxにしようという人も多いと思いますが、まだe-Taxを利用したことがない人に向けて基本的な利用方法を教えてください。

e-Taxで申告する方法としては「マイナンバーカード方式」と「ID・パスワード方式」の2つがあります。基本的にe-Taxはマイナンバーカードで本人確認をする仕組みになっていますが、まだマイナンバーカードを取得していない人が結構多いのが現状です。

税務署で本人確認をすればマイナンバーカードが不要でe-Taxが利用できるというのが「ID・パスワード方式」です。しかし、これは暫定的な対応とのことですので、将来的にe-Taxを利用し続けるのであれば、やはりマイナンバーカードを取得しておいたほうがいいでしょう。今から取得しようという人は、申請から取得までに約1ヶ月かかるので早めに申請することをおすすめします。

すでにマイナンバーカードを持っている人は、すぐにe-Taxを始められますか?

マイナンバーカードを読み取るための「ICカードリーダライタ」とネット環境のあるパソコンが必要になります。ただし、2019年1月からスマートフォンとタブレットから確定申告書の作成とe-Taxで申告ができるようになりました。また、一部のマイナンバーカード対応のスマートフォンで申告する場合は「ICカードリーダライタ」は必要ありません。ちなみに「ID・パスワード方式」でログインする場合は、マイナンバーカード対応スマートフォンも「ICカードリーダライタ」も必要ありません。

自分のスマートフォンがマイナンバーカード対応かどうかは、どのように確認したらいいでしょうか?

「公的個人認証サービス」のポータルサイトの対応機種一覧を参考にしてください。ただし、スマートフォンを「ICカードリーダライタ」の代わりに使うには、Bluetoothでパソコンとペアリングする必要があるので、結局、パソコンが必要になります。

e-Taxを使わない理由として「面倒くさい」という声が聞かれますが、最初のとっつきにくさがネックになっているようですね。

e-Taxを利用していない層は高齢者の方が多いのですが、お年寄りには馴染みのないものが多いので、本来e-Taxの利用を促したい層に届いていないようにも思います。初めてe-Taxにトライする方は、利用開始までがハードルになりますね。

「公的個人認証サービス」のポータルサイトにあるスマートフォンdeマイナンバーカードアクセス!!スタートアップガイドもご参考ください。

会計ソフトで決算書を作り、e-Taxで申告するには?

青色申告特別控除「65万円」の適用要件に、「e-Taxによる申告または電子帳簿保存」とありますが、「電子帳簿保存」というのが今ひとつわかりません。

あまり難しく考える必要はありません。電子帳簿保存法に規定されている方法なのですが、要は「紙ではなく、パソコンで作った帳簿を電子データで保存する」ということです。

「電子帳簿保存」で青色申告をする人は、e-Taxを利用しなくても65万円の特別控除が受けられるのですか?

そうなります。会計ソフトを使っている人などは、この方法でもいいと思います。ただし、帳簿の備付けを始める3ヶ月前までに申請書を提出する必要があります。2020年分に限っては特例があり、2020年9月29日までに承認申請書を提出して、12月31日分で電子帳簿保存をしていれば適用されますが、その後もすべての訂正履歴の記録など、保存のための要件をクリアするのは非常に難しいです。そうすると、やはりe-Taxということになりますね。

これを機に白色申告から青色申告に切り替えようという人もいるかと思うのですが、その際の注意点を教えてください。

青色申告をするには、青色申告をしたい年の3月15日までに申請書の提出を行う必要があるので、最短で2020年分(2021年3月締切分)からとなります。青色申告は多少の知識と時間が必要なので、仮に3日間かけて控除額を10万円上げたとしても、適用税率が低いとコスト的に見合わない場合もあります。

収入の高い人だと、事業の売上を上げることに3日かけたほうがいいとなるので、その場合は税理士事務所に依頼することをおすすめします。とはいえ、今の会計ソフトはすごく使いやすくなっているので、勘定科目の項目や貸借対照表の書き方さえわかっていれば、そこまでハードルは高くないと思います。

【関連リンク】
e-Taxによる申告(電子申告)|弥生株式会社

会計ソフトを使って青色申告をe-Taxで申告する場合、どういった流れになりますか?

弊社でも確定申告をご依頼いただいたときは、青色申告用の会計ソフトを使って入力し、おおむねe-Taxで申告しています。弥生の青色申告ソフトを使う場合は、決算書をデータで作ってe-Tax用のデータをエクスポートして、e-Taxのサイトから申告します。e-Taxに一から入力する必要がないので、まったく手間がかかりません。あるいは、その決算書のデータを申告用ソフトに移して申告する場合もあります。

また、ご自身で会計ソフトを使って決算書を作り、申告だけ税理士に頼むというお客様もいらっしゃいます。お金を払ってでも税理士に最終的なチェックをしてほしいという方が多いのですが、申告まであと一息のところまで来ているので、コストを取るか、安心を取るかという判断になってくると思います。

e-Taxを利用する控除額以外のメリットについて

e-Taxの青色申告で最大「65万円」の特別控除が受けられることは、2020年分から始まったe-Taxのメリットですが、他にはどんなメリットがありますか?

大きなメリットとしては、やはり自宅で24時間いつでも申告できることです。申告期限が近づいてくると税務署や申告書作成会場には長蛇の列ができて、申告するのに半日かかるということもありますし、フリーランスや自分で事業をされている方は、日中に空き時間を作るのが難しいものです。

e-Taxであれば、税務署に出向く必要もなければ行列に並ぶ必要もないですし、税務署の開庁時間(平日8時30分〜17時)に合わせる必要もなく、かなり時間の節約になりますよね。また、e-Taxでは源泉徴収票や医療費の明細書など多くの添付書類が省略できるので、紙で提出するよりも手間が省けます。他にも、通常の確定申告用紙での申告よりも還付が早いといったメリットもあります。

今後ますますe-Taxは有利になっていく⁉

今回のe-Taxに対する優遇措置には、e-Taxとマイナンバーカードの利用を促す目的があると思うのですが、今後ますますこの流れは強まっていくと思われますか?

e-Taxの利用促進は「効率化」が目的です。手書きの申告書を扱うと、データ入力やチェックが必要になりますし、金額のエラーや添付書類の不備も出やすいので、かなりの時間と労力がかかります。

将来的に日本全体で人手が減っていくと予測されますから、これまでどおり税務署の人員を確保できる見込みもない。そこで先手を打って青色申告のe-Tax利用を促していることが考えられます。国税局だけでなく、さまざまな省庁で文書削減の流れが強まってきているので、今後もこの流れが強まっていくでしょうね。

なお、2020年分(2021年3月締切分)の主な控除額の変更をまとめると下記のようになります。

  • 基礎控除額が10万円引き上げ(現行一律38万円→改正後48万円※合計所得金額が2,400万円超は、合計所得金額に応じて控除額が逓減し、2,500万円超は、基礎控除の適用なし)
  • 給与所得控除額が一律10万円減額、控除額上限195万円(上限は収入850万円超の一部条件該当者を除く)
  • 青色申告特別控除額が10万円引き下げ(現行最大65万円→改正後最大55万円)
  • e-Taxでの申告の場合は、青色申告特別控除額に変更なし(現行最大65万円→改正後最大65万円)
年収850万円以下の給与所得者は、基礎控除額10万円アップと給与所得控除額10万円ダウンでプラスマイナスゼロになるので、個人事業主のほうが優遇されているようですが?

今後フリーランスの方が増えることを見越して、多様な働き方を支援するという意図があるのだと思います。白色申告者や青色申告の特別控除10万円控除の人は基礎控除額が10万円上がり、青色申告の65万円控除もe-Taxで申告すれば現行どおり最大「65万円」の特別控除額が受けられるので、以前より控除額が10万円上がります。

つまり、電子帳簿保存かe-Taxを利用しない青色申告納税者だけが最大が55万円控除になり、プラスマイナスゼロで、その恩恵が受けられないことになります。すでに青色申告をしている方なら、e-Taxを利用して多少でも控除額を多くしたほうがいいことは明らかですよね。

最初はe-Taxにトライするのが多少面倒に感じても、今後も含めて考えると、やはりe-Taxに切り替えたほうがよさそうですね。

政府としてもe-Taxに多額の予算をかけて力を入れています。最初は使い勝手の悪さが目立ちましが、毎年リニューアルされて使いやすさもだいぶ改善されています。2020年分(2021年3月締切分)からe-Taxの青色申告に優遇措置がとられましたが、今後さらにe-Taxによる有利・不利といった色分けをしてくる可能性もあるので、早めにe-Taxに切り替えたほうがいいかもしれません。

【関連リンク】

この記事の著者

弥報編集部

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この記事の監修者

辻・本郷税理士法人 菊池 典明(税理士)

1986年大阪生まれ。同志社大学商学部卒業後、同大学大学院商学研究科で会計学を専攻(修士)。2014年税理士登録。 2012年に辻・本郷税理士法人大阪支部に入社し、株式会社のほか医療法人、社会福祉法人、公益法人等の税務・会計に関する業務を中心に、法人の事業承継や個人の相続コンサルティングにも携わる

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