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レジ打ちを”価値を生み出す業務”に変えた「Airレジ」のビジネスモデル

2019.07.09

既存のビジネスモデルの枠組みに留まらない斬新な仕組みが次々登場しています。それらを「ビジネスモデル2.0」と名付け、100の事例を図解した『ビジネスモデル2.0図鑑』は大きな反響を呼びました。

この連載「話題のサービスの仕組みがひと目でわかる ビジネスモデル2.0図解」では、図解総研の沖山 誠(おきやま まこと)氏に、弥報Online読者に関係の深い事例を取り上げて解説や最新情報を加えていただきます

今回取り上げるのは、無料POSレジアプリ「Airレジ」。株式会社リクルートライフスタイルが2013年10月に開始した直後から、飲食店を中心に着実に利用者数を増やしています。この「Airレジ」がどんな仕組みで何が斬新なのかを解説していただきました。

※本記事は、 近藤哲朗 著『ビジネスモデル2.0図鑑』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

0円で利用可能!レジの常識を打ち壊した”無料POSレジ”

これまで、POSレジを導入するというのはとても負担が大きいものでした。従来のPOSレジアプリを導入しようとすると、数十万円~数百万円の費用がかかってしまいます。中小企業にとって、それは非常に大きな金額です。そのため、レジを導入することを諦めてしまう店舗が少なくないのが実情でした。

また、レジを導入できたとしてもレジ打ち業務は付加価値を生み出すことが難しく、売上を計上するための手間がかかったり、操作が複雑で手打ちでレジを打つときのミスが多かったりと、導入以後もコストがかかってしまうというジレンマがありました。

そういった課題があった中で、「Airレジ」は基本的な機能については初期費用も月額料金も無料で利用できます。手持ちのiPadでアカウントを登録して設定を済ませれば、すぐに無料で利用することができます。周辺機器を揃えるためには費用がかかるとはいえ、これは非常に大きなメリットです。

さらに、紙で管理される情報だった売上データなどをクラウド上で管理しています。それによって、売上管理やメニュー変更などもしやすくなり、雑務が減ると同時に、販売データの集計、客足予測、売れ筋商品など店舗運営に必要なデータを確認できます。

つまり、Airレジはレジ打ちという価値を生み出しづらい業務を、価値を生み出す業務に変えたところがすごいところなのです。

導入ハードルを最大限下げつつ、高い付加価値の提供で差別化

とはいえ、Airレジ以外にも様々な競合が国内外に存在しています。では、なぜ「Airレジ」が選ばれるのでしょうか?

一つ目の理由は、そのUXのシンプルさにあります。Airレジでは、特別な知識を持たなくても誰もが直感的に操作できるように、かつ、iPadのタップ回数を可能な限り減らすように工夫が施されています。これによって、導入コストが無料という費用面だけでなく、デジタル機器が苦手な人の機能面でのハードルを下げています。

さらに、その店舗に閉じないデータ活用が二つ目の理由です。従来のレジでは、各店舗内でレジのデータが閉じてしまっていました。しかし、Airレジはクラウド上で店舗運営のデータが蓄積されていきます。リクルートライフスタイルは、さまざまなエリアや業態をカバーしています。そのデータを活用して、その地域の潜在顧客や売上の予測が可能です。つまり、 Airレジを導入している店舗だけではなく、その地域の顧客のニーズを把握して活用することが可能です。

三つ目の理由は、リクルートライフスタイルが保有するメディア(ホットペッパーなど)から店舗利用者にアプローチが可能であるということです。たとえば、店舗が空いている時間帯にクーポンを発行する、あるいは満席の店があれば同エリア内で他の空いている店舗を紹介する、といったこともできるようになります。

つまり、導入のハードルを最大限下げるとともに、リクルートライフスタイル が持つ資産を活用しながら高い付加価値を提供していることが、他のサービスとの差別化要因になっていると言えます。

Airペイ決済手数料の獲得でも収益確保

Airレジは、いわゆるフリーミアムモデルというものです。無料で基本的なサービスを受けることができるが、さらに充実したサービスを利用したいという場合は課金をしてもらうようになっています。有料プランとしては、周辺機器(カードリーダーなど)の導入などがあります。

また、周辺サービスとの連携による収益化も見込んでいます。具体的には、ホットペッパーなどのメディア掲載料や、Airペイ(リクルートの提供する決済サービス)の使用による決済手数料の獲得などがあげられます。

つまり、リクルートライフスタイルとしては、Airレジをフックとして他のサービスに取り込んでいくことで、収益を確保しています。Airレジの導入のハードルを低くし、自社サービスに取り込んでいくことで、「ネットワーク効果(顧客が増えれば増えるほど、ネットワークの価値が高まり、顧客にとっての便益が増すこと)」を高めていくことが狙いであると言えるでしょう。

今後もUX改善に努め、さらに導入のハードルを低くしつつ、活用してもらえる業態の幅を広げていくことが重要になるでしょう。 今は利用している事業者の約半数が飲食店とのことですが、より幅広い事業に活用してもらえるように機能や導入支援などを拡大させていくことが予想されます。

より長期的な視点では、リクルートライフスタイルは「Airレジ」という新しい顧客接点から消費者の消費動向のデータを獲得し、新規事業を生みだすなど、他の事業に展開することが可能です。今後幅広い業態に導入が進むことによって、より多くの顧客のビッグデータが蓄積されていき、ますます高い付加価値を生み出す魅力的なサービスとなるでしょう。

この記事の著者

沖山 誠(ビジネス図解研究所)

1995年生まれ。「ビジネス×図解」をコンセプトとした図解総研というコミュニティに所属。その活動の傍ら、個人で本の図解に取り組み、第一作目として「サピエンス全史図解」を公開してTwitterでトップトレンドに入るなど、話題となる。株式会社Gaiaxが主催する読書会イベントのBookedにおいて、運営メンバーとして参画。『Booked VOL.2「サピエンス全史」』などに登壇

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