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人生100年時代の生き方・働き方のヒント 前編:「超長寿時代」の人生設計

2018.01.09

著者:弥報編集部

人生100年時代の生き方・働き方のヒント 前編:「超長寿時代」の人生設計

世界的なベストセラーになったイギリスのリンダ・グラットン著『LIFE SHIFT』。そこには「2007年に日本で生まれた子どもの半分は、107年以上生きることが予想される」という衝撃的な予測が記されています。

寿命が100歳まで伸びると、これまで当たり前だった人生80年時代の「教育」「勤労」「引退」という年齢によって変わる3ステージ型の人生が成立しなくなります。仮に60歳で定年したとして、引退後の40年を余暇として過ごすには、金銭的にも大変ですし、生活が苦しくなると生きがいを感じられなくなるかもしれません。

そうはいっても、80年生きることを前提に人生設計していた人が、100年生きることを前提に軌道修正するのは、なかなか難しいものです。そこで今回は「100年ライフをデザインする」をコンセプトに掲げている、ライフシフト・ジャパン株式会社代表の安藤 哲也さんに、人生100年時代のライフデザインのヒントを伺いました。

お話を伺った方:安藤 哲也氏

ライフシフト・ジャパン株式会社 代表取締役社長。1962年生まれ。出版社、IT企業など9回の転職を経て、2006年に父親支援のNPO法人ファザーリング・ジャパンを設立。「笑っている父親を増やしたい」と講演や企業向けセミナー、絵本読み聞かせなどで全国を歩く。最近は、管理職養成事業の「イクボス」で企業・自治体での研修も多い。厚生労働省「イクメンプロジェクト推進チーム」顧問、にっぽん子育て応援団 共同代表等も務める。著書に『パパの極意~仕事も育児も楽しむ生き方』(NHK出版)、『できるリーダーはなぜメールが短いのか』(青春出版社)など多数。3児の父親。

性別や年齢に縛られない「マルチステージ」を生きる

おおよそ20年間の教育期間を経て、40年間働き、引退後の暮らしを20年間送る……これが通用するのは人生80年時代の話です。医療やテクノロジーが進歩し今の30代、40代の社会人も、90歳くらいまで生きることが当たり前になるかもしれません。そうなったとき、80歳まで生きる人生設計では、豊かに過ごすはずの老後生活が破綻する恐れがあるのです。

そんな従来の人生設計を見直し、「人生100年時代」の新しい時代の働き方・生き方を啓発している会社があります。その名もライフシフト・ジャパン株式会社。代表の安藤哲也さんは、イクメンNPO「ファザーリング・ジャパン」や育児を応援するボスを育てる「イクボスプロジェクト」の活動でも知られています。

「今は働き方改革という言葉が流行っているけれど、その次にあるのが生き方改革、すなわちライフシフトだと思います」と安藤さん。

北欧諸国では早くから女性が活躍しており、男性は仕事だけではなく家事や育児にも積極的に楽しんでいます。少し遅れて日本も同じように女性が活躍する時代がやってきました。稼ぐのは男性の仕事、家事育児は女性の仕事ではなく、性別や年齢の枠を超えて、進んで新しい役割を担い、それらを楽しむこと。これがライフシフトの考え方に通じると安藤さんは言います。

安藤:リンダ・グラットンの本にも書かれているように、「教育」「勤労」「引退」ではなく、これからは生涯において2つ、3つのキャリアを持つ「マルチステージ」を生きていくのだと頭を切り替えるべきです。そのためには、新しいスキルを身につけるための投資や人的ネットワークを広げることが不可欠。目の前の仕事だけではなく、どんどん働き方や生き方、自分のアイデンティティーを新しい役割に合わせて変化させていく「ライフシフト」をしていくことが一番のリスクヘッジであり、人生を豊かにすることに通じると思います。そして、長寿社会を楽しむためには、早くから準備することが大事なのです。

人生100年時代の生き方・働き方のヒント 前編:「超長寿時代」の人生設計

少なくとも90歳までは生きる!? 死ねない社会がやってきた

「どうせ自分は80歳くらいで死ぬから、あえて目の前の仕事だけに専念していればいい」と考えている人もいるかもしれません。むしろ100歳まで生きるイメージを持っている人は少ないのではないでしょうか。

安藤:医療が発達したことによって、大きな病気や事故がない限り、「死ねない社会」がやってきます。今の40代くらいの人だって、ほとんどが90歳までは生きることになるんですよ。

そんな長寿時代がきているなか、ライフシフトを人ごとだと思って、会社と家の往復だけの生活を送っていたらどうなってしまうのでしょうか。

安藤:今は熟年離婚が年間約4万件あるといいます。それも男性が家事や育児に参加しなかった家庭で大量発生していると私は考えています。それでもまだ稼いでいるうちは大丈夫。奥さんに陰でATMって言われているかもしないですが(笑)。しかし、定年後にATMの機能がなくなったら断捨離されて、ローンが残った家に1人寂しく暮らしながら、地域からも孤立してしまうかもしれません。これは育児に専念していた専業主婦も同じです。20年間の育児が終わったら何をするのか考えておくべきです。社会復帰したくても、普通の会社にはまず戻れないですから。

死ぬまで充実した人生を送りたいと思うなら、知識やスキルはもちろん、人脈やそこでの信頼関係などの目に見えない「無形資産」を築いておくことが大切。興味があることを勉強したり、資格をとってみたり。さらには子育てや地域活動を通じて、ネットワークを広げるといったことが必要なのかもしれません。

会社の枠組みから外れても生きていけますか?

定年まで勤め上げたとしても、もし仮に年金支給のタイミングが後ろにずれたら、無収入の空白期間が出てきてしまいます。そんなとき、目の前の1つの仕事しかしてこなかった人はどうなるでしょうか。

安藤:収入が下がったとしても、生きがいややりがいを感じられるものが会社の仕事以外にもあれば、楽しく暮らせるものです。会社にしがみつく使えないおじさんにはなってほしくないですね。そうなるくらいなら早期退職してやりたいことでキャリアを築く方がいいでしょう。会社側も浮いた人件費で、イキのいい若手を2人くらい採用できるかもしれません。本人も会社もお互いにハッピーですよね。

ライフシフト前後のネットワークの違い
ライフシフト前後のネットワークの違い

早期退職して新しい人生を楽しむ先輩を見たら、若手の社員も希望が湧いてくるというものです。

安藤:今は管理職になりたくない若手が増えています。それはやっぱり上司が輝いていないからだと思います。昔なら仕事ができて、羽振りがいい上司がカッコよかったのかもしれませんが、今は「生き方」にほれる時代です。人生を楽しむボスが増えたら、それに憧れる部下が増え、比例して業績も上がると思いますよ。

これから先、100歳までは生きるであろう子どもたちのことを考えれば、人生の先輩たちがライフシフトをしている背中を見せることも大切なことです。

安藤:今の子どもたちは失敗を恐れてチャレンジしなくなっています。両親や身近にいる大人たちが、ライフシフトをして、チャレンジしていくべき。そうして100歳まで人生を楽しむ人たちを見れば、子どもたちも未来に希望を持てるはずです。


人生80年という前提が崩れかけている今、私たちの人生設計を考え直すべきときがやってきました。会社の仕事一辺倒の人生も、家事育児に専念する人生も、それはそれで素晴らしいものですが、いつか終わりがやってきます。

長寿を楽しむためのヒントは、「年齢」によって人生のステージが変わるという考え方をリセットすること。そして、いつも新しい働き方や生き方を模索し、挑戦する「ライフシフター」になることです。

とはいえ、最初はどんなことから始めたらいいか迷ってしまうもの。そこで 「人生100年時代の生き方・働き方のヒント 後編」では、ライフシフトをしようと考えたとき、どんなことから始めたらいいのかをご紹介します。

この記事の著者

弥報編集部

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