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【教えて!吉田先生】公表結果から分析!事業再構築補助金が通りやすい認定支援機関はどこ?

2021.12.27

事業再構築補助金には「認定経営革新等支援機関と事業計画を策定する」という主要申請要件があります。認定支援機関には金融機関、税理士、民間コンサルタント、商工会、中小企業診断士などがいますが、どのような認定支援機関から支援を受け、事業計画書を作成すれば事業再構築補助金の採択率は上がるのでしょうか?今回は財務・資金調達コンサルタントの吉田 学先生に、事業再構築補助金事務局から公表されている結果報告から申請成功の秘訣を探っていただきました。

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本記事は2021年9月「事業再構築補助金 第二回の公募結果」を基に作成しております。

事業再構築補助金の申請支援を多く実施した認定支援機関を教えてください

事業再構築補助金応募件数(申請支援数)では、圧倒的に「地銀」「信用金庫」、そして「税理士」「税理士法人」「民間コンサル会社」が多かったようです。

2021年9月に「事業再構築補助金 第2回公募の結果について」という資料が公表され、認定支援機関ごとの成績・結果が一覧されています。

〈認定支援機関別応募・申請・採択状況〉

出典:事業再構築補助金事務局ホームページ

上の図表の数値をエクセルに転記して比率などを算出したのが、下記の表になります。

〈認定支援機関別応募・申請・採択状況 比率等〉

青いセルは採択率が平均以上で、青字はベスト3です。対して赤いセルは平均以下であり、赤字はワースト1となっています。

応募件数(申請支援数)は、「地銀」「信用金庫」、「税理士」「税理士法人」、「民間コンサル会社」が多く、「銀行」「信組」が少ないという結果となりました。特に「信組」にはもう少し力を入れてほしいですよね。

採択率の成績・結果が良かったのは?

「公益財団法人」「商工会」「民間コンサルティング会社」に支援をしてもらった事業者の採択率は、高い傾向にあるという結果となりました。先ほどの比率の表の青いセルが、平均以上の採択率を出した認定支援機関ですので、参考にしてみてください。

「公益財団法人」は申請案件数がそもそも少ないので、身近な相談先とは言い難く、相談しにくいというイメージがあるのかもしれません。商工会は、商工会会員となっている事業者にとっては相談する価値が充分にあります。表からもわかるように、多くの商工会会員の方が相談して採択されていますから、ぜひ相談してみてください。「民間コンサルティング会社」は、顧問税理士のように身近な存在ではないながらも、相談件数としては多い方で、採択率も平均以上という結果となっています。

採択率の成績・結果が悪かったのは?

採択率が悪いのは「税理士」「税理士法人」「公認会計士」「行政書士」「銀行」という結果になりました。表の赤いセルが該当箇所となります。「税理士」「税理士法人」「公認会計士」に関しては、顧問先企業からの依頼が殺到して、事業計画のアドバイスなどを充分にできなかったのかもしれません。また「行政書士」については、事業者からの強い要請で受けざるを得なかったというケースも考えられます。なおワースト1位は「その他」ですので、分析から除外しました。

エクセルの表にある「不備件数」とは何のことですか?

不備件数とは書類不備などが原因で、書類が受領されなかった件数です。不備率が低かったのは「地銀」「信用金庫」で、最も高かったのは「税理士」という結果となりました。事業再構築補助金事務局によりますと、以下のような不備が多かったようです。

要件を満たさなかった申請の事例

事例1:売上高減少要件に必要な月別売上高を証明する書類が添付されていない。
     売上高減少として選択された年月とは異なる年月の書類が添付されている

事例2:「認定経営革新支援機関による確認書」 に記載された法人名等が申請者と異なる。
     認定経営革新等支援機関ではなく、申請者名で確認書が作成されている。

事例3:経済産業省ミラサポplusからの「事業財務情報」が添付されていない。

事例4:添付された書類にパスワードがかかっている、ファイルが破損している。

出典:事業再構築補助金事務局ホームページ「電子申請にあたってご注意いただくこと」

税理士においては、顧問先からの支援要請が殺到したために「要件を満たさなかった申請の事例」に書かれているようなチェックまで手が回らなかったのかもしれません。また支援者によっては、あくまでも事業計画書作成の支援に限定しており、「要件を満たさなかった申請の事例」に書かれているようなチェックや指導は、行わないケースもあったと思われます。このような不備があると、せっかく応募したのに弾かれてしまうので、充分な確認作業を行うようにしてください。

マーケティングに強い認定支援機関に依頼するのがよいのでしょうか?

今回の申請に関しては、事業計画にマーケティングの視点が弱かったという主旨のことを、事業再構築補助金事務局は強く指摘しています。

2021年6月22日にアップ・公表された事業再構築補助金事務局の「第1回公募終了 ~その傾向と参考事例~」(動画)では、中小企業庁の担当者から「この事業計画で、なぜ顧客(売上)が増えるのか?という根拠説明の弱いものが多かった」とコメントがありました

参考:事業再構築補助金事務局「第1回公募終了 ~その傾向と参考事例~」

マーケティングに基づいた事業計画を作成するために、マーケティングに強い認定支援機関に依頼となると、適した依頼先は金融機関でもなく税理士でもないという事態になります。中小企業診断士はマーケティングの勉強はしているものの、実務経験のない方もいるでしょう。

そうなると「マーケティングに強い民間コンサルタント」が、最も適切な相談・依頼先になりますが、民間コンサルタントがすべて「マーケティング」に強いわけでもないということは、理解しておいてください。

具体的にどんな認定支援機関に依頼すれば採択の可能性が高まりますか?

私がお勧めするのは「顧問税理士」です。既に申請支援実績のある先生でしたら、信頼してもよいと思われます。それが難しい場合は、取引先の金融機関に相談してみましょう。金融機関には、これまでの支援実績について確認してください。金融機関には中小企業診断士の資格を持った行員もいますので、マーケティング知識を有している方もいると思われます。

また、顧問税理士や取引先の金融機関の中には「事業計画書の最終確認くらいの支援はできるが、事業計画書の作成指導はできない」という方もいると考えられます。その場合はさらに追加の支援者として、認定支援機関でなくとも、民間のマーケティングの専門家や資金調達・補助金などの実績のあるコンサルタントに、事業計画書作成の支援をしてもらうのも一案です。

このように幅広いノウハウや経験を兼ね備えた完璧な専門家は、非常に少ないのが現実です。1人の認定支援機関に頼り切るのではなく、状況に応じて別の専門家などの指導も受けながら「チーム」として申請手続の支援をしてもらえると、事業者としてはありがたいですよね。

事業再構築補助金は、2022年1月から第5回公募を開始し、2022年にさらに3回程度の公募が実施される予定です。申請を検討される事業者の方は、締め切り間際になって慌てることがないように、早め早めに認定支援機関や支援者を探しておきましょう。そして、ゆとりをもって事業計画書の作成し、申請の手続きをすることを強くお勧めいたします。

また、2021年11月下旬に「事業再構築補助金 第3回公募の結果について」が公表されました。「第2回の結果について」と同様に、「認定支援機関別応募・申請・採択状況」も公表されています。

第3回の「応募件数(申請支援数)」については、第2回と同様に「地銀」「信用金庫」、「税理士」「税理士法人」、「民間コンサル会社」が多く、「銀行」「信組」が少ないという結果となりました。

「採択率」においても第2回と傾向は変わらず、「公益財団法人」「中小企業診断士」「民間コンサルティング会社」「商工会など」に支援をしてもらった事業者の採択率が高い傾向にある、という結果となりました。

詳しくは事業再構築補助金事務局による資料をご確認ください。

本記事は2021年9月「事業再構築補助金 第二回の公募結果」を基に作成しております。

この記事の著者

吉田 学(よしだ まなぶ)

財務・資金調達コンサルタント
株式会社MBSコンサルティング 代表取締役。1998年の起業以来、「資金繰り・資金調達支援」に特化して創業者や中小事業者を支援。これまでに1,000 社以上の資金調達相談・支援を行い、その資金調達支援総額は20億円超。主な著書に、「社長のための資金調達100の方法」(ダイヤモンド社)、「究極の資金調達マニュアル」(こう書房)、「税理士・認定支援機関のための資金調達支援ガイド」(中央経済社)などがある。また、全国の経営者・士業などを対象にした会員制の資金調達勉強会「資金調達サポート会(FSS)」を主催している。

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