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「知識ゼロの町工場でもIoT技術にトライできた」事業承継を見据えた息子が吹き込んだ新たな風。

埼玉県にある有限会社城山精機製作所は、創業から約60年アルミ加工を主に、アルミ鋳物・金属加工・鉄加工を行なっている町工場。従業員は9名ですべて親族で営んでいる。代表の川村 紀一さんの息子・浩一さんは、20代のころは家業を継ぐことに抵抗があったと言います。10年ほどの社会人経験を経て入社すると、前職で培った営業力で新規顧客を開拓。IoTAIといった技術も取り入れ、会社に新しい風を吹き込みました。

職人気質の経営者である父と息子が手を取り合い、会社を成長させていくその姿。「子供が会社を継いでくれない」「引き継ぎがうまくいかない」など親子間の承継でお悩みの方にも、問題解決のヒントとなるでしょう。

川村 浩一 (有限会社城山精機製作所 取締役)

1979年東京都生まれ。日本体育大学 体育学部 体育学科卒業後、段ボール製造業で7年営業を務める。その後、父が代表を務める有限会社城山精機製作所に転職し、ものづくりの楽しさを知る。現在では、営業から現場作業まですべての業務に携わり、IoTシステムや新しい機械の導入により事業を発展させ、会社の核を担っている。

外に出て経験を積んだら、家業を継ぎたいと思えるように

――城山精機製作所の事業や製品について教えてください。

会社を立ち上げたのは私の祖父で、天体望遠鏡のレンズ部分など光学部品を製作してきました。私が入社してからは医療機器部品も手掛けるようになり、今はそちらがメインです。特にアルミや鉄の加工を得意としていて、精度の高さには自信があります。

従業員は9名で、全員親族です。私・父・叔父の3名が社員として現場に出ており、残りの従業員はパートという形で経理などを行っています。

天体望遠鏡の本体を持つ川村 浩一さん

城山精機製作所で製造している天体望遠鏡のレンズ部分

――後継者として入社したきっかけは何だったのでしょうか。

ダンボールの会社でルート営業と新規開拓をしていたんですが、30歳になったころに異動の話が出まして。それは厳しいなと思い、父の会社に入ることにしました。

父からは、前職の会社に入社する前に「城山精機製作所に入る気ないの?」とは聞かれていたんです。そのときは20代で、実家を継ぐなんてまだ考えられなかったのですが、社会に出ていろいろ経験したら気持ちが変わってきましたね。

職人気質な父、営業出身の息子。苦手な部分を補い合って

――経営に加わるにあたり、お父さまからアドバイスされたことがあれば教えてください。

特にうるさく言われたこともなく、自由に、好きなようにやらせてもらっています。機械の動かし方などは教わりましたが、逆に営業のやり方を父に伝えたりもしますよ。父は学校を卒業してすぐこの会社に入っていて、職人気質なところがありますから。

ただ、親子間・親族間で教え合うというのは難しいところもあって「また今度聞けばいいか」という感じで真剣味に欠けてしまう部分もあるんです。近い関係だからこそ、素直に聞き入れられないこともあります。そこで、私の場合は東京都の人材育成支援を活用し、機械メーカーの研修にも参加しました。参加費をある程度を払うと「お金をムダにしたくない」という危機感も出てきますし、第三者からの指導も取り入れられて良い結果となりました。

――浩一さんが会社に入ってから、新しく始めたことはありますか?

以前営業職だったこともあり、新しい領域にも手を広げていこうと営業活動を行いました。当時は医療機器や航空部品が好調だったので参入したかったのですが、そういう分野はISOなどを取得していないと参入が難しいんです。そこで、医療機器の中でも直接治療に使われるものではない「ライト」に着目しました。

私が入社してから、売上は伸びましたよ。父も叔父も見積もりに関してはどんぶり勘定なところがありました。それを材料代・加工費、製作にかかる時間などを考慮して出すようにしたため、利益が増えてきましたね。ちなみに経理は姉が担当していて、損益の計算は、簡単なフォーマットを用いてExcelや手書きで計算しています。

――事業承継で大変だった点や、今後の課題は何でしょう。

家業を継ぐというと、親が会長、子供が社長というところが多いですよね。でもうちは、父が経営者のままです。本人もまだ現役を続けたいと言っているし、このスタンスでいいかなと。1つ気になるのは、私がお客さんに「あの人結構いい年なのに社長にしないなんて、何か問題でもあるのかな」と思われていないかということです。今のところ、それで仕事が減ったりもしていないし、大丈夫かな(笑)。

とはいえ、いつかは会社を継ぐことになるし、突然その日がやってくるかもしれません。そんなときに備えて、東京中小企業振興公社が紹介してくれた専門家に相談しています。今行っているのは、「会社の理念や強み・弱みを文章化する」という取り組みです。

将来の不安という点では、経理を姉に任せきりなことも気になっています。税理士さんなどとのやりとりは父が行っていて、私はノータッチ。お金周りに関することが、事業承継のネックになると感じています。

知識ゼロからIoTを構築し、12時間以上の残業を削減

――製品作りにIoTAIの技術を取り入れたそうですね。

機械の稼働状況を、どこにいてもスマホやタブレットで見られるようにしました。製品ごとの進捗や生産数を把握できるので、ムダを省くという面ではすごくいいと思います。以前は何となく2021時まで働いていたのですが、データを分析したら2時間は短縮可能だとわかったんです。今では18時までに仕事を終えていますから、業務はだいぶ改善できたのではないでしょうか。

――IoTなどを取り入れたきっかけは何だったのでしょうか?

「ものづくり補助金」という中小企業を対象とした補助金があるということ、IoT環境の構築などがその対象になると知ったことです。IoTAIも、そのとき初めて聞いた言葉でした。ITに関する知識にも疎かったのですが、機械メーカーと打ち合わせしながら自分で構築しましたね。専門家に入ってもらったのは、補助金の申請書に関する部分くらいです。

新規営業を成功させるコツは「部品より完成品を見せる」

――今後はどのように会社を発展させていきたいですか。

やっぱりやらないといけないのは、さらに売上を伸ばすことです。そのためには、もっと営業活動をしなければなりません。今は現場である工場の仕事が中心なので、人を雇って簡単な作業をやってもらい、その間営業へ出られるようにしたいですね。

今行っている営業活動は主に2パターンで、1つはインターネットで取引先候補会社を洗い出して電話するというものです。これは100件以上かけてやっと1件会ってもらえるという程度ですから、あまり効率が良いとは言えません。一方で、展示会に参加して片っ端から名刺を配るやり方のほうが、ポイントを絞れる分反応が良いと感じています。

ちなみに、うちで作っているのは部品ですが、営業の際は部品が使われた完成品を持参するようにしています。部品だけを見せても、初めての人には何のことかわからないみたいで。相手がイメージしやすいよう、見せ方の工夫が必要ではないでしょうか。

――弥生ユーザー、特に製造業の皆さんへメッセージをお願いします。

お互い頑張りましょうということと、できたら協力し合えるといいですよね。例えば、うちはアルミや鉄の加工には強いものの、ステンレスはそこまででもなかったりします。弥生でマッチングのような仕組みがあれば、ステンレスの仕事は皆さんにご紹介して、その代わりアルミなどの依頼が来たらうちに振ってもらうというような流れを作れるんじゃないかな。いつかそんな日が来たら嬉しいです!

左から川村 浩一さん、代表取締役:川村 紀一さん(父)、工場長:川村 一雄さん(叔父)

 

有限会社城山精機製作所

http://www.shiroyama-seiki.co.jp/

所在地:(本社)〒175-0082 東京都板橋区高島平9-16-10
(工場)〒335-0031 埼玉県戸田市美女木7-16-11
従業員数:9名(アルバイト含む)

 

撮影:Atsushi Watanabe

 

※本記事は、 弥生のあんしん保守サポートベーシックプランまたはトータルプランにご加入中のお客さまにお届けしている情報誌「弥報Magazine」(2021年11月号)に掲載した内容を再編集したものです。

<事業承継に関するその他の記事はこちらから>

著者:弥報編集部
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