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2021年1月施行「育児・介護休業法」の改正点・小さな会社がやるべき対策を解説!

2021年11日に改正された育児・介護休業法が施行されました。この法改正により、子供の看護休暇・介護休暇が時間単位で取得可能に。さらに、非正規労働者を含むすべての労働者が対象となっています。

それでは今回の改正にあたり、企業はどのような対応をとればよいでしょうか。社内規定作りの方法や利用できる助成金について、社会保険労務士の片野 誠氏に詳しくお話を伺います。

片野 誠 氏(社会保険労務士)

1972年神奈川県生まれ。中小企業の総務部において、経理に約3年、人事・総務に約9年半従事。2006年度社会保険労務士試験に合格。2008年2月に社会保険労務士として開業。2009年5月特定社会保険労務士付記。〈所属〉全国社会保険労務士会連合会、東京都社会保険労務士会、東京都社会保険労務士会 千代田統括支部。
片野誠事務所 http://www.sr-katano.jp

育児・介護休業法とは?20211月の改正点も確認

――育児・介護休業法とはどのような法律でしょうか。制定された背景についても教えてください。

育児・介護と仕事の両立をサポートする法律で、産前産後休業・介護休業をはじめさまざまな制度があります。

まず、育児のための主な制度をご説明します。産前産後休業は、産前42日(多児妊娠の場合98日)・産後56日の休業を取得できるというものです。育児休業は男女とも基本的に子が1歳に達した日までですが、女性は産後休業がこの期間に含まれます。子供の看護休暇は、未就学の子供が急に熱を出したり予防接種を行う際に、年に5日(子供が2人以上の場合は10日)まで取得可能です。

介護のための制度には、介護休業・介護休暇があります。この2つは取得できる日数などに違いがあり、介護休業は家族1人につき93日の休業を分割して取得可能です。介護休暇は家族1人につき1年に5日(要介護家族が2人以上の場合は10日)しか取ることができませんが、当日申請も認められています。

育児・介護はだれしもが経験しうることなのですが、昔は育児休業や介護休業を取る人はほとんどおらず、ほんの20数年前まで結婚や妊娠をしたら退職するのが当たり前という時代でした。そうなると当然労働力人口は減少していき、さらには少子高齢化に拍車がかかります。そのため「雇用の継続」を目的とし、ワーク・ライフ・バランスを整えるべく法整備が必要となったのではないでしょうか。

――20211月に法改正されたのはどの点ですか?

子供の看護休暇と介護休暇を、時間単位で取得できるようになりました。今まで子供の看護休暇と介護休暇は半日単位でしか取ることができなかったのですが、それだと12時間病院に寄れば終わるような用事には使いづらいですよね。今回の改正により、より柔軟な使い方ができると思います。

そしてもう1つの変更点が、すべての労働者が取得可能ということです。以前は1日の所定労働時間が4時間以下の労働者は取得できなかったため、これまで対象外だった短時間勤務のパートの方なども使えるようになりました。

――育児・介護休業法の改正により、労働者や企業にはどのような影響があるでしょうか。メリットや負担となることの両面で教えてください。

労働者は当然、育児・介護休業の使い勝手がよくなりますよね。そして企業にとっては、休暇の制度を整えればそれ自体がメリットになるでしょう。つまり、安心して長く働ける環境が築けるということです。

採用のときにそういった点を気にする人は多いですから。ハローワークで人材を募集する際も育児休業実績を書く欄がありますし、十分アピールポイントになると思います。

負担はやはり、時間単位で人が抜けるのでそこに対するフォローですね。子供の看護休暇・介護休暇を有給にする場合は、さらに賃金も支払わなければなりません。あとは年次有給休暇と同様、管理の手間がかかります。

男性の育休取得を促進!「パパ休暇」「パパ・ママ育休プラス」

――男性の育児休業取得率は直近で 7.48%とのことですが、数字が伸び悩んでいる理由はどこにあるとお考えでしょうか。

これは厚生労働省で統計が出ていて、「制度そのものが会社に整備されていない」「男性は取りづらい雰囲気がある」といったことがあるようです。「今後のキャリアに悪影響を及ぼす」という理由で二の足を踏んでいる人がいることも、根深い問題だと思います。規模の小さい会社、すなわち中小企業はさらにこの傾向が強いかもしれません。

――育児・介護休業法には「パパ休暇」「パパ・ママ育休プラス」という特例があるそうですね。

以前は、配偶者が子供の面倒を見るという状況では育児休業を取得することができませんでした。「パパ休暇」「パパ・ママ育休プラス」は、両親が一緒に休みを取るためのしくみです。

パパ休暇は、出産後8週間以内に父親が育児休業を取得した場合、再度育児休業を取得できるという特例になります。本来育児休業は1回限りですから、出産後8週間以内の部分がノーカウントになるという感じですね。

パパ・ママ育休プラスでは、両親がともに育児休業を取得するのであれば、休業可能期間が本来1歳までのところ12か月まで延長されます。この2か月間分は両親のどちらかのプラス分となり、育児休業の取り方のパターンもさまざまです。詳しくは、厚生労働省のホームページをご確認ください。

まずは規定作りから。小さな会社の育児・介護休業法対策

――従業員10名未満の会社は就業規則の作成届出義務がありませんが、そのような小さな会社でも育児・介護休業法に関する規定を整備する必要がありますか?

先ほど、休暇制度が整っていれば採用のアピールポイントになるというお話をさせていただきました。ですので「就業規則がないから育児・介護の規定もいらない」では、この先優秀な人材の確保が難しくなる可能性があります。

育児・介護休業法は、お金の負担はそれほどないのです。産前産後休業・育児休業は社会保険料が免除されるため、会社の負担はゼロですし。もちろん労働力の代替要員を確保する必要はありますが、義務はなくても規定は積極的に整備したほうがよいと思います。

――育児・介護休業法に関する規定はどのように作成すればよいでしょう。

育児・介護休業法に関する規定のひな形は、解説・サンプル付きのものを厚生労働省のホームページからダウンロードできます。また、弥生の「法令・ビジネス文書ダウンロード」でも、育児休業などに関する規程・介護休業などに関する規程をはじめ、就業規則に関する各種書類がありますね。

作成のやり方が分からない場合は、労働局の雇用環境・均等部(室)や顧問の社会保険労務士に相談するとよいでしょう。「そもそも何をしたらいいか分からない」というときも、まずは雇用環境・均等部(室)に連絡してみてください。

その他に無料で相談できる場所として、自治体ごとに設置されている労働相談情報センターがあります。

――バックオフィス業務で変更しなければならないことはありますか?

システム上で申請するしくみがある場合はよいですが、従業員が休暇を申請する用紙は準備したほうがよいと思います。後は時間単位で管理するので、管理台帳ですね。年次有給休暇のように法律上の義務はないですが、管理台帳がないとだれがあと何時間取得できるのか管理できないため、あると便利です。

――もし法改正に向けて何も対策をしなかった場合、どのようなリスクがあるでしょうか。

従業員10名未満の会社でも、育児・介護休業法の規定に違反すると労働局から勧告がきたり、企業名を公表されたりする可能性があります。考えられるのは、例えば男性や非正規労働者に育児休業を認めないなどのケースです。

このような事態を避けるためにも、やはり小さな会社でも育児・介護休業法に関する規定を整備しておくことをおすすめします。規定がないと育児休業や介護休業を取りづらくなりますし、そのことによって従業員の不満が募ったり、女性の人材が集まりにくくなったりというリスクも発生しかねません。

今回の改正では休暇を時間単位で取得できるようになりましたが、例えば工場でライン作業を行っている会社の担当者が中抜けすると、業務が完全にストップしてしまいますよね。なので事前に話し合って、中抜けではなく前か後ろで取ってもらうようにするといったような準備も必要です。

――社内の環境作りや従業員への周知のポイントを教えてください。

育児・介護休業法の趣旨を、従業員全員で共有することが重要です。育児短時間勤務や介護短時間勤務の従業員がいる場合、他の従業員が「その短時間勤務の影響により、なぜ私が残業を強いられなければならないのか」と感じてしまい、ハラスメントが起きることもあります。

周知は、少人数の会社だったら集まって話せばいいですよね。ある程度の人数がいて非正規労働者も含まれるのであれば、パンフレットの配布やメールで周知するとよいでしょう。

通常は事業主が周知を出すことが多いですが、人事部長などでもかまいせん。いずれにしても、責任者あるいは問題が発生したときに相談できる窓口を用意しておいてください。

こんなにもらえる!「両立支援等助成金」でより良い労働環境を

――両立支援等助成金とはどんな制度ですか?

両立支援等助成金は、仕事と家庭の両立を推進する事業主を支援するための制度です。育児休業等支援コースをはじめ、全部で6つのコースがあります。育児・介護休業法の改正にあたって規定を整備するなどした企業におすすめなのは、やはり育児休業等支援コース出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)ですね。

育児休業等支援コースは、育児休業の取得や職場復帰に対して支払われる助成金です。出生時両立支援コースは「子育てパパ支援助成金」の別名でも分かるように、男性労働者の育児休業や育児目的休暇が対象となります。金額や回数・人数などの条件については、下図表をご確認ください。

――両立支援等助成金の申請の流れを教えてください。また、入金まではどれくらいかかるのでしょうか。

申請の流れは、両立支援等助成金の支給申請の手引きをご確認ください。ただし、経営者の方などが厚生労働省のサイトを見て自力で申請するのは、かなり難しいと思います。申請の具体的なやり方は、労働局の雇用環境・均等部(室)や社会保険労務士に聞くのが一番早いと思います。

両立支援等助成金を申請する際に最も注意しなければならないのが、一般行動計画を出す必要があるという点です。一般行動計画とは、仕事と家庭の両立を図るための環境作りや労働条件の整備について定めるもので、「計画期間」「目標」「目標達成のための対策及びその実施時期」を記載します。一般行動計画を策定したら、雇用環境・均等部(室)に届け出て自社サイトなどで公表してください。

申請から入金までの期間は、状況にもよりますが6か月程度が目安となります。助成金の用途は指定されていないので、賞与・研修・福利厚生など自由に使うことが可能です。

ちなみに、両立支援等助成金の中でも出生時両立支援コースは特に人気があるそうですよ。

――最後に。今回の改正により育児休業・介護休業の取得を促進する企業は増えると思われますか?

両立支援等助成金を利用しつつ育児休業・介護休業の取得を促進する企業は、今後も増えていくと思います。

まずは育児・介護休業法に関する規定を作ることを第一歩として、あなたの会社でもワーク・ライフ・バランスを実践してみてはいかがでしょうか。安心して長く働ける環境を築くことができれば、優秀な人材の確保にも繋がります。そして、優秀な人材は会社に大きな貢献をもたらしてくれるでしょう。

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