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最大2000万まで事業資金が借りられる!小規模企業共済の「貸付制度」とは?【教えて!吉田先生】

2025.04.24

著者:弥報編集部

著者:吉田 学

小規模企業共済は、個人事業主や中小企業の経営者が多く加入しています。節税面でのメリットは広く知られていますが「貸付制度」がある点はあまり認知されていません。貸付制度は、資金調達にも役立つ有効な手段です。ぜひ、知っておきましょう。

今回は小規模企業共済の貸付制度について、財務・資金調達コンサルタントの吉田学先生に伺いました。

※本記事は2025年2月時点の情報を基に作成しております。法令などの最新情報については、政府・各省庁などから出ている文書をご確認ください。


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小規模企業共済の「貸付制度」とは何ですか?

小規模企業共済制度は、小規模企業の経営者や役員・個人事業主などのための「積み立てによる退職金制度」です。掛金は全額を所得控除できるため、高い節税効果が期待できます。

小規模企業共済貸付制度には「一般貸付」と「特別貸付」の2種類があります。小規模企業の経営者や個人事業主が利用できる資金調達の手段の1つとなっており、契約者が納付した掛金の範囲内で資金の借り入れが可能です。

一般貸付について教えてください。

一般貸付は、簡易迅速に事業資金などの貸付が受けられる制度です。限度額は掛金の納付月数に応じて算定され、通常は掛金の7〜9割の範囲内で最大2,000万円まで借り入れが可能となっています。概要は以下の通りです。

〈一般貸付〉

「借入限度額」は掛金の範囲内にて、10万円以上2,000万円以内(5万円単位)で借入が可能です。「返済方法」は借入期間によって異なりますが、期限一括償還(借入期日到来までに全額返済)、6か月ごとの元金均等割賦償還(元金を均等に分割して返済)になります。「利率」は年1.5%、担保・保証人は不要です。なお、返済が滞ると年利14.6%の延滞利子が発生しますので注意してください。

特別貸付について教えてください。

こちらは特別な事情がある場合に利用できる貸付制度です。具体的な条件は制度によって異なりますが、無担保・無保証人に利用することができ、限度額は50万円以上1,000万円以内となっています。それぞれの制度概要については中小機構のWebサイトにて確認してください。

申込方法について教えてください。

小規模企業共済の貸付申込手続きは、「必要書類の準備」→「借入窓口にて手続き」となります。主な必要書類は、印鑑登録証明書、本人確認書類、共済契約者本人の実印、収入印紙などです。借入窓口は、中小機構に登録された金融機関または商工組合中央金庫(商工中金)です。事前に取引先の金融機関などに確認しましょう。

なお、借入窓口が商工中金の場合は、午後2時までに窓口で手続きをすると、その日のうちに貸付を受けることができます。その他の金融機関の場合は、借入の申し込みから資金交付まで2~3日程度の日数を要す場合がありますので、事前に登録金融機関に確認してください。

貸付制度(一般貸付)のメリット・デメリット、民間金融機関の融資との違いを教えてください。

小規模企業共済の一般貸付の主なメリットは「審査不要」、「低金利」、「迅速な融資」、「無担保・無保証人」などです。デメリットとしては、1年以上の掛金納付が必要となる点があげられるでしょう。また、借り入れは自分が積み立ててきた掛金の範囲内、具体的には掛金納付月数により掛金の7~9割までしかできない点も理解しておきましょう。

さらに、借入期間が6か月または12か月の場合は「返済期日到来までに一括で返済」(期限一括償還)、そして借入期間が24か月、36か月、60か月の場合は「6か月ごとの元金均等割賦償還」しなければなりませんので、一回の返済額が多くなります。通常の金融機関融資とは少々異なるため注意が必要です。

また、利息の支払い方法については、期限一括償還の場合は「借入時に一括前払い」、割賦償還の場合は「借入時および返済時に6か月分前払い」となっていますので、この点も通常の金融機関融資とは少々異なります。返済が滞ると年利14.6%の延滞利子が発生しますので気を付けてください。

民間金融機関にはさまざまな融資(プロパー融資、信用保証付融資など)があり、企業規模によっては数億円の大型融資も可能です。しかし審査に時間が必要で、急な資金需要に対応できないケースもあります。また、基本的には事業計画書の作成などや担当者との折衝なども必須であり、審査の結果、融資を受けることができない場合もあります。

民間金融機関との違いは、民間金融機関においては経営者保証ガイドラインがありますが、企業の財務状況などによっては、経営者保証が必要になる場合もあることをあらかじめ理解しておきましょう。

一般貸付と特別貸付の併用は可能ですか?また、期日までに返済できないとどうなるのでしょうか?

一般貸付を受けている共済契約者であっても、一般貸付の残高を含めた総額が貸付限度額の範囲内であれば特別貸付も併用可能とされています。

また、貸付金を返済期日までに返済できなかった場合、延滞利子の発生や掛金からの取り崩しが発生しますので、十分に注意してください。貸付金が返済期日(約定償還日)を過ぎても返済されない場合、延滞元金(一括償還の場合は貸付金額、割賦償還の場合は未償還額のうち約定償還日を経過した額の合計)に対して、年14.6%の延滞利子が発生します。

そして、貸付金の返済期日から12か月を経過しても貸付金や延滞利子および約定利子の未返済がある場合は、掛金残高からその額を取り崩してその返済に充当する(法定弁済)ことになります。

具体的な活用事例を教えてください。

近年、小規模企業共済の貸付制度が活用されたのは、新型コロナウイルス感染症拡大時期といえるでしょう。小規模企業共済制度の特例「緊急経営安定貸付」などにおいて、緊急経営安定貸付の貸付利率の無利子化、据置期間の設定、償還期間の延長などの貸付要件の緩和、延滞利子の免除などが実施されたのは記憶に新しいと思われます。

また、地震や台風などの被災を受けた事業者に対して、迅速に災害救助法に基づいた資金繰り支援策も実施されます。その際は小規模企業共済の「災害時貸付」が適用され、迅速な貸付が実施されていました。

そのほか、急な「事業に必要な運転資金、その他事業に関連する資金、生活資金」などが必要になった際には、一般貸付などを利用してつなぎ的に活用することもできます。なお、借入期間内に借入金を返済できないような事態が生じた場合、借り換え(同額、減額、増額借換)することも可能です。

また、単なる資金繰り対応以外においても、疾病・負傷による入院、住宅改造資金、福祉機器購入など、新規開業・転業する際や事業多角化、事業承継(事業用資産または株式の取得)、個人事業の廃止または会社の解散など、特別な諸事情がある際に、ひとまずは迅速に借入をすることができますので、とても使い勝手のよい貸付制度だと言えるでしょう。

小規模企業共済および共済契約者貸付の詳細については、中小企業基盤整備機構のWebサイトをご覧ください。また、ご不明な点については、顧問税理士または取引先金融機関、中小企業基盤整備機構の「お問い合わせ窓口」にてご確認ください。

(参考)
共済契約者貸付|中小企業基盤整備機構
お問い合わせ|中小企業基盤整備機構

中小企業や個人事業主の強い味方である小規模企業共済を適切に活用し、経営に役立てましょう。


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この記事の著者

弥報編集部

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吉田 学(よしだ まなぶ)

財務・資金調達コンサルタント
株式会社MBSコンサルティング 代表取締役。1998年の起業以来、「資金繰り・資金調達支援」に特化して創業者や中小事業者を支援。これまでに1,000 社以上の資金調達相談・支援を行い、その資金調達支援総額は20億円超。主な著書に、「社長のための資金調達100の方法」(ダイヤモンド社)、「究極の資金調達マニュアル」(こう書房)、「税理士・認定支援機関のための資金調達支援ガイド」(中央経済社)、「税理士だからできる会社設立サポートブック」(第一法規)などがある。
また、全国の経営者・士業などを対象にした会員制の資金調達勉強会「資金調達サポート会(FSS)」を主催している。

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