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【2024年11月施行】発注側が知っておくべき「フリーランス新法」のポイントと対策
2024.10.08
2024年11月1日から「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス・事業者間取引適正化等法)」、通称「フリーランス新法」が施行されます。
近年は働き方の多様化によりフリーランスが増えていますが、従来の法律ではその立場を守り切れず、不当な取引や労働条件での稼働を余儀なくされているといいます。それらを解決するためのフリーランス新法ですが、発注事業者側の契約体制の見直しなどが必要になるため、十分に理解したうえで対策を講じなければいけません。
フリーランス新法の概要や、発注事業者として知っておくべきポイントや対策について、棚田法律事務所の弁護士である棚田章弘さんに解説いただきました。発注事業者にとってこの法律がどのような影響を与えるのかを理解し、適切な対応を取るための参考にしていただければ幸いです。
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目次
公正な取引を!「フリーランス新法」の概要と制定の背景
「フリーランス新法」について、どのような法律か教えてください。
正式名称を「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス・事業者間取引適正化等法)」と言いますが、一般的にはわかりやすく表現した「フリーランス新法」という呼称で知られています。この法律はフリーランスが発注事業者から不当な扱いを受けることを防ぎ、取引の公正さと安全な就業環境を確保することを目的としています。2023年4月に可決され、2024年11月1日から施行される予定です。
主な内容としては、受注事業者側であるフリーランスと発注事業者側で交わされる契約内容の明確化や、不当な契約解除を防ぐ規定などを含む「取引の適正化」と「就業環境の整備」に関して、発注事業者が守るべき義務と禁止行為が定められています。この施行により、フリーランスはより安心して働ける環境が整い、業界全体の健全な成長が期待されています。一方で、発注事業者側にはフリーランスとの取引において、より適正な対応が求められているのです。
なぜ施行が決まったのでしょうか。背景があれば教えてください。
社会全体で働き方の多様化が進み、就業環境が大きく変わったことが関係しています。会社などの組織に雇用されずに、個人で働くフリーランスも増えました。しかし、従来の労働法は、正社員や契約社員のような雇用関係にある労働者を主に保護しており、フリーランスは守られていません。下請け取引において公正な取引を確保するための下請法(下請代金支払遅延等防止法)もありますが、資本金規模による規制などから、フリーランスは対象外になることが大半です。
よって、法的な規制がないフリーランスは立場が弱く、不利な条件で契約を結ばされるケースや、契約通りに報酬が支払われないことも発生していました。そこで、フリーランスが安定的に働ける環境を整え、多様な働き方を後押しする動きが強まったのです。
他人事じゃない!適用範囲と対象者を知ろう
フリーランス新法で保護される対象である「フリーランス」は、どのように定義されているのか教えてください。
フリーランス新法で保護される受注事業者は、特定の企業に雇用されない独立した立場で、事業者から業務を受託する者、代表者以外にはだれもいない法人、いわゆる1人親方を指します。具体的には、契約に基づきプロジェクト単位で依頼された業務を行い、業務委託契約や請負契約などを結ぶ形態の働き方です。
また、同時に発注事業者側の定義も確認しておきましょう。発注事業者は「特定業務委託事業者」と「業務委託事業者」に分けられ、それぞれの義務や禁止事項数の違いはありますが、いずれもすべてを把握しておけば安心です。また、フリーランスが別のフリーランスに業務委託を発注した場合も、依頼した側は業務委託事業者となり、発注事業者としてフリーランス新法に基づいた取引を行わなければいけません。
適用される取引はどのようなものでしょうか。
適用対象となる取引は事業者間の契約、つまりB to B間の業務委託です。具体的には、物品の製造・加工、ソフトウェアの開発などがあげられます。ただし、制作した商品などの売買取引は事業者同士であっても対象外です。また、業務委託契約を締結しているものの、実際の働き方や待遇が雇用関係に近い場合も、フリーランス新法は適用されません。この場合は労働に関する法律が適用されます。
何が変わる?発注事業者の義務・禁止事項とやるべき対策
具体的にはどのような内容なのでしょうか。中小企業が対応すべき事項があれば併せて教えてください。
主に、取引の適正化と就業環境の整備に関しての義務・禁止行為が適用されます。1つずつ解説していきましょう。
取引の適正化
取引条件の明示義務
フリーランスとの業務契約において、業務内容、報酬額、支払条件、納期、労働条件などの詳細を、書面やメールなどで明示することが義務付けられます。口約束は違反となるので注意が必要です。もしも契約時に未確定な事項がある場合は、明確な明示日を予告し、後日詳細を伝えても大丈夫です。該当内容を記載した契約書を作成して対応しましょう。
期日における報酬支払義務
特定業務委託事業者は、発注した給付を受領した日から60日以内のできる限り短い期間内で、支払期日を定めて、その日までに報酬を支払わなければなりません。取引条件の決定時に併せて決めておくなど、発注前に決定しておくとよいでしょう。
発注事業者の禁止行為
特定業務委託事業者がフリーランスに対して1か月以上継続する業務の委託をした場合、事業者は以下7つの行為をしてはならないとされています。主な禁止行為は以下の通りです。
- 受領拒否
- 報酬の減額
- 返品
- 買いたたき
- 購⼊・利⽤強制
- 不当な経済上の利益の提供要請
- 不当な給付内容の変更・やり直し
特に発注事業者側が行ってしまいがちなのは、納品されたものに対して「やはり必要なかったので返品したい」といったケースや「想定していた納品内容と違ったのでやり直してもらいたい」と再度依頼するケースです。実際のビジネスシーンで起こりやすいこれらの例も、違法となりますので注意が必要です。
契約段階で納品物の具体的な完成イメージを綿密にすり合わせておく、事前に変更契約を締結しておくなどの対策を講じることで防げるでしょう。
就業環境の整備
募集情報の的確表示義務
特定業務委託事業者が業務委託募集を行う際には、正確かつ最新の情報を伝える必要があり、虚偽の表示や誤解を招く表現は禁止されます。例えば、提示する報酬額に関しても、基本報酬以外に交通費や雑費が出るのか、それとも総報酬額なのかなど、誤解を招く表現は避けなければいけません。募集情報に関する認識の違いをできるだけなくし、契約後のトラブルを事前に防止するために、細部まで明確に定めておくことをおすすめします。
育児介護などと業務の両立に対する配慮義務
フリーランスから要望を受けた場合は、発注事業者は出産・育児・介護と業務を両立できるように配慮しなければいけません。6か月未満の業務委託の場合は、努力義務にはなりますが、基本的にはフリーランスから配慮要望の申し出がある際には、対応を検討しなければなりません。
また、配慮の内容や選択肢について検討した結果、業務の性質・実施体制などを踏まえると対応が難しい場合、その旨を伝え、必要に応じ書面の交付などにより説明するようにしてください。
ハラスメント対策にかかる体制整備義務
特定業務委託事業者は、ハラスメント相談や対応のための体制を整えることが求められています。方針の明確化や周知、相談窓口の設置などを行い、フリーランスからの相談に適切に対応する必要があります。例えば従業員向けの相談窓口を、フリーランスにも利用してもらうなどの対処法も有効です。
中途解除等の事前予告・理由開示義務
6か月以上の期間で契約している業務委託に関して、契約解除には事前予告のうえ、正当な理由とその開示が必要です。発注事業者は解除日または契約満了日から30日前までにその旨を予告しなければなりません。フリーランスから請求がある場合には、契約解除の理由を遅滞なく開示しなければなりません。契約解除の際には、フリーランスに対して十分な説明を行い、双方の合意のうえで行うことが好ましいといえます。
違反すれば罰金も!早めの対策でトラブル回避
フリーランス新法に違反した場合、発注事業者側の罰則を教えてください。
違反した場合、発注事業者側には行政からの指導や勧告が行われます。具体的には、受注事業者であるフリーランス側から所轄の官庁に申し出があり、必要に応じて調査が行われます。
違反が確認された場合、監督官庁が特定の発注事業者に対して指導や勧告措置を取ります。もしその勧告に従わない場合、監督官庁は命令を発し必要に応じてその命令を公表、違反に応じて50万円以下の罰金なども科されることになります。
罰則だけでなく、企業の社会的信用度も下がるでしょう。違反行為によって信頼を失うことは、受注事業者がいなくなる可能性も高く、長期的に見てビジネスに悪影響を及ぼすことになります。この機会に自社の発注姿勢を見直し、適正化を図ることでフリーランスとの健全な取引を実現しましょう。
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この記事の著者
弥報編集部
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この記事の監修者
棚田 章弘(棚田法律事務所 弁護士)
中央大学法学部卒業。清水総合法律事務所入所、大谷・佐々木・棚田法律事務所を経て、2024年棚田法律事務所を開設。
一般民事、企業法務を問わず、広く事件を扱っており、特に専門分野を絞らず幅広い相談に対応。日頃から相談しやすい事務所、アクセスが容易な事務所を目指し、業務に従事。
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