- 業務効率化
【基礎から解説】スタッフが少ない中小企業こそ導入するべきMAツール!生産性向上につながる理由とは
2022.10.13
著者:弥報編集部
監修者:片山 和也
営業活動の効率化は収益に直接影響するため、どの企業においても重要な課題です。特に人手の少ない中小企業にとっては、なおさらでしょう。
このような現状を受け、多くの中小企業でMA(Marketing Automation)ツールが導入されはじめています。MAツールを導入することで、実際にお客さまと直接会わなくても、お客さまにどのようなニーズや関心があるかを分析し、それに合わせてより効果的な提案を実施したり、顧客管理などのマーケティング業務自動化による営業活動効率化が可能です。
今回は、株式会社船井総合研究所の片山 和也さんにMAツールの概要や生産性向上につながる理由などについてお話を伺いました。
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目次
そもそも何ができるの?MAツールとは
MAツールがどのようなツールなのか簡単に解説してください。
簡単に説明すると、MA(Marketing Automation)ツールとは、メールマガジン(以下、メルマガ)の配信をはじめ、マーケティングの効率化を実現するシステムのことです。本記事ではメルマガ配信システムに特化して、説明していきます。
メルマガ関連の機能としては、以下のようなことができるようになります。
- メルマガをだれが開封したか、開封していないかがわかる
- 開封した人が、メルマガ内のURLをクリックしたかどうかがわかる
- URLをクリックした結果、自社ホームページのどのページをどれだけ見たのかという閲覧履歴がすべてわかる
つまりメルマガを開封されたお客さまが、どういったことに興味関心があるのかが対面で会わずとも手に取るようにわかるのがMAツールです。具体的にどのようなことができるかは、次の章で詳しく解説します。
MAツールを導入することで、何ができるのかより具体的に教えてください。
MAツールを導入することによって、ハウスリストが作成できます。ハウスリストとは、情報が整理されていて、企業側からアプローチ可能なお客さまのリストのことです。
例えば、だれかが自社のホームページにアクセスしても、通常はどこのだれなのかは、わかりません。MAツールを導入すると、一定のアクションを行ったお客さまにポップアップスクリーン(下図の赤枠のようなもの)が表示されるように設定することができます。そのポップアップスクリーン経由で、資料請求やセミナーの案内などをダウンロードしてもらう際に、お客さまの名前やメールアドレスが入手することができ、どこのだれかがわかるようになるのです。
出典:画像検査.COM|岡部機械工業
出典:射出成形ラボ|関東製作所
このポップアップスクリーンはMAツールの機能の一つですから、中小企業がお客さまのメールアドレスを集める有効な手段として活用できるでしょう。
営業スタイルが変わる!MAツールが中小企業にもたらす変化
MAツールを導入することで、中小企業の営業活動にどのようなメリットがあるか教えてください。
例えば、従業員数40名程の不動産会社では、MAツールを導入した結果、インサイドセールス(メールや電話、オンラインツールなどを使って見込み客に非対面で営業活動を行うこと)のアポイント率が2倍以上になりました。
また、従業員数30名程の生産財商社では、MAツールを導入したことによって新規開拓が促進され、毎年1億円の新たな売上の付加を実現しています。
この生産財商社では、お客さまから「こういうのを探しているのですが、ありますか?」など、引き合いをもらう情報のことを一次情報、MAにより事前に得られるお客さまのニーズをゼロ次情報と呼んでいます。この生産財商社ではMAツールで得たゼロ次情報を活用して、お客さまのニーズがわかった状態で引き合いが来る前にヒアリングをかけられるようになり、その結果、毎年1億円の新規開拓につながっているのです。
こうした不動産会社や生産財商社の事例は、下記の通り船井総合研究所のYouTubeチャンネルでも事例の詳細をご紹介しております。
(参考)
【Zoho導入事例】不動産会社
【Zoho導入事例】生産財商社
中小企業が見込み客を増やすためには、MAツールを活用してどのような活動をすればよいのでしょうか?
中小企業が見込み客を増やすためには「リードジェネレーション」「リードナーチャリング」そして「リードクオリフィケーション」の3つを実践する必要があります。
「リードジェネレーション」とは、見込み客を獲得するためのマーケティング活動のことです。「リードナーチャリング」とは、既に獲得している見込み客に対してより有益な情報を提供し続け、自社サービスについて知ってもらうことにより、見込み度合いをアップさせる活動のことを意味します。そして「リードクオリフィケーション」とは、見込み客の中から、購入意欲の高い顧客を選別することです。
ほとんどの中小企業は、新規顧客を創出するためのリードジェネレーションを実施しています。例えば、補助金などを活用した展示会への出展なども、リードジェネレーションの一環です。しかし展示会に出展しても、なんの成果も得られないことがほとんどというケースが多いのではないでしょうか。
お客さまにアプローチして商談化する確率は、約1%といわれています。つまり、展示会に出展して100枚名刺を集めたとしても、そこから商談化するものは1件しかないということです。そして商談からの成約率が2~3割だとした場合、100枚名刺を集めるだけでは何の成果も得られない可能性が高いでしょう。
その結果「展示会にはもう出展しない……」となるのが、中小企業あるあるだといえます。しかし、これはリードジェネレーションしか行っていないから、残念な結果になってしまうだけです。リードジェネレーションの次は、リードナーチャリングを行わなくてはいけません。
リードナーチャリングの例を教えてください。
リードナーチャリングには「顧客の育成」という意味があります。リードナーチャリングにはさまざまな方法がありますが、効果的なものの代表格としてメルマガが挙げられます。その理由は、多くの方がメールをインフラとして活用しているからです。
ただし、興味のないメルマガは開かないので、お客さまが興味のあるコンテンツを作成することが重要です。例えば、シングルモルトのウイスキーが好きな方に「なぜ、今シングルモルト好きは山崎に集うのか」「アイラ島のシングルモルト醸造ツアーにオンラインで参加できる」といったタイトルのメルマガを送れば、開封してもらえる確率は高くなるでしょう。また、製造業でプロダクトの軽量化が課題になっている方に「鋼鉄製部品の樹脂化による軽量化のポイント知りたくないですか?」というタイトルのメルマガを送れば、開けてもらえる可能性は高いと思います。つまり興味さえあれば、メルマガは開いてもらえるということです。
メルマガには作り方があり「ワンメルマガ」「ワンタイトル」「ワンコンテンツ」が基本です。お客さまはタイトルを見て開くかどうかを決めるため、どのようなことが書かれているかをワンタイトルで伝える必要があります。
例えば、さまざまな経済誌のメルマガに登録すると、同じ会社から1日に何通ものメールが届くことがありますが、それはタイトルで開くかどうかを判断しているので、1つのメルマガにいくつもネタを載せても意味がないからです。だからメールを分けて、ワンメルマガ、ワンタイトル、ワンコンテンツで配信しています。
ほとんどの中小企業がこの「リードナーチャリング」を実践できていないのが現状です。その理由としてあげられるのが、リソース不足です。リードナーチャリングの実現のためには、メールマガジンやWebサイトの記事、セミナーなどのコンテンツを作り上げる必要があります。リソース不足だと感じたら、自社ですべてやろうとせず、外注を活用してコンテンツ作成などを行うとよいでしょう。
そして、リードナーチャリングの次に行うのが、リードクオリフィケーションです。
リードクオリフィケーションは、どのように行うのでしょうか?
リードクオリフィケーションは「顧客の見極め」という意味で、これを実現するためにMAツールを活用します。
例えば「メールを開いてURLをクリックし、特定のページを見たら100点のスコアにする」といったルールを決め、100点を超えたお客さまをフォローするといった活動を実施するなどがわかりやすい例でしょう。つまりMAツールを導入することで、リードジェネレーション、リードナーチャリング、リードクオリフィケーションを実現し、最後に成約へとつなげていくわけです。
MAツールを導入する最大の目的は、これら一連の流れを作ることだと言っても過言ではありません。
10か月で10件商談ができたとした場合、成約につながるのは理論上2~3件程度でしょう。しかしハウスリストの数を増やせば増やすほど、成約につながる数も増えます。
ちなみに高収益企業で知られるキーエンスは、ソリューションサイトを40サイト以上運営しています。さらに、メールマガジンやポップアップスクリーンの施策はもちろん、展示会にも常に出展しています。
中小企業に限らずリードジェネレーション、リードナーチャリング、リードクオリフィケーションを実施するのはマーケティングの王道といえるでしょう。このプロセスを実現するために、中小企業こそMAツールの導入をおすすめしたいのです。
MAツールを導入することで得られる営業活動以外のメリットを教えてください。
MAツールを導入することで、これまで展示会で入手していた名刺情報を入力する手間や、問い合わせがあった顧客情報の入力や管理を自動化できます。
また配信したメルマガの顧客情報、Webサイトやセミナー、名刺管理システムなど、さまざまな経路から集まるお客さまの情報や動向を自動管理することも可能です。
MAツールの導入目的は省人化などの工数削減というより、むしろ売上、利益率を上げて収益向上を実現することにあります。MAツールを導入することで、商談数や受注率を上げて、いかに生産性や業績を向上させるかが重要なポイントといえるでしょう。
近年は、労働力不足の企業が多いことに加え、残業規制も厳しくなっています。以前は、夜中まで営業している企業も多かったのですが、今は9時から17時の間で成果を上げることが求められます。そのため、以前に比べ2/3程度の時間で、効率よく成果を上げる必要があるわけです。
しかし従来の営業スタイルのままでは、成果も2/3になってしまいます。さらにコンプライアンス遵守が叫ばれる中、今の若者に昔ながらの営業スタイルを押しつけたら、すぐに退職してしまうでしょう。よって離職率防止という観点においても省力化、省人化は必須で、MAツールの導入可否について議論の余地はありません。
中小企業がMAツールを導入するときの注意点
MAツールの費用相場はどの程度なのでしょうか?
MAツールの費用はピンキリですが、一般的には月額15〜20万円前後のものが多いでしょう。費用は、見込み客や顧客情報であるハウスリストの件数によって決まります。一方、月々数万円前後で利用できる安価なMAツールももちろんあります。
自分たちがどのようなことをしたいのかを具体的にイメージし、ニーズに合わせて導入するシステムを検討するといいでしょう。
中小企業がMAツールを選ぶときの注意点を教えてください。
ソフトウェアは言語圏でシェアが決まります。そのため、できるだけグローバルで認知されているシェアの高いMAツールを導入したほうがよいでしょう。また、拡張性およびカスタマイズ性の高いMAツールを選ぶことも重要です。
カスタマイズ性の高いソフトウェアとして、ノーコード・ローコードが挙げられます。従来、ソフトウェアは、フルスクラッチかパッケージの2種類が一般的とされてきました。フルスクラッチとはゼロから作るソフトウェアのことで、パッケージは既に完成したソフトで業務を行うものです。そして、現在はフルスクラッチとパッケージの中間に、ノーコード、ローコードと呼ばれるものがあります。ノーコード、ローコードとは、ソフトウェアの開発を行う際にプログラムの元となるコードを書かない、もしくは少ないコードで作られたものです。ノーコード、ローコードのソフトウェアを用いれば、自社の業務に最適なシステムを作ることが可能です。
また拡張性も重要です。例えば将来的に、MAをSFA(Sales Force Automation:営業支援システム)と連携させたい、という時に、MAしかできないツールでは将来的な拡張が見込めなくなってしまいます。また、自社の事業規模の拡大を想定したシステムの選定も重要なことです。従って、拡張性およびカスタマイズ性の高いMAツール選びは大変重要なのです。
MAツールを実際に導入する場合、何から始めるべきでしょうか?また、だれに相談するべきでしょうか?
自社と同じ業界、あるいは自社に近い業界における、MAツールの導入事例を知ることから始めてください。
例えば、弊社のYouTubeチャンネルやMAツールのベンダーが紹介している導入事例などを参考にして、MAツールの成功事例を知りましょう。社内でMAツールの導入プロジェクトを立ち上げる場合などでも、自社の業界に近い成功事例があると稟議が通りやすくなるでしょう。
またその際には、ツール選定の段階からプロの力を借りることをおすすめします。弊社のようなコンサルをはじめ、商工会議所など、DXやMAツールに精通した方を雇うのが近道です。
中小企業でMAツールを導入する場合、プロジェクトを推進するのは誰が適任でしょうか?
社長か、社長に近しい人が進めることをおすすめします。社長に近しい人が推進する際には、自社でWeb周りの担当者など、マーケティング業務を行う方を任命しましょう。
社長が自分ごとにして進めなければMAツールの導入プロジェクトはうまくいきません。担当者に少しずつスキルアップしてもらいながら、進めていく方法がよいでしょう。
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この記事の著者
弥報編集部
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この記事の監修者
片山 和也(株式会社船井総合研究所 ライン統括本部 DX支援本部 ものづくり支援室 ディレクター)
マーケティングオートメーションおよびセールステック導入の専門家。同分野では船井総合研究所の中でも多くの実績を持つ。上場企業から中堅・中小企業まで幅広く導入支援の実績を持つ。また日経クロステックでの連載を手掛けるなど、テクノロジー面とマーケティング面の両面に精通していることが大きな強み。主な著書に「技術のある会社がなぜか儲からない本当の理由」(KADOKAWA)、「なぜこの会社には1ヶ月で700件の引き合いがあったのか?」(KADOKAWA)、「必ず売れる!生産財営業の法則100」(同文舘出版)、「はじめて部下を持ったら読む!営業マネジャーの教科書」(ダイヤモンド社)、「部下を育てるリーダーが必ず身につけている 部下を叱る技術」(同文舘出版)、「ぐるっと!生産管理」(すばる舎リンケージ)、「世界が驚く日本の微細加工技術」(日経BP)他、著作は優に10冊を超える。経済産業省登録 中小企業診断士。株式会社船井総合研究所HP
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